世界は忘れゆかれる
お前がその作品を夢みたように、私も世界を夢みた

2019年01月の交換日記

2019/01/29(火) 19:09:04  
タイトル 続き


 事態は深刻だった。
 二大勢力、その両方に国は割れただろう、ヘタをすれば長く続く内乱の始まりになったかも知れないその悲惨な出来事、すなわち暗殺、起こってしまった事態を真っ先に知ったのは奴だった。
 そしてそれを隠したのも。

 何故気付かなかったのだろうと、今更に思う。

 あの男が親しかったはずの俺や、その他の人々を遠ざけはじめたのはその直後だった。
 いまにして思えばそれは彼が翻心したためではなかったのだ、やがて来る自分の破滅を用意していたがゆえに、俺たちを巻き込まぬための、そのための心遣い。
 あの時には、あの男が翻心から心を違えたのだとそう思ってしまったのだけれども。

 彼が政権の簒奪者に進んで手を貸したなどと、何故そんなことを思うことが出来たのだろう。
 だが、自分が騙されていたのも無理はないかも知れない。
 彼が、政権の簒奪者が全滅させようとしたかつての王家と後継者、そして擁護者を、むしろ巧妙に擁護していた事実は、彼自身が滅ぼされてから、ごく少数のものにだけ知られる事態となったが、それでもほとんどの人間は、彼が最後まで権力欲の虜となった政権の簒奪者に与したまま死んだと、そう思っているのだ。

2019/01/29(火) 19:07:29  
タイトル 背徳の真実


 …あの男が、唯一、真実を知り、この国を護っていたのだと、誰もが知らなかった。
 俺も知らなかった。

 あの男は見事に誰も彼もを欺き、裏切り、そして、本当に護るべきものだけを護ったのだ。
 この俺をも欺いて。

 真実が、その経緯が明るみに出されたのは、男本人がその企みを成就して全うした後だった、そしてその真実は明るみに出されてすら、男の汚名を晴らしはしなかった、もっともそんなこと男が望んだはずもないのだが。

 裏切り者の汚名をその半生以上に負って、なお道を選んだ男であったならば。

 男は、裏切ることそのものによって、全員を護った。
 知ったならば俺たち全員が紛糾しただろう、時期をまつことなく。
 だから、あの男は何もかも、己独りで引き受けた、汚名も、汚い仕事も、裏切りも。

 男は、やがて来るべき争乱を知っていた、その時のために、国内で内乱が起きるようなその事実を、いたずらに明かして糺すことが正義だとは思わなかったらしい。
 確かに、俺たちがそれをその時に知っていれば、ただでは済まさなかっただろう。


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