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「…探していたんだ、今度こそ君は僕の……」 悲しそうな表情をしながら目の前の青年は問いかける。やっと巡り合えたと呟く青年に少女は戸惑いを隠せない。 「 、……君を悲しい目にはもう、遭わせたくない」 少女に向かって と呼ぶが少女の名前は ではない。 「待っててほしい」 名前も何もかも知らない男の人…真剣な表情、ラピスラズリの宝石のような群青の瞳に釘付けになる。 「あっ…」 待っててほしいと言い残し、その意味を聞こうとする頃には青年の姿は見えなくなっていた。
「茉莉花、今月分の迷惑料よろしくね。2000円」 「……うん」 小柳 茉莉花はクラス内のカーストの最底辺に位置している。聖グラディア学園高等学校、2年A組。学園内でもこのクラスだけはいじめがずっと存在している。 「ね、ねぇ雪沙、そのことなんだけど…」 払えない…とは言える空気じゃない。 「名前、呼ばないでよ…苛々する、根暗魔女。あ、そうだ。スマホ貸してよ、欲しいものがあるから」 「ごめんなさい……これ」 雪沙はキッと茉莉花を睨みながらスマホをひったくる。 毎月の迷惑料、たまにある茉莉花のスマホでの買い物、数々の暴言などが普通に行われている。雪沙の父親が学園の理事長をしているため、いじめが大事になり目を付けられるのを恐れたクラスメイトは逆らえない。 茉莉花と雪沙は以前までは姉妹だった。ある事件により、雪沙の父親と茉莉花の母親は離婚しており、それ以来雪沙には敵意を向けられている。 「便利屋魔女、最高!」 「だよね、頼み事もほいほい引き受けてくれるし」 誹謗中傷を受けても顔色を変えない茉莉花。 |
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