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竜の伝説〜飛翔〜
〜そして伝説へ〜

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2018/12/11(火) 語りべ
タイトル そして魔王の城へ2 今日の気分次回更新は18日(火)予定です



 
「そうだね…」

 前方へと視線を移しながらおもむろにそう口を開く。
 だがその双眸に迷いはないようで、真っ直ぐに何処かを見つめている。

「もう決まってるんだろ?」

 と、突如アルスの肩へ腕を回して、レオはそう尋ねる。
 笑みを浮かべている彼もまた、その両目は一点に先を見据えている。
 レオの問いかけにアルスは頷き、そして言う。

「うん、今度こそ―――魔王の城に向かうよ」

 伝説の不死鳥ラーミアを手に入れ、遂にアルスたちは魔王の居城へと向かうことが出来る。
 人が昇るには不可能に近い高い山脈。
 その周囲には山々に囲まれた湖が広がっており、魔王の居城へはそう簡単に近付くことが出来ない。

「このラーミアの力なら空から魔王の居城に行くことが出来る」

 疑う必要もない。
 ラーミアを信じ、大空をかけるだけ。

「行きましょう、アルスさん!」

 鼻息を荒くさせて意気込むリルムに苦笑を浮かべながら、アルスはもう一度頷き、ラーミアへと告げた。

「ラーミア、頼む。目指すはネクロゴンド火山南西部…魔王バラモスの城!」

 アルスの掛け声にラーミアは相づちの如く一声鳴くと両翼を大きく広げ、一気に滑空していく。
 竜の女王の城を覆っていた暗雲から抜け、アルスたちを乗せたラーミアは魔王の城へと向かって飛んでいった。
 





2018/12/11(火) 語りべ
タイトル そして魔王の城へ1







 巨城の外へと戻るとそこにはラーミアがアルスたちの帰りを待っていた。
 大きなバルコニーで羽を休めていたラーミアはスイリが駆け寄ると同時にその美しい頭を彼女に向けて下げて見せる。

「ちゃんと待っててくれたんだね、ありがと」

 まるでスイリと触れあうかのように自身の頭を優しく擦りつける。
 生まれてきたばかりのラーミアはそうとは思えないほど賢く、人に近い意思を持っているようだった。

「で、竜の女王に会わせるため俺たちをここまで運んで来たってのはわかったけどよ」

 おもむろにそう切り出したレオは視線をアルスのそれへと向ける。
 視線を感じたアルスはそれを取り出し、皆の前へと改めて見せた。

「この光の玉が魔王退治に役立つのかな?」
「わからない。けどとりあえず託されたものだから大事に取って置かないとね」

 竜の女王が最期に託したもの。
 それは間違いなく自分たちの役に立つ。
 必要となるときが来るはず。
 そう信じてアルスは道具袋へもう一度光の玉をしまった。
 




 ラーミアへと再び乗り込むと同時に、ラーミアは羽ばたきを始める。
 間もなくしてラーミアは上空へと飛び立った。

「これからラーミアで何処に向かうの?」

 一瞬にして遥か上空に飛んだラーミア。
 その眼下には先ほどまでいた竜の女王の城が見える。

2018/12/04(火) 語りべ
タイトル 竜の女王が託したもの4 今日の気分次回更新は11日(火)予定です







 竜の女王のいた広間を後にするアルスたち。
 特別会話をするというわけでもなく、彼らは無言のまま通路を行く。
 するとそこへ先ほどのホビットの男や、馬たちが姿を現した。

「女王様は…?」

 心配そうな顔を浮かべている彼へ、アルスは静かに頭を振る。
 ホビットは小さな声で「そうか」とだけ答えるとそれ以上何か言う事はなく。
 馬たちを引きつれ女王の間へと向かって行く。

「あの、貴方たちはこれからどうするの?」

 通り過ぎ去って行こうしていた彼らの背に問いかけるスイリ。
 足を止めたホビットはゆっくりと振り返り答える。

「我らの役目は終わったわけではない。女王様がいなくなってしまった今、今度は我らがこの城とこの城に眠る新たな命を守っていくのだ」

 そう言うとホビットは力強く頷いて見せる。
 新たな命。
 その言葉を聞いてアルスの脳裏には先ほど竜の女王亡きあとに産まれたタマゴが過る。
 あのタマゴに宿っている尊い命。
 それはいつの日か竜の女王の代わりとして生まれてくるのだろう。
 世界を見守る神のつかいである、大切な命。

「生まれてくるその日を心待ちにしています」

 アルスが微笑みながらそう言うと、ホビットは「お前たちが生きている間に生まれるかはわからんがな」と言って笑みを返した。





2018/11/27(火) 語りべ
タイトル 竜の女王が託したもの3 今日の気分次回更新は12月4日(火)予定です





「な、なんだ…!?」
「どうしちゃったの?」

 突然の事態に驚き動揺するアルスたち。
 直後。
 光は先ほどの玉と同じく静かに、ゆっくりとその柔らかな輝きを丸く楕円型に収束させていく。
 アルスが受け取った『光の玉』とは似て非なる、光の形。
 それは徐々に輝きを失っていき、やがて白い“それ”と成った。

「たま、ご…?」

 静かにたまごらしき形へと近付き、アルスはその白い殻に触れる。
 触り心地、温もり共にそれは紛れもないタマゴそのものだった。

「女王様…」
 
 触れているとそのタマゴからは、安らかな寝息が聞こえたような気がした。





2018/11/27(火) 語りべ
タイトル 竜の女王が託したもの2




「このひかりのたまで一時も早く平和が訪れる事を祈ります」

 光は静かに、ゆっくりと圧縮、収束していく。
 そして掌に収まるほどの玉へと変わった。
 光の玉はアルスの前へと移動すると、その両手に優しく乗った。
 柔らかで穏やかな、木漏れ日のような輝き。

「これは一体…どのように使えば…!」

 と、光の玉を受け取ったアルスは竜の女王へ尋ねる。
 だがしかし。
 竜の女王に彼の声は届いていなかった。
 もう、その声を聞く事は出来なくなっていたのだ。

「竜の女王様!」

 竜の女王に駆け寄るなり、スイリは自身が使える最上級の回復呪文を試みる。
 しかし、呪文を掛けてみても竜の女王に回復した様子も素振りも見えない。

「無駄だ、回復呪文は基本外傷を癒すためもの…お前ならわかっているだろう」

 寿命に逆らう術はない。
 僧侶や賢者の職に就く者ならば、なおさらその理は覆らないものだと理解出来ている。
スイリは俯き、「でも…」と小さな声を洩らす。
 すると竜の女王はスイリへ「もう、良いのです」と、先ほどよりも弱々しい声で返した。

「後はそなたらに…託しましょう。平和な世界を……頼みましたよ……そして、生まれ出る私の赤ちゃんのためにも…」

 そう言い残した竜の女王は、突然光に包まれた。




2018/11/20(火) 語りべ
タイトル 竜の女王が託したもの1 今日の気分次回更新は27日(火)予定です






「すみません…想像以上に私の命はもう、幾ばくもないようです」

 竜の女王はその頭を上げることなく、そう語り掛ける。
 最早動ける気力もないのかもしれない。
 そんな事を考えたアルスは無意識に自身の足を竜の女王の間近へと進める。
 続くようにスイリたちもまた、竜の女王へ近付いていく。

「そなたらに魔王と戦う勇気はありますか?」

 竜の女王は傍へときたアルスたちにそんな問いかけをする。
 するとアルスは迷わずに、力強く頷いて見せた。

「もちろんです。そのために僕たちは此処まで来たんです」

 他の者たちもアルスに続くように頷いていく。
 竜の女王は決意を強める彼らの顔を順に見渡す。
 真っ直ぐで曇りのない眼差し。
 それを見た竜の女王は、ゆっくりと自身の頭を上げた。

「ならば…そなたらにひかりのたまを授けましょう」

 持ち上げられた竜の女王の眼前――その空中から突如、光が現れる。

「な、なんですか!?」

 突然の発光に驚くリルム。
 それは他の者たちも同様であったが、何故かその光からは攻撃性を感じず、不思議と心地良いものだった。
 ラーミア復活に使われたオーブとはまた違った温かみがその光にはあった。



2018/11/13(火) 語りべ
タイトル 竜の居城9 今日の気分次回更新は20日(火)予定です




「呼ばれている…?」
「誰がそう言ってたんだよ、ラーミアなのか?」

 聞かされていなかった話を耳にしたストームとレオがそれぞれ、アルスへと疑問を投げかける。
 
「ごめん、僕も本当によくわかっていないんだ。でも声が聞こえて、そう言っていた」

 説明していなかったことに気付いたアルスは慌てて二人へかいつまんだ説明をする。
 と、そんなやり取りを耳にしていただろう竜の女王はおもむろに口を開く。

「そうですか…彼女もまた、そなたを導いているのですね…」
「彼女…?」

 アルスをここまで導いてきた声。
 勇者として旅立つ日の夢に語り掛けてきた声。
 オーブを手に入れたときに聞こえてきた声。
 そして、ラーミアがここへ来ることを教えてくれた声。
 そのどれもが同じようでいて、違うようにも聞こえていた声だった。
 その声の主にどうやら竜の女王は心当たりがあるようで。
 思わずアルスは尋ねようと口を開きかける。

「あの、それは一体――」

 しかし、突如竜の女王がその首を地面へと伏したため、彼の声を遮ってしまう。
 僅かにふら付いただけなのかもしれないが、それでも大人一人分はある彼女の頭が地面へと落ちる衝撃はアルスたちの居る足下にまで伝わって来た。






2018/11/13(火) 語りべ
タイトル 竜の居城8







 レオとストームがそれぞれ左右の扉を押し開けると、その先には今いる通路以上に大きく広い場所へと辿り着く。
 地面に敷かれた紅色の絨毯は一直線に伸びており、その終着点に見えるのは―――。
 巨大な白金色の竜だった。

「あれが…竜の女王様……?」

 遠くに見える姿はこの位置からでも充分威圧的で、その漂う空気に思わず緊張感が走ってしまうほど。
 だがアルスたちがやって来たというのに蹲ったままの様子は、まるで活力を感じられない。

「大丈夫、なのかな…竜の女王様…」

 そう心配そうに耳打ちをするスイリ。
 と、そのときだ。

「勇者……そなたが来るのを待っていました」

 その声と同時に、目の前で眠っていた竜の女王が、その重そうな頭を静かに上げて見せた。
 彼女はアルスたちの脳内に響くような声で語りかける。

「既に城の者から聞いているでしょう…私は竜の女王、神の使いです」

 彼女はそう言って会釈するかの如く軽く頭を下げる。
 アルスたちもまた慌てて、彼女に続いてお辞儀をした。

「アルスです。僕らはラーミアに乗って、ここまでやってきました…その、貴女に呼ばれていると、聞きました」

 彼のしどろもどろな様と説明に怪訝な顔を浮かべたのは共に居るレオやストームたちの方だった。
 だがそれも無理はない。
 彼らはアルスとラーミアによる不確定な導きのまま、言われるがままに此処へと辿り着いたのだ。
 その中でアルスの語った事実に困惑と驚きを抱くのは当然のこと。


2018/11/06(火) 語りべ
タイトル 竜の居城7 今日の気分次回更新は13日(火)予定です




 しかし、そう感じられたのももしかするとドワーフ族の男が言った一言があったからこそかもしれない。
 もしも彼の言葉を聞いていなかったならば、この城の悲しみを感じ取れはしなかったかもしれない。
 と、そんなことを考えているとおもむろにリルムがアルスへと口を開く。

「最初から状況や感情、全てを悟れる人なんて殆どいませんよ。だから大事なのは聞いた後で、自分がどう思ってどう言動出来るかなんですよ」

 自身の心情を見透かされたような台詞に、目を見開くアルス。
 一方でリルムは傍らで優しく微笑み、「そう教えてくれたのはアルスさんたちですから」と、それ以上語る事はなく。
 静かに歩き、過ぎて行った。
 かつて、痛い経験をした彼女だからこそ心に響く、突き刺さるような言葉。

「そうだね、リルム」

 アルスはそう独り言をポツリと返し、彼女の後を続いて歩き進んでいった。



 この城の悲しみ――最期のときが近いという竜の女王。
 彼女と会うことが何を意味するのか。
 その出会いで自分は何を感じ、何を選択するべきか。
 大切なのはそこなのだ。
 アルスはそう胸に秘めながら、足を進める。
 やがて通路は突き当りとなり、目の前に城の玄関先と同じような大きな両開きの扉が姿を現した。








2018/10/30(火) 語りべ
タイトル 竜の居城6 今日の気分次回更新は11月6日(火)予定です




 哀し気な表情を見せ俯くホビット。
一方でストームは顎下に指先を添え、なにやら思案顔を浮かべる。
 がしかし、それから間もなくして既に先を歩いていたアルスたちに呼ばれ、彼は思考を止めて彼らのもとへと駆けて行った。





 通路の両端に並ぶ大きな石柱は重厚感があり、それはまるで一つ一つが巨大な兵士の列にも見えてくる。
 しんと静まり返ったその空間は不思議なくらい異様であるというのに、とてもそうは思えない。
 此処に来たときは神聖で厳かさだという印象もあったが、今歩いている限りでは逆にもの寂しく哀愁さえ感じてしまう。

「来た瞬間は気付かなかったけど、このお城…まるで悲しんでいるみたい」

 一言で感覚を表すのならば、スイリの言葉が当てはまるのだ。

「城が悲しんでるって…生き物じゃねえんだし」

 そう呆れた声で返したレオであったが、彼も何処かスイリの台詞を受け入れている様子であった。
 この城自体が。とまでは言わないが、この城全体が悲しんでいる雰囲気に包まれている。
 ようやくとアルスたちはそれを肌で感じ始めていた。