a.k堀内 葉那黒沢 修司

愛があるのか、ないのか、
Ep3_チョコよりも甘く

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交換日記レンタル - nikkijam

2019/12/23(月) a.k
タイトル 3-036. 今日の気分end.



「……っていうかさ――!お互い恋愛感情が生まれるまで手は出さないんじゃないの?」
「そんなこと言ったか?記憶にないな」

と、言って、修司は誤魔化す。

「言ったわよ!思い出してよ!」
「相変わらず、うるせぇなぁ。この間は、キスしろって言ってたくせに」
「それは色々端折った結果って言ったでしょ!」
「ああ――もう――!うるさいうるさい」

と、修司は両耳に指を突っ込んで言う。

「修司!」
「撮るよ。撮ればいいんだろ?」

と、言った、修司の言葉に驚いた。

「…………今、すっごく話がぶっ飛んでるけど………、撮る気になったの?」
「これ以上拒むとおまえがうるさいからな」
「あのね――!」
「冗談だよ」

と、言った後に、「不思議だけど、おまえがそう言うと撮れるように思う」と続けた。

「当たり前じゃない。専属モデルが言ってるんだから」

そう言って微笑んだ私に修司は、「俺よりおまえが自信満々なのが笑える」と言った。


2019/12/23(月) a.k
タイトル 3-035.



「大丈夫だよ。坂口さんなら修司の思い通りに撮れる」
「だから、なんでおまえがそんなに自信満々なんだよ」
「だって、彼女は修司が撮る写真が好きだって言ってた。だから、修司が何を撮りたいのか、どういうふうに撮りたいのか、すぐに理解してくれると思う。大丈夫。絶対いい写真が撮れる」
「…………」

それでも中々首を縦に振らない修司に苛立ち、「ああ―!もう!」と私は大きな声を出して言った。
それから修司の側まで這うようにして行くと、修司の胸倉をつかんだ。

「修司のカメラ人生の中で、一番多く撮られてる私が『撮れる』って言ってんの!私を信じて、撮ってこいよ!」

胸倉を掴んだまま修司の目を見る。
少しの間、お互い睨み合うように目と目を合わせて黙り込んでいると、修司はフッと笑みを見せる。

「相変わらずでかい声」

修司は、胸倉掴んでいる私の手首を掴み、下へと降ろす。
それから修司は、私に軽くチュッとキスをした。
突然のことで驚き、胸の鼓動がバクバクと大きく音を立て始める。

「な、なんで、キ、キキキスするのよ」
「俺の女、カッコいいなって思って」
「は、はぁ?!意味わかんないし……」

動揺を誤魔化すように修司から離れると、テーブルの上にあった缶ビールを手に取った。
動揺を消すかのように缶ビールを勢いよく飲み始めると、その様子を見ていた修司は、「間接キス」と言い、その言葉にビールが勢いよく気管に入り、「ゴホッ!ゴホゴホ」と咳き込んだ。
その様子を見ていた修司は、「わかりやすいな」と言って笑う。


2019/12/23(月) a.k
タイトル 3-034.



修司は飲んでいた缶ビールを乱暴にテーブルの上に置いた。
その音に驚く。

「芸能人を撮っているようなカメラマンも、町の小さな写真館で家族撮ってるカメラマンも、みんな同じカメラマンだろ」
「そうだけど……」
「俺は今の生活に満足してるし、変えるつもりもない」

二人ともそれ以上何も言えなくて、静かな時間が流れた。
―――だけど、沈黙を破ったのは私。

「みんな同じカメラマンなら、撮りなよ」
「簡単に言うなよ」
「それともなに?まだ過去にこだわってるの?」
「こだわってねぇよ」
「昔、修司にどんなことがあったのかなんてよく知らないけど、修司なら絶対いい写真が撮れるよ。今だってちゃんと写真館で写真撮ってるじゃない。みんな良い表情してる。だから大丈夫!」
「なんでおまえがそんな自信満々なんだよ」
「だって、私は黒沢修司っていうカメラマンの専属モデルだから」

修司は少し黙り込んだ後に、テーブルの上に置いていたカメラを手に取った。
それから、カメラを私に向けて構えると、「―――モデルがおまえなら、指が勝手に動く。何も考えずに撮れる」と言ってパシャパシャとシャッターを切る。

「他の人じゃあ……無理なの?」
「おまえを撮る時には感じないプレッシャーが、相手がプロだと半端ない」
「修司って……意外と繊細なんだね」

と、思わず口から出た。
修司は恥ずかしかったのか、「うるせぇよ」と言ってまた缶ビールを飲んだ。


2019/12/23(月) a.k
タイトル 3-033.



「自慢したかったから」

と、答える。

「は?なにそ…!」

修司は私の口を閉ざすように、チョコレートを私の口の中へ入れる。
驚きながら修司を見ると、「黙って食ってろ」と言う。
修司の顔を見るも修司は何もないような顔をして、「ビール、飲も」と言い、再び冷蔵庫に手をかけていた。

「坂口さんがね。修司のこの写真を見て、自分もこんな風に修司に撮ってもらいたいって思ったんだって」
「知ってるよ。何度も同じようなこと書いてるメッセージ貰ったからな」
「なのに撮ってあげないの?」
「撮らない」

と、言いながら、ローテーブルを挟んだ私の向かい側に座った。

「頑固だなぁ……」
「うるせぇよ」
「坂口さんは、こういう何気ない写真に愛を感じるみたいだよ?」

と、写真投稿サイトを見ながら言った。

「おまえは?」
「え?」

と、顔を上げて修司を見た。

「おまえは俺の写真を見て、何も感じないのか聞いてんだよ」
「愛かどうかはわからないけど、私といて楽しいんだろうなってのは感じる」

修司は小さく鼻で笑い、手に持っていた缶ビールをプシュっと開けて、「楽しい、ねぇ……」と言って一口飲んだ。

「冗談抜きで坂口さんの写真集の話は、修司にとってチャンスだと思う」
「チャンスってなんだよ」
「カメラマンとしてのチャンスだよ」
「なんだそれ」
「私はもう一度、修司に頑張って欲しいって思ってる」
「俺なりに頑張ってるけど」
「こんな小さな町の写真館じゃなくて」


2019/12/23(月) a.k
タイトル 3-032.



「もう少し固めた方がいいかなって思ったの。そしたら、まさか寝るとは思わなくてさ……」

そう言ったら、修司は小さな笑みを漏らし、「おまえらしい」と言って冷蔵庫を開けた。
冷蔵庫の中には、大きなお皿の上に綺麗に型から外せたチョコがある。

「可愛いじゃん」

そう言いながら、冷蔵庫から取り出したお皿をローテーブルの上に置いた。
それから隣の部屋からいつものようにカメラを持ってくる

「どうせ撮るなら、可愛くラッピングしたのを撮って欲しかった」
「それも撮ってやるから、ラッピングしろよ」
「いや、もういいよ。面倒くさい」
「面倒くさいって……」

と、呆れられる。
カメラを構えてパシャパシャと写真を撮っている修司の姿を見ながら、私は修司がやっている写真投稿サイトを思い出した。

「ねぇ、修司」

写真を撮っている修司を見ながら言った。

「ん?」
「それもSNSにあげるの?」

そう言うと修司は、写真を撮っていた手を止めて、私を見た。

「―――なんだ。知ってたのか」
「この間のパーティに坂口さんが来ていて、それで教えてもらったの」
「なるほどな」

そう言った後、またカメラを構える。

「なんで黙ってたの?」
「気づいてないようだったから、気づくまで黙っていた方が面白いかなって思ったんだよ」
「なにそれ……」

修司は撮り終えると、チョコレートをひとつ手に取り食べた。
私は携帯電話を手に取ると、修司の写真投稿サイトを表示した。
これまでの写真を見ながら、「どうして写真をネットにあげようと思ったの?」と聞いた。


2019/12/23(月) a.k
タイトル 3-031.



「今ちょっと……開けられたらまずいっていうか……、気まずいっていうか……」
「おまえ、人んちの冷蔵庫に何したんだよ」
「いや、別に何かしたってわけでも……ないんだけど……ね……」

修司は私の顔を何も言わず見る。
倒れこんでいる私と目線を合わすようにしゃがみ込むと、親指で私の口の端をぬぐう。
その行為に何故かドキドキしてしまう。

「チョコついてる」

そう言って、親指をペロッと舐めた。
ドキドキして放心状態の私に、「机の上にあったチョコ、慌てて食っただろ」と少し笑いながら言う。

「……え…あ……うん……。やっぱ……気づいてた?」
「あんなに堂々と置いていたら、普通気づくだろ」

と、言って、修司は立ち上がった。
私も体を起こしながら、「……そりゃそうか」と言った。

「しかし、なんで全部食うんだよ。少しぐらいは俺のも残せよ」
「いや、アレは―――……失敗だから……」
「あれ、手作りだったのか?」
「うん、まぁ……」
「バレンタインだから?」

その言葉に驚きながら、「知ってたの?」と聞いた。

「美雨がチョコ持って写真館に来たんだよ」
「なるほど」
「失敗したチョコが机の上だったってことは、成功したチョコが冷蔵庫にあるってことか」
「まぁ……そうなんだけどね」

私の浮かない顔色を感じた修司は、「成功したんだろ?」と聞く。

「いやぁ―――……まぁ……そうなんだけど、まだラッピングも何もしてないっていうか……、ありのままっていうか……」
「なんだそれ」


2019/12/23(月) a.k
タイトル 3-030.



「……うん……」
「寝るならベッド行けば?」
「……うん…………いや……いい……」

まだ上手く働かない頭を抱えながら、ゆっくりと体を起こした。
ぼーっとしながらつけたままだったテレビに目を向けた。いつも見ているバラエティ番組が始まっていることを知り、時間が夜の10時を過ぎていたことを確認する。

「もしかして……俺が電話した時、ご飯作った後だったとか?」

と、隣の部屋から修司の声が聞こえてきた。
おそらく荷物を片付けて、部屋着に着替えているのだろう。

「ううん……。ご飯は作ってないよ」

目の前のローテーブルの上を見ると、失敗したチョコレートと美雨ちゃんから借りたチョコレートの本が置いたままになっていた。
慌てて本を隠すように鞄の中に入れて、失敗したチョコは口の中に放り込んだ。
ローテーブルの上にあったものを修司が気づいていないことを祈りながら。

「何か用でもあったのか?」

と、言って、隣の部屋から出てきた。
モグモグと私が何かを食べていることに気が付いた修司は、「なんかすげぇ口がモグモグしてるけど」と言う。
口の中がいっぱいで何も言えない私は、首を傾けた。

「……まぁ、いいけど」

と、言った後に、「ビール飲むけど、いる?」と言って冷蔵庫へと歩き始める。
私は冷蔵庫の中に入れておいた成功したチョコのことを思い出して、「うぁっ!だ、ダメ!」と大きな声で言って、慌てて修司の足首を倒れこむようにして掴んだ。

「うおっ!なんだよ」
「れ、冷蔵庫開けないで」
「は?」


2019/12/23(月) a.k
タイトル 3-029.



「ゆっちん、いいよ。そんなことしなくても」
「修司くんにそれぐらいしてあげなよ。パーティの時だって迎えに来てくれたんでしょ?」
「うん、まぁ……」
「バチ当たっても知らないからね」
「………………」



『USAMIYU』を出た後、スーパーや雑貨屋に立ち寄って修司の部屋へと向かった。
修司の部屋に行くと、美雨ちゃんから借りた手作りチョコレートの本を参考にして、一番簡単そうに見えた型抜きチョコレートを作ってみた。溶かしたチョコレートを買ってきた型に流して冷やす。といういたってシンプルな工程。―――だが、自分が不器用だからか、それとも雑だからかは分からないが、キレイに型から外れない。難しい型は買っておらず、ハートや星などのシンプルなものなのに上手く外れずに、いくつか失敗も重ねて、ようやく5コの型抜きチョコレートが完成した。
出来上がったチョコレートを見て、我ながら上出来。だと自画自賛する。

――――― 修司は、喜んで食べてくれるかな?

出来たチョコを目の前にして、らしくないことを考えながら修司の帰りを待っていたら、いつのまにか眠りに落ちてしまった。

「……――那。葉那」

ローテーブルの側で倒れるように横になっている私の肩を揺らしながら名前を呼ばれたのが、遠い意識の中で聞こえた。
何度も呼ばれた後にゆっくりと目を開けると、しゃがみ込んで私を見ている修司がいた。
私が目を覚ましたのを確認した修司は、「こんなところで寝てたら、風邪引くぞ」と言って立ち上がった。


2019/12/23(月) a.k
タイトル 3-028.



「じゃあ、修司くんのチョコどうするの?」
「ん―――……、なんとかする」
「チョコなんて、商店街でも売ってるしね」

と、ゆっちん。

「そうだよ。商店街で売ってるじゃん」
「かわいそう。修司くん。二人の初めてのバレンタインなのに、商店街で買ったチョコなんて」
「ダメなの?」
「葉那ちゃん。好きな人には手作りチョコをあげないとダメなんだよ」

と、美雨ちゃん。

「え?いつからそんなシステムに……」

バレンタインの話を3人で盛り上がっている時、修司から電話が掛かって来た。
急遽出張で仕事が入り、帰りが遅くなるから夕食は作らなくていい。とのこと。私は夕食を作らなくて良くなった喜びで、「――了解。仕事頑張って」とだけ言って電話を切った。

「修司くん?」

と、電話を切った後にゆっちんは言う。

「うん。急な仕事が入って帰りが遅くなるからご飯要らないって」
「へぇ、ラッキーじゃん」
「うん。なんだかんだ言って毎日ご飯作るの面倒なんだよね」

と、愚痴ったら、「いや、そうじゃなくて」とゆっちん。

「なに?」
「チョコ作れるじゃん」
「え?チョコ?」
「修司くん、仕事で遅いんでしょ?だったら、帰ってくる時間までにチョコ作れるじゃんって言ってんの」
「…………マジですか?」

と、驚いている私にゆっちんは、「美雨。葉那に手作りチョコの本貸してあげなよ」と言った。


2019/12/23(月) a.k
タイトル 3-027.



パーティから数日が経った。ゆっちんに借りていたワンピースのクリーニングが出来上がったのでお礼のお菓子も持って開店前の『USAMIYU』へと足を運んだ。
店に入ると美雨ちゃんが、カウンターの上で可愛くラッピングされたチョコレートを広げていた。色とりどりのペンやシールも広げて、可愛い動物のキャラクターが描かれているメッセージカードに何やらメッセージを書いているところだった。

「今日は何やってんの?」
「バレンタインだから、友達にあげるの」
「ああっ!今日、バレンタインか!」

と、今日がバレンタインだということを思い出した。

「ええ――?葉那ちゃん忘れてたの?」
「忘れてた」

と、言ったら、「いかにそういう行事と無縁に過ごしていたか、わかるよね」と美雨ちゃんの隣に座っていたゆっちんが言う。
その言葉に何も言い返すことが出来ない。

「じゃあ、これ、葉那ちゃんにあげる」

と、美雨ちゃんは、ラッピングされたチョコをひとつ私の前に置いた。

「いいの?」
「うん。修司くんにわたすつもりのやつだったんだけど、葉那ちゃんからってことにしていいよ」
「……………」

純粋で可愛らしい言葉に言葉が詰まる。
私が言葉に詰まっている姿を見ていたゆっちんは、「マジでやったら、修司くんにチクるよ」と言った。

「だよね」

と、言った後に、「美雨ちゃん、ありがとう。でも、これは美雨ちゃんが修司のために作ったチョコでしょ?だから、美雨ちゃんが自分で渡した方が修司喜ぶよ」と言ってチョコを返した。



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