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竜の伝説〜飛翔〜
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交換日記レンタル - nikkijam

2020/03/31(火) 語りべ
タイトル 王宮の回旋曲はなく7 今日の気分次回更新は4月7日(火)予定です




「王様…」
「勇者アルスよ、王はこの通りだ。折角のところ申し訳ないが今日のところは帰ってくれ。何か用があれば私が代わりとなろう」

 大臣もこれ以上アルスたちに対応している余裕はなくなってしまったようで。
 嫌でもあの大魔王のあのおどろおどろしい笑い声が連想されてしまうらしく、その場に居る侍女や兵たちも、アルスたちを見るだけで顔面蒼白となっていた。
 彼らの恐怖する顔を見れば見る程に、アルスの中では更に怒りに近い感情が込み上げてくる。
 こんな気持ちは彼自身も初めてであった。

 怯えきった彼らの前で、アルスは声を大にして叫んだ。

「心配しないで下さい! 僕が大魔王ゾーマも打ち倒します! ようやく手に入れた安寧を嘲笑ったアイツを…戦ってきた日々を無下にし汚したアイツを必ず倒す!」

 そう言うとアルスは誰に言うこともなく踵を返し、そのまま謁見の間を後にした。














2020/03/31(火) 語りべ
タイトル 王宮の回旋曲はなく6




 ゾーマと名乗った存在が消え去り、アルスたちもまたようやくと王のもとへ足を運ぶ。
 ぐったりと疲弊しきった様子であったが、怪我等はないようで。
 大臣も「国王は無事だ」と話す。

「魔王バラモスは倒したはずだったのに…まさか、大魔王なんて存在がいたとは気付かず…うかつでした」

 眉を顰め語るアルス。
 悔しさと憤りを滲ませる彼は未だに剣を鞘には納めず、柄を握り締めたままでいる。
 そんな彼の珍しい様子に動揺を隠せないスイリ。
 彼女は無言で彼を見守る。

「もう、何も言うな」

 と、アルスの台詞を遮るかのように、国王はそう告げる。

「闇の世界が来るなど、誰が予測できよう…皆にどうして言えよう…」

 王は俯き、頭を抱える。
 だが国王が悩むのは最もで。
 やっと魔王を倒す事が出来、やっと安寧を手に入れたと皆が思っていた、そうなっていくはずだった矢先の出来事だったのだ。
 希望に満ち溢れていた世界を再び絶望に陥れる事実など、公言出来るはずもなかった。
 そんなことをしてしまえば、それこそ大魔王ゾーマの思うつぼなのだ。

「アルスよ大魔王ゾーマのこと、くれぐれも秘密にな…もう疲れた、下がって良いぞ…」

 そう言うと王はがっくりと肩を落としたまま、それ以上何も言う事はなかった。
 身を案じる大臣や侍女たちの言葉にもまともに答えようとはしない。
 一瞬にしてすべての絶望を背負い込んでしまったような、気力を削がれてしまったような。
 そんな感じであった。

2020/03/31(火) 語りべ
タイトル 王宮の回旋曲はなく5



 彼の雄叫びに驚いたスイリたちとは裏腹に、声の主は高らかに笑い叫ぶ。

「我が名はゾーマ。全てを滅ぼす者。そなたらが我が生贄となる日を楽しみにしておるぞ。わははははははっ!」

 直後、立っているのがやっとと言う程の大きな地震が起こる。
 独特なデザインの壷たちは転げ落ちて割れ、足が竦んでいた者たちは思わず尻餅を付く。
 が、直ぐに地震は止まり、烈風も、暗雲さえもゆっくりと静かに消え去っていった。
 そうして、広間に残されたのは絶望を与えられ恐怖に青ざめる王や人々と、大魔王の登場に様々な感情を心に抱き沈黙するアルスたちだけであった。







「なんとしたことじゃ…やっと平和が取り戻せると思ったのに…」

 静まり返る広間で、ようやくぽつりとそう言葉を洩らしたのは国王だった。
 どかりと深く玉座に座ると同時に力無く項垂れ、そこには先ほどまでの喜びに満ちた顔はなく。
 青ざめきった、絶望に打ちひしがれる顔であった。

「王よ…」

 その場にいた誰もが奥深くに恐怖心を刻み込まれてしまい、王の身を案じることも、目の前で跡形もなく消滅してしまった仲間を嘆くことも出来ず。
 足を竦ませたまま、沈黙する兵士たち。
 ようやく口を開けた大臣でさえ、言葉少なく王の名を口に出すことしか出来ない。

「王様…お怪我はありませんか…?」



2020/03/31(火) 語りべ
タイトル 王宮の回旋曲はなく4








「そなたらの苦しみはわしの喜び…命ある者全てを我が生贄とし、絶望で世界を覆い尽くしてやろう」

 同時に肌に突き刺さるような烈風が吹き荒び、広間を襲う。
 攻撃性はないが、それはまさに絶望を体現させたかのような冷たい風だった。
 と、今度はレオが謎の声に叫び呼びかける。


「さしずめお前は別の魔王…いや、大魔王だってか? じゃあお前を倒せば今度こそ世界は救われるってことだよな!」

 しかし大魔王と呼ばれた声の主は返答せず。
 辺りは風の斬る音だけが響く。
 先ほどまであれほど歓喜に包まれていた場所とは思えないような、絶望の広間。
 そんな中。
 アルスもまた抜き身の剣先を上空へ掲げ、告げた。

「わかった…お前がこんな形で宣戦布告をしてくるというなら…僕もそれに答えるまでだ!」

 いつになく張り上げた雄叫び。
 それは悲しみや絶望ではない、怒りから来る感情の表れだった。



 目の前の人々を助けられなかったことへの憤り。
 ようやく平和を取り戻せると安堵した幸福を壊されたことへの怒り。
 魔王の更なる上。大魔王が登場してきたことへの悔しさ。
 何より、そんな運命の渦にある己への嘆き。
 それはそうした感情の猛りだった。




2020/03/24(火) 語りべ
タイトル 王宮の回旋曲はなく3 今日の気分次回更新は31日(火)予定です





 


 と、そんなアルスたちを他所に、突如何処からともなく声が響き渡った。
 しかしそれはアルスたちを此処まで導いてくれた女性のものとは全く違う、恐怖心を与えるかのごとき低く轟く、笑い声。

「わははははははっ! 喜びのひとときに少し驚かせたようだな!」

 広間中には彼の声のみが聞こえ、彼らがいくら周囲を見渡してもその者の姿は全く見えない。
 不気味な程に暗く黒いだけ。

「我が名はゾーマ。闇の世界を支配する者」
「闇の世界を、支配する者…?」

 おどろおどろしい声の語る言葉を静かに復唱するアルス。
 何故ならそのような世界も、存在も、今まで一度も聞いたことがなかったからだ。

「だって、私たちは魔王を倒したんですよ! 世界は平和を取り戻したんじゃないんですか、あなたは何者なんですか!?」

 驚愕しつつも、リルムは果敢に謎の声へ反論する。
 しかし、その声は彼女の質問に答える事はなく。

「このわしがいる限り、世界は闇に侵されたまま…さあ苦しみ悩むがよい」

 そう返すのみ。

「どうして! こんな…こんなことをするの!? ようやく世界から魔王を退けたはずなのに…!」

 心ない嘲笑に怒りと悲しみを織り交ぜた声の主へ、スイリは心の奥から叫ぶ。
 だがそれで止めることはなく。
 彼は更に怒りを、悲しみを、絶望を煽るように声を張り上げ、告げた。






2020/03/17(火) 語りべ
タイトル 王宮の回旋曲はなく2 今日の気分次回更新は24日(火)予定です



 しかし人々が突然の事態に逃げ惑うよりも早く、雷は音楽部隊や他の兵士たちへ次々と落ちていく。
 それはまるで落雷と言うよりも、人を狙い放たれる呪文のように。
 勝利の美酒に酔おうとしていた勇者たちを嘲笑うかのように。
 広間にいる兵士、人々を襲った。



「何が起こってるんだ!?」
「アルス!」
「わかってる!」

 動揺しているのは彼らだけではない。
 アルスたちでさえ、この状況を呑み込めず、動揺を隠せないでいた。
 だが自然的ではない異常事態で考えられる可能性は一つしかなく。アルスは即座に携えてあった剣を柄から引き抜く。
 同じくレオ、スイリ、リルムも武器を取り出し身構えるが、そもそも其処に魔物らしい気配はなく。
 敵意さえ感じられない。
 間もなくして落雷はぴたりと収まり、同時に人々の声も消えてしまっていた。






2020/03/17(火) 語りべ
タイトル 王宮の回旋曲はなく1







 
 国王の合図を受け、既に用意されていたのだろう様々な金管楽器や打楽器を携えた音楽部隊が、再度扉が開かれると同時に姿を現す。
 扉の向こう側からは香ばしい良い匂いが流れ込んできてアルスたちの食欲をかきたてる。
 そう言えば魔王城突入から今まで、何も食べていないと、アルスは思わず腹部を押さえた。

「凄いことになりそうだね…」
 
 アルスの耳元でひっそりとそう囁くスイリ。
 彼が頷く間もなく、寸分乱れもない動きで楽器を構え、音楽部隊はファンファーレを奏でた。
 広間中に響き渡る演奏。
 足下にも響くような、そのトランペットの音色は―――次の瞬間、途絶えることとなる。





 直後、刹那のような速度で音楽部隊に謎の光が直撃する。
 突然のことで驚く暇もなく、そこに居た誰もが何が起こったのか、解らない状態であった。
 だが、発光と同時に轟く雷鳴によりそれ雷であったとようやく気付く。

「な、なんだ…!?」
「きゃあアアッ!!」

 気付けば柱間から覗く空は日中という時刻にも関わらず真っ暗で。
周囲の人たちの表情もよく分からないくらいに、更に暗黒に包まれていく。
 ただわかることは、屋内へと降り注いだ雷は何かに直撃したということ。
 その証拠に、先ほどとは打って変わり焦げ臭い匂いが広間に漂っている。


2020/03/10(火) 語りべ
タイトル 帰って来たアリアハンで7 今日の気分次回更新は17日(火)予定です




「まだちょっと実感してないんだけど…私たち魔王を倒したんだもんね」
「ま、街や城の人たちは騒ぎ過ぎって気もするが。ここは祝われとこうぜ、何せ魔王を倒したわけだしな」

 ひそひそと耳打ちするスイリに、後頭部に手を回しながらレオがそう呟く。
 と、まだ何処か呆然としているアルスへ、レオは軽く小突き言う。

「そんなわけだからそろそろお前も喜んでおけよ。でもって実感しろよ、魔王を倒したってことをさ、勇者」

 彼の言葉に瞳を大きくさせたアルスは直後に破顔し、「そうだね」と頷く。



 街の人々、城の人々。
 国王に祖父、そして母。
 皆が喜び、感激し、涙している。
 自分はそれだけのことをしたんだ。
 それだけの偉業を遂げたんだ。
 アルスは此処に来てようやく、自分の成し遂げたことを噛みしめようとしていた。
 自身が達成した目的を、夢を、喜ぼうとしていた。
 静かに、ゆっくりと拳を握り締めていた。




「国中の皆…いや、世界中の皆がアルスを称えるであろう。さあ皆の者、祝いの宴じゃ!」

 だが、彼の、彼らの喜び、感激、希望はその瞬間までだった。
 人々の祈り、感激、歓喜とは裏腹に、天候は徐々に暗雲が垂れ込み始めていく。







2020/03/10(火) 語りべ
タイトル 帰って来たアリアハンで6







 大きく重厚感のある観音開きの扉が開くと同時に、城内に響き渡る歓声。
 王城内に入る度に見てきた、感じてきたあの規律ある厳格な雰囲気がそこにはなく。
 兵士もメイドも老若男女皆が喜び満面の笑みを見せながらアルスたちを迎えてくれていた。

「アリアハンってこんなに人がいたんだね」
「本当そう思うよ」

 ひしめくように集う人々の多さに驚きぼやくスイリと、それに同調するアルス。
 しかし尚もアルスたちに休息の時間は与えず、兵士たちは列を作り、彼らの道を促す。
 流されるまま、アルスたちは通路を進みそして、謁見の間へと辿り着く。



 謁見の間ではアリアハン王が心待ちにしていたという程の明るい顔でアルスたちを迎え入れる。

「おおアルスよ! よくぞ魔王バラモスを打ち倒した! さすがオルテガの息子!」

 声高々に叫び感激する国王は思わずその玉座から立ち上がる。
 一方彼の傍らで大臣もまた喜びに表情豊かに口を開く。

「これでまたアリアハンの名が世界に轟くだろうめでたい、実にめでたい!」

 広間中に響き渡るような大きな笑い声を上げる二人。
 未だこのお祝いムードの状況についていけてないアルスたちは思わずぽかんと口を開けてしまっていたが、直ぐに口元を緩ませ互いに苦笑し合う。



2020/03/03(火) 語りべ
タイトル 帰って来たアリアハンで5 今日の気分次回更新は10日(火)予定です





「絶対町にはいると思うんですけど…全然姿が見つけられなくて…」

 そう不安げに顔を俯かせ話すリルム。
 同じ仲間として喜びを分かち合いたい。
 やったなと、魔王を倒したんだなと褒めて貰いたい。
 そんな純粋な気持ちから彼女は眉尻を下げながらも、周囲に視線を配り続けているのだ。
 けど、と。
 レオは肩を竦めながら言う。

「アイツはこういった場面に出てくるような奴だとは思えねえけどな。職業や起こった出来事云々って理由よりか、性格的に無理そうだからな」

 苦笑交じりにそう言って彼はリルムの頭をぽんと優しく叩く。

「多分さっさと船に乗り込んでて、今頃コティッチたちと俺たちが帰ってくるのを待ってるだろうさ」

 触れられた頭部を撫でながら、リルムは先に歩き出すレオの背を見つめる。

「そう、ですね」

 残されたリルムはぽつりと、誰に言う訳でもなく呟いた後。
 彼らを追いかけるように足を前へ出す。
 しかし、歩きながらも彼女の表情は何処か曇り気味で、未だ不安は拭いきれていない。
 だがそれはストームの安否について。というわけではない。
 ざわざわとした胸騒ぎのような感覚。
 先ほどから抱いているその興奮とも不安とも歓喜とも恐怖とも取れるような気持ちにリルムの震えは止まらなかった。
 だからこそ、仲間であるストームにも傍に居て欲しいと思ったのだ。

「私の予感て変なときばかり当たっちゃうんですよ…」

 最後にそう呟くとリルムは急ぎ足でアルスたちの消えて行った王城へと向かった。