少女語り手

そしてアドレーヌは眠る。
『第五幕 眠る女神は』〜そして未来に〜

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交換日記レンタル - nikkijam

2017/11/08(水) 語り手
タイトル 第五幕〜眠る女神は299〜 今日の気分次回更新は21日(火)予定です



 出会った頃は何でも話してくれた。二人しか知らない秘密のお話しや、秘密の花園。
 悩みも愚痴も、憧れも夢も。何でも語ってくれた。
 だが、何時からか彼は自分のことを語らなくなってしまった。
 それが成長というものならばと受け止めていたミレットであったが、アサがアマゾナイト育成学校の入学試験に失格して、そこからまた彼は変わってしまう。
 自分の夢や感情、何もかもを押し殺したように、失ってしまったように何も言わず、何処か自暴自棄となっているようでもあった。

「だから…私じゃ駄目なんだ。どんなに頑張っても、アサを昔みたいなアサに戻してあげらないの」

 淡い暖色の明かりのせいか、ミレットの瞳は熱を帯びているように見えた。
 アドレーヌはそんな彼女を真剣に見つめる。
 彼女の、心から吐き出している言葉をしっかりと受け止めようとする。

「けどね、最近になって…アドレーヌと出会って此処までで随分とまた変わったの。前よりも感情豊かになってきていて、昔みたいな雰囲気が戻って来ていて。凄く嬉しいんだ」

 「こんな大変な状況だっていうのにね」と、ミレットは苦笑交じりに言う。
 釣られるようにアドレーヌも笑みを浮かべる。
 確かにアサはこれまで、責任感に胸躍らせることも、他人に嫉妬を抱くことも、誰かに嫌悪することも初めての経験のようであった。
 否、もしかすると一度は経験したことのある感情だったのかもしれない。
 だが、何かを切っ掛けに彼は経験したこれまでの感情を全て消し去ろうとして、忘れてしまっただけなのかもしれない。
 あくまでもそれはアドレーヌの推測であり、答えは彼本人さえも知らないところであるだろう。

「だから私はアドレーヌにアサのこと、もっと知ってほしい。悩みも夢も怒りも悲しみも聞いてあげて…アサを助けてあげてほしいの。アサに沢山の笑顔を戻してあげてほしいの」

 その双眸には強い願いと共に悲しみも隠れているように見えて。
 アドレーヌは思わずミレットの頬に触れた。








2017/11/08(水) 語り手
タイトル 第五幕〜眠る女神は298〜





「そのときにアサが『秘密のお話し』を話してくれたおかげで、私は思い出すことが出来たんだ。私には小さな想いもあったし、夢もあったんだって」

 彼女はそう言って自身の手を天井へと向ける。
 視線の先にある硝子のシャンデリアはよく見るとローゼンの花を模したものであり、暖かな明かりに照らされているそれはまるで橙というよりは朱い、赤いローゼンの花のようであった。 ミレットは自然と笑みを綻ばせ、告げる。

「だからアサには感謝してもしきれないんだ。幼馴染のようで兄妹のようで…それでいて誰よりも大切で大好きな人。私にとってアサはそう言う人なんだ」


 優しく穏やかな口調の彼女からは、心から敬愛するその感情がひしひしと、アドレーヌにも伝わってきていた。
 そしてそれが伝わって来れば来るほど、彼女の胸は締め付けられていくようで。
 息苦しさのようなものを感じた。
 だからこそ余計に、隣にいるミレットの顔がアドレーヌは見られなかった。
 見てしまうと、更に息が止まりそうで、心が止まってしまいそうな気がしたからだ。

「そっか、そう…なのね」

 そう囁くように一言、彼女は洩らす。
 



「―――けどね、私じゃ駄目なの」

 胸のざわめきにひっそりと顔を顰めているアドレーヌへ、おももろにミレットはそう言った。

「え…?」

 思わず、ようやく彼女はミレットへと視線を向けた。
 するとミレットもまた天井から視線を移し、アドレーヌの方を真っ直ぐに見つめていた。

「私がどんなにアサが大切で一番大好きでもね…アサにとって私は、どんなに大切と思ってくれても、それは幼馴染であり妹みたいだからなの」

 どんなにこの身を心配されても、どんなにきつく抱きしめてくれても。
 自分にそれ以上の愛情はないと、ミレットは何となく理解していた。
 しかし、それでも良い。それでも傍に居て支え続けたいと願い、今まで傍に居続けてきた。

「だからね、私には自分の悩みも夢も心の中も、何も教えてくれないんだ」




2017/10/31(火) 語り手
タイトル 第五幕〜眠る女神は297〜 今日の気分次回更新は11月7日(火)予定です




「…ミレットはジストさんのことを信頼しているのね……それに、アサのことも」
「アサ?」

 突如出てきたアサの名前に対し、彼女はそれまでしていた話を止め、疑問符を浮かべる。
 視線をアドレーヌへと向けたが、アドレーヌは天井を見つめたまま、目を合わそうとはせず。
 しかしながら囁くような、小さな声で答えた。

「兄妹みたいに仲が良くて、久しぶりに再会したときも、信頼し合っているのがとてもよく伝わってきて――」

 と、言いかけて彼女は口を噤む。
 自分は次に何と言おうとしたのか。
 二人に対し、何を感じてしまったのか。
 “その言葉”を口にしてしまうと、何故かいけないような気がして。
 考えてはいけないという警告さえ抱いてしまい、アドレーヌは思わずグッと“その言葉”を呑み込んだ。
 ミレットは、今度は突然口を閉ざしたアドレーヌに困惑しながらも彼女の言いかけていた言葉の意図をくみ取り、答える。

「それは当たり前だよ、ジストは調子良い人だけど意外と兄貴気質の人だし、アサに至っては小さい頃から兄妹みたいに育ったんだから」

 そう言ってミレットは笑みを浮かべる。
 彼女もまた天井を見つめ、ルームランプに照らされているシャンデリアを眺めながら自身の思い出を語り出す。

「アサから聞いてるかもしれないけど、父との確執のせいで小さい頃の私はずっと心を閉ざしててね。何も考えたくなかったし、考えられなかったんだよ」

 精神的な衝撃を受けた余りに心閉ざしてしまったミレットは、療養のためにシマ村へと行き、そこでアサと出会った。
 そして、部屋さえも出ず塞ぎこみ続けていた彼女へ最初に手を差し伸べたのがアサだった。






2017/10/31(火) 語り手
タイトル 第五幕〜眠る女神は296〜







 ベッドへ仰向けに寝転がった二人は、互いに顔を合わせ、それから笑みを浮かべて話す。
 思えばアドレーヌと出会ってから、こうして二人きりでベッドに寝転んで話すのは初めてのような気がした。

「二人きりでって、タイートでもあんまりなかったもんね」
「そうね…着替えを手伝って貰ったり社会について教えて貰ったりした以外は大体ジストさんやアサがいて……ジストさん、無事なのかしら…」

 そう呟くアドレーヌの眉尻が静かに下がっていく。
 心配そうにする彼女へミレットは力強く頷いて――といっても頭を動かしただけだが――答えた。

「大丈夫だよ。ジストさんてああ見えてしっかりしてるところあるし、アマゾナイトではそういった情報入ってないみたいだから」

 これはタルクスに確認して貰ったことなのだが、ジストらしき男性があらぬ容疑を掛けられ捕まったという報はアマゾナイトには入っていなかったとのことだった。
 ただ、国王騎士やイイヌたちだけで彼を捕え、その情報をアマゾナイトに報せていないとなれば彼の行方も解らず仕舞いである。
 彼の安否について知る方法がない以上、こうして彼の無事を祈る事しかミレットたちには出来ない。

「絶対大丈夫。いつもみたいにヘラヘラ笑いながらタイートで待っててくれてるよ」

 だからミレットは、アドレーヌがこれ以上心配しないようにと笑ってみせるしかなかった。

「…そうね。きっと彼の事だもの、パンを焼いて待っているわよね」
「そうそう!またあの焼き立てパン食べたいよねー」

 明るく笑う彼女に釣られるように苦笑を洩らし、アドレーヌは「そうね」と返す。
 それから彼女はミレットから視線を移し、天井を一点に見つめる。
 ミレットがジストの焼いたパンについてあれこれと語り耽っている中。
ふと、アドレーヌはポツリと呟いた。




2017/10/24(火) 語り手
タイトル 第五幕〜眠る女神は295〜 今日の気分次回更新は31日(火)予定です







 夕食を終えた一行は久々の風呂を満喫し、各々宛がわれた部屋で就寝することとなった。
 ミレットは今回も自室で休むことになっており、入浴を終えた彼女は欠伸を噛み殺しながら部屋へと向かう。
 堅い地べたや椅子ではなく、久しぶりにふかふかベッドでの就寝を想像してはミレットの足取りも自然と軽くなる。
 と、そのときだ。
 廊下を歩く彼女の前方に立つ、女性の姿。

「アドレーヌ?どうしたの、そんなところで」

 アドレーヌはミレットの部屋の前に立っており、どうやら彼女を待っていたようだった。

「その…緊張感が抜けないのか、何だか眠れなくて…」

 そう言って苦笑を洩らすアドレーヌ。
 彼女はミレットよりも先に風呂へ入っていたはずなのに、身体は冷たそうで。
 頬の火照りもなくなってしまっている彼女を見つめながら、ミレットは微笑みを浮かべた。

「わかった。眠くなるまでお話ししようよ。何なら一緒に寝ても大丈夫だよ」
「ごめんなさい、迷惑かけて」

 自室の扉を開けながら、ミレットは「迷惑じゃないよ」と笑って返す。
 しかし実際は睡魔もあったわけなのだが、少し話す位なら平気だろうと、そんなことを考えながら彼女は部屋の明かりをつけた。



 ベッドとクローゼット。簡素な装飾品のみの殺風景とも言える部屋。
 これが自分の部屋だと言われているが、幼少の頃の記憶を喪失している彼女にとって、この部屋には過去の思い出も面影も感じられない。
 そもそも自分の部屋という実感さえない。

「ベッドに座って」

 そう言うとミレットは室内の明かりを天井のシャンデリアからルームランプへと変え、アドレーヌにベッドに座るよう促す。
 恐る恐る、ベッドに腰を掛けるアドレーヌ。
 と、座り込んだ彼女の隣へ、思いきり飛び込むようにベッドへ座ったミレット。
 その勢いによってベッドはぐにゃりと凹み、二人はバランスを崩してベッドに倒れた。

「もう、ミレットは…」
「でもこうして話した方が楽しいでしょ?」





2017/10/18(水) 語り手
タイトル 第五幕〜眠る女神は294〜 今日の気分次回更新は24日(火)予定です




「…まあ、そうだな。たまには食後のデザートも食べようか」
「そうこなくっちゃ!」
「はいはい!特製アップルパイをご用意しておりますよー」

 待っていたとばかりに良いタイミングでキッチンから現れたアシュレイは両手一杯のアップルパイを持って満面の笑みを浮かべていた。
 出来るならばもっとアイスクリームのような冷製菓子が良かったと思いつつも、アサは苦笑を洩らしながらフォークと皿を手に持った。

「アシュレイさんのアップルパイなら一人で一皿たべられるんだよね!」
「それは流石に食べ過ぎだろ」

 ミレットもまた、久々のゆったりとしたアサとの食事に満足げな様子で、笑顔をほころばせながらアップルパイへと手を伸ばしていた。
 そんな二人の生き生きとした姿を眺めるタルクスは、おもむろに隣席のアドレーヌにも聞こえるような独り言をする。

「ホント、兄妹かってくらいに随分と楽しそうで…とりあえずアサくんの指名手配も解かれたし、二人共安心したのかな」
「本当、そうですね」

 彼の独り言に思わず答えたアドレーヌは、ひっそりと持っていたフォークを皿へと下す。
 タルクスはそんな彼女の横顔を見つめ、手にしていたワインを口へと含んだ。





2017/10/18(水) 語り手
タイトル 第五幕〜眠る女神は293〜








 タイートで暮らしていたあの頃はというと、アマゾナイト育成学校で授業を盗み見てはつまらない仕事を日雇いでこなし、夜はガーレットの雑用をこなして寝る。
 そんなつまらないと思うような毎日であった。
 と、そう思い出してからアサはおもむろに笑みを解く。

(そういや、あのときってこんなに雑談したり笑ったりして飯食うなんて…殆どしてなかったな)

 それは友人であるジストと一緒に居た時も、ミレットと一緒であったときでもだ。
 何をしてもつまらない―――否、つまらないと思う事すらアサは止めていた。
 自分で夢を諦め、どうしていいのか解らず流されるまま身を任せ、代わりに他の事に頭を悩ませるふりをして、全ての感情を押し殺して。
 その結果としてこんな当たり前の感情も、騒ぐことも嫉妬することも喜ぶことも自信を持つことも忘れていた。
 ただただ単純に感情を表すことが、どういうことかを思い出した。

(二年前までは…アマゾナイトに入ろうって決めてた頃まではそんなこともなかったのにな)

 アサは人知れず苦笑を洩らす。
 散々な目に遭って、不運に遭ってこんな場所に来たと思ったこともあったが、皆には感謝しなくてはならない。
 何もかも考え過ぎないこと。
 もっと自分に自信を持つこと。
 誰かを妬み嫉妬すること。
 誰かを想って心配したり、怒ったりすること。
 そして、こうして料理を美味しいと思うことなど、あの町に居たままでは決して思い出す事はなかったのだろうから。


2017/10/10(火) 語り手
タイトル 第五幕〜眠る女神は292〜 今日の気分次回更新は17日(火)予定です







 その日の夜。
 アサが危惧していた通り、木箱3つ分と思われる量の料理が夕食として振る舞われ、ご馳走になる事となった。
 数々の豪華な料理の数と量は、凄いというよりも恐ろしいと言ってしまいたくなるほど。
 そしてそれをご馳走になる事となったアサたちにとっては、最早食事ではなく戦いと言っても良かった。
 これは二年前以上に、相当頑張らねばならない。
 そう強い決意を抱いていたアサ。
 だが、しかし。
 
「こんなにも食べて頂けて…久しぶりに作りがいもあって感激でした」
「いやいや、アシュレイさんの料理が美味し過ぎなんだって」

 予想外にもアドレーヌとタルクスの二人がその料理の殆どを食べてしまったのだ。
 更に驚くのはタルクス以上にアドレーヌの方が食していたということだ。
 彼女と出会って一月半近く経つわけだが、まさかこんな健啖家だとはミレットも知らなかったことであった。
 終始あんぐりと口を開けたままでいたアサとミレットにようやく気付き、そして察したアドレーヌは顔を赤らめながら微笑を洩らす。
 
「こんなに美味しい料理を食べたの久しぶりだったから」

 だが彼女がそう言うのも無理はない。
 ここ最近――指名手配され逃げる身となってしまってからはアマゾナイトの支給品である缶詰やパンばかり食べていた。
 ここまで丹精込めて作られた手料理はアサとしても久しぶりであった。
 それ故か、彼も珍しくいつも以上の量を食べていた。

「こうしてお腹いっぱい食べた後はガーレットの特製アイスパフェが食べたくなるね?」
「いや、こんな食っておいてよくデザートなんて食べられるよな」
「何言ってるの?甘いものは別腹だよ」
「そういうものか?」

 互いに腹部を押さえなながらそんな会話をし、笑みを浮かべるアサとミレット。
 彼女から聞いた懐かしい単語にアサの脳裏では西方都市タイートの街並みが蘇る。





2017/10/03(火) 語り手
タイトル 第五幕〜眠る女神は291〜 今日の気分次回更新は10日(火)予定です



 強くかぶりを振る彼女の姿に安心し、アサはホッと胸を撫で下ろす。
 手配が解かれたとはいえ、一度罪人として扱われてしまった身。
 知人や周囲がどのように思い、どのような目を向けられることとなるのか。正直アサは不安であったのだ。

「それじゃあ彼女の様子も落ち着いたってところで、俺はタルクス・トロメンター。アマゾナイト軍に所属している者で…こちらがアドレーヌ嬢。ミレット嬢たちの同行者です」
「ご丁寧にありがとうございます。私はアシュレイと申しまして、このルーノ家に長く仕えている者です」

 タルクスの紹介を聞きアシュレイは丁寧に腰を折り、頭を下げる。
 それに釣られるようにアドレーヌも頭を下げ、挨拶を交わした。

「いやぁ突然押しかけてしまって申し訳ないですね。一晩お世話になります」

 と、顔を上げるアシュレイにタルクスは爽やかな笑顔を見せてそう告げる。
 すると彼女は「とんでもない」とまたしても強くかぶりを振ってみせた。

「私の方こそこうしてまたミレット様とお会い出来て嬉しい限りなのです。ですので、今日は腕によりをかけてご馳走を振る舞います!」

 そう言ってグッと拳と共に意気込みを見せるアシュレイ。
 一方で彼女のその言葉を聞いた途端、アサはある記憶が蘇り、思わず腹部を押さえてしまう。
 よくよく視線を彼女の足下に移すとそこには、大きな木箱に一杯入った食材が3箱も置かれていた。
 人一人で持ち上げるにも相当な体力がいるその木箱を、容易く持って来ただろうアシュレイの屈強さに驚きを隠せない反面、それ一杯に詰まった食材が果たして何食分のものなのかという不安に襲われるアサ。
 もしそれが一食分だと言うのなら、後数人くらいは食事に招かなくてならないと思われた。

「今日も胃がやられそうだな…」
「後で庭から薬草持って来て煎じておくよ」
「4人分な」

 と、アサとミレットはそんな話をアシュレイには聞こえない様ひっそりと話し合った。






2017/10/03(火) 語り手
タイトル 第五幕〜眠る女神は290〜







 と、そんなときだった。







「―――ミレット様!」


 突然の声に驚く一同。
 振り返るとそこには大きな瞳に涙を溜めている、懐かしい侍女の姿があった。

「アシュレイさん!」

 と、ミレットが声を上げるより早くアシュレイは彼女の懐へと飛びつき、力の限り抱きしめた。


「く、苦しいって…」

 息苦しさに背中をポンポンと叩くとようやくミレットは熱い抱擁から解放される。
 それでも彼女の興奮は収まり切れておらず、溢れ出ている涙を何度も拭っていた。



「二年ぶりなだけなのにそんなに泣かなくっても」

 そう言って苦笑を浮かべ、ミレットは優しくアシュレイの頭を撫でる。
 二年前はまだミレットの方が小さく見えていたが、今ではすっかりアシュレイを追い越してしまっている。
 そのせいか以前見たときに感じた姉妹のような姿が、今は逆転しているようにアサは思えた。

「ですがアサ様が連続婦女子行方不明事件の容疑者として指名手配されたと聞いて…それでミレット様までも行方不明になったと聞いてしまっては私、居ても立っても居られず本当に心配で心配で…」

 アシュレイの瞳には再び涙が溢れ出し、エプロンで顔を隠しては大声で泣きじゃくり始めてしまう。
 困り顔でいるミレットは助けを求めるべくアサたちへ視線を向けるが、生憎それは彼らも同じであった。
 仕方なくタルクスが咳払いを一つ漏らし、口を開く。

「まあ、今はもう彼の手配も解かれましたし、彼女もこうして帰って来たわけですから安心してください」

 タルクスにそう言われたアシュレイは涙を拭うと「はい」と言って、今度は喜びの笑みを漏らす。

「本当の本当に…お元気な二人とこうしてまた会えてとても安心しました」
「アシュレイさんは…その、俺が容疑者だとは…」
「とんでもない!アサ様がそのようなことをするとは誰も思っておりません!」