a.k堀内 葉那黒沢 修司

愛があるのか、ないのか、
Ep3_チョコよりも甘く

次は 堀内 葉那


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交換日記レンタル - nikkijam

2019/08/09(金) a.k
タイトル 3-010. 今日の気分end.



「可哀想ぉ~~~」
「なにが」
「人気モデルが、しがない町のカメラマンを探して、こんなところまで来たって言うのに」
「しらねぇよ。そんなこと」
「写真ぐらい撮ってあげればいいじゃない。ケチな男」
「あのな――、簡単に言うなよ。小さな町の写真屋で撮ってる写真とはわけが違うんだよ」
「同じでしょ」
「ちげぇよ」
「ふ―――ん」

それから私たちは歩き始めた。
歩き始めると、「ラーメンは次回持ち越しだな」と言った。

「そうだね――……って、あっ。一つ疑問があるんだけど」
「なんだよ」
「坂口さん、修司の写真を知ってた。どうして?」
「しらねぇよ。昔撮ってたやつのこと言ってんじゃねぇの?」
「修司が半分死にかけていた駆け出しの頃ね」

と、笑ったら、「そんなこと言うやつは、今度のラーメンはおまえのおごりだ」と言った。

「ええ――っ?!」
「ついでに餃子とビールもつけろ」
「ひどくない?」
「うるさい。決まりだ」


私は何も知らなかった。
修司が写真を撮りたがらない理由も、有名カメラマンの助手として働いていた頃のことも。
何も知らない。


2019/08/09(金) a.k
タイトル 3-009.



「坂口さんが俺のこと買ってくれてるのは嬉しいけど……、無理だよ。俺には坂口さんを撮れない」
「どうしてですか?」
「俺にそんな力量はないよ」
「そんなことないです!」

と、坂口さんは大きな声を出して否定した。
それから言葉を続けて、「あたしの宣材写真撮ってくれたことあったじゃないかですか。あの写真凄く評判良くて、修司くんのおかげで仕事がたくさんきたんです」と言った。

「それは、坂口さん自身の努力でしょ。俺は関係ないよ」
「そんなことありません!」

まっすぐに修司を捉えている彼女の目を見ていると、本気で修司に撮ってもらいたいのが伝わってくる。

「撮ってあげれば?」
「簡単に言うなよ」
「売れっ子モデルがこんなに懇願してるのに?」
「無理なもんは無理。俺には出来ない」

修司の口調を聞いて、頑固スイッチが入ったのがわかった。
これ以上何言っても絶対首は縦にふらないと思った。

「そんなぁ――……」
「わざわざ会いに来てくれたのに、良い返事出来なくて悪いけど」


――――結局、修司は最後まで首を縦には振らなかった。
坂口さんは店を出てすぐに拾ったタクシーに乗り込んだ時に、「あたし、絶対あきらめませんから!」と見送った私たちに宣言して帰って行った。

「あ―――……、なんかすげぇ疲れた」

坂口さんを乗せたタクシーを見送った後に言った。


2019/08/09(金) a.k
タイトル 3-008.



「―――まぁ、そんなところ。それより、そろそろ飲み物注文しない?俺、喉渇いたんだけど」

と、修司は話題をそらすように言った。

「あっ、そうですよね。何か飲みましょう」

坂口さんはそう言って、ドリンクメニュー表をテーブルの上に広げた。
それから三人同じグラスビールを注文して、注文した料理が数品運ばれてきた頃。私はようやく本題に触れるかのように口を開いた。

「―――ねぇ、坂口さんは、どうして修司を探していたの?」
「修司くんにお願いがあるから」

と、手に持っていたお箸を置いて、坂口さんは言った。

「なに?」
「ちょ、ちょっと待って!」

と、私は会話を止めるように言った。

「なんだよ。話し止めるなよ」
「その話って……、私も聞いて大丈夫な話なの……かな?もし、ダメなら……出て行くけど……」
「大丈夫ですよ。葉那さんもいてください」

と、坂口さんは微笑む。

「あたし、今度写真集を出すことになったんです。その写真集のカメラマンを修司くんにお願いしたくて来ました」
「ええっ!!」

と、大きな声で驚いている私をよそに修司は、驚いた様子もなく相変わらずのポーカーフェイスで、「なんで俺なの?」と聞いていた。

「修司くんが撮る写真が好きだからです」
「そんな理由で?」
「はい。修司くんが撮る写真ってどれも愛に溢れてるものが多くて、あたしもそうやって撮って欲しいなって思ったんです」
「凄いじゃん!修司!」

と、自分のことのように喜んでいる私の横で、修司はニコリともせずにいた。


2019/08/09(金) a.k
タイトル 3-007.



「どうせ、修司が言ったんじゃないの?」
「俺が言うわけねぇだろ。今日すげぇ久しぶりに会ったんだから」
「じゃあ……誰?」

と、私が言ったら、坂口さんが口を開いた。

「然くん」

彼女から然の名前を聞いて、私の胸の鼓動がひとつ跳ね上がる。

「坂口さん、あの男と仲良いの?」
「修司、何も知らないの?」
「なんだよ」
「今日、週刊誌に載ってたじゃない。彼女と然のこと」
「はぁ?!」

修司は目を丸くして驚いていた。

「あれは嘘ですよ。あたしと然くんはただのお友達です。つきあってません」

と、両手で大きくバツを作った。

「そう……なんですか……」

そう言った私の顔を修司が見たように感じたが、私は修司の方を見なかった。

「あたし、ずっと修司くんに会いたかったんです。会いたくて何度もメッセージ送ってるのに無視されて。直接会いに行きたくても居場所がわからなくて。そんな時に然くんと仕事で一緒になることがあって、その時に教えてもらいました。修司くんが兎町商店街にいることも、勤めている場所が商店街の中にある如月写真館だってことも」
「そこに辿り着くとは思わなかったな」
「葉那さんのことも聞きました」
「私のことも?」
「写真館で修司くんに会えなかったら、同じ商店街の中にある“PETER”っていう洋食屋に葉那っていう女がいるから訪ねてみろ。って」
「そうだったんだ……」
「あたし、詳しいことは聞かなかったんですが、修司くんと葉那さんは、然くんとはどういう関係なんですか?お友達?」


2019/08/09(金) a.k
タイトル 3-006.



彼女が修司に話があるというので、ゆっくりと話が出来る場所へ行くことになった。西口近くに彼女の行きつけのお店があるらしく、私たちはその店に移動した。
彼女の行きつけのお店は、総合ビル2階にある飲食店。螺旋階段を登った先にあった。超人気アイドルのイトコにあたる男性が経営しているお店で、よく芸能人が出入りしている。と彼女が教えてくれた。
店の奥にある個室へと案内された。こじんまりとした個室で、4人掛けのテーブルがあるだけだった。
着席してすぐに彼女はサングラスを外した。

「あっ!坂口アリサ!…さん」

私と修司の向かい側に座った彼女が、着席してすぐにサングラスを外した
彼女の顔が分かってすぐに大きな声を出してしまった。

「おまえ、今気づいたの?」
「いや、だって……、さっきはよくわからなかったから……」

私と修司の向かい側に座っていた坂口さんは、クスッと笑う。

「間違っていたらごめんなさい。もしかして……葉那さん……だったりします?」
「え?どうして私の名前を?」
「ふふふ」

と、笑みを浮かべ、「どうしてでしょう」と言う。

「おまえの悪行が芸能界まで届いてるんだよ」

修司はそう言って、笑う。

「悪行って何よ」
「酒癖の悪さとか」
「悪くないし、普通だし」

そう言った後に隣に座っている修司を睨みつけるように見た。
私の顔を見ていた修司は、「なんだよ。その目」と言う。


2019/05/18(土) a.k
タイトル 3-005. 今日の気分end.



「有難うございます。助かりました!」
「東口へは、あそこの高架下を通って行くといけますよ」

自転車や人が出入りしている高架下を指さして言った。
すると彼女は、「ご親切にありがとうございました。助かりました」と私に頭を下げた後、高架下の方へと歩き始めた。

――――― そこの従業員がもうすぐ来るって言ってあげればよかったかな?

そんなことを思いながら、彼女の後ろ姿を見送る。
彼女の後姿を見送っていると、高架下からやってきた修司が入れ違うようにこちらへと向かって歩いて来るのが見えた。

「修司!」

と、名前を呼んで手を振った。
私に気が付いた修司は、「おまえ、早くね?」と言った。

「5分前行動でしょ」
「寝言は寝て言え」

そう言った修司と先ほどの彼女がすれ違った時、

「修司くん!」

と、修司を見て彼女は声をかけた。
名前を呼ばれた修司は、歩いていた足を止めて振り返る。

「…………誰?」

修司は黙り込んだ後に言った。
そんなことを言われた彼女は、大きなサングラスを外した。

「――え?坂口さん?」

と、修司は驚いていた。
自分のことを思い出してくれて嬉しかったのか、「修司く~~~ん!会いたかったぁ~~~!」と彼女は修司に抱きついた。


2019/05/18(土) a.k
タイトル 3-004.



兎町駅の西口方面は、商店街がある東口方面とは対照的に商業ビルが目立ち、スーツ姿のサラリーマンの姿が多い。駅前にはタクシー乗り場やバスターミナルがあり、多くの人たちの待ち合わせ場所となっている時計台もある。円形の噴水が大理石の柱で出来た時計台をぐるりと囲み、1時間に一回噴水が上がり、夜になるとライトアップされて魅了する。
線路沿いには兎町駅のシンボルとなった40数階まであるタワーマンションが2棟並んでいた。この辺りで一番高い建物だけに、上階からは兎市全体を一望出来る。と、このマンションが売りに出されていた時の広告に書かれていた。

「本当に一望出来るのかなぁ……?」

西口の時計台の縁に腰かけて、ここから見えるタワーマンションを眺めながら思わず言葉を漏らした。
修司との待ち合わせ時刻までまだ少しあり、一人で座っていると、「すみません……」と可愛らしい声をした女性に声をかけられた。
うつむけていた顔を上げると、大きな黒のサングラスをして、アーモンド色したロングヘアの女性が目の前に立っていた。

「あの……すみません……。如月写真館はご存知ですか?」
「如月写真館?」
「はい……。兎町商店街にあるって聞いたんですけど……。この辺りに商店街が見当たらなくて……」
「それなら、東口の方ですよ」

と、言って、線路側を指さした。
それから、「線路の向こう側が東口方面で、如月写真館は駅前にある兎町商店街の中にあります」と教えた。


2019/05/18(土) a.k
タイトル 3-003.



「へぇ――、凄いじゃん。それって芸能人とかもくるの?」
「来るんじゃない?専属モデルとか、雑誌に縁のある芸能人とか」
「じゃあ――、坂口アリサは?」

と、何故かゆっちんは目をキラキラさせて聞いてきた。

「どうだろ?」
「パーティでバッタリとかしたら面白いのにね」

と、ゆっちんは笑う。

「面白くないでしょ」
「ええ――?だって、人気ミュージシャンの元カノと今カノがパーティ会場にいるんだよ?スクープじゃん。芸能記者に垂れ込もうかな」
「何言ってんのよ」

そう言った時、私の携帯電話が鳴った。
メッセージを受信して、送信者は修司からだった。

「マジかぁ――」

修司からのメッセージを読んで、思わず声が出た。

「なに?どうしたの?」
「今日、西口に新しく出来たラーメン屋に修司と行くんだけど。さっき修司が店の前通ったら、すでに列が出来てるみたいなの」
「テレビでやってた店でしょ?あそこよく並んでるって聞くよ?」
「マジで?ん――……並ぶの面倒だから別の店行きたいけど、修司はそういうの平気なタイプだからなぁ……」
「なんだかんだで仲良くやってるみたいで安心した」
「まぁ……。今のところは」

修司との関係は何も変わっていないが、二人で向き合って話したことによって、何かが変わったように思う。具体的にそれが何か……なのかはわからないけど、明らかに以前の二人とは違う。


2019/05/18(土) a.k
タイトル 3-002.



「なにを?」

そう言うと、ゆっちんは後ろの方で何かゴソゴソとし始めて、一冊のゴシップネタが多く取り扱っている週刊誌を私の目の前に置いた。
その雑誌の見出しには大きな文字で、『人気バンド‟Leonardo.b“ボーカリスト神永然(29)熱愛発覚!お相手は人気モデル坂口アリサ(25)』と記載されていた。
見開きのページには、二人が車に乗っている写真と、飲食店の前で話している写真が大きく載っていた。
記事を読んでいたらゆっちんが、「坂口アリサってさ――、化粧品のCMに出て人気急上昇のモデルの子だよね」と言った。

「へぇ――……そうなんだ。知らない」

記事に目を通しながら答えたら、「ショック?」とゆっちんは言う。

「まさか」
「だよね。あんたには修司くんがいるんだもんね」
「……それはともかく」

と、答えた後に、「然が有名になればなるだけ私は、知りたくなくてもこいつの恋愛を知ることになるんだね」と口にした。

「まぁ…そうだね。普通中々そういうのないけど」

――――― 然は新しい幸せを見つけたんだね

週刊誌に乗っている写真は、然の顔がハッキリ映ったものじゃなかったけど、立ち姿や姿勢で然だとわかる。
3年経っていても然だとわかってしまう自分が、なんだか悔しい。

「あっ、そうだ。ゆっちんに聞きたいことがあったの」
「なに?」
「パーティドレスとか持ってない?」
「誰かの結婚式にでも出るの?」
「結婚式じゃなくて、出版社のパーティ。お仕事させて貰っているファッション誌の創刊30周年記念パーティに招待されてね」


2019/05/18(土) a.k
タイトル 3-001.



季節は2月を迎えていた。
開店前の『USAMIYU』へ顔を出すと、美雨ちゃんがカウンターに座ってチョコレートの本を一生懸命読んでいた。美雨ちゃんの後ろから、「美味しそうだね」と声をかけた。

「葉那ちゃん」
「なにそれ?チョコレートケーキ?美味しそうだね」

と、言って、美雨ちゃんの隣に座る。

「もうすぐバレンタインでしょ?だから、お友達に手作りのチョコを作って渡さなきゃいけないの」
「バレンタインって……いつからそんなシステムになったの?」
「好きな人にチョコをあげるなんて、今時の女子小学生の中では流行ってないみたいよ」

と、言いながら、ゆっちんが階段から降りてきた。

「マジで?!好きな人にチョコあげないの?」
「好きな人なんかいないも~ん」
「それはそれで……寂しいね」
「美雨。そろそろお店の準備しなきゃいけないから。二階行ってなさい」

ゆっちんが言うと美雨ちゃんは、「は~い」と返事をして開いていた本を閉じた。

「美雨ちゃん、またね」
「うん。バイバイ」

と、美雨ちゃんは私に小さく手を振ると、元気よく二階へと駆け上がって上がって行った。

「バレンタインかぁ……。ここ数年無関係な行事だっただけに、すっかり忘れてたわ」
「修司くんにあげれば?喜ぶんじゃない?」
「修司にチョコかぁ……。小学生ぐらいまではあげてたような記憶があるなぁ……」
「それは思いっきり義理チョコでしょ」
「まぁ、そうだね」
「―――そんなことより。葉那、見た?」

と、ゆっちんは言う。