少女語り手

そしてアドレーヌは眠る。
『第五幕 眠る女神は』〜そして未来に〜

08/07(火)16:21
語り手
タイトル:第五幕〜眠る女神は377〜
気分:次回更新は21日(火)予定です



「ごめん、アドレーヌ…!」

 咄嗟にアサはアドレーヌの手を引き離すと、更に遠くへと突き飛ばした。

「アサッ!アサッ!!」
「君だけでも…逃げてくれ…!!」

 彼女の涙声の悲鳴が、直ぐに聞こえなくなっていく。
 頬から涙を流していたその姿も、間もなく見えなくなっていく。
 全身が硬直し、何か得体のしれない固体によって包まれていく感覚。
 冷たいとも熱いとも言えない感触。
 そこにあるのは何も無くなっていくような、暗く、閉ざされていく“無”だった。








 結局、何も出来なかった。
 役に立つどころか、終始蚊帳の外だった。
 ルーノ将軍やパイロープを助けることも、ミレットを救うことも、タルクスのために時間稼ぎをすることも、アドレーヌにも、何も出来なかった。
 悔しさも通り過ぎで呆れ果ててしまう。
 笑いすら込み上げてくる。
 涙など、出て来やしない。
 だから―――此処でこうして最期を迎えても仕方がない。
 手配犯にされて、こんなところまで五体満足に来られて捕まらなかったのは才能ではない。
 自分の運が、偶然があって良かっただけ。
 周囲が強すぎただけ。
 異能過ぎただけ。
 常人外れ過ぎなだけ。

 俺は結局、誰も助けられない。
 何も出来ない凡人なだけ。
 
 だけど、せめて――。
 君だけは…アドレーヌだけでも無事で助かっていて欲しい。
 何とか逃げていてほしい。
 それだけは切に願う。








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