桜井 四方猿飛 佐助月影 輝夜真田 幸村other*

たとえば、残夜のしっぽを掴まえて
Chapter12.Spring has just come.

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交換日記レンタル - nikkijam

2017/06/08(木) 01:57:48 真田 幸村
タイトル Chapter12-1031 今日の気分end



「桜の花びらがついてたでござるよ」
「春だもんねー。桜が散る前に皆でお花見したいね!」
「良いでござるな。だが、二人でも…良いかもしれぬな」


幸村が漏らした本音に輝夜は目を丸くして彼を見つめる。
顔を真っ赤にした幸村は何でもないと首を振る。


「本当に変わったよね。幸村がそんなこと言うなんて考えられなかったもん」
「い、嫌でござるか…?」
「ううん。そういう幸村の変化を見られるのって嬉しいな」


その変化に自分が関わっているというのが輝夜には嬉しかった。
二人が照れ笑いを浮かべているとまた携帯が鳴る。


「いい加減行かないとまずいよ!」


駆け足で向かうと、壁に寄りかかって不機嫌そうな表情をした政宗がいた。
慶次は二人におーいと手を振っている。


「遅くなってごめんね」
「Too late.」
「本当にごめん。お詫びってほどでもないんだけど、近々皆でお花見しようよ!」
「おっ、いいねえ」


でしょ?と笑う輝夜を見て幸村は温かい気持ちになった。
高校生活最後の年を彼らと一緒に過ごせることが嬉しい幸村は自然と微笑んでいた。


「何ニヤけてんだよ」
「な、何でもないでござるよ!」
「気味悪ぃな」
「そんなこと言わないの!それより行こう。ランチタイム終わっちゃうよー」


輝夜の声で政宗は前を向いて歩き出す。
いつもの光景にこれからもこの関係は変わらないのだろうなと思いながら幸村も歩き出した。
彼らの賑やかな声が響く廊下には開いた窓から桜の花びらが舞い落ちてきていた。

2017/06/08(木) 01:57:20 真田 幸村
タイトル Chapter12-1030



「あっという間だなぁ」


輝夜がカレンダーを見てぽつりと呟いたのを幸村は聞き漏らさなかった。
カレンダーは既に四月になっている。
二人が付き合うようになって半月以上が経っていた。


「そうでござるな」
「このままだと気づいたら卒業式になってるかもね」
「それは早すぎるような…」


だが、今年は受験が待っている。
お互い内部進学にするのか外部の大学にするかまだ決めていないが、勉強の毎日が待っていることに違いはない。
デートなどもそんなにできるわけではないだろう・
だが、一緒にいられるだけでいいと幸村は思った。
こんな感情もまた初めて知るものだった。


「輝夜殿と出会って某は色々なことを学んだでござるよ。多分これからもそうなんだろうな」
「私も同じだよ。こうして一緒にいられるだけでも何か笑顔になっちゃうっていうか」
「考えが似通っているでござるな」
「似た者同士なのかもね」


ふふっと笑う輝夜を見つめ、幸村は口を開く。
雰囲気が変わり、輝夜も彼に向き合う。
気軽に聞いてはいけないような気がしたからだ。


「輝夜殿を幸せにするから、だからこれからもよろしくでござる」
「何かプロポーズみたい」


輝夜は頬を染めて照れくささをごまかすように笑って言うと幸村も顔を真っ赤にして慌てふためく。


「そ、それは…やはり、付き合うからには、その、将来的には考えてるでござるよ」


純粋な幸村らしい言葉に輝夜はありがとうと言い、彼の手に触れる。


「私も幸せにするから、よろしくね」


幸村ははにかみながら頷いた。
いい雰囲気になり、幸村はドギマギしていると携帯が鳴る。


「あ、政宗たちからだ。どこにいるんだだって。行こうか」
「ああ」


もしここで携帯が鳴らなかったら自分はどうしていたのだろうと思いながら一人想像して更に顔を赤くしていた。
廊下を歩いているとふわりと風に舞った桜の花びらが輝夜の艶のある黒髪についた。
それを手に取ると輝夜がどうしたのと聞いてくる。

2017/05/23(火) 23:53:22 真田 幸村
タイトル Chapter12-1029



「真田、いいか。俺は諦めちゃいねえからな。俺は好きな女に男がいても気にしねえからな」
「そこは気にしてくださいよ」
「うるせえ!付き合ってるからって油断すんじゃねえぞ」


幸村に向かってそう言うと元親は大股で去って行った。


「佐助、すまぬ」
「何言ってんの。そんなこと気にしなくていいって。それよりお腹減ってない?」


佐助の言葉に感謝し、お腹が空いていたことを思い出す。
昼食をとるために食堂に向かっていた途中で元親が現れ、壁ドンされてしまった。
卒業したとはいえ、宣戦布告されたということはこれからも顔を出すのだろう。
そんな彼の気持ちを察したらしく、佐助は幸村の背中を軽く叩く。


「旦那は堂々と構えてればいいんだよ。それでも不安になるなら自分を磨いてみるってのはどう?」
「自分磨きか…。確かにそうかもしれぬ。ありがとう、佐助。いつも助けられてるな」
「だからそんなこと気にしなくていいんだって」


バシッと叩かれ、幸村は笑いながら良い友を持ったなと改めて感じたのだった。

2017/05/23(火) 23:52:39 真田 幸村
タイトル Chapter12-1028



幸村はピンチを迎えていた。
この状況から脱出するにはどうしたらいいのか必死に頭を巡らせるものの、目の前の迫力が凄まじく、良案は浮かばない。
思いつくのは余程肝が据わった者だろう。


「何でテメェが輝夜と付き合ってんだよ!どういうつもりだ?」
「ど、どういうつもりと言われても…」
「あ?小さくて聞こえねーよ!」


幸村はビクっと体を震わせる。
まさか人生初の壁ドンを目の前の鬼、もとい元親にされるとは。
しかも自分がする側ではなく、される側というのが更に悲しく情けない気分にさせる。


「そ、某は、輝夜殿を本気で、す、好きであります…!」


おかしな口調になってしまったことに恥ずかしくなるが、元親は気づいていないようだ。
だが安堵していられる状況ではない。
目の前の元親の目が怖いのだ。


「そんなこと聞いてんじゃねえよ。あ?テメェ、自慢してんのか?」
「そ、そんなつもりはないでござる!」


元親の眉間の皺が更に深くなった時だった、「そこまでにしといてよ」と声がし、元親の顔越しに佐助が見えた。
ようやく壁ドンから解放された幸村はほっと息を吐く。


「チッ、邪魔すんじゃねえよ」
「うちの旦那をあんまりいじめないでくださいよ」
「いじめてなんかいねえよ。問い詰めただけだ」


元親のイライラはおさまらない。
輝夜のことが好きだという意思表示も見せずに、気づけば付き合っているなどというのが余計に気に入らない。

2017/05/16(火) 22:16:05 桜井 四方
タイトル Chapter12-1027



今度訊いてみようと思ったけれど、佐助は少し考えてその思い付きを手放した。
別に知らなくてもいい。
多分そこに大した意味なんてない。
そう思ったからだ。
思うに自分たちの縁が寄り合わさって道を拓くきっかけになったのは子の場所だけれど、自分はこのとき彼女のなかで運命たりえていたとは思わない。
そういう場合の四方の考えなんてただの気まぐれであって、自分が期待するようなものではないことを佐助はもう充分すぎるくらい理解していた。

「お疲れ様、っと。相変わらず仲いいんだから、この幼馴染は」

せっせとメッセージへの返信をする。
どんなふう? と大学の様子を問う質問を一つ添えたのち、佐助は顔を上げた。
窓外へ向けた目が捉えるのはほとんど散ってしまった桜の木だった。
青々とした葉が鈍い日差しを受けている。
あのあと辛うじて花見といえる体裁のものはしたけれど、その頃にはもう桜は散りかけていたのだった。
また来年、と四方が笑った顔がぼんやりと頭の中で浮かんでくる。
また、なんて言える関係になったんだよと誰に言うでもなく、佐助はしんと沈んだように静かな空間に吐き出す。
満足げに声は響く、穏やかにのびやかに。

2017/05/16(火) 22:15:42 猿飛 佐助
タイトル Chapter12-1026



携帯電話が短く震えた。
一人きりの空き教室は紙が擦れる音ですらはっきりと感じとれるくらいに静かだったから、そのバイブレーションはうるさいくらいだった。

入学式終わったよ。
そんな一言だけのメッセージに添えられていた写真には大してめでたくもないような顔で四方たち幼馴染が三人で写っていた。
かつてはこの空き教室の主然としてことあるごとにサボタージュしていた彼女はもういない。
もうここに来ることもない。

「もっと楽しそうな顔すればいいのに」

吐き出した笑声は少しの間冴えた空間を揺らしたが、すぐに溜息のようになって落ちていく。
四方が卒業したからといって縁が切れたわけではないけれど、単純に寂しいと思ったし、結局大学まで同じところに通うことになった幼馴染同士の関係には正直妬けた。
それを彼らに告げたのならばどの口がと言われるのだろうが、恋人という立ち位置を確保していようが何だろうが寂しいものは寂しい。
それが佐助の包み隠しのない気持ちだった。

たとえば運命なんてものがあるとして。
それが生まれた、あるいは引き寄せたのはこの場所だと思う。
あの日予習をやっていなかったこと、その教科が数学だったこと、数学の担当が浅井だったこと。
偶然に偶然が重なって――いや、それを全てひっくるめて運命という冠をかぶせるのだろうなと佐助は思った。

「そういえば何であのとき水くれたんだっけ」

あのときも訊くことはできなかった疑問。
あのときは教えてもらうのに精いっぱいだったし、そのあとは何かと話題に尽きなかった。
そのせいで知ることができないまま来てしまった問い。

2017/05/09(火) 23:57:46 other
タイトル Chapter12-1025 今日の気分織田信長



「見学ですか?」


振り返ると飲み物を持った輝夜が目を丸くしながら立っていた。
そんな彼女に無言でホワイトデーのお返しを渡すと更に目が丸くなる。


「え、これどうしたんですか?」
「お返しだ。何も返さないわけにもいかんからな」
「ありがとうございます!わざわざ届けに来てくれたんですか?」
「余がそんなに暇だと思っているのか?」


いえ、と首を大きく振り、輝夜はもう一度お礼を言うと、信長は柄にもなく温かい気持ちになった。
こんな小娘にと思いながらも彼は嫌な気持ちはしなかった。
信長は鼻を鳴らすと立ち去り、輝夜はしばらく彼の背中を見つめた。
まさかお返しがもらえるとは思っていなかった輝夜は慌ててロッカーにしまいに行った。

理事長室に戻った信長はいつもよりも雰囲気が柔らかくなっており、濃姫は不思議に思いながらコップを引き下げた。

2017/05/09(火) 23:57:12 other
タイトル Chapter12-1024 今日の気分織田信長



毎年この時期になると立派なデスクの上にはいつも以上にたくさんの書類が積まれている。
それを見た信長は溜息をつくこともなく、淡々と仕事をこなしていく。
その時であった。
ドアをノックする音がし、特に返事をすることもなく書類に印鑑を押す。
失礼しますと言って入ってきたのは濃姫だった。


「職員へのホワイトデーのお返しを渡してきました」
「うむ」
「それとお疲れかと思って」


そう言うと飲み物とお菓子をデスクの上に置く。
それを一瞥すると視線をまた書類に戻す。
濃姫は何かを言いたそうではあったが、信長が何も言わないため、静かに出ていく。
信長は飲み物に手をつけ、鍵のかかった引き出しを開ける。
そこにはシンプルな包装紙の箱があった。


「余がこんなものを買うとは…」


自分でホワイトデーのプレゼントを買うことなど今までなかった。
職員へのお返しは全て濃姫に任せていたが、輝夜の分だけは自分で買った。
別に後ろめたさがあったわけではないが、濃姫に買ってきてもらおうとは思わなかった。
だが、一生徒である彼女と遭遇することはそうそうない。
そのため、引き出しの中で眠っている。
信長は鞄の中にそれを入れると立ち上がり、理事長室を出る。


「信長様、どこかへ行かれるのですか?」
「息抜きだ」
「気をつけてくださいね」


ああと言うと信長は歩き出す。
彼女がマネージャーを務めているバレー部は今日は練習があると体育館の使用表に書いていた。
迷うことなく体育館に向かうと生徒たちが一生懸命練習をしていた。
輝夜の姿を捜すが見つからない。
休んでいるのかと思っていると、背後で声がした。

2017/05/02(火) 21:36:50 other
タイトル Chapter12-1023 今日の気分毛利元就



「僕と四方、二人だけのものじゃないからね。そういうのを彼女は嫌うし、僕も好きではない。まあそのうち僕らの関係が薄まった頃、そういう博打に出ないとは言いきれないけれど」
「はっ、博打と言うか。そう言える程度ならば大した関係性ではないのではないか?」
「元就くん、まさか僕の背中を押してくれているのかい?珍しいこともあるものだ」
「敵を減らすための策よ」

半兵衛の味方になる理由はない。
利害の一致もない。
だから言葉の通りである。
だが半兵衛はやはり満足げに笑っているのだ。
元就にはそれがわからない。

「何を言っても結局僕らは敗者だ。君を相手に無聊を慰めても何にもならないね」

今はただあの唯一の勝者を讃え、恨み節を並べておこうかな。
そうとだけ言って半兵衛は右手でカップを手に取った。
ゆっくりと中身を口に含みながらまた物語の中へと戻って行く。
讃えもしなければ、恨みもしない、自分勝手でマイペースな折り合いの付け方に最初から巻き込まれただけだと元就は今になって気が付く。

雨の音がしている。
屋根を打つ音は春を連れてくる。
それが今だけは少し疎ましく、そしてどこか待ち遠しくもあった。
いくつかの春を越えた先、勝者と敗者が逆転している可能性を夢見る。

2017/05/02(火) 21:36:27 other
タイトル Chapter12-1022 今日の気分毛利元就



「思うに僕らは最後まであれの手のひらの上で踊らされていたんだね」

苦笑いを添えて吐き出される半兵衛の言葉に元就は無言で視線を逸らした。
そういう笑い方をする割には目の前の男は満足げにすら映る。
おそらく、彼なりにその関係に満足していたのだろうと元就は思う。


雨から逃れるようにして入った喫茶店で半兵衛と行き合った。
座るかい、と向かいの席を示されて、特に断る理由も見つけられず誘いに乗ったうえでの相席だった。
彼の方から声を掛けたにもかかわらず、積極的に何をするでもなく読書に勤しんでいる。
どれもこれもマイペースで、その独自のペースに口を挟むことなく育まれた幼馴染という関係性の在り方が手に取るようにわかってしまった。

不意に思い出したように彼が口にしたのが最前の言葉だ。
どこまでも己のペースを崩さない。
そして相手にもそれを強要しない。
応えたければ応えればいいし、そうでないならそれでよい。というようなふうに。

「僕ら、とは?」
「僕と君と……それから家康くんもかなあ。四方に振り回されて終わった学生生活だったと思うよ」
「ただ振り回されるだけでは終わらぬ」
「おや?ああ、そうか君はそういう方を選んだのか」

紫紺の眸が驚きに揺れて、そうしてゆっくりと笑みを結ぶ。

「最後に一矢報いたわけだね。結果は――聞かないでおこうか」
「要らぬ気を遣うな。貴様はこのまま無為に時間だけを浪費して何も成さぬのか」

それで貴様は良いのか。
そう突きつけてやった言葉の刃をそうっと笑顔でいなされる。
君にはわからないよと言いたげに余裕ありげで寂しい心に彩られたみたいな貌を半兵衛はする。

「僕らの関係は恐ろしいほどに完成されすぎていた。それを壊すのはちょっとやそっとの勇気じゃ足りない。自分の人生そのものを否定するような、そんな投げやりさが必要だね」
「投げやりさ、か。どうなってもいいとは貴様は思えまいな」