語りべ管理者

竜の伝説〜飛翔〜
〜そして伝説へ〜

次は 管理者


過去の日記
2019年03月(3)
2019年02月(5)
2019年01月(7)
全て表示


メニュー
プロフィール


管理者用
パスワード



count

モバイル

交換日記レンタル - nikkijam

2019/04/23(火) 語りべ
タイトル 敵意のない勇者3 今日の気分次回更新は30日(火)予定です






「動揺はさせられたとして…けどそっからどうするんだ?」

 レオはそう言ってストームの方を一瞥する。
 目の前でアルスとセンスが見せるこう着状態―――時が止まったかのようなそれはしかし、永遠に続けられるもの、続けて良いものではない。
 “第六感が働くなった”のではなく、“アルスに敵意が無くなっただけ”だとバレてしまえば、センスは容赦なくアルスを斬りに行くだろうからだ。

「私たちが加勢しようとしても動きは察知されちゃうんだよね?」

 どうしようも出来ないことには変わりない。
 そんな悔しさにスイリは無意識に拳を強く握る。
 しかし、彼女の言葉にストームはかぶりを振って答えた。

「いや…相手の能力が読めれば行動は出来る。弱点も自身で言っていたようだしな」

 ストームはおもむろにセンスの方へと一瞥する。
 強い感情は敵意となり得るため、直ぐにアルスへ視線をずらす。
彼の真っ直ぐに敵を見つめる姿にストームは苦笑交じりの吐息を洩らし、改めて口を開いた。

「問題は…敵意を無くしているあの勇者が、その行動に何を思うか、だがな」







2019/04/16(火) 語りべ
タイトル 敵意のない敵2 今日の気分次回更新は23日(火)予定です




「つまりあのムクロにとってそれは身の危険じゃねえから第六感は働かず…『アルスが助けに来る』っていうことがわからなかったってことか」

 レオの言葉にストームが頷く。

「じゃあ今二人がこう着状態になっているのって…」

 武器を捨てたアルス。
 その彼に対し狼狽しているセンス。
 それはこれまでとは全く違う様子であり、誰もが予想していなかった状況でもあった。

「あくまで考え難い推測だが…突如アルスが敵意を無くしたことを“危険察知が出来なくなった”と思いこみ、相手が何をしてくるかわからなくなった状況に動揺しているのだろう…」

 スイリの質問にそう答えるストーム。

「…アイツのあの様子から見て間違ってねえかもしれねえしれねえ」

 あくまでも推測であり、確証はないと付け足す。
 しかしそれは間違いではないかもしれないと、レオは確信する。

「ここ最近のアルスは突拍子もない言動が多いからな」

 その後のことなど考えてもいない至極純粋で自分に正直な言動。
 『勇者らしく』を捨ててからのアルスが見せる、そうした突発的な行動が―――時に人を、心を動かすことがある。
 そしてそれが最も『勇者らしい』選択になるとは、彼自身全く思っていないのだから、恐ろしい才能だとレオもストームもよく実感している。
 だからこそレオも、スイリもストームも、確証こそないが確信していた。
 アルスには今、ムクロに対する敵意が全くないのだと。








2019/04/16(火) 語りべ
タイトル 敵意のない敵1









「無事だったんだね、ストーム!」
「なんとかな…」

 喜ぶスイリへそう答えると、彼はゆっくりと、足音を消しながら二人の傍へ歩み寄る。

「随分長く寝てたもんだな」
「悪かったな。お前たちが激戦している合間に奴の攻略について考えていたからな」
 
 皮肉めいたレオの言葉に皮肉めいた言葉で返すストーム。
 元々は賢者である故、自身で回復こそ出来たものの、未だ鈍痛は続く。
 静かに二人の傍に寄ると彼は片足をつき、改めて口を開いた。

「奴がアルスへと気が向いている隙に話しておく」
「話しておくって…けど作戦なんてバレバレなんじゃ?」

 そう言ってスイリは視線をセンスの方へと移す。
 彼が相手の心を読む能力を持っているからこそ、彼へ攻撃が当たらない。
そう思っていたからだ。

「その心配はない」

 ストームはそう断言した。

「どういうことだよ?」
「恐らくアイツの能力は危険察知だろうからだ」
「危険察知…?」

 静かに頷き、ストームは説明を続ける。

「要は第六感…予感というものだ。直前の身に迫る危険を感じ、故に反射的に避けることが出来ると思われる」

 総てを予見出来るのならば攻撃される前に封じるだろうし、心理が読めるのならば今のアルスの言動にそこまでの動揺は見せないと思われた。

「何よりスイリを助けに入ったアルスの行動を、奴は察知出来ていなかった」

 結果。
 あのとき、センスはスイリに一撃を与えることが出来ず、アルスと鍔迫り合うこととなった。

2019/04/10(水) 語りべ
タイトル センスとの激闘9 今日の気分次回更新は16日(火)予定です




「あいつのことだからな…やっぱり戦いたくないとか言い出したのかもな」
「ありえそう…けど、あのムクロなら容赦しないで攻撃しそうなのに、何で?」

 スイリやリルムにも容赦なく剣を振り下したセンス。
 確かに彼ならば武器を捨てたアルスなど好都合の状態だろう。
 だが、彼は丸腰の勇者を前に他も足も出そうとしない。
 と、レオは彼の見せている隙に気付き、スイリへと視線を向ける。

「アルスがなんて言ったかわからんけど…動揺している今がチャンスなんじゃねえか?」

 今のセンスは明らかにアルスのみに集中している。
 そこへ近付こうとしても気付かれる可能性はあるが、呪文ならば。と、彼の双眸が語る。
 スイリはセンスとアルスの方を一瞥した後、静かに頷いた。

「やってみる…」

 傍らに置いてあった杖を握り締め、呪文を詠唱しようとした。
 そのときだ。

「それは止めておいた方が良い」

 その声に驚き慌てて視線を向けるスイリとレオ。
 二人が振り返った先にいたのは肩口を押さえながら壁に寄りかかっているストームだった。







2019/04/10(水) 語りべ
タイトル センスとの激闘8










「スイリ…生きてるか…?」
「うん、なんとか…」

 痛恨の一撃を受けたものの一命は取り止めていたスイリは、密かに受けた傷を回復呪文で癒していた。
 とは言え受けた苦痛自体は無くなるわけではなく、その痛みに耐え続けていた彼女のもとへ、ゆっくりと近付いてきたのはレオだった。

「今回復、するね」

 吹き飛ばされ大ダメージを受けながらも、這いつくばりスイリに回復を求めてきたのだ。
 彼女から回復呪文を施されたレオはその荒く短かった呼吸を静かに、深いものへと変える。

「ところで…あいつ何してんだ?」

 落ち着き一息ついたところでレオはアルスとセンスの方へと視線を向ける。
 こう着状態となっている二人。
 しかしただならぬ状況であることはアルスが武器を持っていないことを見れば明白。
 恐らく異様な行動を取ったのはアルスの方なのだろう。
 センスの動揺は遠くにいるレオとスイリにも伝わって来ていた。

2019/04/02(火) 語りべ
タイトル センスとの激闘7 今日の気分次回更新は9日(火)予定です



 ゆっくりと、迫り来る殺気めいた気迫。
 静かに、息を呑み込みながら柄を握り締めるアルス。
 と、アルスは次の瞬間。

「何をしている…?」

 掴んでいた剣を手放し、剣先を地面へと突き刺した。
 武器を投げ出し、丸腰姿で立つアルス。
 敵を前に―――迫り来る狂気を前にしてみせたその行動に流石のセンスも動揺の色を隠せず。
 投げかけた質問と様子から狼狽しているようにも見えた。

「僕はただ、貴方が言っていた誓いという意味を…そうまでしてこの城を守ろうとする理由を知りたくなったんです」
「どういうつもりだ…」
「貴方がそこまでこの城を守ろうとする理由を教えてください」
「意味がわからん…何が目的だ!」

 仲間が倒れているこの状況下で彼はそう言うと笑顔を見せた。
 敵にとって―――センスにとってその笑みは不気味にも不敵にも見えたのだろう。
 彼さえも気付かないうちに足先は静かに後退っていた。








2019/04/02(火) 語りべ
タイトル センスとの激闘6







「一太刀どころか、一撃も与えられてないなんて…」

 全力で挑んだというのに全く持って太刀打ちできない。
 無敵だ。
 勝てない。
 そんな言葉が嫌でも脳裏を過る。
 折れそうになる気持ちを何とか奮い立たせながら、アルスはゆっくりとその場に、剣を支えに立ち上がる。

「何とかしないと…」

 呼吸する事さえも苦痛のような痛みが全身を走る中、それでもアルスは諦めず剣を構える。

「諦めの悪い餓鬼が…」

 身構えるアルスにそう吐き捨てるとセンスは大剣を肩口に掲げるよう振り上げ、それから静かにアルスへ向かって歩き出す。
 逃げる様子も慌てる様子も、哀れみや怒りさえも感じられない。
 無心の歩。
 そこから感じられる彼の屈しない、純然とも言える狂気には恐怖すら抱く。
 しかし、アルスにはそんな感情とはまた違う―――別の疑問が生まれていた。

(こんなにも揺るがない力を見せる…この人の誓いとは一体何なんだろう…?)





2019/03/26(火) 語りべ
タイトル センスとの激闘5 今日の気分次回更新は4月2日(火)予定です



 レオは先ほど吹き飛ばされた際に出来た瓦礫を持ち上げるとそれをセンスへと目掛け、蹴り砕いた。
 刻むように砕かれた瓦礫は飛礫となってアルスをも巻き込むようにセンスに飛んでいく。

「石つぶての心は流石に読めねえだろ!」

 無数の飛礫。
 その攻撃にはアルスも目を丸くする。
 だがこれならば―――無機質で心のない石つぶてならばその動きを読み取ることは出来ない。
 そう、思われた。
 しかし―――。

「読みは良いが…浅はかだ」

 センスは薙ぐ手前だった手を止めると突如、その手を伸ばしアルスの腕を掴んだのだ。
 レオの放った飛礫によって油断していたアルスは容易く腕を掴まれてしまう。
 そして成す術もなく放たれた飛礫に向かって回し投げられた。

「うわっ!!」

 アルスは飛んでくる石つぶてに、咄嗟に両腕で顔や頭を守る事しか出来ず。
 と、飛礫の投げられた方角の先にいたレオと衝突してしまい、最後は二人揃って壁へと激突した。
 
「く…」
「なんつー馬鹿力だ…」

 センスは無数の飛んできた飛礫を受けるどころか、一かけらさえ受けることはなく。
 悠然とただ一人、その場に立っていた。





2019/03/26(火) 語りべ
タイトル センスとの激闘4




「アルス退け!」

 激戦の最中聞こえてきたレオの声。
 無心で剣を振るっていたアルスは彼の声で我に返り、その手を止める。
 心を読まれている可能性が高いセンスとの戦いで声の掛け合いはご法度。
 なのに声を上げたレオ。
 それは彼に何か策があるのだろうと思われた。

「わかった!」

 その返答と同時にアルスは大きく後方へ飛び退く。
 が、そうはさせまいと後を追うべく、地を蹴るセンス。

「逃がすと思うか。次はお前だ、勇者」

 構えている大剣がアルスへと横一線に振るわれようとする。
 と、そのときだ。

「くらえ!!」

 レオの怒声と共に大きな飛礫がセンス目掛けて飛んでいった。






2019/03/19(火) 語りべ
タイトル センスとの激闘3 今日の気分次回更新は26日(火)予定です



 無心による戦い。それは無言で、無音の世界での戦いだった。同時に駆け出したアルス、レオ、スイリの三人は一斉に武器を構え突撃する。
 剣を抜き構え、拳を突き出し、呪文を唱える。烈火の如き勢いで三人は無心にセンスへと剣を振り、拳で突き、呪文を唱えた。

「はあッ!」
「たあッ!」
「バギマ!」

 三人の以心伝心は確かなもので、策や掛け声もなく見事な連携を取っていた。
 しかし。攻撃は寸でのところでかわされてしまい、それどころか次の瞬間。センスは呪文を唱えた直後だったスイリの懐へと飛び込み大剣を振るった。

「キャアッ!」
「スイリ!」
「スイリ!」

 彼女の悲鳴と二人の叫びが轟く。辛うじて致命傷は避けたものの、袈裟切りされたスイリは傷を負い倒れた。

「さて、また一人…だな」

 相手が女性だろうと容赦のない一撃。その太刀筋、立ち姿の雄々しさにはこれまでのムクロたちとはまた違った気迫が感じられた。
 勝てないかもしれない。そんな不安が自然と脳裏に過ってしまう。

「けど、こんなところで負けるわけにはいかないんだ!」

 負けじと雄叫びを上げ、自身を奮い立たせるアルス。もう一度剣を剣を構えるとムクロへ立ち向かっていく。

「まだ解らぬとは、愚かよ」

 彼もまた大剣を構えアルスへと振るう。重なり合い、鍔迫り合い続ける両雄。
 しかしアルスが押され気味であるには変わらず、元の力量自体も彼の方が格上であるように思われた。
 長年鍛錬を続けてきたベテランの戦士。センスの太刀筋はまさにそういった類のものに思えた。