語りべ管理者

竜の伝説〜飛翔〜
〜そして伝説へ〜

次は 管理者


過去の日記
2018年12月(6)
2018年11月(6)
2018年10月(8)
全て表示


メニュー
プロフィール


管理者用
パスワード



count

モバイル

交換日記レンタル - nikkijam

2019/02/06(水) 語りべ
タイトル 最後のムクロ6 今日の気分次回更新は19日(火)予定です



 純粋な力を。
 絶望を。
 孤独を。
 迷いを。
 怒りを。
 敵側に、魔物側に寝返ったと言えど、彼らには人なりの感情が其処にあり、あるからこそ堕ちていったように思えた。

「貴方には無いんですか? そうした感情は…ムクロに堕ちてしまう程の激情は――」

 その瞬間。
 アルスたちの懐へ、センスが飛び込んでくる。
 何の間も、隙もなく一瞬で。
 アルスたちの間近へと迫り来る。
 だが、先ほどアルスたちに加えた一撃と比べて、何処か遅く感じた今回の攻撃。
 そのため、寸でのところでアルスたちは辛うじて避けることが出来た。
 ストームを掴み、二人は大きく後方へ飛び退く。

「ない。俺に感情があるとすればそれは、誓い」
「誓い…?」

 飛び退いた先―――大広間の壁際へと追い込まれたアルスとレオはそう呟く。
 と、センスは大剣を前方へと掲げる。
 彼が向ける刃の先端は二人に、ではなく。
 その頭上に飾られている―――掲げられていた一枚の絵画へと向けられていた。

「この城を守り抜く…何人だろうと城を壊す者は許さない―――それが俺の誓いだ」






2019/02/06(水) 語りべ
タイトル 最後のムクロ5



 傷処か塵一つついていないと言った様子を見せるセンス。
 余裕を見せるその素振りと漂う気迫。
 自然とアルスの額から汗が滲み出ていく。

「…貴方はどうしてムクロになったんですか? 力を求めて、復讐から、絶望から…一体何故?」

 ストームの治療を少しでも長引かせようと、そして後方にいるスイリやリルムたちとの連携のためにも。
 アルスは時間稼ぎにそんな質問を投げかける。
 だが、それは単に時間稼ぎだけではなく、純粋な疑問として抱いていたものでもあった。
 するとセンスは鼻で笑い、傾けていた剣先を下す。

「お前たちに教える義理などはない」

 当然の回答。
 と、レオは鼻で笑い返し、口を開く。

「じゃあアンタは大した理由もなくムクロになったってことか? だったらアンタは、他のムクロ以下だな」
「何だと…」

 挑発的なその口振りにセンスは片眉を吊り上げる。

「他のムクロたちはそれなりの目的…絶望なり渇望なりなんなりにせよ、感情ってものがあった」


2019/02/06(水) 語りべ
タイトル 最後のムクロ4







「ストーム!」
「ストームさん!!」

 二人が吹き飛ばされていたその一瞬にして彼はセンスに負かされたようだった。
 苦痛に喘ぐ声が聞こえているため、どうやら意識はあるようだが。
 それでも彼を一瞬にして打ち負かすその力量にアルスたちは思わず息を呑んだ。



「とは言え…他のムクロたちを倒した実力が如何ほどのものかと思っていたが…」

 センスはそう言うと手にしていたストームをまるで物のように投げ捨てる。
 無気力に地面を転がる彼へ、アルスとレオは怪我の痛みを堪えつつも駆け寄った。

「大丈夫ですか…!」
「すまない、油断した…」

 そう話すのがやっとと言う程にストームは既にボロボロの状態で。
 急ぎアルスは回復呪文を彼へかける。

「気をつけろ…奴の能力は確かに他のムクロたちとは全く違う…」

 呼吸する度に痛む胸部。
 どうやらあばら骨を痛めたらしく、しかしそれでもストームは懸命に声を上げ、二人へ忠告する。

「違うって…」
「どう見てもわかるっての」

 ポツリとそう洩らしたレオは立ち上がり、アルスとストームを庇うように身構える。
 目前には、ゆっくりと迫り来るセンスの姿。

「だから他の者と比べるなと言った」


2019/01/29(火) 語りべ
タイトル 最後のムクロ3 今日の気分次回更新は2月5日(火)予定です



 確実に二人はセンスの隙を付いていたはずだった。
 地面に突き刺さった大剣と共にいた彼目掛け、二人は飛び込んだはずだった。
しかし、何故か気付くとセンスは二人の背後にいた。
 突き刺さっていたはずの大剣を手に、二人へ斬りつけたのだ。
 怪我が致命傷にならなかったのは、咄嗟にストームが三人に目掛けて突風の呪文を放ったからだ。
 突風によってバランスを崩したセンスの一撃は、二人の怪我をかすり傷程度に済ませたのだ。

「気をつけて…もしかしたらムクロの能力かもしれない」
「そういやそんな力があるんだったな、こいつら」

 瓦礫で汚れた身体を払い、身構えたレオの言葉にアルスは小さく頷く。
 これまで出会ったムクロたちは、人をやめる代わりに魔王から強靭な能力値とは別に、特化した特殊能力を得ていた。

 耳が利く。
 鼻が利く。
 目が利く。
 舌が利く。
 手が利く。

 だが、特殊といっても彼らが戦闘においてそれを利用して来たことは少ない。
 彼ら自身も特殊な特化ゆえに使い余していたのかもしれない。


「俺の力は他の者とは訳が違う。一緒にしないで貰おうか」

 そう言いながら生まれたばかりの壁穴から姿を見せるセンス。
 悠然と立つ彼の傍らには、首根っこを掴まれ、項垂れた状態でいるストームの姿があった。








2019/01/29(火) 語りべ
タイトル 最後のムクロ2






 ムクロの振り下した大剣による一撃は、轟音と共に地面は大きな亀裂を生み出す。

「すかさず反撃だ!」

 レオがそんな掛け声を上げ、即座に身体を反転させる。
 アルスも続くべく飛び退いていた身体を捻らせ、剣を構え直した。
 が、次の瞬間。

「甘い考えだな」

 その低い声はアルスたちの背後から聞こえてきた。



 驚き、振り返ろうとするよりも早く。
 背後からの一撃によって、アルスとレオは遠く、強く吹き飛ばされた。

「アルス!!」
「レオさん!!」

 突然の出来事、そして吹き飛ばされるアルスたちの姿に悲鳴に近い叫び声を上げるスイリとリルム。
 アルスとレオの身体は中庭の端、石煉瓦の壁を突き破り、更にその奥へと吹き飛ばされていった。
 爆音と共に壁は破壊され、瓦礫となって壁の一部が崩れ落ちる。

「く、そ…どういうこと、だ…?」
「レオ、大丈夫…?」

 吹き飛ばされた二人は中庭から玉座と思われる椅子が置かれた広間であろう場所にいた。
 崩れた瓦礫の中からゆっくりと顔を出し、身体を起こすアルスとレオ。
 体中に走る痛みに表情を歪めながらも、二人は起き上がるなりすぐさま剣を構え直す。
 痛みに油断していると、再度センスから一撃を受けかねないと、警戒したからだった。




2019/01/22(火) 語りべ
タイトル 最後のムクロ1 今日の気分次回更新は29日(火)予定です








「ムクロか…?」

 すっかりと暗くなった暗黒の夜空の下。
 その黒服の男は静かにフード外し、顔を晒す。

「俺の名はセンス―――ムクロを束ねていた者、と名乗っておこう」

 黒髪に黒い瞳。
 大剣を構えるその青年はこれまでのムクロたちとは何処かが違う。アルスは不意にそう感じる。

「ムクロは六人っていう噂を聞いたんだが…となるとお前が最後の一人で間違いないんだな?」

 拳を向けながらレオがセンスと名乗ったムクロへ尋ねる。
 彼は迷うことなく、答える。

「そうだ。他の者たちを倒したのはお前たちか」
「倒した…ことには間違いはない」

 眉を顰めながらアルスは言う。
 倒した。その言葉に少なからず拒否反応を示すのは、彼の中でそれは臨んだ結末ではなかったからだ。

「そうか…」

 アルスの言葉を聞いたセンスはそう言うと、静かに瞼を閉じた。
 まるで仲間であった者たちを偲ぶかのような姿。
 思わずレオが皮肉めいた台詞を洩らす。

「ムクロを倒した俺たちへかたき討ちってことか?」

 するとセンスは「笑止」と鼻で笑う。

「人を止めてしまった我らに憐れむ弔うと言った情けはない。あるのは我らの目的を邪魔建てする者たちへの憎しみと怒りのみ」

 と、彼はそう言うと勢いよく地を蹴り、アルスたち目掛けて飛び込んでくる。
 頭上には掲げられた大剣。

「逃げろ!」

 ストームの声を聞くと同時に皆は一斉に各方向へと飛び退く。
 直後、アルスたちが元居た場所に大剣は振り落された。





2019/01/15(火) 語りべ
タイトル ここに城がある理由2 今日の気分次回更新は22日(火)予定です



 アルスはストームの話を耳にしながらおもむろに通路傍にあった絵画を見やる。
 多くの絵画は古びてしまっており、魔物が付けた物だろう傷や跡があり、それがどんな画であったのかさえ分からない状態となっている。
 斜めにずれ落ち、今にもそのまま崩れてしまいそうなその絵画には、一体どんな物語が描かれていて、どんな者たちが眺めていたことか。
 それを物語ることさえ最早出来ない慣れ果てに、アルスは人知れず眉を顰めた。





 魔物と戦いながら進み続けるアルスたち。
 離宮の階段より地下へと降り、隠し通路の更に奥へと突き進む。
 と、上階に上がったアルスたちは中庭を入ったところで足を止めた。

「誰か…いる」

 その姿は魔物ではなく、人影で。
 しかしこんな場所に居るという時点でそれは只の人ではない。
 アルスたちは即座に武器を持ち、構えた。

2019/01/15(火) 語りべ
タイトル ここに城がある理由1






「私も見た!魔王の城に入る前で緊張してたし、口には出さなかったけど…気になってたんだよね」

 レオに続き会話に割り込んで来たスイリ。
 “緊張していた”と口にしている割に彼女は爛漫な眼差しで二人を見やり、今いる状況さえ忘れてしまっているようにも見えた。
 が、どんな場所に構わずマイペースに明るく振る舞える、それが彼女の長所でもあるのだ。

「…あれはギアガの大穴と呼ばれるもので底なしの崖…冥界の入口、災いの穴とも呼ばれている」
「ギアガの大穴…知ってます。絶望した者たちが其処に身を投じに来るとか、投獄刑以上の処罰として大罪人を其処へ突き落していたとか…だけどあくまでも噂話だと思ってました」

 今度はリルムが割って入り、俯き気味に話す。

「それらの噂は全て事実だ。実際に大罪人の処刑場として今も極秘裏に使用されていると聞いている」

 ストームの言葉にレオが「こんな場所まで御苦労なこった」とぼやく。
 しかしストームの話しによるとそうした行為は随分古くから行われていたらしく、それらの実行や監視をしていたのがこの城に住んでいた者達だったとのことだった。

「だがある日…そのギアガの大穴から瘴気と共に魔王の軍勢が現れ、近くにあったこの城を襲ったそうだ。魔物たちは城の者たちを次々と襲い…そうしてこの国は滅んだ…そう聞いている」


2019/01/08(火) 語りべ
タイトル そして魔王の城へ7 今日の気分次回更新は15日(火)予定です



 二人の会話を聞いていたレオが、割り込みそう告げる。
 するとストームは彼を一瞥した後、素直に答える。

「この城砦を築いた国の民たちは、元より重大な使命があった」

 使命。
 その言葉をアルスは無意識に復唱する。

「この城に入る前。その近くに大きくぽっかりと口を開けていた穴を見なかったか?」

 直後、アルスは魔王の城へ入る直前の情景を思い出す。
 確かにラーミアに乗っていた際、魔王の城の近く―――川を挟んだその隣に大きく口を開けたような大穴が存在していた。
 底の見えない、暗黒に包まれた不気味な円形の崖。
 それはまさしく巨大な穴。そのものだった。





2019/01/08(火) 語りべ
タイトル そして魔王の城へ6









 これまで地道にレベルも上がっていたこともあり、アルスたちは順調に魔王の城内部を攻略していく。
 襲い来る魔物たちを蹴散らし、魔王のもとへと向かっていた。

「一つ、気になることがあったんですが…良いですか?」

 城内通路を進む中、おもむろにアルスはそう切り出し、ストームへと尋ねる。
 彼はその足を止めることなくアルスに視線のみを向けて答える。

「何だ…?」

 ストームの足並みに合わせるよう隣に並び、改めて聞く。

「以前この城は人が住んでいたと…言っていましたが、本当なんですか?」

 アルスの質問を耳にし、彼は「そのことか」と呟く。

「俺の生まれるより随分と昔の話しだ…この城は確かに人が暮らす城…城砦だったという」

 ストームの言葉を聞きながらアルスはその視線をおもむろに通路脇へと移す。
 魔物の蔓延る廃墟の城。
 一見するとその通りとも言えるが、古びてはいるもののよく観察すると通路の高さや燭台、装飾品などの配置が、魔物たちが築いた言うよりは人が建てたそれと言う方が正しいように思えた。

「けどなんでこんな辺鄙な場所に城砦なんて造ったんだよ。山に囲まれて不便そうだし、可笑しくねえか」