a.k堀内 葉那黒沢 修司

愛があるのか、ないのか、
Episode One.

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交換日記レンタル - nikkijam

2018/06/11(月) a.k
タイトル 1-055. 今日の気分end.



「――――わ、忘れた」

プイッと、首を反対側に向けた。
修司は私の態度を見て、小さな笑みを浮かべた後に、「葉那」と私の名前を呼ぶ。
名前を呼ばれたが、振り返らず、知らんぷりを決め込んでいたら、

「俺の恋人になって下さい」

と、修司は言った。
その言葉に驚きながらも、ゆっくりと修司の方を向いた。

「29年生きてきて生まれて初めてだよ。そんな愛があるのか、ないのか、わかんないような告白されたの」
「愛はあるよ」
「は?どこに?」
「俺は、堀内葉那っていう人間は好きだよ。だから嫌いにはならない」

まっすぐ私を見てそう言った修司の言葉に、不覚にもときめいて、然と別れて寂しかった私の心に響いたのはたしかだった。
修司の言葉が恥ずかしくて、修司の顔をまともに見ることが出来ず、「修司のくせに……カッコつけないでよ」と顔をうつむけて言った。

「今の状況から前へ進みたいと思うなら、俺と始めてみないか」

そう言って、修司は右手を私の方へと伸ばしてきた。
差し出されたこの手を握れば、同意したことになる。そういう意味合いのものだと、修司の顔を見ればわかる。

「――――修司の気持ちはわかった。私も修司への恋愛感情は今のところゼロだけど、私も黒沢修司っていう人間は好き。だから、大人になった今でも一緒にいるんだと思う」

そう言ってゆっくり立ち上がり、私はもう一度口を開いた。

「――――それじゃあ、お互い腹くくろうか」

と、言って、差し出された修司の右手を握った。


2018/06/11(月) a.k
タイトル 1-054.



「俺の想像から」
「あのさ――修司。色々考えてくれて申し訳ないけど、一回寝たぐらいで無理に関係変えなくてもよくない?なんだったら、お互い今回のことは忘れようよ」
「俺も初めはそう思ったよ。何もなかったことにして、いつも通りにしようって思ったよ。だけど……無理だろ」
「どうしてよ」
「あの夜のことは、記憶から消せない。おまえだってそうだろ。簡単に消せない記憶だから、俺のことを避けてたんだろ?」
「……でも、だからって……どう考えても恋人なんて無理でしょ」
「そんなの恋人になってみないとわかんねぇだろ」

そう言って修司は、手に持っていた紙コップをくしゃっと手で潰して立ち上がった。

「俺達、なんだかんだ言って29年も一緒にいるんだよ。よそのカップルより上手くやっていけると思わねぇか?」
「悪いけど、修司にトキめいたことなんか一度もないよ」
「俺もねぇよ」
「だったら―――」

“やめよう”と言いかけた時、修司は食いぎみに、「正直おまえにトキめいたことはねぇけど、おまえを抱いたあの時は、他の女抱く時より一番緊張したけどな」と、修司の恥ずかしすぎる言葉を放った。
甘酒のせいにしたいぐらい顔が恥ずかしくて火照っていく。

「へ、変なこと言わないでよ。甘酒で酔っぱらった?」
「おまえは、しなかった?」

そう聞かれて、あの日のことを思い出すだけで脳内がパンクしそうになる。
――っていうか、恥ずかしすぎてまともに思い出せない。


2018/06/11(月) a.k
タイトル 1-053.



「いや、割と本気」
「ちょ、ちょっと待って。ひとつ疑問があるんだけど」
「なんだよ」
「修司は、私のこと好きなの?」

お互い目と目を合わせて、修司の言葉を待つように少しの間何も言わず黙り込んでいたら、「―――わかんねぇ」と答える。

「は?それでよく恋人になろうって言えたよね」

私は修司の言葉に驚き、それから呆れた。

「正直おまえのことが好きかどうかはわかんねぇけど、これが原因でおまえとの距離が遠くなるのは嫌だなって思ったんだよ」
「だからって、恋人になるとかって……。いくらなんでも飛躍しすぎじゃない?」
「この間、おまえ言ってただろ。見合いが嫌だから誰か紹介しろって」
「うん」
「そんな理由で誰かと恋愛するなら、別に俺でもいいんじゃねぇの?見合いとか紹介って何もないところから始まるもんだし」
「いやいやいや、だからって、修司と恋愛なんて想像出来ないんだけど」
「まぁ……俺もそう思ってたんだけど。実際想像してみたら、悪くないんだよ」
「はぁ?!」

と、思わず大きな声で驚き、「ちょっと……気持ち悪い想像やめてよ」と言った。

「想像してみないとわかんねぇだろ」
「……………」

修司のぶっ飛んでる発想に何も言えなくなった。

「俺達……もしかしたら、結構上手く行くのかもしれない」
「どこからそんな自信が湧いてくるのよ」

と、呆れる。


2018/06/11(月) a.k
タイトル 1-052.



「俺はそのために帰るんだけどな」
「赤ちゃんに会いたいから帰るの?」
「写真屋に頼むと高額な料金を払わされるから、写真撮れって言われてるんだよ」
「なるほどね。良いように使われてるね」
「ホントだよ」
「だったら、もっと早く帰ればよかったじゃない。わざわざ年明けに帰らなくても」

そう言ったら修司は、「おまえとのことを放置したまま帰省出来ねぇだろ」と言った。
その言葉をきっかけに緊張感が生まれて、空気が変わったように感じた。

「俺のことを避けるぐらいあの夜のこと、戸惑ってんのかよ」
「そりゃあ……戸惑うでしょ。私と修司の仲で100%あり得ないことが起こったんだから」
「そうだけど。最初にキスしたのはおまえだからな」
「その前に修司は抱きしめたじゃない」
「それはおまえが泣くからだろ」
「泣いたからって抱きしめなくてもいいじゃない」
「仕方ねぇだろ。気づいたら体が勝手に動いていたんだから」
「しっかり理性保ってよ」
「おまえがそれを言うなよ」

そう言われて何も言えなくなり、言葉に詰まった。
修司の顔を見ていたが、そむけて紙コップに入っていた甘酒を一口飲んだ。
少し沈黙が流れ、修司も残りの甘酒を飲み干した後、「―――俺、あれから色々考えたんだけど」と口を開く。

「……なに?」
「これを機会に俺らの関係を変えてみるってどう?」
「は?なにそれ」
「恋人になる――……とか?」

と、耳を疑うような言葉を発した。
修司の言葉に驚きながら、「…………冗談でしょ?」と言った。


2018/06/11(月) a.k
タイトル 1-051.



「馬鹿だな。願いごとは簡単に手に入らないから、願うんだろ」
「…………」
「じゃあ、俺が願ってやるよ。葉那の願いごとが叶うように」
「口に出して言ったら、もう願い事は叶わないじゃない」
「大丈夫大丈夫。今日は参拝客も多いから。神様には聞こえてねぇって」

と、言って、微笑む。

「相変わらず、ポジティブだよね」
「ネガティブに考えるより、ポジティブに考えた方が人生楽しいだろ」
「まぁ……そうだけど」


ぎゅうぎゅうに押されながらも長い列に並び、お参りを済ませた私たちは、本堂付近で無料で配っていた甘酒を飲もうか、といことになった。
甘酒が入った紙コップを持って、人の群れから逃れるように薄暗くなっている本堂の裏手へ歩き、そこにあるちょっとした石段に腰かけて、二人並んで甘酒を飲む。

「修司は、実家に帰らなかったの?」
「明日帰る。ねーちゃんたち帰って来てるみたいだから」
「じゃあ、赤ちゃんに会えるね」

修司には2歳年上のお姉さんの美希ちゃんがいる。3年前に結婚して今年の秋に待望の第一子が生まれた。
里帰り出産していたので、一度だけ修司の実家へと連れて行ってもらい、赤ちゃんに会わせてもらった。
ゆっちんが美雨ちゃんを産んだ時にも感じたけど、生まれたばかりの赤ちゃんはくたっとしていて、この世で一番可愛い。
それが自分の子どもなら、尚更可愛いに違いない。


2018/06/11(月) a.k
タイトル 1-050.



商店街を抜けて住宅街を20分程歩いた場所に、神社はある。昔から年末年始や夏祭り時期になると、参道のあたりからたくさんの夜店が連なっていて、多くの参拝客で賑わっている。
今日も真冬の寒空の下にも関わらず、たくさんの参拝客で賑わっていて、中には振袖を着た女性の姿も目に付いた。
新しい年を迎えようとしている今、行き交う人々は楽しげな表情を浮かべているのに、私たち二人は家を出てから一言も発せず、重苦しい空気を醸し出していた。
修司の隣にいる私は、いつ修司から話を切り出されるのか…。と変な緊張を持って歩いていた。

「とりあえず――お参りでもするか」

と、内心ビクビクしながら歩いていた私とは違い、修司は神社の敷地に入るといつもの口調で言う。

「そうだね」

と、返事をして、私たちは本堂の方に向かって出来ている列へと向かった。
列に並び始めた時に今度は、「何か願いごとある?」と聞かれた。

「それ―――昔、然にも聞かれたことある。満月の夜に願いごとをすると叶う、って言ってね。何か願いごとはあるかって聞かれた」
「へぇ――。あいつ意外とロマンチックな男なんだな」

と、言った後に、「それで、おまえはなんて答えたんだよ」と言う。

「結婚したいって言った。見事撃沈したけどね」

と、言って、小さく笑った。
それから私は、「―――だから、私はもう願いごとを願わない」と言った。


2018/05/13(日) a.k
タイトル 1-049. 今日の気分end.



「マジでどうしよう……。なんであの時修司にキスした?雰囲気にのまれたから?それとも3年ぶりだったから?―――しかも修司の前で、女が発動するなんて……。恥ずかしすぎる」

と、顔を伏せたまま手に持っている鉛筆で、スケッチブックの上をぐりぐりと意味もなく円を描く。
ゆっちんに相談したいけど、迂闊に他人へ話せる内容じゃない。

「子ども悩み相談室に電話したい……」

と、漏らした時だった。
1階から大きな声で、「葉那ぁ――!修司くん来たわよ」とお母さんの言葉に驚き、勢いよく頭を上げた。
お母さんと修司の話声が下からかすかに聞こえ、それからゆっくりと修司が上がってくる足音が聞こえてくる。
足音が近づいてくるたびに、胸の中が騒がしくなり、妙な緊張感が私を襲っていた。
コンコンッと軽快に部屋のドアをノックされ、「入っていい?」と言う。

「あ……。うん……。どうぞ」

緊張しながら言ったら、ゆっくりとドアが開く。
ドアが開いた先には、いつものジャンパーを着た修司が立っていた。

「よぉ」

と、いつもと変わらない笑みで修司は言う。
私はそれを返すように、「よぉ」と答える。
あの時のことを言われるのかと思いきや、修司は私の顔を見ながら、「神社行かない?」と言った。

「え……?神社?」
「昔、よく行ってただろ」
「うん……」
「久しぶりに行かないか?」
「……わかった」
「じゃあ、下で待ってるから。用意出来たら降りて来いよ」
「うん……」

私の返事を聞いた修司は、部屋を出ると階段を降りて行った。


2018/05/13(日) a.k
タイトル 1-048.



「私、思うんだけど。結婚して子ども産むことが、本当に幸せなのかなって。その人がそれを望んでそうなったのなら、幸せなんだろうけど。望んでなかったら、それは幸せじゃないよね」
「葉那はそうなりたい。とは思わないのか?」

と、お父さんは言う。

「然と付き合っていた頃は、早く結婚して然の子どもを産みたいって思ってたけど、今は正直思わない。そう思わせてくれるような男と出会えてない」
「だから、お見合いしなさいって言ってるのよ。お見合い相手の方がそう思わせてくれるかもしれないじゃない」
「無理だよ。今の私のアンテナが、結婚の方に向いてない」

そう言うと、私は立ち上がり、お母さんからの小言から逃れるように部屋へと戻った。



部屋に戻ると、母親の言葉に苛立ちながら、スケッチブックを広げて仕事用のイラストのイメージ画を描き始めていた。
鉛筆で脳内に浮かんでいるものを絵に起こしているが、「なんで親がそんなに結婚を焦ってるのよ……。人を行き遅れみたいに言わないでよ。まだ29だっつーの」なんてことをぶつぶつと文句を言いながら描いているため、中々集中出来ない。

「―――つーか、今は結婚よりもあのバカ修司のことだよ……」

私が今真っ先に考えなきゃいけないのは、お見合いのことよりも、結婚のことよりも、修司のことである。
修司のことを考えれば考えるだけ気がめいってしまい、広げているスケッチブックの上に頭を乗せた。


2018/05/13(日) a.k
タイトル 1-047.



「元気なんじゃない?」
「連絡は取ってないのか」
「まぁ……別れてるからね」
「あんなに尽くしても、人気が出た途端に捨てられるなんてね」
「間違わないで欲しいんだけど、私が然を捨てたの」
「どっちにしろ、逃がした魚は大きかったわね」
「…………」

それからもお母さんの愚痴は止まらず、お父さんと二人して愚痴を右から左へと聞き流しながら年越しそばを食べた。
年越しそばを食べ終えた頃に、お母さんはどこか嬉しそうな表情を浮かべて、「とうとう今年中に彼氏は出来なかったわね」と口にする。

「まだあと数時間あるじゃない」
「今年1年彼氏が出来なかった人が、あと数時間で出来るとは思えません」
「ごちそうさまでした」

話が変な方向へ進みそうなのを感じて、手を合わせて言った。
その場から逃げようと立ち上がり、使っていた食器を重ねていると、「お見合いの件だけど、年明け早々にでもしようかって話になっているから。そのつもりでね」とお母さんは言う。

「はぁ?!」

と、驚き、「勝手に話を進めないでよ」と言った。

「こういうのは、早く進めた方がいいのよ」
「だからぁ――、あと数時間あるじゃない」
「いい加減、あきらめなさい。往生際の悪い子ね」
「私、ホントにまだ結婚はしたくないんだって。新しい仕事の話も来たし、今は仕事に集中したいの」
「そんなこと言ってたら、本当に行き遅れるわよ?子どもだって産めなくなっちゃうわよ?」


2018/05/13(日) a.k
タイトル 1-046.



「葉那はどこにも行かなかったのか?」

と、席に座っている私を見て、お父さんは言った。

「まぁね。年末年始ぐらいゆっくりしたいから」

なんてことを言うと、「あなたは年中ゆっくりしてるじゃない」とお母さん。

「うるさいなぁ。家を出れば出たで文句言い、家にいればいたら文句言うって、どうすればお母さんの正解になるのよ」
「お嫁に行って、年始に挨拶に帰ってくれば正解なのよ」
「……………」

話がまずい方向へ進み始めたことに気がつき、私は無視するかのように両手を合わせて、「いただきます」と言った。
年越しそばをすすっていると、「さっきね、商店街を歩いていたら、久しぶりにあなたの同級生だった柏木ひかりちゃんのお母さんに会ったのよ」とお母さんは話を進める。

「それがどうかしたの?」
「地味で目立たず、内気で大人しい子だったのに、23歳で結婚して来年には3人目が生まれるんですって」

薄々嫌な予感はしていたが、話の終わりを聞いて、やっぱりそういう話か……と、言葉を失う。
何も言わずに私は再びそばをすすった。

「ひかりちゃんが結婚した時期ぐらいに、あなたはお金もないバンドマンに入れ込んでたわよねぇ……」

と、母は溜息をひとつ零す。

「なによ。それのどこがいけないのよ」
「あなたって昔から男見る目がないわよね。高校生の頃も茶髪の軽そうな男に入れ込んでたじゃない」
「……………」
「神永くんは元気なのか?」

と、今まで会話に参加してこなかったお父さんが口を開く。