a.k堀内 葉那黒沢 修司

愛があるのか、ないのか、
Ep3_チョコよりも甘く

次は 堀内 葉那


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交換日記レンタル - nikkijam

2019/05/18(土) a.k
タイトル 3-005. 今日の気分end.



「有難うございます。助かりました!」
「東口へは、あそこの高架下を通って行くといけますよ」

自転車や人が出入りしている高架下を指さして言った。
すると彼女は、「ご親切にありがとうございました。助かりました」と私に頭を下げた後、高架下の方へと歩き始めた。

――――― そこの従業員がもうすぐ来るって言ってあげればよかったかな?

そんなことを思いながら、彼女の後ろ姿を見送る。
彼女の後姿を見送っていると、高架下からやってきた修司が入れ違うようにこちらへと向かって歩いて来るのが見えた。

「修司!」

と、名前を呼んで手を振った。
私に気が付いた修司は、「おまえ、早くね?」と言った。

「5分前行動でしょ」
「寝言は寝て言え」

そう言った修司と先ほどの彼女がすれ違った時、

「修司くん!」

と、修司を見て彼女は声をかけた。
名前を呼ばれた修司は、歩いていた足を止めて振り返る。

「…………誰?」

修司は黙り込んだ後に言った。
そんなことを言われた彼女は、大きなサングラスを外した。

「――え?坂口さん?」

と、修司は驚いていた。
自分のことを思い出してくれて嬉しかったのか、「修司く~~~ん!会いたかったぁ~~~!」と彼女は修司に抱きついた。


2019/05/18(土) a.k
タイトル 3-004.



兎町駅の西口方面は、商店街がある東口方面とは対照的に商業ビルが目立ち、スーツ姿のサラリーマンの姿が多い。駅前にはタクシー乗り場やバスターミナルがあり、多くの人たちの待ち合わせ場所となっている時計台もある。円形の噴水が大理石の柱で出来た時計台をぐるりと囲み、1時間に一回噴水が上がり、夜になるとライトアップされて魅了する。
線路沿いには兎町駅のシンボルとなった40数階まであるタワーマンションが2棟並んでいた。この辺りで一番高い建物だけに、上階からは兎市全体を一望出来る。と、このマンションが売りに出されていた時の広告に書かれていた。

「本当に一望出来るのかなぁ……?」

西口の時計台の縁に腰かけて、ここから見えるタワーマンションを眺めながら思わず言葉を漏らした。
修司との待ち合わせ時刻までまだ少しあり、一人で座っていると、「すみません……」と可愛らしい声をした女性に声をかけられた。
うつむけていた顔を上げると、大きな黒のサングラスをして、アーモンド色したロングヘアの女性が目の前に立っていた。

「あの……すみません……。如月写真館はご存知ですか?」
「如月写真館?」
「はい……。兎町商店街にあるって聞いたんですけど……。この辺りに商店街が見当たらなくて……」
「それなら、東口の方ですよ」

と、言って、線路側を指さした。
それから、「線路の向こう側が東口方面で、如月写真館は駅前にある兎町商店街の中にあります」と教えた。


2019/05/18(土) a.k
タイトル 3-003.



「へぇ――、凄いじゃん。それって芸能人とかもくるの?」
「来るんじゃない?専属モデルとか、雑誌に縁のある芸能人とか」
「じゃあ――、坂口アリサは?」

と、何故かゆっちんは目をキラキラさせて聞いてきた。

「どうだろ?」
「パーティでバッタリとかしたら面白いのにね」

と、ゆっちんは笑う。

「面白くないでしょ」
「ええ――?だって、人気ミュージシャンの元カノと今カノがパーティ会場にいるんだよ?スクープじゃん。芸能記者に垂れ込もうかな」
「何言ってんのよ」

そう言った時、私の携帯電話が鳴った。
メッセージを受信して、送信者は修司からだった。

「マジかぁ――」

修司からのメッセージを読んで、思わず声が出た。

「なに?どうしたの?」
「今日、西口に新しく出来たラーメン屋に修司と行くんだけど。さっき修司が店の前通ったら、すでに列が出来てるみたいなの」
「テレビでやってた店でしょ?あそこよく並んでるって聞くよ?」
「マジで?ん――……並ぶの面倒だから別の店行きたいけど、修司はそういうの平気なタイプだからなぁ……」
「なんだかんだで仲良くやってるみたいで安心した」
「まぁ……。今のところは」

修司との関係は何も変わっていないが、二人で向き合って話したことによって、何かが変わったように思う。具体的にそれが何か……なのかはわからないけど、明らかに以前の二人とは違う。


2019/05/18(土) a.k
タイトル 3-002.



「なにを?」

そう言うと、ゆっちんは後ろの方で何かゴソゴソとし始めて、一冊のゴシップネタが多く取り扱っている週刊誌を私の目の前に置いた。
その雑誌の見出しには大きな文字で、『人気バンド‟Leonardo.b“ボーカリスト神永然(29)熱愛発覚!お相手は人気モデル坂口アリサ(25)』と記載されていた。
見開きのページには、二人が車に乗っている写真と、飲食店の前で話している写真が大きく載っていた。
記事を読んでいたらゆっちんが、「坂口アリサってさ――、化粧品のCMに出て人気急上昇のモデルの子だよね」と言った。

「へぇ――……そうなんだ。知らない」

記事に目を通しながら答えたら、「ショック?」とゆっちんは言う。

「まさか」
「だよね。あんたには修司くんがいるんだもんね」
「……それはともかく」

と、答えた後に、「然が有名になればなるだけ私は、知りたくなくてもこいつの恋愛を知ることになるんだね」と口にした。

「まぁ…そうだね。普通中々そういうのないけど」

――――― 然は新しい幸せを見つけたんだね

週刊誌に乗っている写真は、然の顔がハッキリ映ったものじゃなかったけど、立ち姿や姿勢で然だとわかる。
3年経っていても然だとわかってしまう自分が、なんだか悔しい。

「あっ、そうだ。ゆっちんに聞きたいことがあったの」
「なに?」
「パーティドレスとか持ってない?」
「誰かの結婚式にでも出るの?」
「結婚式じゃなくて、出版社のパーティ。お仕事させて貰っているファッション誌の創刊30周年記念パーティに招待されてね」


2019/05/18(土) a.k
タイトル 3-001.



季節は2月を迎えていた。
開店前の『USAMIYU』へ顔を出すと、美雨ちゃんがカウンターに座ってチョコレートの本を一生懸命読んでいた。美雨ちゃんの後ろから、「美味しそうだね」と声をかけた。

「葉那ちゃん」
「なにそれ?チョコレートケーキ?美味しそうだね」

と、言って、美雨ちゃんの隣に座る。

「もうすぐバレンタインでしょ?だから、お友達に手作りのチョコを作って渡さなきゃいけないの」
「バレンタインって……いつからそんなシステムになったの?」
「好きな人にチョコをあげるなんて、今時の女子小学生の中では流行ってないみたいよ」

と、言いながら、ゆっちんが階段から降りてきた。

「マジで?!好きな人にチョコあげないの?」
「好きな人なんかいないも~ん」
「それはそれで……寂しいね」
「美雨。そろそろお店の準備しなきゃいけないから。二階行ってなさい」

ゆっちんが言うと美雨ちゃんは、「は~い」と返事をして開いていた本を閉じた。

「美雨ちゃん、またね」
「うん。バイバイ」

と、美雨ちゃんは私に小さく手を振ると、元気よく二階へと駆け上がって上がって行った。

「バレンタインかぁ……。ここ数年無関係な行事だっただけに、すっかり忘れてたわ」
「修司くんにあげれば?喜ぶんじゃない?」
「修司にチョコかぁ……。小学生ぐらいまではあげてたような記憶があるなぁ……」
「それは思いっきり義理チョコでしょ」
「まぁ、そうだね」
「―――そんなことより。葉那、見た?」

と、ゆっちんは言う。


2019/02/18(月) a.k
タイトル 2-053. 今日の気分end.



「変なことって、失礼だな」

と、言った後に、「そんな必死に拭かなくてもいいだろ。俺はバイキンくんかよ」と呆れていた。

「お、お互い恋愛感情が生まれるまで手を出さないって、今言ったじゃない」
「おまえが妙に可愛い態度とるから」
「はぁ?!な、何言ってんの。バカじゃないの」
「あいかわらず、うるせぇ女だな」

修司は呆れながら自分が座っていた場所に戻ると、「この茶碗、葉那が捨てといてよ」と言う。

「え?」
「俺が持ってると、葉那のご機嫌がななめになるから」
「機嫌悪くなんないし」
「それでも。おまえが捨てといて」

そう言って、新聞紙に包まれている茶碗を私の目の前に置いた。

「…………本当にいいの?」
「そう言ってんだろ」
「本当に?」
「しつこい」
「―――わかった。捨てとく」

そう言って、新聞紙に包まれている茶碗を手に取ると、近くに置いていた鞄の中に入れた。
私が鞄の中に入れたのを見ていた修司は、「よし。じゃあ、おでん食おうか」と言い、修司はお箸を手にして鍋の中に入っているおでんを選び始めた。

「葉那」

黙り込んでいる私に気がついた修司は、私の名前を呼ぶ。

「なに?」
「俺もおまえにひとつ聞きたいことがあるんだけど」

そう言う修司の顔を少し緊張しながら見たら、「あの男となんで手繋いで歩いてたか、説明してくれない?」と冷たく微笑む。
その言葉に、今すぐにでも消えていなくなりたい気分になった。


2019/02/18(月) a.k
タイトル 2-052.



「なにそれ……。嘘つくならもっとまともな嘘つきなよ」
「嘘じゃねぇよ。おまえと茶碗買いに行った日に捨てるつもりでいたんだけど、あの日ゴミの日じゃなかったから捨てられなかったんだよ。おまえに見つかったら面倒なことになりそうだなって思って、隠してたんだよ。そしたら、その存在を今の今まで忘れてた」
「……………」
「だから、楓のことを想って残していたわけじゃない」
「……………」

何も言わない私を見て修司は、「もしかして……おまえが変だった理由は、これか?」と言い、新聞紙に包まれている茶碗を手にする。

「ち、違うし。っていうか、変じゃないし」

修司は変な笑みを浮かべると、私が座っているところに詰め寄ってくる。

「な、なに?なんなの?」

と、修司の動きに戸惑っている私をよそに、修司は私を抱きしめる。

「ちょ…、ちょっとなに?離してよ」
「前は平気で使ってたのに、今は嫌なんだな」
「そ!そんなことないから」

抱きしめられているのを抵抗している私のことなど気にすることもなく、5秒近く抱きしめた後にチュッと頬にキスをした。

「な……っ!……にすんのよ!」

突然のことに驚いて、思わず修司を力いっぱい押しのけた。
バクバクと大きな音を立てて鼓動を速めている心臓を抱えながら修司を見る。

「いてぇーな。なにすんだよ」
「それはこっちのセリフ!変なことしないでよ!」

そう言いながら、キスされた頬を服の袖で何度も拭った。


2019/02/18(月) a.k
タイトル 2-051.



「どんな意味が?」
「酔った勢いだったとはいえ、理性を抑えきれず、恋愛感情がない状態でおまえを抱いたことは、多少なりとも罪悪感があるんだよ。―――だから、次、おまえを抱く時は、お互い恋愛感情がある時がいいんだよ」
「だから、今は出来ないって言ったの?」
「そうだよ」

修司が意外と私とのことを考えていてくれたことに驚いた。
心の中で嬉しいと言う気持ちが芽生えたのと同時に、あの夫婦茶碗の存在が私を曇らせていく。

「だったら……、どうしてあのお茶碗を大事に持ってるの?」
「―――は?なんのことだよ」

修司は私の言っていることが理解できなかったようで、少し考えこんだ後に言った。

「楓ちゃんと使ってた夫婦茶碗。大事に持ってるじゃない」
「え……?茶碗……?」

と、言い、少し考えた後に、「―――ああっ!あの茶碗か」と思い出した様子で言った。
修司は立ち上がると、キッチンの方へ行き、私が見つけた場所から新聞紙に包まれている夫婦茶碗を取り出した。

「よく見つけたな」

と、言って、それをローテーブルの上に置いた。

「土鍋を出す時に……たまたま見つけたの」
「ごめん。これは俺が悪い」

と、修司は頭を下げて謝り、頭を上げると、「これは、大事に取ってたんじゃなくて。捨てるのを忘れてただけだよ」と言う。


2019/02/18(月) a.k
タイトル 2-050.



「俺に何か言いたいことがあるなら、言ってくれないとわからないだろ。俺は超能力者でもねぇんだから、おまえの腹ん中に溜め込んでるものなんて読めねぇんだよ」
「そんなことはわかってるよ」
「だったら言え」
「…………」
「―――わかった」

それでも口を開かなかった私に修司はそう言って、箸を再び手に持った。
ぐつぐつ煮立っているおでんの鍋に箸を入れると、「10秒以内に言わなかったら、この熱々の大根を顔にジュってするからな」と言い出した。

「はぁ?!なにそれ」
「嫌だったら早く言え。ほら、1、2、3…」

と、カウントを始めた。
カウントが7を過ぎたあたりで、修司はゆっくりと箸でつかんでいる大根を私の方へと近づけてくる。

「―――わ、わかった、わかったわよ。言うから」

と、焦りながら言った。

「だったら、早く言え」
「―――しゅ、修司は、私たちの関係をどう思ってる?」

キッチンの棚に隠してある夫婦茶碗のことが、喉の奥でつっかえた。
修司のことが好きだと自覚したからか、楓ちゃんのことも直接聞くことがなんだか怖い。

「それが、おまえが考えていたことなのか?」
「今の二人の関係に……、無理してるんじゃないかなぁ……?と思って」
「俺がキスしなかったから、そう言ってんの?」
「…………」
「あれには意味があるから」

と、言って、箸で掴んでいた大根を私の取り皿の中に入れた。


2019/02/18(月) a.k
タイトル 2-049.



ローテーブルの前にあるテレビからは、バラエティ番組が流れていて笑い声が起こっているが、私たちの間には目の前のおでんが煮込まれている音と、修司が「あつ…」と言いながら出汁の染みた大根を食べている音だけしかなかった。

「今日は……写真撮らないの?」
「おでんの写真ならおまえが来る前に撮ったよ」
「撮ったんだ……」
「当たり前だろ。二日目のおでんなんだから」

修司の言葉にクスッと笑い、「意味わかんない」と言った。
私が笑ったのを見ていた修司は、小さく笑う。

「わからないって言えば、俺の方だけどな」
「なにが?」
「おまえが突然、キス出来るって聞いてきた意味」

修司の言葉にドキッとして、体の中に緊張感が走る。
笑っていた顔も少しずつ失われていく。

「……………出来れば、もう忘れて欲しかった……」
「無理だろ」
「……だよね」
「そんなに俺とキスしたいのかよ」
「違うよ。あれは―――……、色々考えてたらわからなくなって、色んなことを端折った結果、ああなったのよ」

修司に言ったことは嘘じゃないけど、修司の顔を見ていたらキスがしたくなった、ということは修司に言えるわけなくて伏せた。
私が言ったことに納得出来なかったのか、修司はすぐに、「何を考えてたんだよ」と聞いてきた。

「何って……色々」
「だからぁ――、その色々を聞いてるんだよ」
「…………」

それでも口を中々開かない私に修司は持っていた箸を置き、「葉那」と言って私を見る。
私も持っていた箸を置いて、修司を見た。