神薙 さくら佐野 敦葛西 倫神谷 裕貴神薙 隆一

君を好きだといっても、君はそれを信じない。

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交換日記レンタル - nikkijam

2017/05/27(土) 佐野 敦
タイトル 0267


『聖女のような女』
『ヤマトナデシコ』

世の中には、そんな女がいる。
でも、本当は聖女でもヤマトナデシコでもなくて、恋愛に悩んだりする、普通の女の子。

東京から来た彼女とは、入学式で出会った。
卒業する時も、一緒だった。

そして、今度は俺が東京に行く。

「傍に居る」

それが、約束であり、望みであり、俺たちの未来なのだから。

2017/05/27(土) 佐野 敦
タイトル 0266


俺はそっとさくらの頬に手を触れて、さらに近づいた。
ふたりきりの、俺だけのさくらのキスは、さっきとは……いや、これまでとも違う。
重ねる時間も、重ねた深さも。
やがてさくらも俺を受け入れるように、変わる。
あんまり気持ちよくて、本当は、理性失くして欲情しそうで困ったのは、俺だけの秘密。



「あのさ」
長いキスの後、何故か思わずお互いに微笑んで、暫しの幸せを感じて、現実に戻ってきてから、俺はさくらに言った。



本当は、毎日でも二人きりになりたい
でも、さくらには彼氏がいるわけで、毎日ってわけにはいかないのは分かってる
そんなの、さくらだって困っちゃうよな

でもさ
だからさ

毎日じゃなくてもいい
一日中じゃなくてもいい
一週間に一回でもいいから、俺とふたりきりになるのを許して

もし神谷さんやリンが怒るようなら、俺がちゃんと話すから
ちゃんと許してもらえるように、話すから

彼氏になれなくてもいい
特別じゃなくてもいい
好きだという気持ちだけあればいいから、ふたりきりの時間がほしい

だって俺、さくらが好き
こんなにも好き
俺が初めて本気で好きになった女の子
一番大事で、一番特別
好きって言葉じゃ足りないくらい

うん
そう

さくら、俺、お前のこと────愛してる

2017/05/27(土) 佐野 敦
タイトル 0265


「分かった。傍に居る。でも、それには条件がある」
「条件?」
俺の言葉が意外だったのか、さくらは不思議そうに俺を見た。
頷いて、さくらの手を強く握る。

「神谷さんやリンと付き合っていてもいい。ただ、俺と2人きりの時だけは、俺だけのさくらで居ること」
「…………」
「この約束は、今後、どんなことがあっても、絶対守ること」
「……うん、分かった」

意外なことに、さくらはあっさりとこの条件を飲み、そして微笑んだ。
もう少し悩むと思っていたのに、あまりにも簡単に頷いたさくらを見て、俺は逆に疑った。
神谷さんと付き合い始めて以来、あんなに頑なに2人きりになることを拒んでいたさくらが、だ。
俺と2人きりになるのは道理がおかしいと言い切ったさくらが、だ。
つまり、以前同様、俺と2人きりにならなければいいとか、そんなことを考えているに違いない。

でも、そんなこと簡単に許すと思うなよ、さくら。
俺だって、どんなことをしたってお前の傍に居たいんだから。

「じゃあ、さっそく実行な。今、さくらは俺だけのものだから」
「え?」
さくらが驚いた顔で俺を見た。
一瞬意味が分からなかった様子だが、すぐに察したらしい。

そう、俺とさくらは、今、二人きり。

咄嗟にさくらは、握っている俺の手から手を抜こうとした。
そんなことをしても、二人きりの状態がなくなるわけじゃないから、思わずそうしてしまっただけだろう。
が、それを俺は阻止して、強く握る。

「そんなに、俺とふたりになるのが嫌?」
「べ、別に嫌とかいうわけじゃ……」
「じゃあなんで逃げようとするわけ?」
「逃げようとしたわけじゃなくて……」

畳み掛けるように尋ねると、さくらは困ったように視線をさまよわせた。
だけど俺がじっと黙って見つめ、ぎゅっと手を握ったままでいると、やがて諦めように手から力を抜いた。
そして困っているけど、どこか羞恥が混じった様な雰囲気を感じると、俺は「な、さくら」と少し顔を寄せて言った。

「俺、今すごくさくらとキスしたい」

近くで囁くように言うと、さくらはどきりとした様子で俺を見て、それから少しだけ俯いた。
でも嫌とは言わなかった。
言ったとしても、したかもしれないけど。

2017/05/27(土) 佐野 敦
タイトル 0264


さくらは黙り込んだ。
困ったように、目線を落として、何かを考えているようだった。
自分の気持ちを思い返しているのか、あるいは別れたい気持ちをどう伝えようとでも考えているのか。
こういう時、ついネガティブな方向に考えてしまうのが人間だとは思うけど、その答えを待つ間、俺の心臓はすごくどきどきしていた。

「頼む、教えてくれよ。俺、さくらの素直な気持ちをどうしても知りたいんだ」
怖いけど、知りたかった。
例えどんな答えでも、知らないよりは知っていた方がいい。

俺はカウンターの上に置かれているさくらの手を、両手で包み込んでぎゅっと握った。
さくらは僅かにはっとした様にその手を見て、それから意を決した様に顔を上げて俺を見た。
そして握っている俺の手の上に、もう片方の手を添えて、そして言った。

「私……あっちゃんに傍に居てほしい……。裕貴さんや倫くんが彼氏なのに、こんなこと思うのは我が儘だと分かってるし、あっちゃんに失礼だとも分かってるけど……それでもあっちゃんには、傍に居てほしいと思ってる……。それが正直な気持ちだよ」

その言葉を聞いた時、俺の脳内ではすぐさま「傍に居る」と応えていた。
でも、だけど、俺はそこですぐには応えなかった。
なぜすぐに応えなかったのか、この時の俺には分からなかったけど、後から考えた時、わかった。

さくらは俺に傍に居てほしいと思いながらも、それが我が儘で俺に悪いと思っている。
だから俺が傍に居ると応えて、事実そうしたとしても、さくらは心のどこかで申し訳ない気持ちが残ってしまうだろう。
さくらは、そういう奴だから。

だから俺はそこで考える仕草を見せた。
さくらの望みを吟味するみたいに、少し視線をさまよわせ、迷っているような風を装った。
俺が傍に居ることを応えても、さくらが申し訳なく思ったりせずに済むようにするために、あることを考えたから。

すぐに応えないことに、さくらは困っては居ないようだった。
俺が困るのは当然だ、とでも思っているかのように。

俺は数十秒をたっぷり使って、それからまたさくらを見て、言った。

2017/05/27(土) 佐野 敦
タイトル 0263


キスして、となんだかとても穏やかな笑顔でさくらは言った。
今すぐに、ここで、と。
俺はカウンターの椅子の、微妙に離れた距離を埋めるように、少しだけさくらの肩を抱き寄せてキスした。

久しぶりに重ねたさくらの唇は、柔らかくて気持ちよくて、こういってはなんだけど、欲情した。
ここが公共の場じゃなくて、二人きりになれる場所で、もっと雰囲気のある感じだったなら、このままさくらを抱いていたかもしれない。
でも残念ながらここは公共の場で、そんなことを出来る状態ではなくて、俺は名残惜しむようにさくらの唇から離れた。

さくらは微笑んでいた。
すごく穏やかな雰囲気で、薄暗いながでも少しだけ頬が染まっているように見えた。
だけど俺は、何故かその笑顔を見て、少しだけ恐怖を感じた。
だって……良く考えると、なんか嫌な流れじゃないか?
俺のことが好きになって、愛する意味を知ったと言い、それが嬉しいという言葉ではなくて「ありがとう」という言葉になり、そしてキスをして、この微笑み。
揚句に、俺と以前旅した場所を巡りたかった、といっていた。

なんだよ、それ……。
まるで……まるでこれを最後に、別れを考えているみたいじゃないか。

そんなの、無理。
好きなんだから、無理に決まってる。

「あっちゃん?」
じっと黙ってさくらを見つめている俺を不思議に思ったのか、さくらが小首を傾げて名前を呼ぶ。
俺はさくらが本当に望んでいることが知りたかった。
出来るとか出来ないとかじゃなくて、何を望んでいるのか。

「さくら」
薄暗い場所で、俺の声は、自分でもいつもより低くなったような気がした。

「あのさ、さくら、お前、俺のこと好き?」
「うん……」
さっきそう言ったでしょう、とばかりに訝しげな感じと気恥ずかしさが混じったような表情でさくらは頷く。
「じゃあさ、俺にどうしてほしいか聞きたい。 出来る出来ないとかじゃなくて、さくらの本当の気持ちが知りたい。俺とどうなりたいのか、正直な気持ちが」

すごく真剣だったと、後から思い返しても思う。
もしこれで別れたいとか言われたら、俺、立ち直れなかっただろうから。

2017/05/23(火) 神薙 さくら
タイトル 0262


だってたぶん、これもわたしの人生で、わたしのしあわせだから。
いつか、悩んだり決断したりしたことが、思い出になるその瞬間まで。

「今? ここで?」
あっちゃんが、少し困ったように尋ねてくる。だからわたしは言った。
「そう、ここで。今すぐに」

重ねた唇から伝わる愛情は、きっと永遠。
それが、ほんの二秒の出来事であっても。

2017/05/23(火) 神薙 さくら
タイトル 0261


でもあっちゃんは、やっぱり納得できていないようだった。
「好きなのに、両思いなのに……それでもつきあわなくていいのか? 俺はイヤだ、そんなの。さくらとつきあいたい。抱きしめたい。俺だけのものに……したいよ」
ぎゅっと心が痛くなる。わたしだって、そうできたらどんなに幸せだろうって思うのに。
「タイミングが悪かっただけ。あっちゃんは悪くないし、裕貴さんや倫くんも悪くない。ただ、タイミングが合わなかっただけ」
でも、だからこそ納得がいかないのかもしれない。
「そんなこと……」
納得できない、とあっちゃんの顔に書いてある。だから全部言わなくてもわかる。
「わたしが、気がつくのが遅すぎたの。あっちゃんのこと愛してるって気がついたの、この旅行に来るくらいだった。ずっと一緒にいたくて、手を繋いでいたくて……それが、裕貴さんや倫くんに対する感情とは違うってことは知ってた。でもそれがまさか、本当の意味での愛するってこと、知らなかったの」
でも、知った。
だからこそ、わたしはわたし自身にけじめを付けなきゃならないのだ、と思った。
中途半端なままで置き去りにしていた、裕貴さんと倫くんに対する気持ち。答え。そういうもの、全部に対して。
「あっちゃんに会って、あなたを好きだと思わなければ……きっと考えもしなかった」
だから、ね。
きっと今、わたしがあっちゃんに言いたいことって。ほんとにありきたりの一言になってしまうだろうと思う。

「あっちゃん、本当にありがとう」

迎えに来てくれて。
わたしのことを大事に思ってくれて。
心配してくれて。
愛してくれて。

そしてなにより。
わたしに、愛するということを教えてくれて。

ありがとう。

だから、わたしは少し困ったような表情のあっちゃんに、さらに続けた。
「ね、あっちゃん。……キスして?」

ありがとう。大好きなあっちゃん。
これから先、どうなっていくのか、わたしには全然わからない。
裕貴さんとどうなるのか、倫くんとどうなるのか。あっちゃんとはこのままでいられるのか。そういうこと、全然わからない。
でも確実に言えることは、わたしは今もやっぱりあっちゃんが好きで、愛していて、そしてそれを、倫くんも裕貴さんも知っているってこと。
でもこれから先を悩むより、わたしは今この瞬間を楽しみたいと思ってしまう。刹那主義と言われればそれまでだけれど。

2017/05/23(火) 神薙 さくら
タイトル 0260


「うん。2人のことはとても好き。でもね……さっきも言ったけど、わたしはあっちゃんが好きなの。あなたに恋愛感情を持っていたの」
もう一度、あっちゃんが、えっ、て言った。
「だったら、何で言ってくれないんだよ?」
「ずっと、あなたのことゲイだと思ってた」
「そりゃそうだけど……」
つい、声が大きくなる。
「それにね、さっきも言ったけど……少なくとも、裕貴さんはわたしのその気持ち、知ってるの」
「知ってるって……なんで知ってるんだよ」
だから、説明する羽目になった。裕貴さんがはじめて京都に来た日の夜、つまりわたしが裕貴さんとつきあうと決めたあの日の夜、わたしはこのことを告げるため、そしてあっちゃんの気持ちをたしかめるために、あっちゃんに電話をしたのだ、ということ。
でもあっちゃんは出なかった。だからわたしは、裕貴さんとつきあうことを決めたのだ、ということも。
「え、でも……俺、あの日酔ってて……」
「そうみたいね。でもわたしはそんなこと知らなかった。いつもなら出るはずの電話にあっちゃんが出ないっていうのが、なによりの答えだと思ったよ」
それに、とわたしがさらに付け加える。
「ここに旅行に来たときも、何度か言ったよね。キスしてって。……わたし、誰にでもそんなことを言う女じゃない。あっちゃんだから……好きな人だからキスして欲しかった」
もう取り戻せない過去。
もしあのとき。そんな意味のない単語を、ついつい呟いてしまいたくなる。
「じゃああのとき、俺が電話に出てれば……」
「止めよう、だって意味ない。もう変えられない過去の話だよ」
「俺にとっては……違う。だってさくら……俺を好きでいてくれてるんだろ。友だちって意味じゃなくて、俺がお前を好きなのと同じ……好きって気持ちでいてくれているんだろ?」
「好きだよ。でももう、今はなんの意味もなさないよ」
「そんなことない。神谷さんと別れて……倫ともつきあわずに……俺と……」
言いかけたあっちゃんの言葉をふさぐように、わたしは言葉を重ねた。
「わたしは裕貴さんと別れないし、倫くんともつきあうつもり。予定通りにね」
「なんでだよ、だって俺のこと……」
「これがわたしの決断なの。あっちゃんとつきあうことじゃなく、裕貴さんや倫くんと向き合うことを決めたの。ちゃんと向き合って答えを出すって決めたの」

2017/05/23(火) 神薙 さくら
タイトル 0259


外が見えるようになっている――暗くて、今は町の灯りくらいしか見えないけど――カウンターみたいな席にすわって、わたしはあっちゃんに話をはじめた。
帰る前に、どうしても言っておかなきゃならないことだ、と感じたから。わたしの気持ちを。

「さっき、家出したの俺のせいなんだろ、って言ってたけど……あれ、そうじゃないからね」
そう言うと、あっちゃんは目を丸くした。
「そもそも、家出したつもりはなくて……ただあっちゃんと行った場所を回りたかっただけなの」
まあ、あっちゃんと旅行した場所をめぐることによって、自分の気持ちにけりをつけたかたんだけれど。
「……そうなのか?」
「わたし……あっちゃんに後押してもらって……ってちょっと待って。そこから話したんじゃ、順番が狂う」
続きが訊きたそうなあっちゃんを制して、とりあえずわたしは言った。
「あのね。まず言っておきたいのは……わたしが、あっちゃんを好きってことなんだ」
でも、あっちゃんの顔色は代わらないし、驚いた様子もなかった。
「びっくりしないね」
「うん、別に。だって俺もさくらのこと好きだし……」
うん、なんだろう? 何かが違うって、わたしの中で警鐘が鳴った。でも違和感のもとがわからなくて、ひとまず話を続けることにする。
「二人きりになることをすごく拒んだのはね、裕貴さんや倫くんは、わたしの気持ちを知っているからなんだ」
あっちゃんは、ただ頷いただけだった。
「せっかくつきあうって決めて、裕貴さんや倫くんに向き合うって決めたのに、あっちゃんと二人きりなんて……道理がおかしいって思った」
「だから、それは条件に入っていなくて……」
「条件の話じゃないの。わたしの心の問題なの」
やっぱり、いまいちあっちゃんにはこの道理が伝わらないみたい。
「……彼氏だよ、彼氏。彼氏に真剣に向き合わなきゃならない時、本当に好きな人が彼氏より側にいたら……どうやっても忘れられなくなっちゃう」
ここへ来て、はじめてあっちゃんが、えっ、ていう息を漏らした。
「だってお前……神谷さんや倫のことが好きって……」

2017/05/23(火) 神薙 さくら
タイトル 0258


――そんなことはいいよ。無事に帰ってくれさえすれば。京都に着いたら連絡くれる?
「わかりました」
――じゃあ……隆一に代わるね。

そう言って、裕貴さんは兄貴に電話をかわった。兄貴からは特に何も言われなかったけど、ただ一言、「本気で失踪するなら、もっとうまくやれ」ってくらい。兄貴と話したあともまた、裕貴さんと少し話したけれど、京都に着いたら連絡するってことと、裕貴さんが京都に来る日が決まったら連絡くれるっていうことの繰り返しだけだった。
電話を切ってしばらくすると、すぐ着信。
ふと見ると、あっちゃんがただじっと、わたしを見ていた。
着信元は、もちろん倫くん。わたしはためらいもなく通話ボタンを押す。

――お前……まあいい。早く帰ってこい。
何も言わないうちに、深いため息と一緒に、倫くんがそう言った。
「ごめん、でも家出したつもりじゃないんだ」
――言い訳はいい。とにかく帰ってこい。話はそれからだ。

そう言って、電話は切れた。わたしは京都に帰って、何度もその「話」とかいうのをさせられることになるのだろうな、と思う。やや、うんざりもする。
そう思ってため息を吐くと、またあっちゃんと目が合った。

「……さくら」
あっちゃんは、わたしを見て、びっくりするほど真剣な眼でこう言った。
「まずはごめん。俺がお前を避けてたこと。実際、もっと前にお前と仲直りしておくべきだったって後悔してる。お前の話、聞けなかったことも……ほんとごめん。R.I.N.E無視したのも、ごめん」
嫌いだからじゃなくて、その逆だからだ、とあっちゃんは付け加えた。
「俺なんて側にいなくても、さくらには神谷さんや倫がいるだろって、ちょっと拗ねてたのもある。俺のこと、もう友だち以下にしか思ってないのかなって思ったり。さくらが俺のことをどう思ってるのか、わからなくなったから……」

そうか。
わたし、あっちゃんにまだ一度も、自分の気持ちを言っていないんだ。

「あっちゃん、あのね。帰る前にちょっと話があるの」
そう言って、わたしはあっちゃんを、レストランのほうに促した。レストランは二四時間営業だけれど、おそばのコーナーしか開いていない上に、半分以上の電気が消されていて、誰の姿も見えなかった。