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竜の伝説〜飛翔〜
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交換日記レンタル - nikkijam

2019/06/05(水) 語りべ
タイトル 甘すぎる勇者たち2 今日の気分次回更新は19日(水)予定です




「誰にだって話したくないこともあるというのに不躾でした…ただ僕は知りたかっただけなんです。貴方が守りたいと思うこの城がどんな城だったのかを…」

 山々に囲まれたこの城には嘗て、どのような物語があったのか。
 どのような人々が暮らしていたのか。
 きっとそこに彼がこの城を守りたいと思うほどの何かがあるのかもしれない。
 純粋にそう思っただけなのだとアサは説明し、もう一度頭を下げる。

「もう聞きはしません。でも最後にこれだけは言わせてください」

 顔を上げ、またしても真っ直ぐにセンスを見つめアルスは口を開く。

「貴方がどのような理由でこの城を守ろうと…ムクロの道を選んだのかわかりませんが、僕たちは僕たちの想いのために魔王を倒します。それでもしこの城が解放されたそのときは…貴方の守りたかった嘗てのお城を見せて欲しいなって思います」

 微笑み、そう告げるとアルスは踵を返し歩き出す。
 先に進むのではなく、ずっと広間の隅で気絶していたリルムを起こすためだ。

「ほら、リルム起きて?」

 既に彼女のもとへ駆け寄っていたスイリに揺すられるリルム。
 彼女は夢心地と言った様子でいつの間にか眠っていたようだった。

「もう…この武器は高く売れますよ」

 と言った寝言を洩らすリルムを見つめ、アルスとリルムは顔を見合わせ笑った。





2019/06/05(水) 語りべ
タイトル 甘すぎる勇者たち1








「甘過ぎる…それが勇者なのか」
「全ての人がその勇者を否定するなら勇者じゃないのかもしれません。でも、これが僕の信じた勇者の道なんです」

 するとアルスの傍らにいたレオが「勇者ってよりは頑固者って感じだけどな」と冷やかす。
 その言葉に賛同し、思わず笑みを零す仲間たち。
 いつの間にか戦慄の空間は和んだ雰囲気と変貌してしまい、その空気に居心地の悪さを抱く反面、懐かしくくすぐったい気分をセンスは抱いてしまった。



「…もういい、行け」

 突然洩らしたセンスの一言。
 アルスたちは目を見開き、彼を見る。

「留めを刺す気はないのだろう…」
「はい」

 彼の言葉に即答するアルス。
 真っ直ぐに自分を見つめる勇者から目を反らし、センスは小さくため息をつく。

「ならばこれ以上話すことは何もない」
「え…でも…」

 あくまでも事情を、センスの抱く信念についてを聞き出したかったアルス。
 すると隣にいたレオに肩を叩かれ、彼はかぶりを振って見せた。

「人には聞かれたくない過去だってある。それを聞こうとするのは野暮だろ?」

 当然の言葉にアルスは何も言い返せず。
 俯きながら「そうだよね、ごめん」とだけ呟く。
 それから続けてセンスへと頭を下げ、謝罪する。

2019/05/29(水) 語りべ
タイトル 無茶苦茶な勇者たち3 今日の気分次回更新は6月5日(水)予定です







 膝を付け語るアルスへ、歪な笑みを零すセンス。

「魔物に魂を売った我を人と呼ぶか…?」

 嘲笑うような彼に対し、アルスは迷いのない真っ直ぐな双眸を向け返す。

「人の心を持っているのなら、それはどんな姿でも人と同じですよ」

 彼の言葉にセンスは目を丸くさせる。
 随分と昔に魂を売り、人を捨て魔物に寝返ったはずの自分を『人』と呼ぶ。
 その根拠が彼にはわからなかった。
 わからなくなっていた。

「俺に人の心など…」
「守りたいって言ったじゃないですか。この城を」

 そう言いながらアルスは視線をその背後へと振り返る。
 大広間後方、そこにはろくな手入れも施されず埃を被った玉座。
 ボロボロに廃れてしまった旗が今も尚そのままの状態で置かれており、その中央壁には現在は錆びついてしまっている額に入った古びた絵画が見える。

「その言葉を信じるつもりか…」

 つい滑ってしまったその一言を、今更になってセンスは酷く後悔した。
 たったその一言のために、此処まで信じる人間がいるのか。
 本当に、その一言が真実だと思えるのか。
 しかしアルスはセンスの問いに大きく頷き、答える。

「嘘をつく人には見えませんから」

 根拠があるようで、とても考えられない言葉。
 だが周囲の仲間たちは諦めたように「これがアルスだからな」と漏らしている位で、センスは目の前の少年を信じざるを得なくなった。





2019/05/22(水) 語りべ
タイトル 無茶苦茶な勇者たち2 今日の気分次回更新は29日(水)予定です



「だが…その単純な思考を利用したお陰で、こうして倒すことが出来たわけだ」

 瓦礫の中から聞こえてきた声の主は、その直後。
 静かに最後の瓦礫を持ち上げ姿を現した。

「ストーム!無事だったんだね」

 急ぎ駆け寄るスイリ。
 が、直ぐに彼女の足が止まる。
 彼の傍らには呻き声を上げ蹲るセンスが居た。
 動こうとしようにも足に走る激痛がそれを許さない。
 どうやら衝突の際に効き足を骨折してしまったらしく、先ほどまでの俊敏な動きは出来そうになかった。

「見かけによらず体力はあまりないらしいな」
「随分と便利な能力持ってたしな。当たる心配がないから鍛えるまでもねえってか」

 そう言いながら倒れているセンスの傍へ近寄るレオ。
 口元の鮮血を拭う彼の隣には眉尻を下げているアルスの姿もあった。
 アルスはセンスの傍らに寄り添いしゃがみ込むと、辛うじて意識のある彼へと尋ねる。

「これで決着です。下手に動けば貴方を無理にでも気絶させなくてはいけない…」

 身体を動かす様子のないセンスは視線のみをアルスへと向ける。
 力の無い、しかし憎悪の込められた眼差しで彼は睨みながら口を開いた。

「愚かだな…今のうちに、とどめをさせば良いものを…」

 憎しみの籠った顔と言葉。
 だがそんな彼の言葉にアルスは苦笑を浮かべ、静かにこう答えた。 

「確かに、僕もそう思います。だけど、貴方が人である限り僕は貴方を無意味に傷つけたくはないんです」





2019/05/14(火) 語りべ
タイトル 無茶苦茶な勇者たち1 今日の気分次回更新は22日(水)予定です







 崩れ落ちる二人。
 間もなくそれは轟音を立てながら瓦礫の中へと激突する。

「ストーム!」
「無事か!」

 辛うじて地面に上手く着地出来たレオは傍にいたスイリと同時に彼らの落下した場所へと駆けつける。
 即座に治癒魔法をと、杖をを翳すスイリ。
 と、レオは「待て」と瓦礫の山へ近付こうとする彼女を制止する。
 目の前には動き出す瓦礫。

「ムクロの可能性もある」

 武器を構え、警戒するレオとスイリ。
 しかし、意外にも二人の警戒を解く声はその背後から聞こえてきた。

「心配ないよ。レオの岩砕きを喰らう直前にアストロン《鋼鉄化呪文》を掛けたから」
「アルス」

 鋼鉄化呪文。
 それは勇者であるアルスにしか使用できない味方を一時のみ鋼鉄化させるという無敵の呪文。

「ホント便利だなその呪文」

 と言いながらアルスへと近付くレオ。
 その足取りや曇っている表情から察するに良い予感はしない。
 案の定、アルスの前に来るなりレオは彼の胸倉を掴んだ。

「何やってんだよお前は!戦い方はお前の勝手だけどな、敵の前で武器捨てるとか無謀過ぎるだろうが!」

 最もな正論に言い返す言葉もなく。
 アルスは「ごめん」と苦笑いをするだけ。

「どうしても彼と話がしてみたかったんだ。その信念は何処にあるのか」
「…仮にも魔王城で待ち伏せてる敵相手に…全く…」

 呆れ返り今度はレオの方が思わず閉口してしまう。
 掴んでいた服を放し、代わりに深いため息を洩らした。





2019/05/07(火) 語りべ
タイトル 勇者に敵意はなくとも2 今日の気分次回更新は14日(火)予定です








「―――ボミオス!」

 突如、センスはガクンと全身が重くなるような感覚に襲われた。
 聞こえてきた少女の声から素早さを下げる減速呪文であることは直ぐ理解出来たものの、思わず一瞬ばかり驚きに目を丸くさせた。
 とはいえ、身体は即座にその鈍化した感覚に慣れ始め、瓦礫の飛礫を対処すべく大剣を振ろうとした。
 そのときだった。

「―――マヒャド」

 両手足が瞬時に凍り付いていき、身動きが取れなくなる。
 その原因が背後にいた男のものだと気付くまで幾ばくもなく。

「素早さを下げられた一瞬の隙のせいで、このゼロ距離での反応に遅れてしまったようだな」

 背後から聞こえてきたストームの声に、彼は苦虫を噛み潰したように表情を歪める。

「おのれ…!!」

 無理やりにでも力を入れれば、どうにか身体に取り付いた氷を破壊する事も出来ただろう。
 が、しかし。
 既に瓦礫はセンスの目の前へと迫っていた。

「このままではお前も道連れだ!」

 せめてもの皮肉にとストームへ叫ぶセンス。
 片やストームは勝ち誇った笑みを浮かべ、答えた。

「道連れは元より策のうち、覚悟は出来ている」

 減速呪文、呪文による氷結に加え、足をしがみ付かれては完全に身動きは取れず。
 こうなれば彼の第六感が働こうとも、文字通り手も足も出せない。
 眼前へと迫っていた飛礫は直後、センスとストームに直撃した。





2019/04/30(火) 語りべ
タイトル 勇者に敵意はなくとも1 今日の気分次回更新は5月7日(火)予定です







「今だ―――!!」

 その声は迷うセンスの耳へ突如聞こえてきた。
 声と同時に感じ取った殺気。
 身体は無意識に反応し、素早くその場から逃げるよう飛び退く。
 だが次の瞬間。

「―――バギクロス!」

 何処からともなく現れた無数の疾風がセンスへと襲い来る。
 飛び退いたばかりの彼は着地と同時にすぐさま地を蹴り、身体を捩じらせ、避けていく。

「まだだ…!」

 完全にセンスの死角となった位置から剣を構え飛び込んで行くストーム。
 懐へ入り込んだ彼をセンスは睨みつけ、咄嗟にその大剣を支えに足蹴りを食らわした。
 
「先ほどと同じ戦闘か…小賢しい!」

 しかし先ほどとは違いその様子には苛立ちが滲み出ている。
 怒りに身を任せた足蹴はストームの鳩尾へと当たり、彼を勢いよく吹き飛ばそうとする。
 が、ストームは笑みを浮かべて見せた。

「これで…どうだ…!」

 そう言うとストームは口元から血反吐を出しながらも、センスの足を掴まえる。

「何を…!」

 小癪な真似を、と叫び、ストームを引き離そうとするセンス。
と、センスは彼が見つめる視線の先―――センスの後方の気配に気付き、急ぎ振り返る。
 そこには彼らより遥か上空に飛んでいたレオの姿。

「今度こそくらえッ!!」

 そう叫ぶと彼は飛び上がった身体を勢いよく回転させその蹴りで城内の壁へと向かう。
先ほどと同じ瓦礫を砕く戦法だ。

「また同じことを―――」

 眉を顰め、センスがそう言いかけたときだった。


2019/04/23(火) 語りべ
タイトル 敵意のない勇者 今日の気分次回更新は30日(火)予定です






「動揺はさせられたとして…けどそっからどうするんだ?」

 レオはそう言ってストームの方を一瞥する。
 目の前でアルスとセンスが見せるこう着状態―――時が止まったかのようなそれはしかし、永遠に続けられるもの、続けて良いものではない。
 “第六感が働くなった”のではなく、“アルスに敵意が無くなっただけ”だとバレてしまえば、センスは容赦なくアルスを斬りに行くだろうからだ。

「私たちが加勢しようとしても動きは察知されちゃうんだよね?」

 どうしようも出来ないことには変わりない。
 そんな悔しさにスイリは無意識に拳を強く握る。
 しかし、彼女の言葉にストームはかぶりを振って答えた。

「いや…相手の能力が読めれば行動は出来る。弱点も自身で言っていたようだしな」

 ストームはおもむろにセンスの方へと一瞥する。
 強い感情は敵意となり得るため、直ぐにアルスへ視線をずらす。
彼の真っ直ぐに敵を見つめる姿にストームは苦笑交じりの吐息を洩らし、改めて口を開いた。

「問題は…敵意を無くしているあの勇者が、その行動に何を思うか、だがな」







2019/04/16(火) 語りべ
タイトル 敵意のない敵2 今日の気分次回更新は23日(火)予定です




「つまりあのムクロにとってそれは身の危険じゃねえから第六感は働かず…『アルスが助けに来る』っていうことがわからなかったってことか」

 レオの言葉にストームが頷く。

「じゃあ今二人がこう着状態になっているのって…」

 武器を捨てたアルス。
 その彼に対し狼狽しているセンス。
 それはこれまでとは全く違う様子であり、誰もが予想していなかった状況でもあった。

「あくまで考え難い推測だが…突如アルスが敵意を無くしたことを“危険察知が出来なくなった”と思いこみ、相手が何をしてくるかわからなくなった状況に動揺しているのだろう…」

 スイリの質問にそう答えるストーム。

「…アイツのあの様子から見て間違ってねえかもしれねえしれねえ」

 あくまでも推測であり、確証はないと付け足す。
 しかしそれは間違いではないかもしれないと、レオは確信する。

「ここ最近のアルスは突拍子もない言動が多いからな」

 その後のことなど考えてもいない至極純粋で自分に正直な言動。
 『勇者らしく』を捨ててからのアルスが見せる、そうした突発的な行動が―――時に人を、心を動かすことがある。
 そしてそれが最も『勇者らしい』選択になるとは、彼自身全く思っていないのだから、恐ろしい才能だとレオもストームもよく実感している。
 だからこそレオも、スイリもストームも、確証こそないが確信していた。
 アルスには今、ムクロに対する敵意が全くないのだと。








2019/04/16(火) 語りべ
タイトル 敵意のない敵1









「無事だったんだね、ストーム!」
「なんとかな…」

 喜ぶスイリへそう答えると、彼はゆっくりと、足音を消しながら二人の傍へ歩み寄る。

「随分長く寝てたもんだな」
「悪かったな。お前たちが激戦している合間に奴の攻略について考えていたからな」
 
 皮肉めいたレオの言葉に皮肉めいた言葉で返すストーム。
 元々は賢者である故、自身で回復こそ出来たものの、未だ鈍痛は続く。
 静かに二人の傍に寄ると彼は片足をつき、改めて口を開いた。

「奴がアルスへと気が向いている隙に話しておく」
「話しておくって…けど作戦なんてバレバレなんじゃ?」

 そう言ってスイリは視線をセンスの方へと移す。
 彼が相手の心を読む能力を持っているからこそ、彼へ攻撃が当たらない。
そう思っていたからだ。

「その心配はない」

 ストームはそう断言した。

「どういうことだよ?」
「恐らくアイツの能力は危険察知だろうからだ」
「危険察知…?」

 静かに頷き、ストームは説明を続ける。

「要は第六感…予感というものだ。直前の身に迫る危険を感じ、故に反射的に避けることが出来ると思われる」

 総てを予見出来るのならば攻撃される前に封じるだろうし、心理が読めるのならば今のアルスの言動にそこまでの動揺は見せないと思われた。

「何よりスイリを助けに入ったアルスの行動を、奴は察知出来ていなかった」

 結果。
 あのとき、センスはスイリに一撃を与えることが出来ず、アルスと鍔迫り合うこととなった。