桜井 四方猿飛 佐助月影 輝夜真田 幸村other*

たとえば、残夜のしっぽを掴まえて
Chapter12.Spring has just come.

次は 月影 輝夜


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交換日記レンタル - nikkijam

2017/04/18(火) 20:35:27 猿飛 佐助
タイトル Chapter12-1020



「いらっしゃ――ああ、佐助。おはよう」

よくこっちにいるってわかったね。先に向こうに顔を出した?
帳場に座った四方が本から顔を上げて、口元だけで笑う。

「ううん、なんとなく。こういう雨の日、ここにいるの好きでしょ」
「うーん?別にそんなこともない気がするけど」
「好きだよ。俺は知ってるんだから」

棚と棚の隙間に挿し込んであった折りたたみの椅子を引っ張ってきて座る。

「何でふてくされた顔してるの?」
「俺も人の子だったなって思っただけ。四方さん、俺だいぶ今日のこと楽しみにしてたみたい」

座ったはいいがすぐに立ち上がった。
というのもじいっと注がれる四方の視線に耐えかねて、茶を淹れることにしたからだ。

「みたい、って何?」
「旦那にそう言われてさ、もうすっげー恥ずかしかったしびっくりしたよ」
「はは、かわいいところあるじゃない」
「ね。俺も自分で思ってた以上にかわいい神経してて驚いてんの」
「慰めてあげようか」
「高くつくならやめとく」
「格安だよ。お客さん来るまでだからね」

四方が腕を広げる。
普段はこんなふうに甘やかしてくれないことを佐助はよくよく知っている。身に染みている。
それだというのに四方は本を閉じて、佐助を受け止める。
それほどまでに情けない顔をしていたかと自分の情けない精神に嫌気がさすけれども、背中をさする手がその毛羽立った気持ちを撫でつけていくみたいでしばらく立ち上がれそうにないなと思った。

2017/04/18(火) 20:34:57 猿飛 佐助
タイトル Chapter12-1019



一雨毎に暖かさを取り戻していくのが春である。
そんなことは十数年生きていれば佐助だって知識として持ち合わせているものだが、そういうのと納得するというのは別物なのだろう。
花見にでも行こうと珍しく四方が外出に前向きなことを言うものだから、早速予定をとりつけたのだが蓋を開ければこれだ。
昨晩から降り続く雨は夜が明けても止む気配もなくだらだらと地面を濡らしていた。

「花見に行く予定だったのだろう?」

残念であったなと曇った窓外を一瞥して、佐助を憐れむような眼差しを向けた。

「まあツイてなかったってことで。まだ散らないでしょ。旦那までそんな深刻そうな顔しなくていいの」
「だが……佐助が楽しみにしていたのを知っているだけにな」
「ちょっと待って、俺そんなにはしゃいで見えた?」
「見えたが。輝夜殿も『佐助最近機嫌いいね』と申していたくらいだ」
「嘘……俺様そんなにバカみたいにわかりやすい行動とってなくない!?」
「まあよいのではないか。佐助はもう少し羽根を伸ばす方がいいと某は思っていたからな。花見はできずとも行くのだろう?気を付けて行ってくるのだぞ」

四方にもよろしく伝えてくれと言う幸村に見送られて佐助は、なんとも言えない気持ちで部屋を出た。
弁解したくて仕方ないが、鈍いと思っていた幸村にまで見破られている以上弁解なんてしたところで恥の上塗りをするだけだろう。
そう思えばさっさとこの空間を抜け出してしまう方が賢い気がした。


花独楽堂はいつも通りに営業している。
少しだけ迷って母屋の方ではなく店の暖簾をくぐった。

2017/04/11(火) 23:59:03 真田 幸村
タイトル Chapter12-1018



春休みになり、たまに時間を見つけては輝夜は幸村を誘い、ショッピングなどをした。
輝夜はいつも通りだが、幸村が常に顔を真っ赤にし、もじもじしながら一歩後ろを歩いている。


「別に手を繋ぐわけじゃないんだからそんなに顔真っ赤にしなくてもいいと思うんだけど」
「そ、それはわかっているが…」


苦笑しながら言う輝夜に幸村は真っ赤のまま答える。
本人としても何とかしたいと思っているものの、自然と紅潮してしまうのだから仕方がない。
どうにもならないのだ。


「すまぬ。某も何とかしようとは思っているのだが…」
「一緒に過ごす時間をもっと作れば慣れるのかなぁ」
「そ、そうかもしれぬな」


デート、その単語を口にするだけでも顔を真っ赤にしてしまう幸村は、今の会話でも真っ赤になってしまう。


「学校が始まったら部活もあるし、こうして出かけられること少なくなるから、今のうちにあちこち行こうね!」
「そ、そうでござるな」


そう答える幸村は情けない気持ちにもなった。
付き合ってからというもの、デートの誘いはいつも輝夜からで彼からしたことない。
男たるもの彼女を引っ張っていかねばと決意を固めるものの寸でのところで言葉が詰まり、出てこない。
先程からも会話が必ずといっていいほどどもってしまい、情けないと思われているかもしれないと不安になった。


「輝夜殿、すまぬ」
「いきなりどうしたの?」
「もっと輝夜殿を引っ張っていかねばならぬのに…」
「そんなこと気にしなくていいよ。男だからとか気にする必要ってないんじゃない?」


やっぱり彼女は自分よりも一歩も二歩も先を行っているのだなと感心するが、すぐに頭を振る。
もっとしっかりせねばと自分自身を鼓舞する。


「私たちは私たちのペースがあるし、ゆっくりでもいいよ。それに女慣れしてる幸村とか想像したら嫌だもん」
「輝夜殿…かたじけない」
「そんな堅苦しくなくていいから。あ、あそこのアイスおいしそうだよ!」


輝夜は自然と幸村の手を取り、近くにあるお店に向かって歩き出した。

2017/04/04(火) 21:27:35 桜井 四方
タイトル Chapter12-1017



冬が終わって春が季節を飲み込もうとしている、そんな午後のぼんやりと暖かい空気のなか四方は佐助と隣り合って兄の家までの道を辿っていた。
泊まってけばと視線を横へと流せば、そのつもりでもう届け出したと返ってくる周到さに笑いがこみ上げた。
違和感なく溶け込んでいる。
付き合いの長さがその深さをつくるのではないのだと佐助は体現しているようだった。

「準備片付いたの?」
「まあ八割方ね。あとはまた明日から入学式までには終わらせるよ」

そんなに残ってるわけ?と四方が佐助の目を覗き込む。
続けて「さっさと終わらせるか、他の人にも手伝い頼みなよ」と言い聞かせるみたいにして語気を強めた。

「珍しいね、いつもなら損なことしてるねで済ますのに」
「春休みは何もしません宣言?」
「ああ、そういう。なら押し付けてでも時間作んなきゃね」
「やっぱ程々でいいよ。そんなに頻繁に会ったら飽きるでしょ」

言ってから、それもないなと四方は思った。
これまで学校生活で飽きるくらいに顔を合わせて来ているのだから、今更飽きるも何もない。
照れ隠しが過ぎたか。
そんなふうに思いながら空を仰ぎ見る。

「花見にでも行こうか」
「どこへなりともお共しますよ」
「ん、心強い」

差し出した右手を佐助は笑顔でとる。
気楽な会話にこれでも幾らかの勇気を搾って混ぜていることをこの少年は知っているのだろうか。
いや、知っているのだろうな。四方は溜息を吐き出すみたいにして笑う。

知っているからこそ彼は自分が漏らすささやかな愛情の一片を笑い飛ばすようなことをしない。
しっかりと抱きとめるようにして受け止める。
それがあなたの本当なのならばそれでいいとばかりに。

「ああ、春だねえ」

ぬくとい。
漏らした声が何を指しているのかを佐助は知らなくていい。
四方の考えはそうだけれど、敏い男にはもうバレているのだとも思う。
自分より頑丈そうな指に指を絡めて四方は春の空気をいっぱいに吸い込む。

2017/03/28(火) 23:59:29 月影 輝夜
タイトル Chapter12-1016



輝夜は幸村と付き合うようになったものの、今までとの違いはほとんど感じていなかった。
あまりにも同じなため、告白されたことが夢だったんじゃないかと思うこともあった。
皆と過ごす時間は彼女にとっても大切な時間であるため、それを削ってまで幸村と過ごしたいというわけではないが、付き合うって何だろうという疑問は少なからずあった。


「また悩んでいるのか」


呆れを含んだ問いかけをしたのはかすがだった。


「付き合うってよくわかんない。難しいね」
「真田は奥手なんだから輝夜から誘えばいいだろう」
「それはそうだけど、皆と一緒にいたいっていうのもあるから困るんだよね」


皆どうしてるんだろうと首を傾げる。
かすがはそんな彼女を見て苦笑した後、溜息をつく。


「まあ、付き合っているのは事実なんだから焦らずにいけばいいんじゃないか?人それぞれのペースがあるんだから」


かすがの言葉に輝夜ははっとなる。
そんな当たり前のことに気づかなかったのだ。
輝夜にとって初めてのことばかりで、そこに気が回らなかった。
突然立ち上がると、かすがにお礼を言う。


「な、何だ、いきなり…」
「かすがってやっぱり優しいよね。ありがとう。これですっきりしたよ!」
「よくわからんが、輝夜が納得したならそれでいいんじゃないか?」


うんと大きく頷くと輝夜は部屋を出て、幸村に会いに行った。
寮から出て歩いていると学校の方から幸村が一人で歩いてきて声をかけると驚く。


「輝夜殿、いかがした?」
「幸村に会いたくなって」
「な、なななんて破廉恥なことを…!」
「え、どこが?」


顔を真っ赤にする幸村に輝夜は首を傾げる。
何か変なことを言ってしまったのだろうかと考えるものの何も思い浮かばない。
だが、こういったことは今までにもよくあったことであるため、深く気にしない。


「でもさ、幸村も少しずつ破廉恥発言減っていくのもそれはそれで寂しいかもね」
「な、何を言って…!」
「ま、だいぶ先になるだろうけど」


ふっと笑う輝夜を幸村はいつからこんなに大人びた表情を見せるようになったのかと更に顔を赤く染めるのだった。

2017/03/21(火) 19:48:19 other
タイトル Chapter12-1015 今日の気分毛利元就



「好いた人間のことならば目で追うであろう」
「今更そんなことを言われると思わなかったよ。開けちゃいけない箱を開けちゃった気分。でもこれは自業自得なのか」

暴こうとしたのはわたしだねと元通りに包みを閉じながら四方が言う。
今度は四方の方が息を吐く番だった。

「自分の真意なんて知らなくていいって言っといて急に爆弾落としてくのはどうかと思うけどね」
「気が変わった、それだけだ。それこそ貴様が知らずともよい」
「そうだね、もう無理に知ろうとするのはやめとく。元就、わたしは君につらい思いをさせていたかな?」
「ずいぶん傲慢なことを言うではないか。不憫に思われる理由などどこにもないわ」
「そういうつもりはないんだけど。何を言っても独りよがりなのは変わらないんだけど、ありがとうってそれだけは言っとく。それ以外は言わないようにしとく」

ありがとう。そうやって四方は何度も元就に伝えた。
重ねた言葉が何に対してなのか、今何を思い返して彼女は言葉を紡いでいるのか。
それを元就が知る術はないけれど、言葉の数だけ四方の中に自分との思い出があるというのは悪くないと真実そう思える。

2017/03/21(火) 19:47:47 other
タイトル Chapter12-1014 今日の気分毛利元就



「ねえ、開けてもいいよね?」

いいでしょうと目を覗きこまれる。
拒否をしてもきっと四方は聞かないだろうし、そもそも既に所有権は相手の方にある。
だから元就は好きしろと言い放つ。
それが何でもないことのように、わざわざ気に留めるほどのことでもないのだと自分に言い聞かせるみたいに。

「元就ってさ、何だかんだで相手のことちゃんと見てるよね」
「どういう意味だ」
「言葉のまんまだよ。裏もないし、嫌味でもない」

包みの中からボディークリームと入浴剤を取り出す四方。
食品は敢えて避けた。
見かけによらずに大食漢な彼女だから菓子が一番収まりどころがいいとは思ったが、家族と分け合って食べられるのは正直面白くなかったからだ。

「こういうのってローズの香りを選ぶのが多いと思うんだよね。実際わたしもよくもらうし」
「貴様、好かんと前に言っていたではないか」
「違うよ、同じローズでも好みがあるって言ったの。でもこのメーカーは確かに苦手な方だったかも」
「だから何が言いたい」
「いや、わたしがここのハンドクリームを愛用してたの知ってたんだなって思ったの。だって同じ香りなんだもん。だからよく見てるなって」

偶然だ、と誤魔化しておくことは難しいことではない。
むしろ簡単すぎるくらいで。
ただその分自分の願望からは大きく懸け離れていく、罠のような選択肢だった。
短く息を吐き出した。
その吐息が自嘲のような、呆れのようなトーンでもって耳の奥に響く。

「まあ見るであろうな」
「お? そんなに興味をひくような要素あった?」

四方が自力でその解に辿り着くことはないのだろう。

2017/03/14(火) 23:57:20 月影 輝夜
タイトル Chapter12-1013



「そ、それは……お付き合いをしたいという意味でござる」


顔を真っ赤にしながら告げた言葉に輝夜も自然と顔が赤くなる。
そんな彼を見つめながら、今まで挙動不審だったのもこういうことだったのかなと今考えなくていいことを考える。
輝夜自身は彼に対してどんな感情なのか自分でもよくわかっていない。
だが、幸村からの告白を嬉しいと感じたのは事実で、それが答えのような気がした。


「えっとね、正直に言うと嬉しい。ただ、今まで恋愛ってしたことないから好きっていう感情が、その、よくわからなくて…。でもね、幸村は他の男子とは違うっていうのは最近感じてたんだ」
「うむ…」
「ごめん。何かよくわからなくなってきちゃった」
「いや、輝夜殿らしいと思ったでござる。某もこれが初恋だから色々わからぬことだらけであるし…」


幸村がフォローしてくれようとしている姿を見て、輝夜はキュンとした。
他の人たちとは違う。
それだけでもいいんじゃないかと思った。
理屈なんてきっといらないのだと。


「私もわからないことだらけだけど、よろしくお願いします」
「そ、それは…OKということでござるか…?」


うんと答える輝夜の顔は更に真っ赤になり、幸村は幸せな気持ちになり、涙が溢れてくる。
それを見た彼女は戸惑い慌てる。


「え、ちょっと、何で泣いてるの?大丈夫?」
「だ、大丈夫でござる。これは嬉し涙だから…」
「も、もう、そんなことで泣かないでよ!これからは男として引っ張っていってもらわないと」


彼女の言葉にはっとなるものの、涙はまだおさまらず、涙をこぼしながら頑張ると一言告げた。
そんな彼をぎゅっと抱きしめると幸村からひゃあという情けない悲鳴が上がり、輝夜は笑う。
やっぱり幸村は幸村だ。
それに安堵し、輝夜はもう一度抱きしめる。


「か、輝夜殿…!た、確かに恋仲にはなったが、だからといって、ほ、抱擁は破廉恥であるぞ!」


顔を真っ赤にしながら言う幸村を見て、色々と時間がかかりそうだなぁと思った輝夜であった。

2017/03/07(火) 22:00:48 桜井 四方
タイトル Chapter12-1012



「そう、じゃあ別に聞きたがらない」

それでよいと元就は静かに笑った。
こんなふうに和やかな笑い方をする元就を前にするのは初めてな気がした。
四方もつられて目元を和ませる。

「そんな柔らかい表情できるんだね。もっとそういう元就を見たかったよ」
「何を今生の別れのようなことを言っている」
「仰る通り。感傷的になる必要はないのか」

学校は違えど連絡ツールや交通網の発達した昨今は数字で表された距離と現実はイコールではないのだろう。
話したければすぐに話せて、会いたければすぐに会える。

「でもまあ別れは別れだし。元就、握手をしよう。元就はわたしの唯一の共犯者だったよ」
「何だそれは。何一つとして嬉しくない言葉だな」

でも笑ってるじゃない。そう言って四方は差し出された右手をとった。
細くて骨ばった指。
そういえば去年の今頃はこの手を繋いで学校から寮までの道を一緒に帰っていたのだなあと思うと感慨深い。
わたしだけの共犯者、そんな友人を持つのも悪くはないなと微笑がこぼれた。

2017/03/07(火) 22:00:31 桜井 四方
タイトル Chapter12-1011



おい、と不遜な物言いが降って来る。
呼ばれた通りに声がした方へ顔を向けると階段を降りてくる元就がいる。

「あら、どこにもいないと思ってたら」

元就の方から来たか、と四方は口角を上げた。
もしかして探していたかと問えば元就は不機嫌そうな双眸をさらに細くして睨むように四方を見る。
ああ、機嫌を損ねてしまったと。大して気にも留めていないのだが、四方はその反応に彼の心情を忖度してみる。
思うに不機嫌なのは自分が見つからなくて歩き回った挙句、それを自分が気に病んでいないせいだろう。
元就が自分を探していたのは最前の家康同様にホワイトデーの慣例のためだろうから。

「礼儀であるからな」

ほとんど押し付けられるような状況で渡された包みを四方は両手でしっかり受け取った。
何を思ったか幼馴染み二人は、先に行くと四方に告げて足早に廊下を過ぎ去っていく。
静かな廊下に二人きりにされるのは思ってもいなかった展開だった。

「ありがと。元就、ありがとね」
「二度も言わずとも聞こえている」
「最初のはお返しの方に対して。最後のは学校生活に対して」
「後者に関してはお互い様であろう」
「やだ、元就がわたしに感謝の念を抱いてたなんて。槍でも降りそう」
「貴様はそうであろうな。我の真意など知る由もないし、知らなくてよいことだ」

半兵衛みたいなことを言うなと四方は率直に思った。
勿体ぶった思わせぶりな発言。
その意図するところは何となくわかっていたけれど、自分はそれに応えるつもりもないし、相手が伝えまいとしている感情を引き摺り出すほどの性根は曲がっていないつもりだ。