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竜の伝説〜飛翔〜
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交換日記レンタル - nikkijam

2019/10/16(水) 語りべ
タイトル それは突然の…3 今日の気分次回更新は22日(火)予定です





「後は任せた―――勇者アルス」

 今までにない程の穏やかな微笑み。
 彼は直後、瞬く間に光となって上空へと飛んでいった。
 光は天井をすり抜けるように一瞬で消えて行く。
 あっという間の、刹那の出来事であったがアルスは聞き逃さなかった。
 これまで認めてくれなかった、言われたことのなかった彼からの『勇者』という言葉。
 それは心にあった不安を一瞬にして取り除き、奥底から力を湧かせてくれた。

「ストームさん…ありがとうございます」

 無意識に出てきた言葉を呟き、アルスは緩んでいた拳に力を込め、剣の柄を強く握り締める。

「みんな、ストームさんの分まで戦おう!」

 力強い声でそう告げたアルスは、バラモスに向けて剣を構えた。

「…何だかそれだとストームさん亡くなったみたいですけど…頑張ります!」
「レオのことは任せて!」

 リルムとスイリはそれぞれ頷き、位置に就くと同時に一斉に地を蹴った。







2019/10/16(水) 語りべ
タイトル それは突然の…2








「そんな…魔王相手に4人じゃ…無理です」

 先ほど強気だったリルムの表情はまたもや弱気のそれへと変化してしまっている。
 悲しみとも悔しさとも取れる顔をする仲間たち。
 ストームは深く吐息を洩らし、自身の鞄から一本の杖を取り出し、リルムへと投げ渡す。

「そんなことはない。アイツを叩き起こして…それからの事は、お前なら出来るはずだ」

 そう言うと彼は力強い眼差しでアルスを見つめた。



 『ギンガ』として出会った当初は何処か頼りなく、勇者としての威厳は微塵も感じられないただの少年であった。
 これでは魔王を倒すことも、父である勇者オルテガに並ぶことも、本物の『ギンガ』を救い出すさえ出来ないと思っていた。
 つい最近までは。
 しかし、出会う度に迷い悩みながらも、彼は着実に成長を続け、気付けばもう認めざるを得ないほどの強い意志と力を身につけていた。

2019/10/08(火) 語りべ
タイトル それは突然の…1 今日の気分次回更新は14日(月)予定です










「…油断した」

 苦虫を噛み潰したような顔を浮かべるストームへとスイリは慌てて近寄る。

「ストーム! 何があったの!?」
「残念だが俺はここまでのようだ」

 悔しそうにそう呟く彼の意思とは関係なく、無情にも光は更に眩く彼を包み込んでいく。

「しまった、バシルーラだ…!」

 バシルーラ(強制転送呪文)。
 通常のルーラ(移動呪文)とは違い、その呪文は味方と認識していない敵を対象に使える呪文。
 受けた敵対者は此処より彼方―――遠くの地へ強制的に移動させられてしまう強力な呪文。
 しかし、唱えられた対象全てに効力があるわけではなく、その対象も特定できるわけでもない。
 確率の呪文でもある。
 この戦いにおいても、バラモスは事あるごとに唱えてはいた。
 だが、今の今まで、誰も受けてはいなかったのだ。

「どうにかならないの?」
「運が悪かったとしか言いようがない…」

 嘆きとも思える呟きを洩らすストーム。
 アルスも急ぎ彼の傍へと駆け寄っていく。

「ストームさん!」

 何かこの呪文を止める手段はないかと脳内で模索するも、かつてサマンオサ近辺にて出会った魔物から同様の呪文を受けたときも、戦闘中はどうすることも出来ず。
 戦闘後に仲間を探して歩いたことがあった。
 今回も同じ。
 抗う方法はない。






2019/10/01(火) 語りべ
タイトル 激しい灼熱の炎3 今日の気分次回更新は9日(水)予定です







「そんな…じゃあ無敵じゃないですか!」

 二人の会話を聞いていたリルムが予想外の力に思わず弱音を洩らす。
 これまでレオに変わって先陣特攻役を買って出ていたため、随分と息が荒く、肩を上下に揺らしている。

「否、即座に全回復しているわけではなさそうだ。奴の自己再生能力にも限度があると見える」

 そう推察しストームは続けて言う。

「全体の攻撃力を上げて奴の自己再生を上回れば、倒す事も可能なはずだ」
「はい、スイリは回復しつつ補助を!」
「うん、わかった!」

 一筋の光明から皆の士気が上がっていく。
 狼狽していたリルムの手にも力が籠り、強い眼差しで頷いていた。
 今度こそ、バラモスを倒せる。
 誰もがそう思い、そう信じて立ち向かっている。
 勇ましく戦いへと向かうアルスたちの背後で、ストームがぽつりと口を開く。

「…俺は一つ試してみたい呪文があるからもう少し補助で―――」



 そのときだった。
 突如巻き起こる突風。
 マントを靡かせ、髪を揺らし、身体のバランスが崩れてしまいそうな位の風。
 しかしそれで周囲の炎が消えていくわけではなく。
 虚しく吹き抜けていく風。
 これは只の風ではない。
 特殊な呪文の風なのだ。
 それまで誰に何が起こるわけでもなかったそれは、この瞬間ばかりは異様な空気を纏っていた。

「ストームさん!!」

 ストームの身体が突風を受けた直後、突然光り輝きだしたのだ。





2019/09/24(火) 語りべ
タイトル 激しい灼熱の炎2 今日の気分次回更新は10月2日(水)予定です









「アルス…!」

 再度巻き起こる肌が焼けるような熱風に耐え切れず両腕や盾で身を守るアルスたち。
 空に舞い散る火の粉を払い、スイリが叫びながら回復呪文を唱える。
 これまでレオが気絶中の間、アルスとリルムの攻撃、スイリの回復、ストームの補助という役回りで戦いが繰り返されている。
 バラモスとの激闘は目まぐるしく、休む間さえなく続く。
 と、容赦なくバラモスが大爆発の呪文を放つ。
 アルスは再度苦痛の声を洩らしつつもバラモスに一撃を繰り出した。
 地を蹴り、奴の腕へ剣を振り下す。
 確かな手ごたえ。
 しかし、それでも倒れる様子のないバラモス。

「…もしや」

 にたりと不気味な笑みを浮かべるバラモスを見やり、ストームはとある可能性に人知れず眉を顰めた。

「もしかすると奴には自己再生能力が備わっているのかもしれない…!」

 アルスの傍へと近付きそう告げるストーム。
 彼の言葉にアルスもまた顔を顰める。

「まさか…!?」

 アルスは急ぎ視線を先ほど攻撃したバラモスの腕へと移す。
 其処には確かな手ごたえがあったはずの傷が、もう既に回復し、塞がっているようだった。
 溢れ出ていた青緑の鮮血も、何事もなかったかのように凝固している。
 ここまで与え続けていた攻撃も、よく見れば血痕こそあれど傷は癒えているように見える。
 奴が見せていた余裕めいた笑みの意味が、ようやく理解出来た。





2019/09/17(火) 語りべ
タイトル 激しい灼熱の炎1 今日の気分次回更新は25日(水)予定です







 気を失ってしまったレオを戦闘から遠ざけるべく、アルスは出来るだけ広間の隅へと彼を運ぶ。
 しかし、こうしている間にも此方から目を逸らさせるためにストームとスイリがバラモスの相手を担っている。
 『ギンガ』『ストーム』へと戻った彼もまた賢者であるため、二人共先陣を切った戦いは本来不向きなのだ。
 早く加勢しなくてはならない。
 アルスは急ぎ踵を返し、スイリたちのもとへ戻って行く。



 最前線に戻るとスイリとストームはそれぞれ補助と回復役に回り、リルムが先頭立って戦っているところだった。
 リルムの攻撃に加わろうとアルスは地を蹴り、バラモスの懐へと飛び込んでいく。
 斬りつける一撃、着実に攻撃を与えてはいる。
 だが、バラモスは一向に弱まる素振り、怯む様子さえ見せない。

「やはり…魔王と呼ばれているだけある…」

 灼熱の空間と化している広間内では、その熱波もがアルスたちの体力を奪う。
 止め処なく流れ出る額の汗をアルスはそっと拭った。

「ダメージは与えているはずなのに余裕の顔していますね」

 アルスの言葉に頷くストーム。
 余裕というどころか、与えた傷も気に留めていないようにさえ見えるバラモス。


2019/09/11(水) 語りべ
タイトル 意志なく惑う呪文4 今日の気分次回更新は18日(水)予定です



 彼女の声から必死にレオを止めているのだろう姿が、見えずとも浮かんできた。
 アルスに迷っている暇はなく、彼は即座に剣の柄を利用し、身動きが取れなくなっているレオの頭部を思いきり叩いた。

「ぐっが…!」

 鈍い音の直後、低い声を洩らし、レオはぐったりと項垂れる。
 それから直ぐに彼はゆっくりとその場に倒れた。

「リルム…『きえさり草』買ってたんだね…」

 周囲を見渡しながらそう告げるアルスにどこからともなく聞こえてくるリルムははっきりとした声は「はい」と返す。

「ランシールで身支度をしていたときに何かに使えればと買っていました! 役に立って良かったです」

 その言葉と同時に、静かに姿を現すリルム。
 満面の笑みを浮かべる彼女へ、アルスもまた笑顔を返そうとした。
が、それよりも先に何かを思いついたリルムは突如「あっ」と声を上げた。

「別に殴らなくても睡眠呪文(ラリホー)でも良かったんですよね…レオさんには痛い思いさせちゃいましたね」

 申し訳なさそうにリルムは気を失っているレオを見下ろし、頭を下げる。
 確かに、焦りによる余裕のなさからアルスは思いっきり―――気を失うまでにレオを殴ってしまったわけだが、ラリホーを唱えておけばそんなダメージを受けることもなかっただろう。
 
「ごめん、レオ」

 アルスもまたリルムに続いて頭を下げた。







2019/09/11(水) 語りべ
タイトル 意志なく惑う呪文3










「落ち着くんだ、レオ!」

 バラモスの呪文を受けたレオは突如、アルスをまるで敵だとばかりに見定め攻撃し始めた。
 アルスは動揺している暇さえ与えられず、レオによる猛攻を必死に受け止めていく。
 しかし、彼の見せた謎の行動には心当たりがある。
 混乱呪文《メダパニ》。
 これを喰らった者は混乱状態に陥り、敵味方の区別もつかなくなるという。
 彼の混乱状態を戻すには打撃で正気に戻す、もしくは睡眠呪文を掛けるといった方法が効果的だ。
 が、彼の身のこなしと隙のなさによる攻撃はアルスに一撃も与えさせてくれない。

「レオ!!」

 何度声を掛けてみても、彼に反応は無い。
 その間にもバラモスは容赦なくアルスたちへ爆発呪文による大爆発が起こっている。
 先ほどそれによってリルムが吹き飛ばされていった。

「こうなったら…本気の呪文で…!」

 そう覚悟してアルスは呪文の構えをした。
 そのときだ。
 突然レオの動きがピタリと止まる。
 単に停止したわけではなく、呻くような声を上げる彼は何処か戸惑っているようにも見える。
 するとその答えは即座に、声によって理解出来た。

「今です! アルスさん!」

 どこからともなく、リルムの大声が聞こえてきた。






 リルムの姿は無いのに、リルムの声が聞こえてくる。
 そして突然動きがぎこちなく止まったレオ。

「もしかしてリルム、消えてる?」
「はい、レオさん押さえてます! でもそんな…長くは持ちませんっ!」


2019/09/04(水) 語りべ
タイトル 意志なく惑う呪文2 今日の気分次回更新は18日(水)予定です




「何があった?」
「アルスさんとレオさんの様子を見ていたら魔王の攻撃を受けまして…けど、大丈夫です…」

 自分の油断が招いたものだからと平気な顔をして笑って見せるが、何処か彼女にも動揺の色が見え隠れしている。
 畏怖による震えもその足下には出ていた。
 と、ストームは静かに息を洩らすとリルムの頭を軽く叩いた。

「焦っていても何も良い事はない。お前(商人)だからできることをしろ」

 彼の言葉にリルムは瞳を大きく見開く。
 個として、リルムとして期待して信頼してくれているその言葉に、彼女の胸は張り裂けそうな程に喜びが溢れていく。
 しかし現状から笑顔を見せている暇も、涙を流す余裕もない。
 熱くなる目頭を炎の熱気に当てられたからと思いこみ。力強い声で返事をする。

「はい!」

 視線を魔王へと移し、リルムは武器を構える。
 先端に添えつけられているソロバンからシャランと音が鳴る。

「俺たちも加勢するぞ」
「うん!」

 ゆっくりと立ち上がりながらスイリもまた武器を構え、ストームも共にバラモスへと再度挑んでいく。








2019/09/04(水) 語りべ
タイトル 意志なく惑う呪文1







「一体何があったの?」

 困惑するスイリを他所に、前衛で戦っていたはずの二人は互いの武器を重ね合い、戦っている。
 動揺を隠せない彼女は思わずアルスとレオのもとへ駆け寄ろうとする。
 が、飛び出そうとした彼女の腕を掴み、ストームがそれを制止する。

「ストーム!」
「落ち着け、あれは恐らく混乱呪文で混乱状態になっているんだ」

 彼の言葉にスイリの足は止まり、パニックだった頭は静かに冷めていく。
 よく見れば、一方的に攻撃しているのはレオの方で、アルスはそれを受け止めているようであった。

「あ…」
「魔王は混乱呪文、もしくは混乱状態にする攻撃をしたんだろう。一発殴れば混乱から目が覚めるはずだ」
「うん、わかった!」

 ストームの指示で、アルスに加勢すべく歩み寄っていくスイリ。
 しかし、またしても彼女の前進を邪魔するかのように、リルムが彼女の頭上へと吹き飛んできた。
 間もなくして二人はうめき声と悲鳴を上げて衝突する。

「うぐっ!」
「きゃあッ!!」

 身体をくの字にさせ吹き飛んできたリルムはぶつかった拍子にスイリを下敷きにして倒れ込む。
 リルムに踏まれたスイリは激突による痛みと重さで顔を歪めながら声を洩らす。

「リ、リルム…どいて…」

 下敷きにした相手に気付いたリルムは慌てて「ごめんなさいです!」と立ち上がりスイリから退けた。