少女語り手

そしてアドレーヌは眠る。
『第五幕 眠る女神は』〜そして未来に〜

05/22(火)19:39
語り手
タイトル:第五幕〜眠る女神は347〜
気分:次回更新は29日(火)予定です



「ミレット―――ッ!?」

 動き出したミレットとその声に反応し、彼女は此方へと視線を向けた。
 その目を放した一瞬の隙にバーンズはメリッサを掴み上げ、羽交い締めにした。

「やだ、放せっ!!」
「大人しくしろメリッサッ!」
「メリッサッ!」

 しかしそれでも抵抗にと暴れ続ける彼女は絶対にその手からナイフを手放さなかった。
 状況は更に混乱と動揺を深めていく一方で。
 突然、屋敷の奥から駆けてくる足音が聞こえてきた。

「申し訳ありません、国王騎士隊がもうすぐそこにッ!」

 と、その侍女の声は足音から別方向の、中庭の奥から聞こえてきた。
 近付いてくる足音よりも先回りするべく、急いできたのだろう。侍女は肩を大きく揺らし息も切れ切れであった。

「時間がない…マリアンヌ、お前は奥の倉庫にあるエナカーに乗って逃げ―――」

 そう言いかけてバーンズの言葉は止まった。
 誰もがそのとき、言葉を失った。
 それは刹那のような出来事だった。

「おかあ、さん…」

 もがき続け父に奪われないようにと突き出されていたナイフへと、突然マリアンヌは飛び込んだのだ。
 娘の手から奪うようにしてそれを掴み、彼女は自分の胸へそれを突き刺したのだ。

「お母さんっ…!」

 誰も、何も出来ない一瞬のことであった。
 そうして彼女はその場に崩れ落ちたのだ。
 中庭に咲くローゼンの花のように、真っ赤な鮮血を散らせながら。

「ごめんね…お母さんを恨んで良いから…泣いちゃ、駄目よ……」





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