a.k堀内 葉那黒沢 修司

愛があるのか、ないのか、
Ep2_何が正しくて、正しくないのか、

次は 堀内 葉那


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交換日記レンタル - nikkijam

2018/12/04(火) a.k
タイトル 2-040. 今日の気分end.



「送ってくれてありがとうございました」

と、他人行儀な挨拶をして、軽く頭を下げた。
修司は黙り込んだまま何も言わないから、「……じゃあ、おやすみ…なさい」と言って、店横の路地から家へ行こうとした矢先に修司が「葉那」と私の名前を呼んで引き留める。
ただそれだけなのに、体中に緊張が走る。

「な、なに?」

あのことを言われるのかと、ドキドキしながら返事をした。

「明日の夜、残りのおでん食いに来いよ」
「……え?おでん……?」
「大量に残ってんだよ」
「…………」
「食いに来いよ」
「……うん」

一番触れたくないことを言われるのかと思っていたのに、予想外のことで驚く。

「約束だからな」
「……うん」

そう返事をすると、「じゃあ、また明日な」と言う。

「……うん。また明日」
「おやすみ」
「おや…すみなさい……」

修司はくるっと向きを返ると、元来た道を歩き始めた。
修司の後ろ姿を小さくなるまで見送った。


2018/12/04(火) a.k
タイトル 2-039.



レンタの言葉に、「はぁ―――……」と頭を下げて大きく息を吐いた修司は、独り言でも言うかのように、「あの男に言われるならともかく、なんでこいつに言われなきゃなんねぇんだよ……」と言った。
それから顔を上げると、「簡単に葉那を手放したおまえが、正義感振りかざして俺らの問題に口出してくんじゃねぇよ」と言い放つ。
そう言った後に修司は、二人の顔も見れずにそっぽ向いている私の手首を掴んで自分の方へと引き寄せ、「こんなバカ男に何話してんだよ」と私に言う。

「……まだ何も言ってないもん……」

修司は、また大きく息を吐くと、「――まぁいいよ。とにかく帰るぞ」と言い私の手を引き、私の家の方へと歩き始めた。

「おい!待てよ!」

引き留めるように言ったレンタに修司は歩いていた足を止めて、振り返る。

「おまえは俺の相手じゃねぇ」

それだけ言うと、修司は再び歩き始めた。



手を繋がれたまま無言で商店街を歩く。気まずい空気が二人の間に漂う。そんな空気を感じるからなのか、いつもより繋がれている手が強く感じる。
横にいる修司の顔を見ることがなんとなく出来なかった。目が合えば、何か言われそうな気がして見ることを躊躇った。修司も私をみようとしないが、不機嫌な感じが繋いでいる手から伝わってくる。
気まずい空気を発しながら、これといった会話もなくうちの店の前に着いた。営業時間を終えている店は、すでにシャッターがおりていて、人気がない。
歩いていた足を止めて、繋いでいた手を離した。


2018/12/04(火) a.k
タイトル 2-038.



私と修司が言い合っている時にレンタが、「ああっ!思い出した。そう言えば幼馴染の男がいるって言ってたな。そいつに勉強見てもらってるとか、言ってなかった?」と言う。
そんなことを聞かれても覚えていない私は、首を傾げながら、「そんなこと……言ったっけ?覚えてないよ」と答えた。

「教えてやっても補習受けてたけどな」
「いちいちそういうこと言わないでくれない?」
「俺は事実を教えてやってんだよ」
「それじゃあ、さっき秦たちの店で話してた“修司”って、こいつのことなんじゃん」

レンタの言葉に、ドキッとする。
出来れば修司の前では、話題に出してほしくない。
私が黙り込んでいると修司は、「へぇ――、俺のことが話題になってたのか」と私を見ながら言う。
私は目を背けて黙り込んでいると、レンタはご丁寧にも、「変態だぁ――!とか叫んでた」と笑いながら言った。
この場から逃げ出したいぐらい恥ずかしい。

「なんだよ。変態って」
「そんなことよりもさぁ―――、あんた、こいつのこと好きじゃないの?」

レンタの言葉に察した私は、「レンタ、やめて!」と慌てて止めた。

「さっき、愛し合ってないって言ってただろ」
「ホント……マジでやめて……」

頭が痛くなりそうになり、頭を抱えた。

「なぁ――、どうなんだよ」
「おまえに答える義理はないな」
「あるよ。俺は葉那の元カレだから、こいつの幸せを見届ける義務がある」


2018/12/04(火) a.k
タイトル 2-037.



歩いていた足を止めて振り返ると、ニコリとも笑らずに私を見ている修司が立っていた。
ただそれだけで、酔いが一気に醒めていく。

「ど、どうしたの……?」

修司は少しずつ私たちに近づいてきて、「浮気?」と言った。

「ち、違うわよ!」

思わず大きな声が出る。

「なにムキになってんだよ」
「なってないわよ!」
「相変わらず声でけぇな」

いつもよりも冷静な声で修司はそう言った。
それから私とレンタの繋がっている手を指さすと、「いつまで手繋いでんだよ」と言う。
修司に指摘されて、私は慌ててレンタと繋いでいた手を振り払った。

「あ、のさ……、間違ってたら悪いんだけど。もしかして……、キミが“シュウジ”?」

と、レンタは修司の顔を見た後に言った。

「ああ。そういうあんたは、村瀬廉太郎だろ」
「え?なんで俺のこと知ってんの?」
「なんでも知ってるよ。血液型はO型。家族は両親とねーちゃんと犬の4人と1匹。好きな食べ物はオムライスだろ?」
「え?なに?おまえ、気持ち悪いんだけど……」

と、レンタは不気味そうに修司を見る。

「レンタ覚えてない?彼は黒沢修司。私たちと同じ高校だよ」
「黒沢……?」

と、レンタは口にして考え込むも、「…………悪い。思い出せない」と言った。

「当たり前だよ。俺ら同じクラスになったことねぇもん」
「だよな。―――じゃあ、なんで俺のことそんなに知ってんだよ」
「高校時代、俺はこいつから耳がタコになるぐらいおまえの話を聞かされてたんだよ」
「変なこと思い出さないでよ」
「事実だろ」


2018/12/04(火) a.k
タイトル 2-036.



でも、フラついている足が上手く動かず、何かの拍子に力が抜けてしまい、躓いた。

「痛い……」

と、地面に膝と手をついた私。
躓いた私を見ていたレンタは、「おいおい。大丈夫かよ……」と言って私の腕を掴むと立たせてくれた。
私の膝についている砂も手で払ってくれて、「子どもみたいだな」と言って笑う。

「ごめん……」
「ケガは?ない?」
「大丈夫」

レンタは私の手を不意に繋いだ。
突然繋がれて、レンタの顔を見た。

「手ぐらいいいだろ」
「…………手だけだからね」

そう返事したら、レンタは微笑んだ。
手を繋いだまま歩き始めた私たち。
―――ただ、ラブラブなカップルみたいに肩と肩がぶつかるぐらい近い距離では歩かず、人一人が間に入れるか入れないかぐらいの距離感を保ちながら歩いていた。

「なぁ――」
「なに?」
「遠くない?」

と、二人の間に空いている距離を見ながらレンタは言う。

「気のせいじゃない?」
「どう見ても気のせいじゃないだろ。この距離」

そう言って、レンタは私に近づき肩と肩がぶつかるぐらい近づいてきた。

「近すぎでしょ」

と、言って、私は離れる。

「いやいや普通だって。みんなこうやってくっついて歩くじゃん」

と、また近づいた。

「そもそも私たち恋人じゃないから」
「つれないなぁ~。あんなに愛し合った仲なのにさ」
「そんな古い話持ち出さないでよ」

ひっついたり、離れたりを繰り返しながら歩いていた時だった。

「葉那」

と、背後から聞き慣れた男性の声で呼ばれた。


2018/12/04(火) a.k
タイトル 2-035.



ゆっくりと顔をあげて飲み物を見ると、お酒からウーロン茶に変わっていた。

「これ以上酒出したら、俺が修司に怒られるから」

と、てっちゃん。

「―――とりあえずさぁ、葉那。今日のところはもう帰りな。またゆっくり話聞くからさ」
「………わかった」
「レンタ。悪いけど、葉那を家まで送って行ってくれる?」
「もちろん」
「いいよ。一人で帰れるから」
「それとも、修司くん呼ぼうか?」
「…………いえ、送って貰います」

私は、レンタと帰ることになった。



夜の10時を過ぎた商店街は、お酒を提供している飲食店以外のシャッターは閉まっていて活気がない。仕事帰りのサラリーマンが歩いていたり、大学生らしき若者たちが大きな声を出して笑っていたりしているぐらいだった。
レンタは私の隣で鼻歌を歌いながらご機嫌で、フラついて歩いてる私を不憫に思ったのか、「手繋いでやろうか?」とニコニコしながら言う。

「結構です」
「遠慮すんなよ。昔はよく手繋いで歩いたじゃん」

と、言いながら、私の手を繋いだ。

「昔話でしょ」

と、言って、繋いでいた手を振り払った。

「なんだよ。冷たいなぁ~。昔は可愛いこといっぱい言ってくれたのに」
「そんなの忘れたっつーの」
「つれないなぁ~」
「変なこと考えてるなら、もう帰っていいから」
「心配しなくても、そんなフラついてる女に欲情しねぇよ」
「レンタは信用出来ない」
「ええ~?マジで?俺、おまえになんかしたぁ?」

レンタよりも少し足を速めて歩き始めた。


2018/12/04(火) a.k
タイトル 2-034.



「そんなに見られても、言わないからね」
「遠慮すんなって。俺達が聞いてやるから」

レンタはそう言って、私の肩を抱く。
私の肩に置いているレンタの手の甲をつねり、「どうせ、興味本位でしょ」と言って肩に置いた腕を解いた。

「人の不幸は蜜の味って言うじゃん」

と、レンタは笑う。

「それにしても珍しいな。おまえらの間に気まずいことが起こるなんて」

と、てっちゃん。

「そんなことないよ」
「そうなの?俺、おまえらと出会ってから、修司のことで今みたいになっている葉那を初めて見たけど」
「…………」
「それだけ二人の関係が親密になってきたってことでしょ」

と、ゆっちん。

「親密……」

小さな声で呟くように言った後、「だから、私は……修司に欲情したのかな?」と言った後に、「変態じゃん!」と大きな声で言い、それからカウンターテーブルの上で顔を伏せた。
声が大きくて、店中に聞こえて居合わせたお客さんが、一同に私たちの方を向いたみたいだったけど、そんなことは知る由もない。

「葉那!大きい声で変なこと言わないで!」

と、ゆっちんに怒られる。

「だって……、私……修司とキスしたくなったんだよ?変態じゃない」
「普通のことでしょ」
「普通じゃないよ。変だよ」
「愛し合ってる二人なら、当たり前のことでしょ?」
「愛し合ってなんかないもん!」

カウンターテーブルの上で顔を伏せたまま黙っていたら、「グラス変えたからな」とてっちゃんの声が聞こえた。


2018/12/04(火) a.k
タイトル 2-033.



「修司くんと何かあった?」

と、ゆっちんは私の目の前に来ると言った。
ゆっちんの声で顔をあげて、ゆっちんを見ると言いたくなったけど、恥ずかしさが勝って何も言えずに、「いや、何もないよ……」と答えた。

「何もないような顔じゃないけど」

と、ゆっちんは私を見ながら心配そうに言う。

「……ホントに。大丈夫」
「だったらいいけど……」
「葉那。なんで修司連れて来なかったんだよ」

と、てっちゃんは聞いてきた。

「あ――……誘ったんだけど、レンタと友達じゃないからって……」
「なんだそれ?変な奴だな」
「なぁ――、ちょいちょい出てくる“シュウジ”って誰?葉那の彼氏?」

レンタは、私とゆっちんとてっちゃんの顔を見ながら言った。

「彼氏じゃないよ」

そう私が答えると、その後すぐにゆっちんは、「葉那。修司くんとケンカでもしたの?」と聞いてくる。
ゆっちんが心配してくれているのはわかったけど、ここで話せる内容じゃないだけにやっぱり言えず、「……べつに、ケンカなんかしてないよ。“何か”はあったけど」と言った。

「何があったの?」

ゆっちんの言葉に隣にいるレンタも、ゆっちんの隣にいるてっちゃんも、私の方を見る。
私が抱えている“何か”を知りたいようだった。


2018/12/04(火) a.k
タイトル 2-032.



――――― 最悪だ。あれじゃあ、ただの欲求不満の女だ。どこか穴があったら入りたい!……っていうか、消え去りたい。

“後悔”という名のものが私を襲う。
あの時、修司にどうやって聞けばいいのかわからなくて、頭の中で楓ちゃんのことやら、二人のことやらがぐちゃぐちゃになって考えていたっていうのに何もかもぶっとんで、私は修司の顔を間近で見て、ただ―――欲情しただけ。
私の中にいる女が、表に出てきた。
あのクリスマスイブの夜の時のように修司も答えてくれるかと思ったけど、修司は違った。
あの時よりも冷静で、理性をしっかりと保っていた。
頭の中で何度も繰り返される修司の言葉が、恥ずかしさを増しているのは、言うまでもない。


「……………葉那って、お酒は静かに飲むタイプなんだな」

『USAMIYU』のカウンターのいつもの席化している端っこに座り、お酒片手に黙り込んでいた私を気になったのか、隣に座っているレンタは、私の顔を覗き込むようにして言った。

「いつもすげぇうるさいよ?」

と、てっちゃんは、レンタのお酒を作りながら言う。

「そうなの?」
「程よく酒入ると、でっかい声で叫んでるし」
「マジで?」
「マジマジ」

と、言って、てっちゃんは笑う。

「じゃあ、今日はなんでこんなに大人しいんだよ」
「変なもんでも食ったんじゃね?」

と、てっちゃんはまた笑う。


2018/10/31(水) a.k
タイトル 2-031. 今日の気分end.



修司も体を起こして座ると、私に携帯電話を返す気になったのか、テーブルの上に置いた。
俯いたまま動きが止まっている私を気にしたのか、「葉那。話したいことがあるなら、ちゃんと聞くから。話せよ」と言う修司の言葉が、何故だかわからないけど、答えられない。

「…………ごめん。帰る」

と、言って、携帯電話をつかみ、立ち上がった。

「は?なんだよ」
「片付けは悪いけど、やっといてよね」

それからスケッチブックを小脇に抱え、トートバックの鞄を肩からかけると玄関へと向かった。

「おい、葉那」

と、靴を履いている私の腕を後ろから掴む。

「離してよ!帰るって言ってんじゃん!」
「なに怒ってんだよ」
「べつに怒ってないってば!」
「だったら、こっち向けよ」
「やだ」
「おい。マジで意味わかんねぇって。そんなにキスしたかったのかよ」
「やめてよ。恥ずかしいから口に出さないで」
「は?おまえが言ったんだろ」
「…………」
「…………」
「………ごめん。ちょっと、頭の中ぐちゃぐちゃだから……ちょっと整理してくる」
「なんだよそれ……」
「ごめん修司。今は……修司から離れたい」

そう言ったら、修司は掴んでいた腕を離してくれた。
一度も修司の顔を見ることもなく、部屋を出た。
部屋を出ると、一刻も早くその場から逃げるように私は足を速めた。