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竜の伝説〜飛翔〜
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交換日記レンタル - nikkijam

2017/09/26(火) 語りべ
タイトル パーティのために4 今日の気分次回更新は10月3日(火)予定です




「言ってくれりゃあ作り方くらい教えてあげるのに」

 おかみはそう言うと残っているケーキの材料を手に取っては、一か所に集めていく。

「え…でもそんな、場所も借りてる上に料理を手伝って貰うなんて」
「申し訳ないです」
「何言ってんだい。申し訳ないのは失敗しちまった食材たちの方だよ」

 遠慮がちに告げるスイリとリルムに対し、おかみは洗い終えてあったボウルと泡だて器をそれぞれ彼女たちに手渡し、言った。

「それに、喜ばせたい相手に黒焦げ料理なんて食わせたくはないだろうさ?」

 確かにアルスなら、仮に黒焦げ料理でも喜んでくれるかもしれない。
 だが、心から嬉しいわけではないだろう。
 それではせっかくのサプライズパーティが台無しになってしまう。
 おかみの言葉にスイリは少しだけ思案顔を浮かべた後、肯定に強く頷いて見せた。
 
「…そうだね。美味しいケーキや料理を食べて貰わないと意味がないよ。おかみさん、よろしくお願いします!」

 そう言ってスイリはおかみに向けて深々と頭を下げた。
 続くようにリルムもまた彼女へと頭を下げる。

「ご教授よろしくお願いです!」
「じゃあ早速材料を量るところから始めようか」
「え?」
「材料って量るものなんですか?」

 と、目を丸くさせるスイリとリルム。
 どうやら彼女たちは料理作りには計量が必要であるということを知らなかったらしい。
 が、おかみは二人がそれすら無知であったことは既に察していた。
 そもそも、二人がケーキ作りの未経験者だというのは、一目瞭然であった。
 何せこの作業台の上には計量器が存在していないのだ。

「ったく…こうなりゃ、あたしがほっぺたが落ちるくらい美味しいケーキの作り方を徹底的に教えてあげるから忘れるんじゃないよ」

 苦笑交じりに、それでいて自信たっぷりにそう告げたおかみを見つめるスイリとリルムは「はい!」と気持ちのいい声を揃えた。





2017/09/26(火) 語りべ
タイトル パーティのために3







 サプライズパーティを決行するため、その主役であるアルスを時間稼ぎの連れ出しに成功したレオ。
 一方、同時刻。
 スイリとリルムは深いため息を洩らしていた。
 二人が見つめる先には真っ黒になってしまっている“何か”。
 もとい、ケーキとなるはずだったものだ。

「どうしてこうなっちゃったんだろう…?」
「もしかして焼き過ぎちゃったんでしょうか…」

 そんな話をしながら頭を抱えている二人。
 と、そのときだ。

「ちょっとちょっと、何だい今の音はっ!?」

 大きな声と共に現れたのはこの宿のおかみであった。
 スイリとリルムにキッチンを貸し出した彼女は、本来ならば宿のフロントにて番をしているところであったが、キッチンから聞こえてきたただならぬ爆発音に慌ててやって来たのだ。

「って…こりゃなんだい!?」

 駆けつけたおかみは作業台の上に置かれていた真っ黒な“何か”を見つけ、またもや驚きの声を上げる。
 しかし、焦げ臭さと黒煙を上げるそれが何か直ぐに察すると彼女は額に手を当てながらため息を洩らした。

「パーティ用の料理を作りたいからって台所を貸してやったけど…まさかケーキを作ったことがないってわけじゃないだろうね?」

 するとスイリとリルムは恥ずかしそうに顔を赤らめながら「実は…」と声を零す。
 その反応を見て、おかみはもう一度深いため息を吐いた。






2017/09/19(火) 語りべ
タイトル パーティのために3 今日の気分次回更新は26日(火)予定です




「い、今のは何だろう…?」

 轟音が聞こえてきた方向に視線を向けると、家並みの間から上空へと上る黒煙が見える。
 音と煙、となればまず想像するのは火事といったもの。

「行った方が良いんじゃないかな」

 そう言ってアルスは抜いた剣をしまい、煙の上っている方へ向かおうとする。
 が、しかし。
 レオはそんな彼の腕を掴み、止めた。

「あのくらいの爆発なら心配するほどでもないだろ。大方何処かの誰かが料理でも失敗したんだろうって」
「そ、そうかな…?」

 そうだ。と、言いきるレオには確信があった。
 何故なら爆発音の聞こえてきた方角が、宿のある方だからだ。
 更に、料理はお世辞にも上手いとはいえないレベルのスイリとリルムが、久々に楽しそうに意気込んでいたのだ。
 張り切り過ぎてやり過ぎたその結果が、レオには容易に想像できた。

「気にすることはないって。ほら、行くぞ」
「う、うん」

 レオは強引にアルスの背を押すと、事態がばれないよう、急ぎ足で町の外へと向かって行った。






2017/09/19(火) 語りべ
タイトル パーティのために2



 何でも良いからとせがまれ、近くの野花や木の実を摘んできたこともあった。
 彼女が誕生日の際は前々からそういう空気を匂わせ、悟らせようとする。
 それでも二人が気付かないときは彼女の母親が代わりに報せてくれるほどだ。
 スイリにとってこれらはいい思い出かもしれないが、レオにしては大変だった記憶でしかない。
 だがとても懐かしく、思わず笑ってしまう思い出には違いない。

「よし、それじゃあ夕暮れまでどっちが多くの魔物倒せるか、競争しようぜ?」
「え?そういうのはちょっと…」
「なんだよ、たまにはこうやって二人で競うのも悪くないだろ?」

 自身の腕を鳴らしやる気満々といった様子で準備運動を始めるレオに対し、アルスは苦笑を浮かべ「わかったよ」と、同じく戦闘の準備を始める。
 小さい頃はスライム一匹さえ倒せなかったのに空想でどちらが多く魔物を倒したか、と遊んでいたこともあった。
 今となっては本物の魔物を相手に競争などしている余裕もなかった。
 アルスは当時と今の記憶を交互に思い返しながら、笑みを浮かべ、剣を抜く。

「それじゃあ町を出てからスタートってことで良いよね?」
「ああ、いいぜ」

 そうして二人が町の外へと出ようとした、その時だ。


ボンッ!


 突如爆発のような大きな音が二人の背後から聞こえてきた。

2017/09/19(火) 語りべ
タイトル パーティのために1







 やる事もなく宿に戻ろうと歩くアルス。
 と、その向かう途中で彼を呼び止める声が何処からともなく聞こえてきた。

「何やってんだよ、こんなところで」

 アルスは足を止め、その声の方を見やる。

「レオ」

 するとそこにはレオが呆れ顔を浮かべながら歩み寄って来ていた。

「ま、大方やる事もなくてさっさと宿に戻るつもりだったんだろ?」

 図星である故に何も言い返せず、顔を俯かせるアルス。
 そんなアルスの傍に寄るとレオは彼の肩を叩きながら言った。

「そうやる事がないからって落ち込むなよ。こういうときはアレだろ?」
「アレって?」
「娯楽だよ、娯楽。ここには無いけど夕方まで戻って来られりゃいいんだし、すごろく場とかモンスター闘技場とかさ。移動呪文で行ってみたらどうだ?」

 レオにそう言われ腕を組みながら唸り声を上げるものの、どこもそこまでして行きたいとは思えず。

「いや、やっぱり宿に戻るよ」

 と、答えた。
 しかしそれはレオとしては困るものであった。
 何せ彼の役割は“宿に行こうとするアルスの足止め”なのだから。

「ったく、なんでそう頑固なんだか…」
「え?」
「何でもねぇよ」

 仕方なくレオは作戦を変更する。

「じゃあ久々に二人でそこらへん探索しにでも行かねぇか?ま、大した魔物が居るわけでもないけどよ」

 経験値稼ぎにもなるだろう?と、そう言ってレオはアルスを誘う。
 移動呪文(ルーラ)を使うような遠出では遠慮してしまうのならば、近場での時間稼ぎをという考えだった。

 すると今度も唸るような声を上げて、それから。

「…そうだね、わかったよ」

 と、ようやく了承する返答を貰えた。
 レオは安堵に吐息を洩らす。

「どうしたの?」
「なんでもねーよ」

 彼の徒労も知らず首を傾げて尋ねるアルス。
 レオは呆れ顔でため息交じりに返す。
 そもそも、友人の誕生会のためにこんな気を使ってまで協力する義務があるのか。
 そんなことも考えてしまうレオだったが、しかし同時に『昔はいつもこうだったな』と懐かしい思い出に、思わず苦笑せずにはいられない。
 彼らが幼少の頃、誕生日と言えばいつもスイリの「何かプレゼント用意しようよ」で始まり、アルスとレオが巻き込まれていたからだ。

2017/09/12(火) 語りべ
タイトル サプライズ計画5 今日の気分次回更新は19日(火)予定です









 メモ書きにあった買い物を済ませたスイリはアルスにばれないように急ぎ足で宿へと向かった。
 宿に戻るとそこには既にリルムが待っており、宿の食堂と台所は貸し切り状態となっていた。

「というよりもこのランシール自体客は早々来ないからね」

 そう言うと宿屋の奥さんは「好きに使っていいよ」と付け足し台所を後にする。
 残されたスイリとリルムは食材の山とにらめっこをしながら腕をまくった。

「よし!それじゃあ夕方まで次々と作って行こう!」
「はい!」

 料理については前もって話し合っており、スイリがケーキ担当、リルムがオードブル担当と言うことになっていた。
 エプロンも付け、やる気満々でいる二人であった。
 が、しかし。
 互いに食材を触った瞬間、二人は同時に視線を合わせて言った。

「ケーキってどうやって作るの?」
「オードブルってどうやって作るんですか?」




 これまでの旅で料理を作る機会は幾度となくあって、スイリもリルムも料理当番となったこともあった。
 だがそもそも料理の腕前はそこそこと言った程であり、作れる種類もそれほど多いわけではない。

「とりあえず…適当にやってみよっか?」
「大事なのは感覚、ですよ」

 二人はそう言い合い、恐る恐るの手つきで料理を始めた。







2017/09/05(火) 語りべ
タイトル サプライズ計画4 今日の気分次回更新は12日(火)予定です





 流石に別れたばかりであるスバルたちは事情が事情であるため無理であったが、スイリはこれまで出会った色んな人たちを呼びたいと、そしてお祝いしたいと思った。
 海賊の長カンナに部下のクイ。モズノやリルムの兄姉、彼女の師匠である神父ダインやバハラタのグプタ夫婦など、あらゆる人が彼女の脳裏に浮かぶ。
 空想が膨らみ笑みが綻ぶ彼女へ、リルムは呆れた様子で苦笑を洩らした。

「それだと魔王を倒した後のパーティみたいですよ。倒す前からそんなに騒いじゃうと不謹慎だって、流石に怒られちゃいそうです」

 そう言ってリルムは前方に歩くストームを一瞥する。
 彼女の視線から意図を察したスイリは、「確かに」と舌を出した。

「じゃあこれは魔王を倒した後の勝利パーティに取っておいて。とりあえずは私たち仲間だけでお祝いしよっか?」
「はい。やりましょう!」

 リルムとのこうした女子トークも久々であったこともあり、二人は会話を弾ませ、妄想を膨らませながらパーティについての作戦会議をした。
 船に戻ってからはレオとストーム、コティッチとチェロハたちにも話をつけ、何とかして許可を貰い、今に至るというわけであった。






2017/09/05(火) 語りべ
タイトル サプライズ計画3







 アルスは16歳になったその日に、勇者としてアリアハンを旅立つことになっていた。
 スイリ自身、その話を聞いたのは随分後のことであり、彼の誕生日も忘れてしまっていたため、祝うこともなく過ぎてしまったのだ。

「アルスの誕生日祝いってことね…うわー、懐かしいかも」

 小さい頃はよくレオと一緒にアルスの誕生日を祝ったり、逆に祝って貰ったりしていた。
 それもレオ一家がアリアハンを出て行ってからやることもなくなってしまったのだが。
 あの当時は毎年、二人は近くの花を積んでは花束にしてプレゼントしてくれた。
 お返しにと、スイリもまた毎年たまたま拾った薬草や、花かんむりを作って渡していた。
 子供ゆえの他愛のないプレゼントであったし、取って置いておけるものではなかったため、今となっては頭の中にでしか残っていない大切な思い出だ。

「良いね、それ。やろう!」
「シーです、シーッ!」

 と、大きな声になっていく彼女へ慌ててリルムはその口を再度塞ぐ。
 運よく男勢に二人の声は届いていないらしく、彼らは彼らで雑談をしているところであった。

「じゃあさ、折角やるならもっと盛大に他の皆も誘ってやろうよ?」



2017/08/29(火) 語りべ
タイトル サプライズ計画2 今日の気分次回更新は9月5日(火)予定です







「パーティ、開きませんか?」

 パーティ。
 その言葉を聞くなり、目をキラキラと輝かせていくスイリ。
 思い返せばここ最近大賑わいなパーティは全く持ってしていなかった。
 幽霊船捜索の際にロマリア王がそうした席を設けてくれているという話もモズノから聞いていたが、アルスが丁重に断ってしまったため流れてしまっていた。

「いいね、やろ――」

 そう大きな声を上げようとした時。
 リルムが突如、スイリの口を塞いだ。
 彼女の口元を見やれば、そこでは人差し指を突き立てている。

「これはアルスさんに内緒でやるんですよ」
「アルスに内緒?どうして?」

 するとまたリルムは笑みを見せて、彼女に囁いた。

「このパーティはアルスさんをお祝いするためのパーティなんですよ」

 アルスを祝うパーティ。
 まさかの言葉にスイリは目を丸くする。
 困惑している様子のスイリにリルムは続けて耳打ちをした。

「だって、アルスさんももう直ぐ17歳になるってことですよね」

 彼女の言葉に更に目を丸くさせながらスイリは「あっ」と声を洩らす。
 そう言えばと彼女は心の中で振り返る。



 

2017/08/29(火) 語りべ
タイトル サプライズ計画1





 
 
 アルスが暇をつぶしながら宿へと向かうより少し前の時間。
 スイリたちは何をしていたかというと。

「さて、と…後は牛乳に卵、生クリームに果物か。果物ってランシールだと何が今旬なんだろう」

 そんな独り言を呟き、町の中を歩いていた。
 彼女の手にはメモが握られており、そこには色々な食材が書かれている。
 しかしそれは何日間分の航行用の食料と言うよりは、パーティに使うような材料ばかり。
 そう、彼女たちは今夜、宿を貸し切ってパーティを開こうとしていたのだ。
 何故急に彼女はパーティをしようということに至ったのか。
 時間は更に数時間前へと遡ることとなる。





 アレリス号へと戻る最中。
 スイリはリルムとこんなことを話していた。

「そういえばこんな時にこんな話なんですけど…アルスさんやスイリさんとあのアリアハンのルイーダの酒場で出会ってから一年が経とうとしているんですね」
「え、そうなんだっけ?」

 突然そう口を開いたリルムの言葉にスイリはダンジョンを歩きながら首を傾げる。
 確かに彼女と出会い、アリアハンを旅立ったあの日から、随分な日数が経った。
 長い長い旅路。
 それは数年、十年以上も掛けていたような旅にも思えたが、実際の期間を考えると短かったのだなとしみじみ思う。
 と、そんな想いを馳せているとリルムはスイリの耳元へこっそり囁く。

「それでなんですけど…前祝いと言いますか、今後の大戦に備えて士気を高めると言いますか…」

 ごにょごにょと何処か勿体ぶった口振りでそう言う彼女に、「何々?」と急かす。
 リルムはそんなそわそわしていくスイリに向けて、悪戯な笑みを浮かべて答えた。