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竜の伝説〜飛翔〜
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交換日記レンタル - nikkijam

2017/07/25(火) 語りべ
タイトル あっけなく解散 今日の気分次回更新は8月1日(火)予定です






 移動呪文(ルーラ)を用いてランシールに移動したアルスたち。
 急激な速度で身体が上昇したかと思った後、即座に急降下をしていくという感覚は、未だアルスにとって楽なものとは言えない。
 だが、一瞬にして目的地へ移動できるというのは日数を掛ける必要も魔物との連戦もないため、ありがたいことに違いない。

「それじゃあ集合時間と場所についてだけど――」

 船酔い以上の酔いを若干感じながらもアルスは同じく地面へと着地した皆を一瞥していく。
 が、レオやスイリは早速アルスを通り過ぎて町を目指し歩き出す。
 ランシールの町、その入口は目と鼻の先に見えていた。

「時間は明朝なんだから朝日が昇る前で、場所はランシール宿屋の前で良いよね?」
「ああ、良いんじゃねえか。どのみち夜になりゃ皆宿に集まるわけだからな」

 と、二人はそれぞれそう言うとさっさと町の中へ入っていってしまった。
 確かに、アルスの質問には答えたわけだがあっさりと置いていかれた事にアルスは思わず呆然としてしまう。

「え?」

 意見を求めるかのようにアルスは視線を無意識に他の者達に移す。
 しかしこれまた二人と同じように素っ気ない様子で散り散りに消えて行く。

「すみません、わたしはこの町にしかない特殊な道具を探しに行ってきます」
「えーっと…俺らも船もちゃんと移動してんのか心配だからそれ見に行ってくるわ」
「それじゃまた後で」

 リルム、コティッチ、チェロハと順番に消えて行き、気付けばストームの姿もいつの間にかいなくなっている。

「そ、そんなにゆっくりと羽を伸ばしたかったのかな…」

 もしかしてこれまでの旅で皆にかなりの重労働をさせていたのではないか。
 そんな考えがアルスの脳裏を過る。
 
「だとしたら…今の僕に出来ることはみんなの自由時間を邪魔しないこと、だよね」

 そう思ったアルスは一人町へと足を運ぶ。
 だがその足先は街中ではなく、町の外れの方――ランシール神殿のある方へと向かっていた。
 


2017/07/18(火) 語りべ
タイトル 暫しの休息をとろう2 今日の気分次回更新は25日(火)予定です




 釘を刺されたスイリの言動から悟り、レオは細めた視線を彼女に向ける。
 「遊ぶって程じゃないけど!」と、即座に大声を張り上げてみせたスイリだが、否定をしなかったところを見るとどうやら図星だったらしく。
 アルスは思わず苦笑を洩らす。

「だってだって…ここ最近船旅ばっかり続いてるし、全然ゆっくりと街中でくつろげてないんだもの」
「まー確かに船旅は嫌いじゃないけどよ、たまには陸地で羽を伸ばして休みたいってのもわかるぜ。海賊だって海の上だけで生きることは出来ないしな」

 と、スイリの肩を持ち、笑顔を見せるコティッチ。
 「でしょでしょ?」とスイリは賛同する彼を見つめ、それから視線をアルスへと移して口を開く。

「それに…本当はロマリアでゆっくりくつろいでも良かったはずなのに、アルスが先を急ぐって言って休めなかったんだから」
「そ、それは…」

 思わぬ飛び火にアルスはぎょっとして声を小さくさせる。
 スイリの言葉に今度はアルスが反論出来ず、体をも小さくさせてしまう。
 するとここぞとばかりにスイリは如何に自分たちに休息が必要かを声高々に告げ始めた。
 と言っても魔王討伐前に一度ストレス発散が必要だとか、お風呂に入って体をリフレッシュしてから挑みたいとか。
 個人的な主張ばかりなのだが。
 何も言わず状態のアルスたちを見るに見かね――というより結論を促されていたストームは仕方なくため息交じりに告げた。

「わかった。移動呪文(ルーラ)でランシールに着いた後は各自自由行動。出発は翌日明朝にする」
「やった!ありがとストーム!」

 直後歓喜の声を上げるスイリ。
 そしてコティッチ。
 苦笑するしか出来ないアルスとリルムに呆れ顔のレオとチェロハ。
 魔王退治が目前に迫る中、不死鳥を目覚めさせなくてはならないこの瞬間に、こんなにも悠長で良いのだろうかという一抹の不安がストームに過る。
 だが、同時にこのマイペースさが彼らパーティの姿なのだから仕方がないのだろうと、呆れ半分苦笑半分と言った吐息を彼は人知れず洩らしていた。





2017/07/18(火) 語りべ
タイトル 暫しの休息をとろう1







 昨日攻略したダンジョンを一気に抜けると、アルスたちは日暮れ前にはアレリス号へと帰る事が出来た。
 予想外の早い帰船に留守番をしていたコティッチとチェロハは驚きを隠せない。

「ど、どうしたんだよッ?」
「何かあったの?」

 が、その理由を聞くと二人は直ぐに不安そうにしていた顔を止め、安堵に胸を撫で下ろしていた。

「なんだよ、不死鳥を目覚めさせに行くって…そうならそうって早く言えよな」
「お前らが説明する前に勝手に驚き騒いでたんだろ」

 そう言ってため息を洩らすレオ。
 彼の揚げ足を取るような発言に言い返す言葉もなく。
 咳払いをして誤魔化すとコティッチは話をそらすべく「そう言えば」と切り出す。

「それでこれからレイアムランドってとこへ向かうために一度ランシールに移動するんだろう?」

 するとアルスが頷き、答える。

「うん。ランシールには移動呪文(ルーラ)をして行こうと思うんだ」
「ランシールには一度行っているし、その方が早いもんね」

 スイリはそう言ってから「ついでに神殿でお世話になった司祭様に会いに行こうよ」と付け足す。
 どこか浮かれた様子で話す彼女を見つめていたギンガは、呆れたと言いたげに軽くため息を洩らした。

「ランシールはあくまでも通過点だ。遊びに行くわけではない」
「うぐ…わ、わかってるって」
「うぐって…お前、もしかしてランシールで遊ぶつもりじゃなかっただろうな」


2017/07/11(火) 語りべ
タイトル 闇が来る2 今日の気分次回更新は18日(火)予定です




「人でありながら人を誑かし意のままに操り掌握す。魔物たちすら手玉に取る策士…故に付いた名が『ハンド』であったか」
「おや、その呼び名は知っていたようで。由縁まで覚えている方がいるとは懐かしい限りです」

 大げさに両手を広げ、語るムクロの男、ハンド。
 彼は武器を構える男へと、平然とした様子で近付いていく。
 男は余裕を見せて近付いてくるムクロへ、素早く斧を振り払った。
 が、しかし。

「ですがねえ、今はその由縁について語りたくないんですよ」

 ハンドには一撃も当たらず、かすり傷さえ付いていなかった。
 確実に、男はハンドの急所を狙ったはずであった。

「だから貴方には綺麗さっぱり跡形もなく消えてもらいます。ま、元よりそのつもりでわざわざこんなところにきたんですけどね」

 次の瞬間。
 男は突然胸倉を掴み上げられた。
 抵抗するひまもなく、何も出来ず。
突如、彼はハンドに首を掴まれていた。
 驚き、と同時に覚悟を決めた。
 だが最後にどうしても聞きたい事があった。

「何故…わざわざ私に、こんな、ことを……」
「役目を果たしたものの、故郷を失っていることさえ知らなった哀れな男への、たむけって奴ですよ。同郷のよしみの、ね」

 男は彼の言葉に目を見開き、そして全てを察した。
 彼の正体も、男は理解が出来た。

「なるほど…向こう側の人間ということか…」
「理解しましたか。ならもういう事はないですね」

と、男は最後の力を振り絞り、ハンドを睨みつけながら叫んだ。

「だが残念だったな、私を倒したところで不死鳥ラーミアは必ず目覚め、勇者は魔王を倒す!無論お前が真に使える魔王をもな!」






 祠を後に去って行くムクロのハンド。
 彼の周囲には黒く深い霧が纏うように漂っている。

「笑わせる…それこそ夢物語だな」

 黒く、冷たい声。
吐き捨てるようにそう呟いた後、彼はわざとらしく肩を竦める仕草をする。
と、何かを振り払うかのように自身の両手を二、三度払い、それから静かに歩き出した。

「さてと、それじゃあそろそろ出るとしましょうかね。勇者との最終決戦の場所に…なんてね」

 いつも通りであるひょうきんな口振りに戻し、誰に言うわけでもない独り言を呟き、ハンドは闇の方へと消えて行った。


 

2017/07/11(火) 語りべ
タイトル 闇が来る1




 一人残された男は、誰に言うわけでもない独り言をポツリと呟く。

「そう言う考えも…あったのだな」

 これまで、受けた神託のため、使命のために生きていくことだけを考えていた。
 しかし、それも終えた今。そんな選択肢もあるのだと。
 男の心はぽっかりと穴が開いたようであり、それでも清々しい気分であった。
 
「私も…帰ってみようか。故郷の村に」

 遠く青い空を見上げ、そう告げる男。
 何十年ぶりとなる故郷は今、どうなっているのか。
 彼は膨らむ期待に胸を弾ませ、僅かに笑みを零す。
 こんな気持ちになったのは本当に久しぶりのことであり、すっかり忘れていた感情であった。

「本当に、ありがとう…勇者アルス」

 男ははっきりとした声で、今はいなくなった彼らに向けて、そう言った。






「―――ああ、良い事を教えてあげますよ」

 突如、男の耳にその声は入ってきた。
 軽快に話す男の声は、彼の背後から聞こえてきた。

「誰だ!?」

 振り返った、が。そこに人の姿はない。
 しかし、姿はなくともなおもその声は語り駆けてくる。

「貴方の故郷は、残念なことにとっくの昔に滅びてしまったんですよ」
「う、嘘を言うな!誰だ!姿を見せろ!?」

 男は辺りを見回し、同時に近くに置いてあった薪割り用の斧を握った。
 気付けば周囲はいつの間にか色濃い霧に覆われており、左右前後の目先さえも見えない状態になっていた。

「いやね、ここにオーブが保管されているのは知っていたんですがオーブの力なのか中々近づけなくってね。ずっと目の上のたん瘤だったんですよ」

 と、男は斧を構える。
 彼の正面から突然現れた人の影。
 その霧の向こうから姿を見せたのは、黒いフードで顔を隠している男であった。
 それはかつて、この地を託された時に老人から聞いていた存在の名前。

「お前は…魔王に魂を売った者、か」
「今はムクロっていう洒落た名前が付いてるんですよ。存じ上げませんでしたか?」


 挑発的な口調で、口端を吊り上げながら男はそう言う。
 しかし男は彼の挑発に乗る事なく、冷静なまま淡々と告げる。




2017/07/04(火) 語りべ
タイトル 勇者たちは去り 今日の気分次回更新は11日(火)予定です










 翌朝、アルスたちはアレリス号へと戻るべく、停泊中の岬へ早速向かう。

「お世話になりました」

 祠を出る際、アルスは見送りをしていた男へ丁寧に頭を下げる。
 男は「とんでもない」と手を振りながら、笑みを浮かべた。

「此方こそ久々に人とこうして会話して食事が出来て楽しかった」

 そう言って男は自身の手を差し出す。
 アルスは返すべく、自分の手を出し二人は握手を交わした。

「でも、おじさんもオーブを渡すっていう役目が終わったんだから、久しぶりに村へ帰ってみたらどう?」
「そうですよ!夢のお告げが嘘じゃないってわかるし、皆さん喜ぶと思いますよ」

 と、スイリとリルムに言われ、男は驚いたような顔をする。
 二人に言われるまでそんな考えは微塵もなかったため、目から鱗の思いだったのだ。

「そう…か。しかし、皆私のことを覚えているだろうか…?」
「覚えてなくとも、おっさんは故郷を覚えてんだろ?だったら行くだけ行ってみたらいいだろ?」

 レオの言葉に思案顔を見せたままの男であったが、後に「考えておこう」とだけ呟く様な声で返した。

「それじゃあ失礼しました」
「また会いましょう!」
「今度は伝説の不死鳥に乗って会いに来るね!」

 アルスたちのそれぞれの別れの言葉に苦笑をしながら、手を振ってみせた。

「ああ、待っているよ」

 そうして、アルスたちの後ろ姿はやがて消えて行った。





2017/06/27(火) 語りべ
タイトル レイアムランドへ3 今日の気分次回更新は7月4日(火)予定です







 アルスたちは男から祠内の一角を借り、今夜はそこで一泊する事とした。
 そして、就寝前に皆は今後の方針についてを話し合う。

「これでオーブは集まった。次の目的地も決まったな」

 レオの言葉に他の仲間たちが静かに、しかし力強く頷いていく。

「伝説の不死鳥ラーミアを復活させるために最南レイアムランドにあるっていう祭壇を目指す。だね」
「それにしても、伝説の不死鳥って一体どんな姿なんですかね…それはそれは神々しい姿なんでしょうか…もしかして全身金色の羽根で出来ているとか?」

 目をキラキラと輝かせながらそんな想像を口にするリルム。
 キラキラ、と言うよりは目が金貨になってしまっている彼女に、思わずストームが呆れた声を出す。

「全てが終わった後、ラーミアを見世物にでもするつもりではないだろうな」
「そ、そんな恐れ多いこと考えませんよ!…ちょっとしか」

 と、リルムは慌てて最後だけ言葉を濁しながら反論する。
 しかし何とも説得力のない台詞にアルスたちは苦笑にも近い笑みを零した。
 周囲が笑い出した様子に、リルムは不機嫌そうに頬を膨らます。

「ほ、本当にしませんよ!」
「わかってるって」

 アルスは声を荒げる彼女を宥め、それから改めて口を開く。

「明日早朝に船へと戻って、それからレイアムランドに近い街へ移動呪文(ルーラ)をしてから向かう。それでいいよね?」
「うん」
「はい」
「わかった」
「了解だ」

 アルスの言葉に仲間たちはそれぞれ返答し、大きく頷く。
 それで、今夜の作戦会議は終わりとなり、誰が何を言うわけでもなく自然と皆好き勝手に就寝していった。
 明日もまた長い道のりを行くことになるのかもしれない。
 今日の疲れを癒すべく、横になるなり早く寝ようと瞼を閉じるアルス。



 しかし、彼らはこのとき、まだ誰も知らなかった。
 明日は今日以上に長く辛い一日が待っていようなど。







2017/06/20(火) 語りべ
タイトル レイアムランドへ2 今日の気分次回更新は27日(火)予定です




 かくいう男もその場所に行ったことはなく、その話もこの場所とオーブを託された際に老人から聞いた話だと付け足した。
 するとリルムはずっと抱いていた疑問をここで男に投げかける。

「気になってたんですが、ご主人は何故此処に来ようと思ったんですか?」

 いくら夢のお告げとはいえ、このような辺境の地にわざわざ訪れ、そして重要な宝を託され守り続けるとは。
 そう簡単に受け入れることも、出来ることでもない。
 男はリルムの質問に暫く沈黙していたが、おもむろに口を開いた。

「夢に出たから直ぐに決めたと言えば…確かに嘘になる。だが私の生まれ故郷ではそうした伝承があってな。神の竜よりお告げが下る。その神託とは伝説の不死鳥を目覚めと導くものであり、すべからく守らなくてはならない」

 昔からその伝承を聞かされ続けていた男の故郷の者達は、だからこそお告げであろう夢を見てもそれに違和感を覚えることもなく。
 すんなりと受け入れることが出来たのだという。

「ときおり、私のしていることが間違っているのではと思ったこともあった。だが、君たちが現れたお陰で此処にこうしていたことは間違いではなかったと証明された」

 そう言ってから男はアルスたちに向けて深々と頭を下げる。

「来てくれてありがとう、感謝している」

 突然礼を言われ、驚くアルスはかぶりを振りながら男へと近付く。

「そんな…僕たちがお礼を言われる必要はありません。むしろ言うべきは僕たちです。今までオーブを守ってくださってありがとうございました」

 その言葉に報われた男は、顔を上げるとぎこちなく笑って見せた。
 笑うのは随分と久しぶりだと、そう言いながら、今度は声を上げて笑っていた。


 






2017/06/20(火) 語りべ
タイトル レイアムランドへ1









 その日の夜。
 アルスたちは男の手製鍋をご馳走になりながら、早速彼へと尋ねた。
 男が語っていた伝説の不死鳥ラーミアについてを聞くためだ。
 しかし、男もあまり不死鳥にについて知っているわけではないらしく。
 その不死鳥が何故存在しているのか、どうしてオーブが関わるのかは知らないと話した。

「だがオーブを集めた後、何処へ向かえば良いのかは知っている」
「本当?」

 食事中でありながらも思わず身を乗り出すスイリに、男は大きく頷く。
 と、男は突如席から立ち上がると部屋の壁に掛けてあった地図へと手を伸ばす。
 埃を被った古びた地図。
 それをテーブルの上へ彼はいきなり広げる。
 空中を舞う埃に顔を顰めるレオ。
 ストームとリルムは瞬時に周囲の料理を舞い散る埃から守るべく遠くへと持ち上げていた。

「おっさん、こういうのを広げるときは食事が終わってからにしろって…」

 だが男はレオの注意も聞かず、必死に地図を睨み続ける。
 そして、地図上のある一点へ指を差した。

「ここだ」

 地図の下部―――つまり世界の最南端に位置する場所。
 そこにある島を彼は指示していた。

「ここより南の地、レイアムランドにある不死鳥ラーミアを目覚めさせるための祭壇があるという」
「レイアムランド…」
「聞いた事はある。年中氷に覆われた秘境の島だそうだ。まさかそこにそのような祭壇があるとは聞いた事がなかったがな」

 思案顔を浮かべ、ストームがそう話す。

「まあそうだろう。不死鳥ラーミアは神聖なる存在。故に祭壇は聖域として常に不思議な力で守られているという…魔物や人すらも寄せ付けない場所との話だ」



2017/06/13(火) 語りべ
タイトル 奥にあった祠には3 今日の気分次回更新は20日(火)予定です







 祠の内部は壁の僅かな装飾以外何もない、殺風景であったのだが。
 男がある一か所の床を調べると、下へと続く階段が姿を現す。
 そこから祠の地下室に下りていけば、そこには上階とは打って変わってベッドやテーブルなど生活感のある一室があった。

「こんなところに暮らしてるなんて…不自由はないんですか?」

 不意に抱いた疑問をアルスは男へと投げかける。
 すると男は笑い声をあげながら「もう慣れた」と答えた。

「確かに魔王城も近い故に悪しき瘴気も多く感じられる。何もない所でもあるが…住めば都ということだ」

 男はそう言うと料理を振る舞うと良い、部屋の奥にある倉から食材を取り出していく。
 辺境地であるにも関わらず意外にも食材は豊富で食には困っていない様だった。

「凄いです。穀物もあるじゃないですか」
「ああ、この祠を代々守っていた者たちが作っていたんだろう畑があってな。それで思ったよりも快適に住まわせて貰っている」

 男は慣れた手つきで倉の中の野菜を手にし、それらを近くにあった籠へ入れていく。
 久々に大盤振る舞いのご馳走を作ると、やけに張り切っている様子であった。

「久しぶりに人と出会ったんだろうし、嬉しんだねきっと」

 そう言ってスイリも何処か嬉しそうな顔をしてみせる。
 先ほどまで延々と続くかのようなダンジョンを攻略し、魔物と戦い続けていたのだ。
 男の喜び様に癒されているのだろうと、アルスは思い、彼もまた笑みを浮かべる。

「突然お邪魔して申し訳ないけれど…今晩は甘えさせてもらおうか」
「それに、何故彼がオーブを持っていたのか…伝説の不死鳥ラーミアについても聞きたいところがあるしな」

 珍しくストームも肯定を示し、アルスたちは男の住まう祠で一泊することとなった。