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竜の伝説〜飛翔〜
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交換日記レンタル - nikkijam

2018/04/24(火) 語りべ
タイトル 緩む黄昏は宵に向かう11 今日の気分次回更新は5月1日(火)予定です






「とにかく、そんなわけだから明日しっかり礼言っとけよ」
「うん、わかったよ」

 そう言って頷くとアルスは改めてレオへ「ありがとう」と述べた。
 するとレオは照れ臭そうに「大したことじゃねぇよ」と返し、そのままベッドに横たわった。
 と、横たわっていたレオが思い出したようにおもむろに口を開く。

「そういやストームの姿が見当たらないな」

 確かにとアルスはストームの宛がわれているベッドを一瞥する。
 ベッドの席は空となっておりストームの姿はない。
 
「でも大丈夫だよ」

 笑みを浮かべながらそう言うとアルスも続けてベッドへと横になる。
 しんとした暗がりの空間。
 白い天井を見つめ続けてアルスは口を開く。

「ストームならちゃんと戻って来るって」

 いつも以上にしっかりとした言葉で、アルスは迷いなくそう告げる。
 そんな彼の横顔を見つめた後、レオもまた天井に視線を天井に向けて答える。

「ま、そりゃそうだな」

 彼がランシールのために戦っていたのは町の者たちから聞いていた。
 しかもスイリとリルムと共に戦っていたと。
 かつての彼では到底考えられなかったことだ。

「…お前も、あいつもホント変わったってことだな」

 身体をアルスより背けながら、ポツリとレオは洩らした。







2018/04/17(火) 語りべ
タイトル 緩む黄昏は宵に向かう10 今日の気分次回更新は24日(火)予定です



 そうしてレオは今回、本当はスイリとリルムがサプライズパーティを計画していたことを話した。
 祝宴に出したケーキはアルスのためにと秘密裏に作っていたことも話してしまった。
 事情を聞いたアルスは驚きそれから落ち込んだ顔をしてみせる。

「そ、そうだったんだ…知っていたらお礼を言ってからちゃんと食べたかったのに」

 どうりで随分と甘いケーキだったと、スイリとリルムが持ってきたケーキの味を思い出す。
 自分たちが作ったと特に言っていなかったため、気にしてはいなかった。

「言うに言えなかったんだろ。結局町総出の宴になっちまったのに、お前のためのケーキを作ったなんて」

 言えば町の者は勇者のためのケーキだからと遠慮して食べられなくなってしまう。
 それよりは皆で楽しく美味しく食べた方が良い、そう思ったのだろうとレオは付け足す。

「それでも作ったのは自分たちだって言ってくれれば良かったのに…」
「それはあれだろ。ケーキの出来がいまいちだったから言うに言えなくなったってところだろ」

 アルスは少しばかりの間を置き、それから「それは確かにそうかも」と思わず苦笑を洩らす。
 町の者たちもケーキが甘口だったことに賛否両論の感想を述べていたため、自分たちが作ったと、言辛くなったのだと思われた。





2018/04/17(火) 語りべ
タイトル 緩む黄昏は宵に向かう9







「確かめたかったっていうか…確認したくて聞いただけだ。どうせお前ならそういうとは思ってたぜ」

 じゃなければさっきの戦いでアイツを普通に倒しただろうしな。と、レオは付け足す。

「…けど、随分とブレなくなったな。以前のお前なんてぐらぐら揺れてばっかだったのに」
「耳が痛い話だよ」

 そう言って苦笑を浮かべるアルス。
 迷い、落ち込んでは決断し、それでもまた悩むを繰り返していた。
 あの頃はレオにも、スイリにも迷惑を掛けていたと、アルスは自負している。

「だけど自分の意思を貫けるようになったのはつい最近だし、みんなが支えてくれてたから今こうしてここにいられると思っているよ」

 ありがとう。
 そう言ってアルスが笑うとレオは照れ臭そうにして頬を掻く。
 が、直ぐに何かを思い出したような顔に代わり彼は「それなら」と口を開いた。

「礼はスイリとリルムの方に言っておけよ」

 どうしてかと、首を傾げるアルス。

「二人にも礼は言っておくつもりだけど…」
「そうじゃなくて。お前…やっぱ気付いてないんだな」

 そう言って深いため息を吐くレオ。
 より一層アルスは困惑した顔を浮かべる。

「あのな。言うなとあいつらに言われてるけどな、今回祝宴であやふやになったけど…」


2018/04/10(火) 語りべ
タイトル 緩む黄昏は宵に向かう8 今日の気分次回更新は17日(火)予定です



 静かにもう一度、アルスは小さく頷く。
 今回の戦いで充分にアルスは理解した。
 あのハンドというムクロは助けられたいとは思っていない。
 自分が犯した罪を罪だと全く思っていない。
 
「仮に人に戻して助けたとしても…多分彼はまた悪の道に堕ちていくと思う」

 フードを取り払った彼の眼がそう言っていたように、アルスは思えた。
 どんなことになろうとも自分は絶対に悪の道へと堕ち続ける。
 罪を認めることはない。
 まるでそれが信念のような双眸で訴えていた。

「世の中にはどうにもならないしょうもない奴も、アイツみたいに絶対に改心しようと思えない奴もゴロゴロいる。全ての人が勇者に差し伸べられる手を欲してるわけじゃない」

 それは十二分にわかっていた。
 だからこそ助けられなかったものも中にはいくつもあった。
 だからこそ、尚更助けたいと思うようになった。
 アルスは真っ直ぐにレオを見つめ、答える。

「それでもやっぱり僕は彼を助けたい。迷惑でも偽善でも良い。憎しみも怨みも関係ない。それが彼と同じように僕の選んだ道だから」

 そう言った直後、フッと笑みを零すレオ。
 彼は体勢を崩し、足を組むと「やっぱな」と答えた。



2018/04/10(火) 語りべ
タイトル 緩む黄昏は宵に向かう7



 その日始まった祝宴はまるで祭のように大賑わいで行われた。
 沢山の料理を満足な顔をして頬張る町の者たち。
 酒を飲み楽しそうに談笑し中には踊り出す者もいた。
 先刻ムクロに襲われたとは思えない、町を壊された後とはとても思えないくらいに町の者たちは明るく楽しく過ごしていた。
 それはアルスたちも同じであった。
 スイリとリルムが用意した特製ケーキや料理を食べ、久しぶりと言う程に笑って過ごした。
 そして、その夜。



「眠れないのか?」

 無事であった宿の一室にて寝ていたアルスは、ふと目が覚めてベッドから起き上がった。
 それから間もなく聞こえてきた声。
 それは隣のベッドで寝ていたレオのものであった。

「うん、まだ興奮冷めやらぬって感じかな」
「確かにな。こんなに派手に賑わったのっていつくらいだろうな」

 互いに見合うようにしてベッドに座り込む二人。
 そうだね、と言って笑みを浮かべたアルスだったが、間もなくして室内は静寂に包まれる。
 静寂と言っても向かいのベッドからはコティッチのいびきとチェロハの寝息がリズムを刻むようによく聞こえてきているわけだが。

「なあ…お前は本当にあのムクロを助けようって未だに思ってんのか?」

 と、おもむろにレオが口を開く。
 アルスは静かに瞼を伏せ、頷いて見せた。

「アイツがオルテガさんを追い詰めた相手だとしてもか?」
「うん」
「アイツはどう見ても人に戻りたいとも罪を償いたいとも思っていないぞ。」





2018/04/03(火) 語りべ
タイトル 緩む黄昏は宵に向かう6 今日の気分次回更新は11日(火)予定です




「ただ単に楽しみたいっていうのもあると思うけど、心の何処かではこうやって助け合って喜んで騒いで…そうすることを分かち合いたいって言うのかな…そんな気がするんだよね」

 レオは町の人々を見やり、「そういうもんかね」と呟く。
 後頭部に腕を回し、静かに吐息を洩らす。
 と、お腹に空腹感を感じたと同時に何処からともなく良い匂いが流れてくる。
 腹部を摩り、それから笑みを浮かべて答えた。

「ま、確かに…お礼をしたいっていう奴らの顔じゃないもんな、あれは」

 匂いと共に運ばれてくる様々な料理の山々。
 その量は勇者たちだけに献上するもの、とは決して思えないほどに大漁で。
 料理の皿を見ている男や子供たちは未だかまだかと楽しみに顔を綻ばせている。
 更には奥から聞こえてきた声。

「お待たせー!」
「お待たせしましたっ!」

 アルスとレオが目を移せば、スイリとリルムが満面の笑みで巨大なケーキを持って来ていた。





2018/04/03(火) 語りべ
タイトル 緩む黄昏は宵に向かう5







 一連の騒動の終わりから時間は経ち、日はすっかりと暮れて周囲は暗がりに包まれている。
 神聖な神殿のあるランシール。
 本来なら夕暮には町は静寂とした空気が広がっているはずだ。
 しかし、今日ばかりはいつもと雰囲気が違う。
 ムクロによって破壊された家々を片付ける者や宴の準備にたいまつを通りに掲げ設置している者たちの姿が見られた。
 人々と共に灯る明かり。
 遠方からも見えるその輝きを見つめながら、アルスは道端に用意されているテーブルへと腰を掛ける。

「勇者様は此方にお座り下さい」
「助けて貰ったお礼なんですから手伝わせるわけにはいきません」

 そう告げる町の者達によって仕方なく、と言った形で。
 同じく着席させられたレオはため息交じりにアルスを見やり、肩を竦める。

「全く、お礼って言われるほどのことなんか何もしてないんだけどな」
「そうだね」

 釣られて苦笑を洩らすアルス。
 彼はレオから視線を街並みへとおもむろに移していく。
 懸命に準備をする女性。
 懸命に町を片付ける男性。
 子供も老人も、できる事をできるだけ行い、動いている。
 と、町の者達に紛れコティッチとチェロハも大工作業が得意ということで復興の手伝いをしていた。
 そんな様子を見つめながらアルスは苦笑を洩らしながら告げる。

「助けてくれたお礼というのもあると思うけど…皆もやっぱり宴をやりたかったんじゃないかな」

 お祭り好きには見えなかったけど、と言いたげな目線をレオから感じ、アルスは言葉を続ける。


2018/03/27(火) 語りべ
タイトル 緩む黄昏は宵に向かう4 今日の気分次回更新は4月3日(火)予定です




「わかったよ」

 直後、嬉しそうな顔をするスイリとリルム。
 二人は戦い後の疲労も忘れて立ち上がると急ぎ何処かへと駆け出していく。

「ありがとう!それじゃあ宴が始まる時間まで女将さんのお手伝いしてくるね!」
「わたしも行ってきます!」

 そう言うと二人は宴を誘った女性を引っ張り、町の奥へと忙しなく消えて行った。

 あっという間に決まってしまった段取りに、残された男性陣は開いた口が塞がらない状態で。
 いつの間にか周囲には町の人たちの姿も散り散りとなっていた。

「てっきり反対でもするかと思ったぜ」

 アルスの横に並んでいたレオはため息交じりにそう言う。
 するとアルスは苦笑で返し、「そこまで固い人間じゃないよ」と答えた。

「宴ならきっと町の人たちも参加できるのかなと思って。もしそれなら町の人たちを元気付けるためにも必要かなと思うし、それに」
「それに?」

 そう尋ねるコティッチに、アルスは満面の笑みを浮かべて答える。

「余りにもスイリとリルムがしたそうだったから。あんなに宴が好きだとは思わなかったよ」

 未だ二人のサプライズに気付いていないアルスは、呑気にそんなことを言った。
 とことん鈍い勇者を横に、チェロハは「なるほど」と呆れた声を出し、それに合わせるようにレオとコティッチもまた似たような吐息を洩らした。
 




2018/03/27(火) 語りべ
タイトル 緩む黄昏は宵に向かう3








「勇者様!勇者様!」

 団らんとするアルスたちのもとへ、新たにまたしても駆け寄って来た一人の女性。
 募っていた人並みを掛け分けアルスたちの前へと現れた彼女は一礼し、言った。

「ランシールの町を救ってくれてありがとうね!それで、ささやかなお礼だけど…宴の準備をしようと思うから、是非参加してくれないかい?」

 突然の誘いにアルスたちは困惑に近い反応をする。
 何せ「守った」と言っても勇者を狙った流れで偶々町は襲われたのであって、アルスたちがいなければ町は襲われることはなかったということになるからだ。

「それに今は破損した家々の修復作業の方が重要でしょうし、だから僕たちは…」

 そう言いかけたところで女性は「そんなことはない!」と声高々に返す。

「勇者が町にいたから襲われた、なんてことは関係ないよ。このご時世いつどこでどう何が起こるかなんてわからないもんなんだからね」

 強い口調でそう言いながら女性はアルスたちがぽかんと口を開けてしまっている最中も、力説をし。

「大切なのはそうして困ったときに助けて貰ったなら、お礼はちゃんとしないと。だろ?」

 と言って豪快に笑って見せた。
 思わず呆気に取られていたスイリとリルムであったが、その女性が自身たちに目配せしていることに気付き、二人もまた力強くアルスを誘う。

「そうだよ、アルスパーティしよう!」
「こんなときだからこそ英気を養い活力を付けるべく、宴は必要だと思います」

 突如二人にもそう責められ、たじたじと言う様子を見せるアルス。
 アルスとしては祝宴などしている状態とは思えず、気が引けてしまっていた。
 が、そもそもサプライズとしてパーティを計画していたスイリたちにとっては、何としてもアルスを宴に参加させたかった。
 サプライズをしたところで気が引けてしまっては何の祝いにもならないからだ。

「でも…」

 と、言いかけ口篭もってしまうアルスだったが、暫く沈黙した後、頷きながら口を開いた。


2018/03/20(火) 語りべ
タイトル 緩む黄昏は宵に向かう2 今日の気分次回更新は27日(火)予定です








「アルスさん、レオさん!怪我はありませんか?」

 今度はリルムがやって来て二人の様子を心配そうに見つめる。

「この通り」

 そう返す苦笑したままのレオと、同意するべく頷くアルス。
 元気そうな様子を見遣り、リルムもまた二人に釣られて苦笑を洩らした。

「二人も無事そうで本当に良かったよ」

 未だしがみ付いて離れないスイリの肩をポンポンと優しく叩きながら、アルスはそう言う。
 リルムは一つ頷いて見せると「はい、最後までお役に立てなかったのは申し訳ありませんでしたが」と微笑みを浮かべなが答える。
 するとアルスは首を左右に振って答える。

「そんなことないよ。あのムクロと渡り合って被害を少なくしてくれたんだから流石だよ」
「あ、ありがとうございます!」

 リルムは熱くなる目頭を隠すように、深々と頭を下げた。
 畏まる様子の彼女に苦笑に近い笑みを零し、アルスはポツリと呟く。

「そこはお礼を言うところじゃないと思うんだけど」

 と、そんな4人が会話をしている最中。
 遠くから轟く声と足音。
 それは徐々にアルスたちの方へ近付いてくる。

「何があったんだよコレ!」
「ちょっと船の方に戻ってたらいつの間にかランシールから煙が上がってるんだもんビックリしたよ」

 急いで駆けつけてきたのだろうコティッチとチェロハ兄弟は口早にそう言いながら、アルスたちを順に見まわす。
 手にしているそれぞれの武器やその様子から、慌てて加勢に来てくれたのだろう。
 が、残念なことに遅かった。

「最後までお役に立てなかったってのは、こいつらのことを言うんだよ」

 そうレオは皮肉交じりに肩を竦め、アルスとスイリたちは思わず互いに顔を見合わせ笑った。

「何があったんだって、ちゃんと説明しろよ!」

 困惑したままでいる兄弟をそっちのけにして。