a.k堀内 葉那黒沢 修司

愛があるのか、ないのか、
Ep3_チョコよりも甘く

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交換日記レンタル - nikkijam

2019/09/20(金) a.k
タイトル 3-017. 今日の気分end.



「ひどい……。足がボロボロで1歩も歩けないなのに……」
『履き慣れてない靴履くからだろ』
「パーティにスニーカーではいけないじゃん」
『だったら、ホテルに着いてからヒールに履き替えればよかっただろ』
「私は修司みたいにそこまで頭がまわらないの」
『バカだもんな』
「バカって言うな」

修司は大きく息を吐いた後に、『―――わかったよ』と言い、それから、『とりあえず、今から如月さんに車借りられるか聞くから。また後で連絡入れる』と約束して電話を切った。
修司との電話を終えたそのタイミングで、「葉那ちゃん」と私を見つけた楓ちゃんが私の元へとやってきた。
楓ちゃんは私とは違い、踵の高い靴を履いていても颯爽に歩いている。
それだけで大人の女として尊敬してしまう。

「どうしたの?疲れた?」

と、靴を脱いで座っている私を見て楓ちゃんは言った。

「靴擦れで足が痛くて……」

ストッキングの上からでも血が滲んでいる私の足を見せた。

「うわぁ――……痛そうだね。絆創膏と消毒液貰ってこようか?何もしないよりいいよね」
「ありがとう。助かる」
「じゃあ、ちょっと待っててね」

そう言うと、絆創膏を貰うために楓ちゃんは私から離れて行った。


2019/09/20(金) a.k
タイトル 3-016.



「もう一度……、修司くんに頼んでもらえないですか?」
「え?私が?!」
「葉那さんなら、修司くんを上手に説得出来そうだから」
「いやぁ――……無理だって。あいつ変に頑固スイッチ入る時あるし……」
「でも、あたし、もう葉那さんしか頼る人いないから」

と、言った後に、両手を合わせて、「お願いします」とお願いされた。

「………わかった。とりあえず言ってみるけど……、あまり期待しないでね」
「有難うございます!葉那さんを味方につけただけでも心強いです」

と、坂口さんはものすごく喜んでいた。
彼女の笑顔を見て、期待に応えなきゃいけないかも……とプレッシャーがかかった。


パーティが終盤に差し掛かった頃。私は会場から少し離れた場所にいた。長椅子に座り、履きなれないヒールを脱いだ。ヒールの踵が高かったせいで、靴擦れを起こしていた。

「ヤバいなぁ……。この足……」

足が痛くて、脱いだヒールを履くことを躊躇ってしまう。
でも、履かないことには家に帰ることも出来ない。

「んん―――……仕方ない」

悩んだ末、修司に連絡をすることにした。
パーティ用のクラッチバックの中に入れていた携帯電話を取り出すと、修司に電話をかけた。
幸いなことに修司は、5回目のコールを待たずに電話に出てくれた。

『寝言は寝て言え』

修司に事情を話して、私がいるベイサイドまで迎えに来て欲しい。と言ったら、この冷たい一言。


2019/09/20(金) a.k
タイトル 3-015.



「あたし、この写真が一番好きなんです」

と、坂口さんが言ったのは、私のスケッチブックに二人で描いた絵しりとりをした写真だった。
私のリンゴの絵から始まって、絵だけでしりとりをする単純な遊び。
投稿者のコメント欄には、『彼女のしりとりセンスには敵わない』と書いてあった。

「こんなのが好きなの?」
「しりとりセンスに苦戦しながらも二人で楽しく遊んでたのかなぁ…?って想像したら、二人とも可愛いな、素敵だなって……」
「……………」
「修司くんが言っている“彼女”って……、葉那さんですよね?」
「え?あ……うん……」

と、答えたら、坂口さんは嬉しそうな顔をして、「やっぱり!この間、お二人と食事した時に絶対写真の相手は葉那さんだと思ったんですよ」と言う。
それから、「修司くん、葉那さんと一緒の時間が好きだから、誰かに見て欲しいんですね」と続ける。

「そうかなぁ……?」
「そうですよ。修司くんの写真を見て、あたしの写真集もこんな感じで愛のある写真を撮って欲しいなって思ったんです。ここにある写真のように好きな人と一緒にいて幸せだよって言うのを感じられる写真集を作りたいんです」
「……………」

修司が今まで撮っていた写真をネットにあげていたなんて、知らなかった。
なんのためにこんなことをしているのか、修司の意図がわからない。

「―――葉那さん」
「なに?」

携帯電話に向けていた視線を坂口さんへと向けた。


2019/09/20(金) a.k
タイトル 3-014.



「昔の話だけどね」

そう言った後に楓ちゃんは、「ちょっと、ごめんなさい。挨拶したい人が来たから挨拶してくるね」と言って、近くのテーブルにやって来た男性の元へと歩いて行った。

「あの人、本当に婚約者だったんですか?」
「うん。まぁ……」
「なんか……、修司くんには不釣り合いな人ですね」
「…………」

坂口さんの言葉に何も言えなかった。

「さっきあの人が言ったことが本当だったら……、修司くんに写真撮ってもらうのは、もう無理なのかなぁ……?」

坂口さんは手に持っていた小さなバッグの中から、携帯電話を取り出した。
何か操作をしながら、「こんなに素敵な写真……たくさん撮ってるのに……」と独り言のように言う。

「素敵な写真って?」
「修司くんがやっている写真投稿サイトの写真ですよ」

少し坂口さんを見たまま黙り込んだ後に、「…………なにそれ」と言った。

「あれ?葉那さん知らないんですか?」

そう言って、坂口さんは携帯電話を私に見せてくれた

「なにこれ………」

修司が写真投稿サイトで投稿していた写真は、これまでの私との思い出の物がたくさん映っていた。
年末に二人で行った神社の風景、初デートした日の電車の切符と映画のチケットの半券、新しく買った二人の茶碗、一緒に食べた夕食、二人で見たDVD、私があげたお菓子のおまけ、一生懸命作ったおでん…など、たくさん写真が投稿されていた。


2019/09/20(金) a.k
タイトル 3-013.



「だよね」

と、言った。
それから、私の隣にいる楓ちゃんを坂口さんに紹介して、楓ちゃんには私と坂口さんの関係を説明した。

「へぇ――、写真を……」
「はい。どうしても修司くんにお願いしたくて……。葉那さん。なんとか修司くん説得してくれませんか?」
「いやぁ―――……、どうだろ?私の言うこと聞くようなタイプじゃないよ?」
「ええ――。葉那さんしか頼りになる人がいないのに」
「そんなこと言われてもなぁ……」
「おそらく……無理なんじゃないかな」

と、楓ちゃんは言う。

「どうしてですか?」
「トラウマになってると思うから」

楓ちゃんの言葉に私と坂口さんは口をそろえて、「「トラウマ?」」と言った。

「修ちゃんがどうしてカメラマンの助手を辞めたか知ってる?」
「ううん……」

と、私は答えた。

「撮れなかったのよ」
「え……?」
「誰かの代わりに急遽修ちゃんが撮ることになったらしいんだけど、一枚も上手く撮れなかったんだって」
「どうしてですか?」
「さぁ?理由はわからないけど……」
「……………」

あの頃の修司にそんなことがあったなんて知らなかった。
寝耳に水のことで、何も言葉が出てこない。

「カメラマンを断ったってことは、たぶん……まだそのことが引っ掛かってるんじゃないかな」
「広瀬さんは、修司くんのことよく知ってるんですね」
「これでも一応、元婚約者だから」

と、楓ちゃんは笑みを浮かべながら言った。

「ええ――っ!」

と、絵に描いたように驚く坂口さん。


2019/09/20(金) a.k
タイトル 3-012.



「楓ちゃんも来てたの?」
「うん。招待してくれて。葉那ちゃんも?」
「うん。まぁ……」
「そうなんだ」

と、言った後に、「実は――……」と耳打ちするように私に近づいてくると、「知ってる人が全然いなくて、困ってたの。だから葉那ちゃんがいてくれて心強いわ」と言って、楓ちゃんは笑顔を見せる。

「私も同じ」
「仲間だね」

そう言って笑う楓ちゃん。
それからしばらく二人でお酒片手に色々と話をしたが、楓ちゃんには悪いけど、話の殆どが頭の中を素通りしていた。
彼女の顔を見るたびに、あの夫婦茶碗が脳裏に浮かぶ。
罪悪感という名のものが、私の中を支配する。
彼女にたいして、どう接すればいいのかわからない。

――――― せめて、今、幸せでいてくれたらいいのに……

それは自分勝手な願いだけど、願ってしまう。

「葉那さ――ん!」

どこからか聞いたことのある女性の声で名前を呼ばれた。
辺りを見渡していたら、坂口さんが手を振りながら私の元へとやってくる。

「葉那ちゃん、坂口アリサと知り合いなの?」

と、私の隣で楓ちゃんは驚いていた。

「うん……。まぁ……ちょっとね……」
「葉那ちゃん、知ってる?彼女――」

と、楓ちゃんの言葉を遮るように私は、「うん。知ってる。でも、それは間違いみたい」と言った。

「え?――ねぇ、どうしてそんなこと知ってるの?」

楓ちゃんが言ったと同時ぐらいに、「まさかここで、葉那さんに会えるとは思いませんでした」と坂口さんがやってきた。


2019/09/20(金) a.k
タイトル 3-011.



お仕事をさせて貰っているファッション誌の創刊30周年パーティは、ベイサイドホテルで行われた。大きな宴会場には、出版社の社員はもちろん、芸能人や著名人などファッション誌に携わっている人が多くの出席しいて、華やかな宴となっていた。
華やかな宴に負けないぐらい出席者のファッションは、お洒落な人たちが多いからか、私の想像を遥か上を行く個性的な格好の人が多く、ごくごく普通のパーティとは一味違ったようにさえ感じた。
ゆっちんから借りたシンプルな紺色のワンピースは、後ろに大きなリボンの結び目を作っているとしても地味に見え、レンタにパーティ仕様にヘアメイクをしてもらったとしても、友人の結婚式へ出席しているような格好で、この中にいると控えめで地味に見える。

「…………場違い半端ないな」

周りを見渡していると、心の声が自然と漏れた。
顔見知りの人も少ないし、とにかく美味しいものを食べて、高そうなお酒を頂いて帰ろう。と思っていた矢先だった。

「葉那ちゃん」

料理やドリンクが並んでいるところへ向かおうとしていた私の足を止めるかのように、後ろからポンポンっと軽快に肩を叩かれて、名前を呼ばれた。
振り返ると、楓ちゃんが笑顔で立っていた。
濃紺のシックなドレス姿の楓ちゃんは、凄く綺麗だった。


2019/08/09(金) a.k
タイトル 3-010. 今日の気分end.



「可哀想ぉ~~~」
「なにが」
「人気モデルが、しがない町のカメラマンを探して、こんなところまで来たって言うのに」
「しらねぇよ。そんなこと」
「写真ぐらい撮ってあげればいいじゃない。ケチな男」
「あのな――、簡単に言うなよ。小さな町の写真屋で撮ってる写真とはわけが違うんだよ」
「同じでしょ」
「ちげぇよ」
「ふ―――ん」

それから私たちは歩き始めた。
歩き始めると、「ラーメンは次回持ち越しだな」と言った。

「そうだね――……って、あっ。一つ疑問があるんだけど」
「なんだよ」
「坂口さん、修司の写真を知ってた。どうして?」
「しらねぇよ。昔撮ってたやつのこと言ってんじゃねぇの?」
「修司が半分死にかけていた駆け出しの頃ね」

と、笑ったら、「そんなこと言うやつは、今度のラーメンはおまえのおごりだ」と言った。

「ええ――っ?!」
「ついでに餃子とビールもつけろ」
「ひどくない?」
「うるさい。決まりだ」


私は何も知らなかった。
修司が写真を撮りたがらない理由も、有名カメラマンの助手として働いていた頃のことも。
何も知らない。


2019/08/09(金) a.k
タイトル 3-009.



「坂口さんが俺のこと買ってくれてるのは嬉しいけど……、無理だよ。俺には坂口さんを撮れない」
「どうしてですか?」
「俺にそんな力量はないよ」
「そんなことないです!」

と、坂口さんは大きな声を出して否定した。
それから言葉を続けて、「あたしの宣材写真撮ってくれたことあったじゃないかですか。あの写真凄く評判良くて、修司くんのおかげで仕事がたくさんきたんです」と言った。

「それは、坂口さん自身の努力でしょ。俺は関係ないよ」
「そんなことありません!」

まっすぐに修司を捉えている彼女の目を見ていると、本気で修司に撮ってもらいたいのが伝わってくる。

「撮ってあげれば?」
「簡単に言うなよ」
「売れっ子モデルがこんなに懇願してるのに?」
「無理なもんは無理。俺には出来ない」

修司の口調を聞いて、頑固スイッチが入ったのがわかった。
これ以上何言っても絶対首は縦にふらないと思った。

「そんなぁ――……」
「わざわざ会いに来てくれたのに、良い返事出来なくて悪いけど」


――――結局、修司は最後まで首を縦には振らなかった。
坂口さんは店を出てすぐに拾ったタクシーに乗り込んだ時に、「あたし、絶対あきらめませんから!」と見送った私たちに宣言して帰って行った。

「あ―――……、なんかすげぇ疲れた」

坂口さんを乗せたタクシーを見送った後に言った。


2019/08/09(金) a.k
タイトル 3-008.



「―――まぁ、そんなところ。それより、そろそろ飲み物注文しない?俺、喉渇いたんだけど」

と、修司は話題をそらすように言った。

「あっ、そうですよね。何か飲みましょう」

坂口さんはそう言って、ドリンクメニュー表をテーブルの上に広げた。
それから三人同じグラスビールを注文して、注文した料理が数品運ばれてきた頃。私はようやく本題に触れるかのように口を開いた。

「―――ねぇ、坂口さんは、どうして修司を探していたの?」
「修司くんにお願いがあるから」

と、手に持っていたお箸を置いて、坂口さんは言った。

「なに?」
「ちょ、ちょっと待って!」

と、私は会話を止めるように言った。

「なんだよ。話し止めるなよ」
「その話って……、私も聞いて大丈夫な話なの……かな?もし、ダメなら……出て行くけど……」
「大丈夫ですよ。葉那さんもいてください」

と、坂口さんは微笑む。

「あたし、今度写真集を出すことになったんです。その写真集のカメラマンを修司くんにお願いしたくて来ました」
「ええっ!!」

と、大きな声で驚いている私をよそに修司は、驚いた様子もなく相変わらずのポーカーフェイスで、「なんで俺なの?」と聞いていた。

「修司くんが撮る写真が好きだからです」
「そんな理由で?」
「はい。修司くんが撮る写真ってどれも愛に溢れてるものが多くて、あたしもそうやって撮って欲しいなって思ったんです」
「凄いじゃん!修司!」

と、自分のことのように喜んでいる私の横で、修司はニコリともせずにいた。