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竜の伝説〜飛翔〜
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交換日記レンタル - nikkijam

2018/10/16(火) 語りべ
タイトル 竜の居城2 今日の気分次回更新は23日(火)予定です




 

 ラーミアは迷うことなく、此処が目的地であったと示すかのように。
 ゆっくりと下降し、岩山の合間に現れた城へと降り立つ。
 上空から見た時点で巨大だと感じたその城は、やはり降り立って見ても巨大であることは明白で。
 今まで尋ねたどの城よりも規模の大きさを感じた。

「ラーミア、ありがとう」

 地面へとようやく降りたラーミアはその羽根を静かに畳み、それからアルスたちへ降りるよう促すが如く、己の首を下げた。
アルスはラーミアに感謝を告げながら降りると、周囲を警戒し、見渡す。

「不思議な空気だ…今までのどの城とも違う…」

 城のバルコニーを思わせるその場所は城の入口に当たるのか、人よりも遥かに大きな扉が待ち構えていた。
 両開きの巨大な鉄の扉を、アルスたちはゆっくりと近付く。
 と、何の合図もなく突然に、扉は静かに開いていった。

「取り敢えずいきなり襲われるってことがなさそうだな…」

 開かれた扉の先を慎重に覗き込みながらレオがそう言う。
 
「歓迎されてるってことで良いのかな?」

 スイリもまたそう言うと、扉の中へと足を踏み込んでいく。
 彼女の迷いのない行動に続くように、リルムとストームもまた城の中へと入っていく。
 
「ラーミアはここで待っていて」

 羽を休めているラーミアへそう告げるとアルスもまた、城内へ駆け込んで行った。







2018/10/09(火) 語りべ
タイトル 竜の居城1 今日の気分次回更新は16日(火)予定です





 眼前に臨む険しい山々、そして暗雲へと向かって行くラーミア。
 暗雲からは時折稲光のような閃光も見える。
 蠢く黒い雲、その無機質な岩肌の山脈には恐怖も抱くが、それは何処か厳格な、神々しいものにたいする畏怖の念に近い。
 それは山脈を目にした際、ストームが放った言葉も起因している。

「この土地には神の使い、竜の女王が住んでいると云われていて足を踏み入れた者は誰もいないという話だ…」

 その台詞の通り、目の前の岩山たちも曇天もまるで行方を拒むかのように見えた。
 だがラーミアはそんな厳格な光景も恐れることなく、暗雲の空を突っ切っていく。

「一体この先に何があるんだ…!?」

 ポツリと独り言のようなレオの台詞が耳に入る。
 雲海の中へと入っていくと視界はほぼゼロとなり、濃霧のような景色の中を進んでいく。
 進んでいるのかどうかさえもわからなくなっていく感覚の中で、突如ラーミアがゆっくりと、その翼を羽ばたかせた。
 重力こそ感じないものの、雲の動きや景色の変化から下へ、下へと降りていくのがわかった。

「何か見えてきた」

 思わずそう口走るアルス。
 と、その雲間から現れた“何か”の全貌を目の当たりにした皆は、揃って口を開け、目を見開いた。

「嘘でしょ…だってここは誰も踏み入れたことのない場所だって…」
「けどあれは間違いなく建物です!」
「建物っていうよりあれは―――」

 皆の眼下に現れたそれは、紛れもない人工物――とても巨大な城であった。





2018/10/02(火) 語りべ
タイトル ラーミアの導く先 今日の気分次回更新は9日(火)予定です




「何処に向かっているかは正直僕もわからないけど…でも、今はラーミアを信じよう」

 アルスの言葉に異論を唱えるものは誰もおらず、むしろ「またか」と言った諦めのような、納得済みのような顔を浮かべ、皆頷いていた。

「ったく、言うと思ったぜ」
「ラーミアは神のしもべと言っていた。復活したばかりとはいえ、この行動にも何かしらの意味があるのだろう」
「そうですよね…」

 レオ、ストーム、リルムがそれぞれ口を開き、アルスへと同調する。
 返すようにアルスは静かに頷き、そしてラーミアの首に優しく触れた。
 心地良い温もりはまるでゆりかごのようで。
瞼を閉じれば眠りへと誘われるかのようだ。
 そんなラーミアの羽毛を撫でていたとき、突如スイリが大きな声を上げた。

「何、あれ…?」

 困惑した声を出す彼女につられ、アルスはスイリが見ていた先へ視線を移す。
 ずっしりとした積乱雲に包まれた、ネクロゴンド火山よりも高く険しくそびえ立つ山々。
 見たこともないその迫力ある自然の景色に、アルスは思わず息を呑む。







2018/10/02(火) 語りべ
タイトル ラーミア大空へ6









『安心してください』
「え?」
「どうしたの、アルス?」

 思わず上げた驚くアルスの声を聞き、首を傾げるスイリ。
 その様子からして、彼女たちに今の声は聞こえていなかったらしく。
 気のせいかとも思ったが、その声は続けてアルスへと語りかけてきた。




『怖がらないでください。ラーミアは今、ある場所へと向かっているのです』

 アルスの脳内へと語りかけてくる声。
 女性と思われる穏やかながらに凛とした透き通る声。
 何処かで聞いた事のあるような声にアルスは心の中で問いかける。

(ある場所って何処ですか?)
『女王の場所です』

 女王。女王とは一体何処の国の誰なのか。
 そう続けて問いかけようとしたが、声はアルスよりも先に『もう彼女には時間がないのです』と語り掛けた。

『彼女はずっと、貴方が訪れるそのときを待っているのです』
(その女王とは一体…それに、貴女は…?)

 しかし、その直後に声は聞こえなくなってしまった。
 ラーミアの声かとも思われたが、どうやら違うとアルスは直感する。

「ねえ、アルス…どうかしたの?」

 すると突然スイリがアルスの肩を掴んでそう尋ねてきた。
 顔を覗き込んで来た彼女は心配そうで、青い顔色をしている。
 何処に向かっているのか、下してくれるのかもわからない中でずっと俯いていたアルスを見つけ、不安になったのだろう。
 アルスは笑みを浮かべると「大丈夫だよ」と答え、それから皆へと聞こえるよう声を大きくさせて言った。

2018/09/25(火) 語りべ
タイトル ラーミア大空へ5 今日の気分次回更新は10月2日(火)予定です




 大空を舞い、飛び続けるラーミア。
 しかしアルスたちの声を聞いても何処かへと止まる事も降りる事もなく、空を飛んでいる。
 
「飛び降りる…わけにもいかないし…」

 そのラーミアの飛ぶ真下を見下ろせば、そこには雲海の隙間より小さくなった森や町、海が見えている。
 とても落ちて助かる高さではない。

「そうですよ、呪文は?」

 移動呪文ならばもしかすると強制的に別の場所へと皆を飛ばしてくれるかもしれない。
 地上に戻れるかもしれない。
 一縷の希望が高まる。
 が、それを否定するようにストームが首を左右に振った。

「唱えようと思ったが不思議な力でかき消されているようだ」

 この上空でアルスたちが空気の薄さや寒さで苦しまないのは、ラーミアに不思議な保護の力が宿っていると思われるから。
 そして、その不思議な力はアルスたちの呪文や道具の作用さえも相殺してしまっているようだと、ストームは自身の推測を語る。

「じゃあどうするんですか、本当に!」

 興奮して叫び声を上げるリルム。
 その眼には薄らと涙が伺える。
 もしも、このままどこの大地にも降ろしてくれなかったら、永遠に飛び続けているのだとしたら。
 自然と背筋に寒気を感じてしまう。


「ラーミア…」

 アルスは不安顔を浮かべながら、おもむろにラーミアの首筋に触れた。
 と、そのときだ。

2018/09/18(火) 語りべ
タイトル ラーミア大空へ4 今日の気分次回更新は25日(火)予定です



 と、感動する一同の中。
 冷静にストームが口を開く。

「だがこの後はどうするんだ?どうやって命令をするんだ」

 確かに導かれるままに乗ったのだが、どうすればこの鳥を操る事が出来るのか。
 誰もわかってはいなかった。

「えっと…多分僕たちの言葉を聞いてくれるんだと思います」

 が、そう言っている間にもラーミアは気持ちよさそうに、自由気ままに大空を飛んでいるようで。
 
「ラーミア、頼む…止まってくれないかな!」

 慌ててアルスはなるべく大きな声でラーミアへと呼びかける。

「あ、アレ見てください!」

 するとリルムが何かに気付きその方へと指さす。
 アルスたちも見やるとそこにはアルスたちの船――アレリス号の姿があった。
 
「そうだ、ラーミアあの船の方に…」

 しかし、そう言いかけている内にラーミアは、あっという間に船を通り過ぎてしまう。
 どうやら遥か上空である上に風の抵抗を感じられないため、相当な速度で飛んでいるらしい。

「ああっ!通り過ぎちゃいましたよ!」
「どうすりゃいいんだよ」

 通り過ぎ、小さくなって消えて行く船の姿に動揺を隠せないアルスたち。
 そのラーミアの様子はまるで、暴走しているようにも見えた。

2018/09/18(火) 語りべ
タイトル ラーミア大空へ3






 一瞬にして大空へと飛び上がっていった不死鳥ラーミア。
 振り落されないよう必死にしがみ付いていたアルスたちだったが、不思議と風の抵抗といったものは全く感じられなかった。
 それどころか高山へ登った時に体感するような寒さ、呼吸のし難さもなかった。
 恐らくラーミアにはそういったものを感じなくさせるような――その背に乗せた者へのダメージを軽減するような――作用が働いているのかもしれないと、アルスは考える。



 視界はやがて真っ白な雲の世界に呑みこまれ、そして一気に突き抜ける。

「見て!!」

 スイリが指さしたその先に見えた景色。
 まるで海ように青蒼とした空と、真正面に臨む大きく白く輝く太陽。
 その下には何処までも広がる雲海。
 見たことがないようなその光景には思わず息を呑んでしまう。

「夢みたいな光景だな」

 輝かしい目の前の光景を見つめながら呟くレオ。
 無言のまま頷くリルムは言葉も出ないと言った様子で。
 
「ほんと夢みたいだよ」

 アルスもまた、レオと同じ言葉を繰り返すことしか出来ないくらいに、言葉を失っていた。

2018/09/04(火) 語りべ
タイトル ラーミア大空へ2 今日の気分次回更新は11日(火)予定です




「おい、ラーミアの背中だって広いわけじゃないんだから」

 ストームの注意に「すみません」と苦笑してリルムは謝る。
 現にラーミアの背は5人で乗るには何とかといった大きさだった。

「それでは…いってきます」

 アルスの言葉を聞き、巫女は二人同時に頷き、両手を合わせながら空に向けて掲げる。

「いってらっしゃい、ラーミア」
「いってらっしゃいませ、勇者様」

 直後。
 合図の掛け声を送ったわけでも、その身体の何処かを叩いたわけでもなかったが、ラーミアはアルスの意思を聞き取ったかのように自身の翼を大きく広げた。
 ゆっくりとした羽ばたきは、徐々に力強いものへ変わっていく。
 周囲に風を、旋風を巻き起こしながらラーミアは次の瞬間。
 祭壇の頭上へと、空の彼方へと。
 飛び上がっていった。




2018/09/04(火) 語りべ
タイトル ラーミア大空へ1





 屈んでいるラーミアの背にいざ乗り込むアルスたち。
 しかし、いざ乗るとなるとやはり緊張や不安によって身震いも出てしまう。 
 と、そんな理由から無意識に体が強張っていたスイリに、アルスはそっと彼女の手を握った。

「大丈夫だよ」

 優しく穏やかで、それでいて屈託のない真っ直ぐな声。
 その声はまるで不安な気持ちを振り払う呪文のようで、掌から伝わって来る彼の温もりはまるで懐かしい太陽の陽だまりのように安心感を与えてくれた。

「ありがとう」

 そう言って微笑み返すとスイリはアルスに腕を引っ張られながらラーミアの背へと乗り込んだ。
 フワフワのベッドの上のような柔らかさと、日光で温められた洗濯したてのシーツのような温もり。
 だがゆっくりと動くその背中と呼吸音は、間違いなく生き物なのだと実感させる。

「気持ちいいですね」

 それがリルムの率直な感想だった。
 目を閉じれば自然と眠ってしまうくらいに、とても心地よいラーミアの背中。
 と、寝そべっていたリルムの頭部を軽く叩く掌。



2018/08/28(火) 語りべ
タイトル タマゴを守る巫女たち8 今日の気分次回更新は9月4日(火)予定です




「ある一定の周期があるとも、勇者の誕生に呼応して復活をするとも云われていますがその真実を知る者はいないのかもしれません」

 そう囁くように告げると巫女二人はアルスの前に降り立ったラーミアの左右へと回り込み、片膝をついた。

「勇者のために生まれ来る存在だとしても、わたしたちはずっとたまごを見守り続けてきました」
「それがわたしたちの役目だとしても、役目とは関係なく、ずっとこの日が来ることを待ち望んでいました」

 わたしたちにとってもたまごは――ラーミアはとても大切な存在なのです。
 そう言ってアルスを見つめる二人の眼差しは至極真剣で、まるで慈しむ大切な子を託す母や姉のそれに等しいと、アルスは感じとる。
 巫女たちそれぞれを見やったアルスは笑みを浮かべ、力強く頷いて答えた。

「解っています。貴方たちにとってかけがえのないラーミアを傷つけるようなことは絶対にしません」

 だからこの翼をお借りします。
 アルスは巫女たちへ、深く頭を下げてそう言った。

「頭を上げて下さい。それは勇者様の翼なのです」
「ですから、頭を下げる必要はないのです」

 巫女たちは頭を下げるアルスよりも更に頭を深く下げ、「さあ、ラーミアがあなた方を待っています」と告げた。