a.k堀内 葉那黒沢 修司

愛があるのか、ないのか、
Episode One.

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交換日記レンタル - nikkijam

2017/09/06(水) a.k
タイトル 1-016. 今日の気分end.



「別の男と結婚しろって、無理に決まってんじゃん」

目頭が熱くなって、涙の粒が生まれると静かに零れ落ちた。
その姿を見ていた修司は、「話がまったく噛み合ってねぇけど……。泣くな」と言う。

「泣くよ!泣くに決まってんじゃん!」

と、また無駄に大きな声で言い、子どものように声に出して泣いた。
私たちの横を通り過ぎて行くサラリーマンの人たちに変な目で見られていたけど、修司は泣いている私に文句を言うわけでもなく、何も言わずにしゃがみ込んだ。
それから、ジャンパーのポケットにどこかで貰ったらしいパチンコ屋の名前が書かれたポケットティッシュを私に握らせる。

「笑いたい時には笑い、怒る時には怒り、泣きたい時は泣く。そういう素直なところは葉那のいいところだよ。だけどな―――」

そう言った後に修司は立ち上がると、「三十路になろうとする女がやってるとウザい」と言い放ち、「いい加減、立ち上がれ。三十路女」と言って、私の両腕を掴むと、さっきよりも強い力で引っ張り上げて、無理矢理私を立ち上がらせた。

「痛いっ!強く掴まないで!」
「いい加減、前を向け。3年前の傷なんかもう消えてるだろ」
「修司に何がわかんのよ!6年も付き合って結婚出来ないって言われた女の気持ちなんか、あんたにわかんないわよ!」
「だったらおまえは、結婚式当日に花嫁に逃げられた俺の気持ちがわかんのかよ」
「…………………」
「…………………」
「…………………」
「…………………」
「…………あれはあれで悲惨だったよね」
「おまえの傷に比べたら、俺の方が致命傷だろ」
「私たち……ダメダメじゃん……」

鼻をすすり、涙をぬぐいながら言った。

「ダメダメだけど、俺たちは神様にそっぽ向かれるような悪さはしてない。次は絶対今以上の幸せがくる。だから、前を向け。おまえの未来は明るい。俺の未来も明るい」
「相変わらず、変なところポジティブ」
「ポジティブ上等」

と、言った後に、「ほら、帰るぞ」と言って修司は歩き始めた。

「ポジティブ過ぎる男もウザいけどね」

と、言うと、修司の後をついて歩くように歩き始めた。


2017/09/06(水) a.k
タイトル 1-015.



私と修司が『USAMIU』から出たのは、23時前だった。兎町商店街はお酒を出している飲食店以外のお店が閉まっているせいか静かで、昼間の活気など感じられないぐらい歩いている人も少ない。
仕事帰りのサラリーマンやほろ酔い加減のOLがヒールの音を鳴らして歩いていたり、居酒屋から出て来た大学生らしきグループが円陣を組んで、大きな声で話している姿も見えた。

「ねぇ……、私の家って……こんなに遠かったっけ?」

家へ帰るべく歩いているものの中々家に辿り着かないことに気が付いて、私は歩いていた足を止めて言った。
修司よりも先に来て飲んでいた私の方が酔っぱらっていて、まっすぐに歩いているつもりでもまっすぐに歩いていない状態になっていた。

「まだ十歩ぐらいしか歩いてないからな」

と、呆れながら修司は言う。
自分の中ではかなり歩いたと思っていただけに私はショックで、「マジかぁ――!」と無駄に大きな声を上げた。

「いちいち叫ぶなよ」
「つーかさぁ、なんで修司ついてくるのよ。あんたの家はあっちでしょ。如月写真館はあっち」

と、反対方向を指さして言った。

「おまえが一人で帰れないからだろ」
「そんなことないもん。一人で帰れるもん」

そう言って歩き出してすぐに何かに躓いたのか、足がもつれたのか、わからないが地面にうつ伏せ状態で転んだ。
後ろからそれを見ていた修司は、「なにやってんだよ」と呆れる。

「痛い……。痛いです……」
「だろうな。とりあえず、起き上がれ」
「無理。起き上がれない」

修司は私の腕を掴むと、立たせようと持ち上げるが、私自身が起き上がれる気力がなく座り込むのが精一杯だった。

「もういいよ……。修司」
「良くないだろ」
「どうせ、立ち上がったって、見合いしろって言われるだけだもん」
「見合いは今関係ないだろ」

修司の顔を見た。

2017/08/05(土) a.k
タイトル 1-014. 今日の気分end.



「見てやってよ。うちの姫君の写真」

てっちゃんは、どこからかアルバムを取り出してきて、私の前に置く。
写真をただファイルしているだけかと思いきや、ちゃんとしたアルバムになっていて驚いた。
そんなアルバムを手に、「これも修司が作ったの?」と聞いたら、「俺が手作りしたわけじゃねぇよ?レイアウトだけな」と言う。
それから私は何も話さず、しばらくゆっくりとアルバムに見入った。
舞台の上で踊っている写真はもちろんのこと、友達と仲良く話している写真や、集合写真など、様々なシーンの写真がアルバムの中に納まっていた。

「美雨ちゃんの笑顔、すごくいいね」

と、言うと、てっちゃんは「だろ?」と謙遜せずに言う。
親バカ全開のてっちゃんは、私たちと一緒にアルバムを見ていたかったみたいけど、料理の注文が入り、後ろ髪を引かれながら仕方なく私たちの前から離れ、ゆっちんも同時にお客さんに呼ばれて、そっちへと行ってしまった。

「修司が撮ってるから、自然な笑顔が出るんだろうけど。修司はこういう瞬間をとらえるのが上手いよね」
「昼間も言ったけど、おまえは俺の何がわかるんだよ」

と、鼻で笑い、ビールを一口飲む。
アルバムをめくりながら、「わかるよ。修司の写真を誰よりも多く見てるんだから」と言い、「カッコいい写真を撮るのもいいかもしれないけど、修司にはやっぱりこういう自然体の笑顔を撮ってもらいたいなぁ……」と続けた。

「そんなに褒めてくれるなら、見合い写真撮ってやろうか?」
「結構です」

そう言うと、修司は笑った。


2017/08/05(土) a.k
タイトル 1-013.



そんな私を気にする様子もなく、ゆっちんは、「あ、噂をすれば―――」と店の入り口の扉の方へと視線を向けた。
ゆっちんに釣られるように入り口の方を向くと、修司が入ってきた。

「なんだよ。3人そろってこっち見て」

3人の視線を変に思ったのか、修司は戸惑いながら言った。

「ちょうど今、修司くんの話をしてたところだったの」
「どうせ、ロクでもないこと言ってたんだろ」
「葉那の結婚相手、修司でよくね?って、話してたんだよ」
「もしかして、こいつの見合い話聞いた?」

そう言った後に、「ビール」と言い、修司は私の隣に座る。
それから羽織っていたジャンパーを脱いで、空いている反対側の椅子の上に置いた。

「今から出会って恋愛始めるなら、修司くんと始める方がてっとり早いじゃない」
「恋愛っつーか、結婚相手ってそんな感じで決めるもんなの?」
「だからぁ――、結婚はまだしたくないっつーのぉぉ!」

大きな声で言った。
すると横に座っていた修司は、両耳に指を突っ込み、「相変わらず、酔うと叫ぶよな」と呆れながら言った。
ゆっちんはグラスに入ったビールを私と修司の前に置く。

「はい。お疲れ」

修司はグラスを手にすると、私の前に置かれたグラスビールを勝手に合わせて鳴らす。

「修司くん。アルバムありがとね」
「いえいえ。あんなもんお安い御用ですよ」

一口飲んだグラスビールを置いた。

「なになに?なんの話?」
「先月、美雨(みう)のダンス発表会があってね、その時の写真を修司くんに撮ってもらったのよ」
「姫の発表会となれば、出動しないとな」
「ええ――、私も美雨ちゃんの発表会に行きたかったぁ」

てっちゃんとゆっちんの一人娘の美雨ちゃんは、私と修司にとって姪っ子のように可愛い存在。
生まれた時から美雨ちゃんの写真を撮っている修司は、美雨ちゃんの専属カメラマンで、我が子のように美雨ちゃんの成長を見守っている程、可愛がっていた。


2017/08/05(土) a.k
タイトル 1-012.



私は学生時代から趣味でやっていた絵を描くこと、が、現在の職業として成り立っていた。デザイン系の専門学校卒業後、小さなデザイン会社へと就職したが、入社して数年で倒産して職を失った。暇つぶしでイラストを描いてSNSなどにあげていたら、ラッキーなことにそれが出版社の人の目に留まり、拾って貰えた。初めはちょこちょこっとしたイラストを描いていたけど、現在は小説の挿絵やファッション系雑誌などにイラストを描かせてもらっている。
夢を叶えることも、自分の好きなことを職に出来ることも、出来そうで中々出来ないこと。棚からぼた餅的だけど、それを掴めたことはラッキーだし、だからこそ、今の仕事を大事にしたいと思っている。

「――――だからぁ、今は結婚より仕事がしたいのぉぉぉ――!」

午後9時過ぎ。高校の同級生夫婦がやっている兎町商店街の中にある小さなダイニングバー『USAMIU(うさみう)』にいた。
L字になっているカウンターと4人席のテーブルが3席あるだけの店内で、2組のカップルらしき男女が私の他にいる。
私はカウンターの一番奥の端っこに一人寂しく飲んでいて、グラスに入ったビールを4杯飲み干した後に、店内に流れているBGMよりも大きく心の内を叫んだ。

「葉那。うるっさい。他のお客様に迷惑だから叫ばないで」

店の二階にある自宅から降りてきたゆっちんは、カウンター越しに私の前へとやってくると言った。
“ゆっちん”―――香西優奈(こうざいゆうな)は、高校時代からの親友。高校卒業間際に妊娠が発覚して、卒業と同時に同級生だった“てっちゃん”―――香西哲志(こうざいてつし)と結婚している。

「葉那は、酔っぱらうとすぐに叫ぶよな」

そう言って、てっちゃんは笑う。

「私だって叫びたくて叫んでるわけじゃないの。叫ばないとやってられないの」

そう言った後に、空になっているグラスを持ってビールのおかわりを求めた。

「しかしさ――、あと数週間で男が出来るとは思えないんだけど」
「出会いさえあれば、なんとかなるんだって」
「だったら、もう修司でよくね?おまえらなんだかんだ言ってても仲良いじゃん」
「そうだよ。第三者のあたしたちから見ると、あんたと修司くんは恋人並みに仲良さげだけどね」
「冗談やめてよ」

そう言った後に、「早く、ビール!」と言ってビールを催促。


2017/07/04(火) a.k
タイトル 1-011. 今日の気分end.



「あんたが言わないでよ」

それから二人で、「貸してよ」「嫌だって」「いいから貸して」「おまえすぐ壊すから嫌だ」「壊さないっつーの」「昔、俺が大事にしてたプラモデルを壊した前科がある」「いつの話してるのよ」とか言って言い合っていたら、「なんだか賑やかな声がすると思ったら、葉那ちゃん来てたの」と、二階にある事務所兼自宅から店主である如月さんが降りて来た。

「うるさくしてすみません」
「いいよいいよ。葉那ちゃんは元気な方が、葉那ちゃんらしいからね」
「アラサーなんだから、そろそろ落ち着けって感じだけどな」
「うるさいよ」

と、修司の肩辺りをバシッと叩いた。
すると修司が、「いてぇーなぁ。加減しろよ」と言って、すかさずやり返してきた。

「修司の方が痛いじゃん」
「痛くねぇよ。こんなの」
「慰謝料請求したいぐらい痛かった」

くだらないことを言い合っている私たちを見ていた如月さんは、ニコニコした表情を見せながら、「相変わらず仲良しだね」と微笑む。
如月さんのその一言で、私たちは言い合うのをやめた時に、「すみません……」と、店内の入り口で女性の声が聞こえた。
修司はすぐに、「はい」と返事をして、受付の方へと向かう。
奥から受付を覗くと、リクルートスーツを着た女性で、証明写真を撮って欲しい。と言っていた。それから受付を済ませた修司は、私がいるスタジオへと彼女を案内してくる。
修司は如月さんに、「証明写真です」と告げると、如月さんは、「そう。じゃあ、修司くんお願い」と言う。
修司は二つ返事をして、証明写真を撮る準備に取り掛かった。

「――じゃあ、仕事の邪魔しちゃ悪いから帰るね」
「おう。今日、テツんところ行くけど」
「じゃあ、私も行く」

と、すれ違いざまに言って、店を後にした。


2017/07/04(火) a.k
タイトル 1-010.



店に入ると、いつも元気よく聞こえる「いらっしゃいませ――!」という声がないのに気が付く。
辺りを見渡した後に、「あれ?すみれちゃんは?」と聞いた。
如月写真館の如月さんの孫娘のすみれちゃんが、お小遣い稼ぎに写真館の受付を担当している。いつも店に入ると、元気な声で迎えてくれるのに今日は声もなく、姿もない。

「お客さんのところへ配達に行ってるよ」
「へぇ――、そういう仕事もあるんだ」

受付を通り抜けて、修司の後を追うようにスタジオに入った。それから私はスタジオの隅に置いてある撮影用の長椅子に座り、修司はスタジオにある機材を片付け始めた。その様子を見ながら、お母さんと口論になった見合い話の一部始終を話した。
修司は時々相槌を打ちながら、私の話を最後まで聞いてくれて、「――――それで、おばさんの逆鱗に触れたんだ」と、鼻で笑った。

「だってさぁ――、どう考えたって無理だと思わない?好きでもない男と結婚して、子どもなんか作れるわけないじゃん。ね?」
「目つぶってればいいじゃん」
「いや、そういう問題じゃないから」
「しかし、今年中って、もう12月も半ば過ぎてるけど」
「そうなんだよねぇ―――…」

と、頭を抱えながら、「修司の友達でいない?フリーのやつ」と聞いた。

「そんな状態なら、素直に見合いしろよ。紹介も見合いも同じだろ」
「違うでしょ」
「なにが?」
「気持ちが」
「同じだろ」
「違うったら、違うの」

と、言った後、「もぉ――――、どうしよう……」と再び頭を抱え込んだ。
すると、カシャッとシャッターを切る音がした。
頭を上げて前を見ると、修司が最近お気に入りで持ち歩いているフィルムを使用するタイプのコンパクトカメラで私を撮っていた。

「なんでこんな姿撮るのよ」
「『見合いが嫌でグズってる葉那』っていうタイトルが思いついたから」
「あのねぇ――!」

と、怒るとまたカシャッとシャッターを押す。

「今度は、『怒りスイッチが入った葉那』」
「貸してよ。今度は私が撮ってあげるから」

そう言って立ち上がると、私は修司の元へと歩き出した。
修司の側まで来ると、手を伸ばしてカメラを私に渡すように催促するも、修司は、「おまえ絶対ロクな写真撮らないから、貸さない」と拒む。


2017/07/04(火) a.k
タイトル 1-009.



「この写真、好きだなぁ……。この親子の柔らかい雰囲気が伝わってくる」
「おまえ、そんなのわかんの?」
「私には伝わってくるよ」
「適当なこと言ってんなよ」

そんな会話をしていた時に、「おや、二人揃ってるじゃない」と、私たちの方に歩いてきた矢萩さんに声をかけられた。
矢萩さんは商店街で女性物の衣料店を営んでいる店主で白髪混じりの60代の男性。兎町商店街の組合長さんも勤めていて、楽しい企画などを提案して商店街を盛り上げてくれている。

「あっ、矢萩さん。うちの母に変なもの渡さないでくれません?」
「変なものじゃないでしょ。あんな上物中々いないよ?」
「矢萩さんになんか貰ったのか?」

私と矢萩さんの会話を聞いていた修司は聞く。
その質問に答えづらくて何も言わずにいると、「葉那ちゃんに見合い写真を渡したんだよ」と矢萩さんはニコニコと笑顔を浮かべながら言う。

「見合い写真?!」

と、修司は驚いていた。

「最悪だよ……」
「葉那ちゃんにぴったりの男性だと思うんだけどねぇ」
「どこが?」

と、思わず口に出てしまったぐらい、何を思ってそういう考えに至ったのか、知りたい。

「ホントに彼、良い人だから。葉那ちゃんも気に入ると思うよ」
「……………」
「修司くんにも良い人がいたら、紹介してあげるからね」
「遠慮しておきます」
「まあまあ、そう言わない。食わず嫌いはダメだよ?」
「なんですか。それ」
「そんなことより、忘れるところだった。これ、如月さんに渡してといてくれる?組合の資料ね」

そう言って修司に書類を手渡し、「――じゃあ、これから『Little Rabbit』に行ってくるよ。なっちゃんが来るって言うから、ちょっと顔出そうと思ってね」と、言って、ご機嫌で私たちから離れて行く。

「“なっちゃん”って……、『Little Rabbit』で働いてた人だよね?小説家の先生と結婚したって言う」
「俺はてっきり店主の水嶋さんと夫婦だと思ってたんだけどな」
「私も思ってた。―――それにしても、小説家の人とどうやって知り合うんだろう?お客さんだったのかな?」
「そうかもな。何気にこの界隈有名人多いじゃん」
「だよね。庶民的な町なのにね。アイドルやらミュージシャンがあちこちにいるよね」

なんて言う会話をしながら、私たちは店の中へと入った。


2017/07/04(火) a.k
タイトル 1-008.



うちの洋食屋からさらに奥へと進んだ場所に『如月(きさらぎ)写真館』がある。 数年前に写真館の建物が店舗兼住居となり、鉄筋コンクリートの3階建ての近代的な建物へと生まれ変わったが、昔ながらにある町の写真館だった。
店のウィンドウには、家族写真や七五三の写真、振袖姿の成人式の写真などたくさんの写真が飾られてある。その多くは、店主である如月さんが撮影しているが、最近では、弟子である修司に任されることも多くなってきた。

修司の実家は数年前に店をたたんでしまって今はないが、同じ兎町商店街で書店を営んでいた。修司は昔から本よりもカメラが好きで、おじいちゃんから貰ったという古いカメラを持ち歩いて写真を撮っていたのを覚えている。時々身近にいた私をモデルにしては、色んな写真を撮られた。
大好きなカメラを職業に選んだ修司は、モデルやタレントなどを撮っている有名カメラマンの助手として働いていたけど、ああいう派手な場所は肌に合わない。と言って辞めたがっていた時に、タイミング良く如月さんが助手を探していると聞き、矢萩さんの紹介で如月写真館を手伝うことにした。
有名カメラマンの助手として働いていた時は、何に対しても余裕がない感じがして、常にイライラしていて、修司の撮る写真からは優しさが感じられなかった。でも、ここで働きだしてから、昔のような穏やかな修司に戻ったように思う。

「その写真、修司が撮ったの?」

写真館のウィンドウに見慣れない家族写真が1枚飾られていた。
まさに修司らしい優しさが感じられるような家族写真。

「うぉっ、葉那」

店の外から家族写真を眺めていた修司は、突然現れた私に驚く。
修司をよそに、「いい写真だね」と見慣れない家族写真を見て言った。

「人見知りされてどうしようかと思ったけどな。最後には笑顔を見せてくれて良かったよ」

写真には、私たちと変わらない年代の若い夫婦と2〜3歳ぐらいの小さな男の子が写っている。
両親に手を繋がれて、幸せそうに笑っている男の子の笑顔を見ていると、微笑ましくて、私までも自然に微笑んでしまう。


2017/06/03(土) a.k
タイトル 1-007. 今日の気分end.



「はぁ?!何言ってんの?」
「さっき、お父さんも言ってたでしょ?もしかしたら、これが良いご縁になるかもしれないって」
「いや、でもさ――」

お母さんは私の言葉を止めるように、テーブルの上をバンッ!と思いっきり叩いた。

「これは、絶対命令です!」

久しぶりに見た鬼の形相のような怖い顔して私を見ているお母さんに、29歳の私は言い返すことが出来なかった。