魔女カナデハルカキイチタツマルチアother

最後の魔女の物語ボシュウ中
-第六章『遥かに奏でる二人の楽園』-

次は カナデ


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2015/09/23(水) タツマ
タイトル 遥かに奏でる二人の楽園 第79話


魔女は俺の確かな決意を聞いた後に、ゆっくりとこちらに顔を向けて微笑むと、目線を前に戻す。

「そう…それが貴方の役目。そして…私の世界に侵蝕してきたアレを屠るのが私達の役目…」

鉄錆に満たされた世界で、魔女が対峙する元凶にまずは一声。

「細かい事は言わないわ。さっさと消えるか世界を元に戻しなさい。そうすれば…消滅という言葉だけで、貴方を許してあげる」

青年にまとわりつく異形のソレは、また一度。青年のまとわりつくその体をくねらせた。

「うる…さい…」

青年は、頭を抱えた後に、手を前へと振り払う。

「僕のためにハルカが、僕の大事な人が治してくれた世界を元になんて戻させない!この浄化された世界で僕と彼女は生きていく!汚れた世界を浄化したこの楽園でね!!貴様達こそ出ていけ…僕とハルカの楽園から…出て行け!!」

青年の血相を変えた必死の形相が、その言葉が本気であることを裏付ける。

「ハルカ?」

そんな人。どこにいるのとキイチはあたりを見渡す。

「キイチ。ハルカという子が何処にいるかなんて事は今は関係ないわ。確かな事は、私の理想郷を、坊やは元に戻すという意志が全くないという事実だけ…分かったかしら。戦争よ」

開口一番。魔女が相手の答えを聞いた瞬間だった。そのか細い足を一度前に突き出し、地面を踏む。
すると踏みつけた地面が大きく隆起する。魔女がもう一歩前に足を踏み出すと、今度は地面が隆起と沈降を繰り返した。

「貴方が貴方の楽園を勝ち取るのが先か。私が侵蝕された理想郷を奪い返すのが先か…はたまた、タツマが貴方の世界にたどり着くのが先か…勝負といこうじゃないか」

2015/09/23(水) タツマ
タイトル 遥かに奏でる二人の楽園 第78話


青年にまとわりつくソレが何に似ているかといわれると、ウミウシのようでウミウシではなく、
スライムといえばスライムだが、まるで意志を持つかのように青年を囲んでいる。
見ようによっては、それはこちらが赤くなりそうな愛し合う異性達のようにも見える。

こんなとき、自分の表現力の乏しさは何事にも変え難い欠点なのだと自覚する。
『綺麗』という言葉以外にこの光景を言い表す事が出来るのならば、もっと違う感想が出るはずなのに…

「人はとても歪なのよ…『人が死ぬ』という結果は同じであっても、『人が死ぬ』という結果になる過程が違うだけで、人はまったく違う感情で心を満たす」

だから、貴方のその考えはとても貴方らしい答えだと思うわ。と魔女は笑う。
俺は夕闇に立っている。光の世界から闇の世界へと変わるそのわずかな瞬間の境界線の上に、俺は立っている。
片足を一歩退けば、別の世界に、片足を一歩進めれば、また別の世界に…俺はずっと、そんな場所に立っている。

自然と、脚の震えは止まっていた。

「さっきも考えてたんです。こんな世界と言うのはあくまで俺の思いであって、もしかしたら…もしかしたら、こんな地獄としか思えないような世界だからこそ、『楽園』だと感じる人もいるんじゃないかって…」
「えぇ…ゼロじゃないわ。むしろいない方が世界としておかしいもの」

全ての物事に全ての人がまったく同じ答えをするなんて世界の方がよっぽど禍々しいと魔女は笑う。

「だったら、俺はあの人と同じ世界を見なけりゃあならない」
「えぇ…そうね」
「あの人と、同じモノを同じ目線で、同じ思いで見てあげれなきゃ…俺はあの人を救えない」
「そうね…」
「…だから」

俺は自分の手を見つめる。

「だから、超えて見せますよ。俺達の見ている地獄と、あの人が見ている楽園の…境界を…」


2015/09/23(水) タツマ
タイトル 遥かに奏でる二人の楽園 第77話


俺は一度だけ。生唾をゴクリと飲み込んだ。
目の前に広がる光景が目に映りこんだ瞬間に、まず俺が一番にやるべき行為がソレだった。

俺達の目線の先には青年が一人。立っていた。
次に俺がやる事は、いつもと同じだ。脚が震えるのが分かる。
ここから逃げ出したくなる気持ちを抑えこむために、懸命に手で押さえて震えを止める。

「安心なさいタツマ。…あれは紛れも無く、世界を侵蝕している。元凶よ」

こんな時、小さな体の魔女の後姿ほど頼りになるモノは無い事を再確認させてくれる。
その言葉ひとつだけで、俺は目の前に広がる光景を幾分冷静に見ることが出来た。

「変な事を言います…何ていうか…そう。いままでとてもおぞましく感じていたこの光景が…何ていうか、禍々しいと思う傍ら…とても、綺麗だって…感じたんです」

俺は目の前に広がるその光景を見た感想を、そのまま呟いた。
そう、俺は恐怖をしていたわけじゃなかった。あまりにも現実離れしてる光景のはずなのに、
おぞましい光景のはずなのに、俺はその光景に、魅入られていた。先ほどの生唾は…恐怖で声に出せなかったわけではなく、
あまりの美しい光景に、目を奪われていたからだ。

赤と紫に彩られ、まるで世界が終焉を迎えたように腐敗した世界…
のように見える光景にそんな言葉を使う事が妥当かどうかは分からない。

ただ俺の脳は目の前に広がるその光景を見てどのような言葉が一番適しているかを判断し、その解を得た。
その解を言葉として表すと、『綺麗』という言葉が一番妥当だと判断した。それだけだ。

青年は一人だった。しかし、決して孤独ではなかった。そんなように感じた。
青年の隣で"蠢く"その形容すら出来ない異形の何かは、青年にピッタリとまとわりついていた。
取り込まれているのか。侵され蝕まれているのか。それともただ、寄り添っているだけなのか。。

2015/09/21(月) カナデ
タイトル 遥かに奏でる二人の楽園 第76話


「ハルカ…何だい…あの…化け物達は…」

僕は何かを確かめるようにハルカへと尋ねる。
僕が見ていた醜い世界が、ハルカによって正常な姿へとハルカに退治する異形の姿をした数体の肉塊が見えた。
世界はこんなにも綺麗な姿をしているのに、そこにいるソレだけが、汚物のように見えた。

「…そんな…何で…」

ハルカに確かめたかった疑問は、ハルカ自身の疑問によって返された。
ハルカすら理解していない異形のモノ。

その肉の塊達はお互いにモゾモゾと一通り動いた後、止まる。
まるでこちらに向き直ったかのような感じさえした。

その瞬間、今まで僕の耳を支配してきたあのノイズのような雑音が、肉塊達から発せられた。
不快な音に、僕は耳を塞ぐ。
まるで、化物が奇声を発するかのように、その肉塊達は順番に音を発していく。
僕は耐えられなくなり、ついには耳を塞いでしまった。

「カナデ!?」

ハルカが心配そうに僕に手を差し伸べる。

「大丈夫…ハルカ…僕は、大丈夫」

劈くような悲鳴の中でも届くハルカの澄み渡る声に、冷や汗をかきながら、僕は固目を瞑りながら、ハルカを見つめ笑う。

「とても…とても怒ってます…私が…私が世界をこんな風にしてしまったから」

ハルカは言う。
この世界を作り出したハルカに対して、あの肉の塊達はもとに戻せと叫んでいると…
世界を元に戻す?冗談じゃない……あの汚物に塗れた世界を変えてくれたハルカを…
そんな心優しい僕の救世主が作ってくれた楽園を…

元になんて戻させない。

「うる…さい…」

鳴り止まぬ奇声をかき消すように、僕は手を振り払い。いまだノイズを出し続ける肉塊達に向かい、叫ぶ。

「僕のためにハルカが、僕の大事な人が治してくれた世界を元になんて戻させない!この浄化された世界で僕と彼女は生きていく!汚れた世界を浄化したこの楽園でね!!貴様達こそ出ていけ…僕とハルカの楽園から…出て行け!!」

震えるハルカの肩をそっと抱き寄せ、僕は目の前に蔓延る肉塊に向かって叫んだ。

2011/12/25(日) 魔女
タイトル 遥かに奏でる二人の楽園 第75話 今日の気分終わります


そこに、御宮町を侵蝕した犯人は佇んでいた。犯人達が同じ世界を信じた結果。この世界は生まれた。そして、彼らしか信じていないこの世界は、何らかの力によって御宮町に住んでいた人々が信じていた世界を侵蝕したのだろう。

「貴方達にとって、ここは居心地の良い楽園なのは結構だけれど、そろそろ返してくれないかしら。此処に貴方達の楽園はない。あるのは私の理想郷だけよ」

この世のモノとは思えない程の叫び声が辺りを振動させる。
世界は既に造られ、侵蝕された。この世界は紛れも無く存在する世界である。
ならば、どんな世界でも境界を越えて認めることの出来る男には、きっとまた酷な事を頼むことになるだろう。

そして、きっとその男は今までに無いほど苦悩することだろう。
それが分かってしまったからこそ、魔女は笑みを零さずにはいられなかった。

これは喜劇であると魔女は思う。

誰も望まない出会い。だが、彼らにしてみればそれは運命の出会いであったに違いない。
誰も望まない世界。だが、彼らにしてみればここは正に二人が幸せに暮らすための世界であるに違いない。
だからこそ、境界を越える私の助手は決断しなければならない。二人が差し伸べる手を握り返せるのかどうかを……

2011/12/25(日) 魔女
タイトル 遥かに奏でる二人の楽園 第74話


道路の中央に立った一行の目先には、シンメトリーを意識した人工の絶景がそこには広がっていたはずであった。しかし、その景色さえもがどこかの狂人によって臓物を撒き散らされたような醜態を晒し続けている。
電柱が紫色のネオンのような淡い光を点滅させている。そこに敷かれている鮮やかな道がイベントを演出するセレモニーの為に敷かれた赤い絨毯ならばどんなに良かっただろうか。

敷かれているのは紫色に変色したアスファルトだ。魔女たちにとって、それは汚物の対象の何物でもない。だが、犯人にとってこれはまさしくセレモニーの為に敷かれた赤い絨毯なのだ。

「ローナさん。その一つの事って…?」

魔女の助手が口を開いたのと同時に、その不気味な花粉が舞う赤茶けた景色の先から自分たちに向かってくる影を一行は捉えた。

「来たわね…元凶…」

キイチの鼻はこんな世界になっても香りを違えない。彼は確実にこの香りの元凶を追ってここまで私達を連れてきた。あまりの鼻の良さに、キイチはついに鼻をつまみ出し涙を目頭に溜めてこちらを向いた。

「ずみまぜんローナざん…コレ以上は……頭がおかしくなりそうで……」
「えぇそうね。貴方のような優秀な鼻を持つモノにとっては、私達が視ている以上の世界が広がってしまうかもしれないわ」

白い息を吐きながら、ローナはへたり込んだキイチの肩へ手を添えると一歩前へと歩みだす。

「世界を形成するたった一つの事…それはねタツマ」

二人が同じ世界を信じあう事。

「それだけで、世界は造られるのよ」

いつもの涼しい笑みを浮かべ、ローナは目線を前に戻す。元凶の姿は既にその正体を露わにしていた。
タツマは絶句し、ルチアは未知の領域に目をときめかせる。キイチは真面目に悲痛な表情を露わにし、カラスは目を背けた。

2011/12/25(日) 魔女
タイトル 遥かに奏でる二人の楽園 第73話


人は世界を何処で視ていると思う?
人は世界を何処で認識していると思う?

それを考えれば、この今視ている光景は地獄でも奈落でも無く、誰かが望んだ楽園であると頷ける。
目の前に広がる汚物に塗れた景色を見つめ、魔女は失笑する。確かに今。魔女の見るその世界は侵蝕されきっていた。
犯人はいつ。私の世界を侵蝕したのだろうと魔女は考える。

研究者の親子が変体した時か?あれは、世界を侵蝕できるかどうかを試したと言うのだろうか?
猫が変体した時か?あれは、人間以外の世界も侵蝕できるかどうかを試してみたとでも言うのだろうか?

この世界を侵蝕した犯人は恐らく最善の選択を選んでこの状況を作り出したはずだ。

「この世界は、犯人の愛で溢れているわ」

魔女のそんな一言に、魔女の隣を並走する境界を越える変人は聞き捨てならない言葉を聞いたとばかりに顔をしかめた。

「タツマ。世界を形成するのに必要な事は何か分かるかしら?」

魔女は見渡す限りの腐敗した世界を見つめ、男に尋ねた。

「知ってるでしょ。ローナさん。俺にとって世界ってのは、常に在るものだって。作られるものじゃない。見つけるものなんですよ」

そうだったわねと魔女は静かに笑う。彼にとって世界は創造するものではなく、発見するものだ。
彼の答えではこの世界の真実にはきっと辿り着けないだろう。だが、それも仕方の無いことであると魔女は思う。
彼にはきっとこの愛は見えない。境界を越える事は真意を見ることではない。
彼の力は、存在する世界を確証させるものでしかない。だから彼はこの世界が「楽園」であると言う事に気付かない。

「確かに貴方にとって世界は見つけるものね……なら覚えておくと良いわ。世界はね。二人が一つの事をするだけで、簡単に作ることが出来るの」

この町の施設が連なる区画までやって来た時、一行は足を止め魔女は隣に佇む助手へと告げた。

2011/10/30(日) タツマ
タイトル 遥かに奏でる二人の楽園 第72話 今日の気分終わります


そこにリンゴがあるのならば、そのリンゴから発せられる香りは結局のところ、リンゴの香りと言えるのである。
それが例え腐っていようが溶けていようが…腐臭を撒き散らそうが、その腐ったリンゴがリンゴである限り。リンゴの香りを発しないという否定は成立しない。

「花は全てが素敵な良い香りをしてるとは限らないわ。中には強烈な刺激臭を放つ花だって存在する。でも、それは決して腐っているわけではない。そうでしょう?」

世界には、死臭花なんて呼ばれるこの世界で最大にして強烈な臭いを放つ花も存在する。

そこで、魔女は何かに気付いたように、唇を釣り上げた。

「そう。そうだったのね……くくっ。この状況を願った者は人間の皮を被った化物以外の何者でもないが、この事象を作り出した本人は、恐らく聖人君子か、聖母マリアに匹敵するほどの慈悲深い性格をしているな」

恐らくこの侵蝕が終わりを迎えたその時はきっと誰も傷つかない。誰も気付くはずのないままありのままの日常が待っている事だろう。ソレほどまでにこの侵蝕は完璧なまでに静かで鮮やかであると言える。今だからこそ言える。

両目に手を当てて魔女は高らかに笑う。

「あの…ローナさん?何か分かったのですか?今のだけで……」
「今のだけで?タツマ。今ので十分よ。簡単なことだわ。この状況がもたらされた原因を探るよりも、この状況がもたらされた事によって、何が出来るのかを考えれば良いわ」

そうね、例えば私達にとってはこの香りは腐臭の何物でもない。だけれどね…なんて言いながら、魔女はその紅潮した頬を露わにした小奇麗な顔をこちらへと見せた。

「中には、この香りが楽園で咲き乱れる美しい花の香りになることだって、決してゼロじゃないじゃない?そう、そういう風に思えてしまう人がいないなんて、誰にも否定できない」

もしかしたら、この侵蝕されてしまった汚物に塗れた世界でさえも、この世の楽園とも言えるような甘美な景色に見えてしまう人がいるのかもしれない。

…もし。もしだ。そんな人が本当にいるのならば、こんな世界にする意味は、あるのではないだろうか?

2011/10/30(日) タツマ
タイトル 遥かに奏でる二人の楽園 第71話


まずはこのカラスが発した戯言の根拠を聞かせてもらおうかと思っていたところ、ようやく出しかけた言葉をしまい込んだローナさんが自分を無視して話を進めただろと催促してきた。

「キイチが連れてきたこのカラス。実は、話していた俺を謀ったカラスなんですけど……死臭っていうのは花の香りの事だって…」
「あら。そのカラスが私は至極まともなことを言ってると思うのだがな…タツマ。貴方は理解できないのか?」

え?うそ?と俺は意外なローナさんの言葉に面食らう。いやいや、知能がカラス以下とか思われたらまずいだろ。

「だってローナさん。死体は腐る。だから死体から発せられる臭いは腐っている匂い。つまり腐臭。それは死臭であるとも言える。何故か?死体が発する匂い。それが死臭であるから…そうでしょう?」
「そうだ。そこまでわかっていて、なぜ死臭が花の香りである事をイコールで結び付けられない?」
『そうでございます。死体は腐る。腐った死体から発せられる匂いは腐臭。死体から発せられる匂いは死臭。二つは別物。何も間違ってございません』
「いやいや。だから同じだろって…」
『全くの別物でございます』

魔女とカラスの言ってることが俺には理解できなかった。カラスの言葉をそのまま伝えると魔女は腹を抱える。

「本当に、お前よりもこのカラスは知能が高いのだな」

黙れよとも思う。魔女は必死に笑いを堪え、何も理解していない俺へと説明を始めた。

「この際、重要な点は死臭というものはどういう匂いの事を言うのかという点が重要なのだろう?腐り始めたモノから発せられる匂いと、死んだモノから発せられる匂いの言い方が同じか否かを明確にする事が重要ではない」

そもそも、その二つを何故同じであると決め付ける必要があるのかと魔女は言う。

「簡単な話だよタツマ。腐ったリンゴがあるとしようじゃないか。そのリンゴから発せられる匂いは?」
「腐臭です」
「そう腐臭だ。でもそれは腐ったモノから発せられる匂いというだけであり、その腐った匂いは確かにリンゴから発せられてる香りなのよ」


2011/10/30(日) タツマ
タイトル 遥かに奏でる二人の楽園 第70話


そんな魔女の言葉に、どんな罰ゲームだという顔をした俺が鼻を近づける。すると、やはり容赦なく魔女は俺の鼻へとその汚れた指を押し付けやがりましたとさ。ファック。

「やっぱりだ!くっそ!!この魔女っ!」
「クククッ。これが腐臭だよタツマ。流れた血から発せられる鉄サビの臭いと、血によって湿った土が発する土カビの臭いが混ざり合った悪臭。お前はコレに嫌悪したに過ぎない」

貴方のいた現場に共通するもう一つがこれだと魔女は語る。俺が目撃した現場には、猫が変態する際に流した血が現場を汚していたのではないかと魔女は聞く。

「そう…だったかもしれません」
「ならば貴方の言う腐臭というのは、今この紫色の花弁をつける花々が発する香りとは全く別のモノじゃないかしら?」
「なら、ローナさん。アンタのいう死臭って何ですか?腐った臭いでもない。サビとカビが混ざり合った悪臭でもない。正直、俺には同じ臭いにしか感じません」

懸命に鼻を擦りながら半泣きで叫ぶ俺の言葉に、魔女は変わらずに悪戯に微笑んでみせるのと同時に、随分と西洋パイプが似合いそうな美声を放つカラスが魔女よりも先に澄ました顔よろしくで語り始めた。

『死臭は、花の香りの事でございますよ。タツマさん』

カラスのその一言に、暫くの間沈黙を続けてしまう。
カラスが俺の名を知ってると言うのは、どういう事だと考えるが、その考えが今までの出来事をロールバックしていくと、一瞬にしてそのカラスが何者であるのかを理解するに至る。

「あぁっ!お前!!狡猾紳士カラス!!」
『覚えていて下さり光栄でございます』
「光栄じゃねぇよ。この野郎!テメェのせいでな…俺が…」
『はて…。私はしっかりとしたビジネスをしたつもりだったのですが、なにか起きに召しませんでしたでしょうか?意図せぬ情報を掴まされたのは私の責任ではなく、それを見抜けなかったタツマさんに落ち度があると思いますが……まぁ、状況が状況でございます。ビジネスという話は抜きにして、同じ世界に住む住人として、お力をお貸ししたく、こちらの金色の大男に跨りはせ参じた所存でございます』
「跨ってないし、どちらかと言うと捕らえられた獲物みたいな姿でやってきたけど、この際そういうのは置いとこうじゃないの。まずは死臭が花の香りってどういう事よ?」