東雲 海里伊角 純高良 陽羽間 陽管理人subsub2

平行線の二人
ヤンデレ女王のご奉仕

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交換日記レンタル - nikkijam

2017/04/19(水) 伊角 純
タイトル 削除防止


「純さん、酔ってる?」

時計の針がてっぺんを刺していたのは数時間前の話だ。バイト先での恒例の飲み会を終え、上機嫌なまま帰宅をして、どこかふわふわした感覚のままソファになだれ込む様に倒れた。
何処か心配そうな声音の恋人に首を振って見せた。

「酔ってなど居ない、気分がいいだけだ」
「あっそ」

何か言いたげな恋人はソファの前に置かれたローテーブルに水の入ったコップを置いて僕に視線を向けた。
大丈夫かと見てくるのにしつこいと睨みつければ、言葉の代わりに息を吐く音だけが聞こえた。

「今日、店長が店で、一番高い酒、飲ませてくれたんだ。最近頑張ってるからって」
「へぇ、よかったじゃねぇか」

ソファの縁に座って頭を撫でながら僕の話を聞いていた恋人が、優しい声でそう言った。
こくりと頷いて見せると何故か撫でる手が止まってしまう。どうしてと視線を向けると、何故か驚いた顔をしていた。

「やっぱりお前、酔ってるんじゃねぇの?」
「僕は酔ってなど居ない」

何かぼそぼそと言っているけれど、僕には何と言っているのか分からなかった。けれど、そんなことはどうでもよくて、何故だか急に抱きしめてほしい気分になった。

「海里」
「純?」

体を起こして、恋人の名前を呼びながら腕を伸ばして抱き着きに行く。いつもの様に抱きしめてくれているけれど、何かを窺っているかのように名前を呼ばれた。
呼びかけには答えずに胸に顔を埋め、いつも恋人がしている様にぐりぐりと頬を擦り付けた。いつもはしないけれど、甘えるというのも案外いいものかもしれない。

「純さん、酔うと可愛い部分が出るんだな」
「僕は酔ってないと……」

くすりと笑って言われる言葉にむっとして顔をあげると、子供の様に嬉しそうに笑っている恋人の顔が見えた。
その表情に何故か胸を掴まれたような感覚になり自然と体を離していた。

「可愛いのはお前だ」
「え?ちょっ!」

そう言って僕は恋人の唇に自分のそれを重ね、薄く空いた所から舌を滑り込ませた。
お互いの舌を絡める様なキスは、恋人が恥ずかしいからと嫌がって普段はしないけれど、この時だけは自分を抑えられなかった。
僕よりもお前の方がずっと可愛いじゃないか。
そんな顔をして笑っていいのは、僕の前だけだと、しっかり躾して分からせておかないと。

2016/05/21(土) 東雲 海里
タイトル 削除防止


やっぱり、何度見ても……。

隣に座る一般的に不愛想な男の顔をじっと見つめる。
他人に言わせると何も変わってないらしいけど、ほんの少しだけ口元が柔らかく緩んで口角が上がっていから、今日買ってきたワインは大当たりだったんだろう。

なんだ?と声に出さずに俺の視線に気づいて首を傾げる姿に何でもないとこちらも首を横に振るだけで答えてみれば、変な奴だとすぐグラスに視線が戻る。

しばらくまったりとワインを味わい終えるのを待ってから、軽く自分の膝を叩くと「またか」と言いたげな顔で、けれど渋々でもなく当然の如く俺の片膝を跨ぐようにして座る体を抱きしめる。
伝わる温もりに自然と頬が緩むのを感じながら胸元に擦り寄るのを、まるで動物でも甘やかすように優しく髪が撫でられた。

次の休みどこに行こうなんて話を「どこがいいんだ?」「急かすなよ」なんてダラダラやりながら、頬や鼻先に口付けるのに小さく擽ったそうに笑う表情が愛おしい。
繰り返していると肩口に顔を埋めて頬ずりをしてきた。
そんな様を見ながらさぞ俺の顔がだらしなかったのだろう、軽く頬を抓られた。

「じゅんひゃん、いひゃい」
「こんな程度で痛いわけないだろう」

早く案を出せなんて目が訴えているけど、俺の出した案を悉く却下したのはお前じゃないか。

「純がいればどこでも良い」
「僕の誕生日だぞ」
「なら行きたいとこ言えよ」
「僕の為に考える気はないのかっ」

理不尽だと思う。
が、もうこんなのは日常茶飯事でこいつから受ける扱いについて気にもしなくなった。
犬だろうが執事だろうが理不尽をぶつける対象だろうが、こいつの傍にいられればそれで満足とすっかり調教され切った気分だ。

ブスッとして愛が足りないだのと訴えてくる顔に前なら可愛げねぇなぁって思ったんだけど、一緒の時間が少ないと感じるせいこの顔でさえも……。

「お前はさっきから何なんだ!」

じっと顔を見ているだけで返事もしないでいた俺に腹を立てたのか元々きつめの目尻を吊り上げる。

「いやさ、純さん可愛いなぁと思って」
「……お前は目が悪いのか」

人が素直に答えたのにも拘らず、眼鏡を買えとかひでぇだろ。

そうは言いつつも満更ではないのかさっきまでの表情が嘘みたいにはにかんでいるから、ああ、やっぱり可愛いなんて口に出さずに抱き寄せた。

2015/07/25(土) 伊角 純
タイトル 削除防止


僕を見つけた瞬間、嬉しそうに笑って大きく手を振るその姿は、なんとも間抜けに見える。
僕の名前を嬉しそうに呼んで、早く来いと言わんばかりの行動に、僕はいつも通りの感想を抱き、小さくつぶやいた。

「大型犬」

成人男性の平均身長よりも大きいそいつは、何処に居ても頭一つ分ほど出ている。僕もそれなりに身長はあるけれど、奴には届かない。
人懐っこい笑顔と明るさはどう考えても大型犬だ。そのうち耳としっぽでも生えてきそうだと常々思っている。

「……街中で大きな声で呼ぶな」

何度注意しても治らない。なかなか学習しないのも犬だからだろうか。

「名前くらい減るもんじゃねぇだろ」
「そう言う問題じゃない……まあいい、いくぞ」

こいつのこういう性格は今更だから、何を言っても無駄だと知っている。言い合うだけの時間が無駄と、行くぞと声をかければ後ろをついてくる。
どこか機嫌よさそうな顔を盗み見て、やっぱり犬だと思った。主人に忠実かは知らないが、素直についてくるあたりなんて、となると僕はこいつの主人になるのか。
こんな駄犬ではなく、もっと賢い犬がよかったな。

「なんだよ?」

じっと見ていたことに気づいたのか、首を傾げるのになんでもないと首を振って少し人通りの少なくなった路地を歩く。
一緒にバイトに行かなくてもいいのだけれど、こいつは少しでも一緒に居たいと言うから、時間が合う日は一緒に出勤するようにしている。

僕の手に暖かなぬくもりを感じた後、すぐに指を絡め取られてしまう。きっと一緒に出勤したいというのには、こう言う事も含まれているのだろう。

「お前は本当に恥ずかしい奴だな」
「うるせ」

可愛くない言葉を口にして、繋がれた手を引いて立ち止まれば、同じように立ち止まる。あたりには誰もいないことを確認して、距離を詰めて唇を一瞬だけ触れさせた。
真っ赤になる顔ににやりと笑って再び歩き始めると少し遅れて情けない声とともに駄犬が近づいて来た。
その声に答えるでもなく、少しだけ上機嫌のままつないだ手に力を込めた。

やっぱりこいつは駄犬だ。
だけどその駄犬を手放す気など毛頭ない僕は、ダメ飼い主なのだろう。

2013/11/27(水) 管理人
タイトル 平行線の二人・短編完結



皆様こんばんは。おはようございます、こんにちは。
この度は『平行線の二人〜ヤンデレ女王のご奉仕〜』を読んで頂きありがとうございました。
如何でしたでしょうか?
お楽しみ頂けましたでしょうか?

この二人は本編時からとにかく会話が少なく、短編二作を書いていた間にすっかりそのことを忘れていた本体二人は、会話がやたら少ないんだけどと最初に思い、その後、こいつら視線で会話するんだったと書き進めて気付きました(笑)
書いている時はどちらものっとられているせいか不思議とキャラクターの思うままに文章を進めているので気づけば、海里はとにかく触りまくり、純くんは『愛して』『愛する』という単語がさらっと出るなど、この短い話で「ちょっとこの二人本当に酷いw」と何度言い合ったか分かりません。

本編では世界が歪んで見えてしまうほどだった純くん視点は「世界はゆがんでないけど、海里君への愛は深くなってた」そうで、海里といることで良い効果が与えられているかと(笑)
海里視点は本編で随分と視野を広くしてくれましたが「少し世界の普通がわらないときがある。でもって純さんの愛は以前と変らず海より深い」という言いのか分からない事になっていましたが海里はとっても幸せだから問題ないそうです(笑)

私達にはなかった裏があるよを匂わせつつ、やっぱり海里は海里らしいエンドになったのですが、笑劇のラスト過ぎて愛方様に慰めてと泣き付いたところ「純だったとしても同じエンドだったよ」とお言葉を頂きました。
私達、別に打ち合わせしてないんですけどね…。

本体乗っ取るだけでなく、以心伝心までさせる最強カプ。抱き合ってもチューしても世界はセピア色☆な平行線の二人もこれにて終焉となります。
ほんの少しでも皆様に楽しんで頂けておりましたら幸いです。

今後についてはジワジワと進めております。またスタート時には私のふざけた挨拶でご紹介させて頂きます(毎回申し訳ありません!)
最後まで読んで下さいまして本当にありがとうございました。

読んで下さった皆様へ
          東雲・伊角・残念管理人二人より愛をこめて  


2013/11/27(水) 東雲 海里
タイトル 女王様への永遠の誓い4 今日の気分end



何を望まれているのかは察しがつくから、これはまずい。と視線を顔ごと背ければちょっと嫌な痛みが走る位の力で真っ直ぐに向きを変えられる。
ぶすっとした表情で俺を見下ろしてくる視線は逃してはくれなさそうだ。
僕が誘ってやっているのにと言わんばかりの態度ですけど、俺はそうしたいって言ってねぇっての。ってか、これじゃ明らかに俺のが襲われてんだろっ。どうして毎度毎度人に馬乗りになって誘ってくるんだよ。そうされなきゃ逃げるのは俺か。

嫌な訳じゃないけど、じゃぁ進んでするかと言われたら純の裸体を見ることが恥ずかしいから遠慮したい。
そう言う行為自体実はあまり興味もなく、むしろ純がやたら詳しいことに衝撃を受けて、お前は一体なんの勉強してたんだと半泣きで言ったくらいだ。そして陽をそんな目で見てたのかと引いた。
俺にとってはなくてもいい事なんだけど、純は違うらしい。
近づいた額がごちっと良い音をたてて俺の頭にぶつかる。髪と同じ真っ黒な瞳が真っ直ぐに見つめて揺れる。

「ダメか?」

いつも人に命令するくせに、こう言う時ばかり眉尻を下げてしょんぼりとするのは狡いだろ。喧嘩と同じでこっちがいつだって折れるのだと知っているだろうに、態となのかそうでないのか。
頬を右手で撫で離れた額に唇を押し当てる。不安そうなまま俺の手に重ねたそれに違和感なくはまった指輪が鈍く光る。
左手をそっと誘導して、薬指の一番深い場所に収まったそれに口付けてお心のままにと苦笑すれば、恥ずかしい奴と言いながら、ふっと目を細くして頬に純のそれが落ちてきた。



何から何まで合わないと思いもするのに、俺についてなんでも知っているのはお前だとも思う。
明確な終着点のない夢に付き合って、自分に今ある確約されるであろう未来を手ばなして、一緒についてきて貰ってもちゃんと幸せにしてやれるなんていってやれない。
それが分かっていて、それでも傍にいるのが、お前を愛するのが俺で良いと言ってくれた事が凄く嬉しい。
だから精一杯努力して早く落ち着けるようにするから。いつか、あと何年かしたらもっとちゃんとした形で「永遠に愛する」と誓いをたてられる様に。
これから先もその笑顔を俺の傍で見せて欲しい。
ずっと傍でお前が幸せで居てくれたなら何よりそれが俺の幸せだ。


fin

2013/11/27(水) 東雲 海里
タイトル 女王様への永遠の誓い3 今日の気分next



抱きしめ返して名前を呼べば頬にキスしながら返事が返ってくる。それをかえしてから思いついた事を口にしようとして止めれば、首を傾げるけれどすぐにまた当然と肩に頭をもたれて髪を撫でられた。
落ち着いたら…なんてまだいつになるかも分からねぇし、今話しても気の短いこいつじじゃ急かされそうだし、今話さなくても良いよな。
もう少しちゃんと目処が立ったらその時また話せば良い。

結局いつもの事ながらそのまま引っ付いて話をして時間をすごして、適当な所で順番に風呂に入った。
風呂から上がって戻れば、純はベットでうつ伏せになって本を読んでいる。
どうやら俺のベットは相当お気に召したようで、付き合うようになってからはソファーかベットかどっちかで寛いでいる。
こっち離れる時実家に置いてくから向こうでまた良いの探さなきゃだな。わざわざこっちから送るってのも微妙だしと思いながら奥の部屋に直行しようとすれば「おい」と不機嫌そうな声が聞こえる。まさかその部屋に篭るんじゃないだろうなと睨まれた。

「え…お前寝るんだろ?」
「お前…こう言う日くらい一緒に居ようと思わないのか?」
「あ…はい。すんません」

寝るんだろうし俺まだ曲作ってる途中だからと答えればよりいっそう睨まれた。元々きつい顔立ちが更にきつくなる。
純さん、頼むから俺がまだ触り癖直ってなかった頃と同じ顔で睨むなよ。折角見ないで済むと思ってたのに。
開けようと握った分厚い扉のノブから手を離してベットに腰掛ける。ちゃんと隣に来いとベットを叩くからそれに従って横に座って横目で見れば随分と分厚い本を読んでいたようだ。
もうほとんど終わりの方なようだけれど、それって確か先週買ってきた奴じゃねぇの?
読む暇がそんなにある訳でもないのに相変わらず読むのが早いな。俺だったら今頃半分も読めていないと思う。いや、その前に断念してるかも。

座っているだけでものろのろと近づく眠気に、こっち居たら眠っちまうんだよと欠伸を噛み殺せば肩を掴まれて引っ張られた。バランスを崩してベットに仰向けに倒れこむ。
何だよと文句を口にしながら衝撃で閉じた目を開けば俺を見下ろす双眼が細く弧を描く。


2013/11/27(水) 東雲 海里
タイトル 女王様への永遠の誓い2 今日の気分next



請ったデザインではないけれど、他の指輪外してこれだけしとくには丁度良さそうだ。と思っていれば目の前に手が差し出された。
何だと思って顔を上げれば見下ろしてくる黒い瞳。

「つけろ」
「あ、はい…」

疑問系ですらなく命令されたのに素直に返事をしてしまった。
結婚指輪だと事前に言われているのにこの態度。純らしいと思うけれどこれで良いのか?
突っ込む所だったような気もするけれどタイミングも逃し、もう良いやって思ってしまう自分もどうかと思う。
箱の中から指輪をとって差し出された手に自分の手を添える。
大体見ていてサイズは分かっていたけれど、やっぱ俺より若干細いなと思いながら、左手の薬指に指輪を通せば一番深い場所まですんなりと収まる。
よく似合ってると目を細めてみていればその手がひっくり返った。

見上げれば笑うってほどでもないけれど少しだけ緩んだ頬。視線が手を出せと訴えてくる。
俺にもつけてくれる気だったらしい。ちょっと待ってと言いながら人差し指にはめていた指輪を抜き取る。
手を差し出すついでに顔を上げると不思議そうに首を傾げる。隣り合ってる指輪がごついから傷になるだろと説明すればそうかと納得したらしい。
俺の左手を取って指輪を薬指にあてがう。人につけられる事なんかねぇから変な気分だなと思いながら、ゆっくりと指の根元までそれが進むのを見つめた。
似合うかとか聞こうと純の顔を見て息を呑んだ。
まるで大切な物でも見るように愛おしそうに微笑んでいた。

「これでお前は僕のものだ」

視線がかち合って幼い笑顔でふわりと笑ってから強く抱きつかれる。
参った、想定外。こんな反応されると思わなかった。
肩口で嬉しそうに、でも何処か楽しそうに笑って、また目が合えばもう一度目を細めて微笑みかけられた。
本当は、もし離れる事になった時のために…だったんだけどな。たかだか指輪だ。ちゃんとした確約を残してやれないけれどそれでも形で残しておいてやりたいと思っただけなんだけれど。
こんなに喜ばれたら、もっとちゃんとした形を取ってやれないのが申し訳なくなってくるな。

「純…」
「何だ?」
「向こうに行って落ち着いたら………なんでもない」
「変な奴だな」

2013/11/27(水) 東雲 海里
タイトル 女王様への永遠の誓い1 今日の気分next



答えを聞いてみれば今更かと驚くから、口にして貰ってないと言えばどうやら気づいてくれたらしい。真っ黒な瞳が俺を真っ直ぐに見据えて俺とどこまでも一緒に行くからと望んでいた回答をくれた。
自然と緩む顔につられるように大好きな幼い笑顔が零れる。
一生傍にいて自分を愛してと望まれるのに幸せだと思いながら頷けば、嬉しいのだと言う様に首に腕が絡んで抱きしめられた。
背中に手を回して抱きしめ返した後髪を撫でると顔が上がる。顔が近づいて触れるだけのキスをされて一瞬固まった。
鼻先が触れるほどの近くで真っ直ぐな瞳がたまにはお前からもしてみろと訴えてくるから、ちょんと掠めるだけのように返してすぐ離せば、何度か瞬いて苦笑混じりに笑う。
普通にしろと何処か呆れたように言ってもう一度唇が重なる。すぐ離れては角度を変えて繰り返し。

……………何回すんだ?
嫌な訳じゃない。嫌な訳じゃないけど……恥ずかしくて限界です。

純の肩を掴んで押し返すとじろっと睨まれる。
そんなイラッとされましても恥ずかしいんです勘弁してください。申し訳ないと思うけれど慣れてないんです。ってかお前が慣れすぎ。
こんなのに慣れるの早いなら他の事もっと色々ちゃんと慣れて頂いて、日常生活問題ない感じにして頂ける方が俺的には嬉しいです。
睨んでいた瞳が閉じられて深い溜息を吐く。ああ、このままだとまた苦笑を頂戴する感じ?

「あ、えっと…そう、これはめてみないかなぁって!」

誕生日だというのに締めが苦情は勘弁してほしいと、忘れていた事を思い出しソファー脇から今日一緒に選んできた指輪の入った紙袋を差し出す。
絶対それで離したんじゃないだろう?と言いたげな瞳では見られたけれど、もう諦めてくれた様で膝の上に座ったまま紙袋から二つの箱を取り出し片方を俺に手渡してきた。
どっちにどっちが入ってんだと思ってみればご丁寧に小さなメモが挟まっていてサイズが書いてある。あんなに同様していたのに細やかな気遣いが出来るとは、同じ接客業として平伏したい気分だ。
こっち純さんのじゃねと思うけれど既に純は俺の方が入っていると思われる箱を開けている。
まぁいいかと思いながらこっちもラッピングを解いて箱を開ける。

2013/11/27(水) 伊角 純
タイトル 執事への深い愛 4 今日の気分end


僕と海里は言葉を交わさなくて大体の意志は疎通できてしまう。それが決していいことだとは思っていないから、できるだけ口にするようにはしているが、言ったつもりになっていることも多い。
今回の事も例外ではなく、僕は海里に伝えたつもりでいた。
海里にも僕の気持ちが伝わっていると思っていたから、いつものバイトのほかに時々単発のバイトをしていても何も言わないのだと思っていた。
僕は海里の様にずっと金を貯めていたわけじゃないから、そんなに貯金がある訳じゃない。一緒に行くとなれば、いろいろ金はかかるだろうからと今からでもと少しでも時間があればちょこちょことバイトしていた。
一緒には居たいが重荷にはなりたくない。だからこそ自分の生活費は自分で何とかしたかった。
そう言う想いも全部わかっていて何も言わずにいてくれたのだとばかり思っていた。

「……わ、悪かった」

僕の想いはすべて海里に伝わっていると思っていた。言わなければ伝わらないと何度も理解して反省もしているのに、それでもつい忘れてしまう。言わなくてもわかってくれると甘えてしまっている部分がある。
こんな大切なことを伝えそびれて、海里を不安にさせていたら意味がない。
僕は少し体を離して、しっかりと海里の目を見つめた。薄い茶色の瞳が僕を捉えて微かに揺れた。

「僕はお前と一緒に行く。どこまでも一緒に行くから」
「……うん、ありがと」

真っ直ぐに目を見つめて言えば、海里の目がふっと細められて、ふわりと嬉しさがにじみ出ているような顔で笑った。
その表情を見られたことが嬉しくて僕の頬も自然と緩んだ。

「海里、一生僕の傍に居て、僕を愛して」

もう今更離れるなんて考えられない。海里がどこに行こうとも僕はずっと傍にいて、愛し続けるから。だからお前も僕を愛して、傍に居て。
心の奥がふっと温かくなるような顔で笑っている海里は勿論だと頷いてくれた。
それだけで幸せだと思いながら僕は海里の首に手を回してぎゅっと抱き着いた。

もうこの手はお前を離せない。
僕の心がいつも満たされているのはお前が僕となりにいるからで、日々を幸せだと感じるのもお前がいるからだ。
僕は可愛げもないし、愛想もないが、それでも僕を愛してくれる海里を愛している。
どこに行ってもずっと一緒だ。僕は海里がいれば何時だって幸せなのだから。

2013/11/27(水) 伊角 純
タイトル 執事への深い愛 3 今日の気分next


何返事だと言えば海里は、自分と一緒についてくるかの返事だと言った。
海里の夢は、自分の歌で世界中の人を幸せにしたいんだそうだ。そんな夢を小学生のころから抱いていて、この歳まで夢を抱いていたそうだ。
小学生当時、僕にもその話をしたらしいが正直言って全く覚えていない。ころころと夢が変わっていた陽の夢はすべて覚えているのだけれど。
まあ今はその話はいいとして、ちゃんと付き合うようになってからすぐに海里はその話を僕にした。
大学を卒業とともに日本を離れると。だからもしも一緒に来たいなら来ればいいと、何とも海里らしい言葉を口にしていた。
僕がどうしたいかだと海里は言ったが、僕の気持ちなんて初めから決まっている。

少し考える時間が欲しかったのは事実だが、それはあの母になんと言うべきか悩んだからだ。
一応就職試験も受けて内定ももらって、それを母には伝えたが、その直後に僕は就職しないと告げた。甲高い声で怒り狂っている声が聞こえたけれど、僕は自分の意志は変えないとはっきりと告げた。
今まで母の言う事がすべてで、母の言う事が何でも正しいと思って言われるがままに生きていた。けれど、今はそれじゃ満足できない。
自分自身で考えて生きていくのは難しくてつらいこともあるだろうが、それでも僕の隣には海里がいる。
こいつさえいれば僕は何度挫折しても、つらい思いをしてもその度に前をみて立てる様な気がする。
だから、母に初めて反抗した。金輪際連絡をしてくるなと言うから、わかったと電話を切ってからは本当に連絡をしていない。
母との折り合いの悪さは今更だが、今は僕と母は時間を置くべきだと思った。この話をすると海里はきっと気にするだろうから、言うつもりはない。
もしも訊かれても海外で勉強すると伝えていると言うつもりだった。

そこまで人が考えているのに、どうして目の前にいるこの男は今更一緒に行くかどうかの返事を欲しがるのだ。
驚いている僕に海里は、まるで今から捨てられてしまうんじゃないかと怯えている様な犬のみたいな瞳で僕を見ていた。

「純の態度見てたらなんとなくはわかってるけど、でもやっぱ言葉で言ってくれないと不安って言うか……」

何をそんなに不安に思っているのだと思えば、なんてことはない。ここでも僕の悪い癖が出てしまっているのだ。