a.k堀内 葉那黒沢 修司

愛があるのか、ないのか、
Episode One.

次は 堀内 葉那


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交換日記レンタル - nikkijam

2018/04/07(土) a.k
タイトル 1-041. 今日の気分end.



――――― お酒が入ってるから、そんなしおらしいこと言うの?

普段絶対私には見せない一面を目の前にして、なんだかとても修司が可愛く映り、私の女心をくすぐる。
涙をぬぐってくれた修司を見ていると、自然と自分の顔を近づけて、軽く自分の唇を修司の唇に押し付けた。
ゆっくりと離すと私の様子を伺うように私の顔を見る。

「酔っぱらってんの?」
「かもしれない……」

私の返事を聞いた修司は、私の頬をぷにぷにっとつまみながら小さく笑う。
すると今度は修司が、顔を近づけてきて私と同じように軽くキスをした。

「修司も……酔ってんの?」
「かもな。目の前にいる葉那が、可愛く見える」
「あ――……、それは酔ってるね」
「だろ?」

私たちは顔を見合わせて笑い、今度はお互いが引き寄せられるようにくちづけを交わした。
何度も軽めのくちづけを交わし、頭の中では止めなきゃいけないって思っているのに、止まらない。
修司と初めて深くて甘い大人のくちづけを交わした時、私の中にある‟女“のスイッチが入ってしまった。


20代最後のクリスマスイブの夜。
私は29年間ずっと側にいた男に抱かれた―――――



2018/04/07(土) a.k
タイトル 1-040.



それから修司の顔を見ながら、「……また同じようなことをしてしまったら……、私どうしたらいいの?どう償えばいいの?わかんないよ……」と口にしたら、じわりと涙の粒が生まれて、静かに頬に零れ落ちた。

「なにわけわかんないこと言って泣いてんだよ」

そう言って修司が、突然動き出したと思ったら、優しく私を包み込むように抱きしめた。
抱きしめられたことに驚いて、心拍数が上がる。

「葉那まで俺の側からいなくなるなよ」

どうしたらいいのかわからない私をよそに、修司は少し黙り込んだ後に言った。
その言葉が余計に涙を誘い、顔を見られたくなくて、しがみつくように修司の背中に腕をまわした。
大人になって初めて修司と抱き合い、修司がしっかりした男らしい体つきだったことに気が付く。
見た目では修司が成人男性だってことはわかっているが、こうやって抱き合うまで意識していなかった。それだけに、修司が男なんだってことが、妙に伝わってくる。
しっかりと抱き合った後に腕を解き、今までにないぐらい至近距離でお互いの顔を見合わせた。
“男”と意識したからなのか、お酒がまわっているからなのか、わからないけど、胸の鼓動が速くなっていて苦しい。

「おまえまでいなくなったら、寂しいよ」

そう言って、頬に伝った涙をぬぐってくれた。


2018/04/07(土) a.k
タイトル 1-039.



「俺らが別れたのは、おまえのせいじゃねぇよ」
「楓ちゃんから言われたの。私と修司の関係は、体の関係がないだけで、恋人の自分よりもそれ以上の深い絆があるように思う。って。だから、自分の誕生日よりも私を選んだってことが、修司の優先順位のように思えたって……。それがどうしても許せなかったって……」
「……………」
「私……、修司が見たことないぐらい嬉しそうな顔をして結婚報告してくれたこと、凄く嬉しかったんだよ。本当に、本当に、心の底から二人の幸せを願っていたんだよ。それなのに……、まさか私が二人の幸せを壊してたなんて……。知らなかったとはいえ、本当にごめんなさい」
「葉那が悪いわけじゃねぇだろ。俺が悪いんだから」

と、言った後に、「つーか、いい加減顔をあげろ」と言った。

「嫌だ。あげない」

そう言った私に修司は、うんざり気味に、「マジでいい加減にしろって……」と言う。

「これから先も修司といると同じようなことやっちゃうかもしれない。修司の幸せ、壊しちゃうかもしれない」
「何言ってんだよ……」

と、呆れている修司をよそに私は言葉を続けた。

「修司には幸せになって欲しいの。私がそばにいることで、修司の幸せが逃げていくなら、私は修司と距離を置く。もう会わないし、電話もしない」
「バカか。おまえがいてもいなくても、俺は幸せになれるんだよ」
「でも、なれなかったじゃない!」

と、大きな声を出して、顔を上げた。


2018/04/07(土) a.k
タイトル 1-038.



「なんで言わなかったの?あの日が、楓ちゃんの誕生日だったって」
「楓の誕生日は翌日でも祝えるし、今年がダメでも来年、再来年、結婚すればこれから先二人で祝えると思ったんだよ。だから言わなかった」
「修司……ホント何やってんのよ……」

私はガクッと頭を下に向けると、言った。

「あの男と別れて、電話口で号泣しながら、助け求めてきたおまえを放っておけるわけないだろ」
「そうだとしても。修司は間違ってる」
「なにが?」

と、修司は少し苛立っている口調で言った。

「男はね、どんなことがあっても自分の女を最優先するものなの。どんなことがあっても自分の女以外の女に優しくしちゃダメなの。ましてや誕生日っていう特別な日に、よその女の元へ行くなんてありえない。修司のそういう優しさは良いところだけど、使い方を間違うと罪になるよ」
「……………」
「………まぁ……そういう優しさを知っていて、利用した私が一番悪いんだけど……」

それから私は這うように修司の側へ行くと、きちんと正座をして土下座した。

「申し訳ありませんでした」

と、謝罪して、「私のせいで結婚をダメにしてしまって、本当に申し訳ありません」と続けた。

「なにやってんだよ。葉那。頭あげろ」

修司の言葉に私は、首を横に振り、「出来ない。だって、私は修司の幸せを壊しちゃったんだもん」と言った。


2018/04/07(土) a.k
タイトル 1-037.



テレビが置いてある洋室にはローテーブルがあるだけで、ソファはない。テレビもつけず、暖房さえつけずに無音に近いような静かな室内で、私たちはローテーブルを挟んで向かい合う。
修司は、私の顔を何も言わずにじっと見ていて、私からの言葉を待っているように見えた。それが凄く伝わってくるけど、中々謝罪の言葉が出てこない。

「――――お酒ないの?」
「はぁ?!」

やっと口を開いたと思ったら、まさかのお酒の要求に修司は、目を丸くして驚いていた。

「なんか……勢いがないと……」
「謝罪するのに一杯引っ掛けるって、どういう了見だよ」
「内容が内容だけに……」

修司は呆れながらも、「缶ビールしかねぇからな」と言って立ち上がった。
冷蔵庫から2本缶ビールを取り出して持ってくると、1本は私に手渡し、もう1本はプシュッといい音を出して開けていた。

「自分も飲むんじゃん」
「謝罪内容によったら、勢いづけないといけないかもだろ」

私も缶ビールを開けて、ゴクゴクと勢いよく飲んだ。
缶ビールをテーブルの上に置くと、私はようやく口を開いた。

「――――楓ちゃんに会った」

私の言葉に修司は、「は?」とさっきよりも小さく驚く。

「楓ちゃん、ライターの仕事してるみたいで、今度私がやる音楽雑誌の仕事で一緒にやることなったの」
「世の中どれだけ狭いんだよ」
「それで―――……、楓ちゃんから聞いた。結婚がダメになった理由」

そう言った後に修司の顔を見た。
何も言わず、修司も私の顔を見ている。


2018/03/06(火) a.k
タイトル 1-036. 今日の気分end.



「修司んちで飲みたい」
「はぁ?!」

と、驚いた後に、「何言ってんだよ」と後ろから私の腕を慌てて掴んで、歩いていた私の動きを止める。

「俺、明日普通に仕事なんだよ」
「だから?」
「だから、来るなって言ってんの」
「ああ——……わかった。今、部屋汚いんだ」
「ちげぇよ」
「あっ、それともエッチなDVDを隠し忘れたとか?」

と、言った後に笑った。
修司は呆れながら、「何言ってんだよ」と言う。

「大丈夫大丈夫。お兄ちゃんの部屋でそういうの見慣れてるから」

と、言って、再び歩き出した私をまた掴んで、「葉那。いい加減にしろって」と怒る。

「……………」
「仕事で何かあったのか?」
「…………べつに。仕事では何もないよ……」

修司は大きく息を吐いた後に、「———とにかく、明日ゆっくり話聞いてやるから。今日は大人しく帰れ」と言う。
私はその言葉に首を横に振る。

「なんで今日はそんなグズるんだよ」
「べつに……グズってるわけじゃないよ……」
「じゃあ——なんだよ」
「………修司に……謝らなきゃいけないことがあるだけ」
「俺に?何を?」
「ここでは言えない」

修司は少し考えた後に、「————わかったよ。10分だけだからな」と言い、自分の自宅がある如月写真館の方へと歩き始めた。


2018/03/06(火) a.k
タイトル 1-035.



「ああ……。うん。ごめん……」

抱きついていたゆっちんは、私から離れると、「何飲む?シャンパン?ビール?」と聞く。
私が、「ああ……、じゃあ……、シャンパン貰おうかな」と答えると、「OK」と言って、カウンターの中へと戻る際に壁にかかっていたハンガーを渡してくれた。

「打ち合わせでもあったのか?」

と、入り口近くのカウンター席に座っていた修司が聞いてきた。
修司と目が合うと、修司越しに楓ちゃんの顔と話が頭に浮かぶ。

「……………」
「おい。聞いてた?」

何も言わない私に修司は言った。

「——ああ、ごめん。聞いてなかった」

と、コートのボタンを外しながら答える。

「打ち合わせでもあったのか?って聞いたんだよ」
「ああ……、うん、まぁ……」

コートをハンガーに通すと、壁側にかけた。
それから修司の横に座ると、修司は私の顔を覗き込む。

「——なに?」

修司の視線が気になって言った。

「なんかあった?」
「なんで?」
「昼間会った時と違う気がするから」
「気のせいじゃない?」
「だったらいいけど」

私と修司との間に何とも言えないような空気が流れている中、ゆっちんが私のシャンパンをカウンター越しに目の前に置いた。
それから、「修司くん。美雨が写真撮って欲しいって言ってるんだけど、いいかな?」と言う。
修司は立ち上がり、横に置いていた一眼レフのカメラを手にすると、「いいよ」と言って席から離れた。


————それから2時間余りでパーティはお開きになった。美雨ちゃんのお友達たちは、ビンゴでゲット出来たプレゼントとブーツに入ったお菓子をお土産に貰い、ご機嫌に店を後にした。
ゆっちんも美雨ちゃんを寝かせるために一旦2階の自宅へと上がって行き、顔見知りのお客さんたちもそれに続くように帰って行った。
残された私と修司は、てっちゃんと一緒に後片付けを手伝い、片付けを終えた頃に2階から降りてきたゆっちんが、「4人で飲みなおそうよ」と言い出して、適当に残っていた料理やお菓子を広げて4人で飲みなおした。
1時間近く楽しく話しながら飲んで、私と修司は『USAMIU』を後にした。

「おい、おまえんちあっちだろ」

と、店を出てすぐに、修司の自宅がある如月写真館の方へ歩き出した私に修司は言う。


2018/03/06(火) a.k
タイトル 1-034.



「修司って、あんまり自分のこと話さないから」
「そうだね」
「やっぱり……“何か”あったんだよね?」
「まぁ……あったからボイコットしたんだよ」
「だよね……」
「あんな結末を望んでいたわけじゃなかったんだけどね……」

楓ちゃんは視線をコーヒーカップの方へと移した。
楓ちゃんになんて声をかけたらいいのかわからず、頭をフル回転させて言葉を探していると、楓ちゃんが口を開いた。

「修ちゃんと付き合っている中で、ひとつだけずっと気になっていたことがあったの。それに触れるとすべてが壊れるような気がして……そのことを心の奥底に隠していたんだけどね。挙式2週間ぐらい前かなぁ……。あることが起こって、その気持ちが一気に溢れ出して、修ちゃんに私の心の奥にあった気持ちを全部ぶつけちゃったの」
「それが原因で喧嘩になったの?」
「喧嘩っていうか……、私が修ちゃんの言い分に納得できなかっただけ。二人で話し合っていく中で、私が最後まで修ちゃんを理解出来なかった。ただそれだけ」
「楓ちゃんは、何を理解出来なかったの?」
「修ちゃんの優しさ」
「修司は……楓ちゃんに何をしたの?」

すると楓ちゃんは、少し黙り込んだ後に重い口を開いた—————



楓ちゃんと別れて兎町へと戻って来たのは、19時を少し過ぎた頃だった。
駅に着いた時に携帯電話を見ると、ゆっちんからクリスマスパーティが始まった内容の文字と写真が送られてきていた。写真には美雨ちゃんの友達親子も何人か写っていたし、顔見知りのお客さんも笑顔で写っていた。そして最後に送られてきたのは、てっちゃんと二人で写っている修司の写真。
楽しそうに笑っている修司の写真が、私の心を締め付ける。
楓ちゃんが話してくれた真相が、本当なのだとしたら…………

「バカな男」

そう呟いて、携帯電話を閉じた。


『USAMIU』の店の扉を開けると、クリスマスソングと子どもたちの楽しそうな声が耳に入ってくる。
子どもたちがビンゴマシーンをクルクルと回して数字が書かれている玉を出していた。出た玉の数字をてっちゃんが、大きな声で伝えていた。
番号が発表されたら、「リーチ!リーチ!」とか「全然番号ねぇよ!」と、みんな思い思い口に出しては盛り上がっていた。


2018/03/06(火) a.k
タイトル 1-033.



出版社があるビルから少し歩いたところにコーヒーショップがあった。平日ということだけあって、休日より混雑はしていなかったが、空席は少なく感じた。空いていた二人掛けの席に座り、アイスカフェラテ片手に携帯電話を弄りながら楓ちゃんが来るのを待つ。
修司に楓ちゃんのことを知らせようかと何度も思ったが、ゆっちんから聞いた話を思い出して、メッセージを送ることが出来なかった。

————— 口に出して言わないってことは、今でもまだ楓ちゃんが修司の中で存在しているってことよね?

そんなことを考えながら、手に持っていた携帯電話を置いてアイスカフェラテを飲んだ。
アイスカフェラテを半分ぐらい飲んだ頃。楓ちゃんはカフェへとやってきた。
楓ちゃんは、「お待たせしてごめんね」とホットコーヒーを乗せたトレイを持って、テーブルを挟んだ向かい側に座る。

「ううん」
「それにしても。まさか、葉那ちゃんと再会するとは思わなかったな」
「そんなの私もだよ」

私たちは顔を見合わせて、笑った。

「楓ちゃん、元気だった?」
「うん。葉那ちゃんは?」
「見ての通り」

そう言って楓ちゃんは小さく微笑んだ後に、「修ちゃんは?」と聞く。
楓ちゃんは修司のことを“修ちゃん”と呼ぶ。
久しぶりに聞いたその呼び名が、懐かしく感じた。

「修司も元気だよ」
「修ちゃん、まだ写真館で働いてるの?」
「うん。最近は色々写真も撮らせて貰ってるみたい」
「へぇ——……そうなんだぁ……」

と、俯き気味に小さく微笑み、真っ白のコーヒーカップに入っているホットコーヒーを一口飲んだ。
私もつられるように残り少ないアイスカフェラテをストローで飲む。
楓ちゃんの様子を見ていると、久しぶりに会った私との再会を喜んだって言うよりも、私から修司のことを聞こうとしているように見えた。

「…………修ちゃんから何か聞いてる?」

少しの沈黙の後、楓ちゃんは言った。

「何か、って……、修司と楓ちゃんのこと?」
「うん……」
「ううん。なにも」
「そっか……」

楓ちゃんはそう言って口を閉じて、コーヒーを飲む。
一口、静かに飲んだ後に手に持っていたカップを静かに置いた。


2018/02/04(日) a.k
タイトル 1-032. 今日の気分end.



その光景が可愛くて、私は思わずクスッと笑みをこぼす。
それから鞄の中から名刺ケースを取り出して、名刺を一枚、楓ちゃんに渡した。

「近くのカフェで時間潰しておくから。終わったら連絡して。ここに携帯の番号とメアド記載してあるから」
「ありがとう」

と、楓ちゃんは微笑んだ。