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竜の伝説〜飛翔〜
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交換日記レンタル - nikkijam

2018/06/19(火) 語りべ
タイトル 朝から作戦会議1 今日の気分次回更新は26日(火)予定です




 どうやらそれはチェロハとレオにも解っているらしく、その理由を詳しく聞きたいとアルスは思ったアルスわけだが。
 ストームの「聞くな」と言わんばかりの気迫に負け、結局口には出せず。
 そのうちにアルスたちの下へ宿屋の女将がトレイ一杯の料理を持ってきたため、その話題は静かに終了となった。



 朝食を済ませたアルスたちは今後の旅について話し合うべく、そのまま食堂にてひざを突き合わせる。

「レイアムランドへは船を使って上陸することになるが、そこは未踏の雪原。用心するに越したことはない」

 ストームの言葉にアルスは頷き答える。

「そうだね…。出来る限りの装備と道具を整えて向かおう」
「ムクロについては…その大丈夫ですか?」

 と、挙手しながら恐る恐る尋ねるリルム。
 確かにムクロ――ハンドの動向について不安は拭いされていない。
 レイアムランドにあるという祭壇へ向かう道中に再度襲撃される危険性も考えられる。
 だがそれには直ぐにストームがかぶりを振って否定した。

「その可能性は低いとないだろう」
「どうしてだよ」

 即座に反論するレオに、彼は視線を向けることなく答える。

「レイアムランドで襲撃するつもりならこのタイミングで襲撃してきたりはしない」

 レイアムランドは魔物も住まう未踏の地。
 勇者たちにとって不利な土地、ならば尚のこと軍勢を引きつれて待ち構えるにはうってつけの場所と言えた。
 




2018/06/19(火) 語りべ
タイトル 朝から団らん






 それから少しだけ他愛のない会話(昨日別行動の際お互いが何をしていたのか等)をし終えた後、二人は宿の方へと戻る事にした。
 空はすっかりと太陽が昇り、町には人々が姿を見せ始め、昨日の続きである修復作業に勤しんでいた。



「よ、お二人さん。何処に行ってたんだよ、朝も早から」
「ちょっと天気も良いし、散歩だよ」

 食堂にいたレオに尋ねられそう返すアルス。
 丁度食事を待っているところだったらしく、彼のテーブルには水の入ったグラスしか置かれていない。
 そんな隣の席へと腰を掛けるアルスとスイリ。
 すると目の前にはリルムとストーム、コティッチとチェロの姿もあった。

「おはようございます」
「まだ眠そうだね、リルム」
「はい…ちょっと…」

 瞼を擦りながら欠伸を噛み殺しているリルムへ苦笑を洩らすスイリ。
 片やストームは偶にため息を洩らし、何処か具合が悪いのか顔色が良くない。

「何かあったの?ストーム」
「大したことじゃない」

 淡々といつもの口振りで返すストームだが、やはり調子が良いとは思えず心配するアルス。
 と、そんなアルスやスイリに、事情を知るコティッチは笑みを浮かべながら言った。

「ま、大人になったらわかるって奴だろ」


2018/06/12(火) 語りべ
タイトル そして朝が来る6 今日の気分次回更新は19日(火)予定です



 苦笑交じりにそう言ったアルスに対し、彼の前を歩いていた彼女は振り返り、爽やかな笑顔をのぞかせる。

「私がそう断言してあげる」

 その微笑みに釣られる。
 正直、少しばかり彼を許すことに心配はあった。
 敵を見逃すのは甘い考えだと、非道な相手には何を解いても無理だと、仲間たち――スイリにまでも反対されるのではと思っていた。
 しかしそんな心配など杞憂であった。
 彼女はこうしてずっと信じて隣に居続けてくれる。
 だからこそ、彼は思ったままの道を進むことが出来る。信じて進められる。
 本当に、感謝しなくてはならない。



「――そういえば、昨日のケーキ。本当は僕へのサプライズだったって聞いたよ」
「え?え?もしかして…レオから聞いたの?」
「うん、聞いた」
「もう…レオってばおしゃべりだもんな」

 頬を膨らませ、口先を尖らせるスイリ。
 と、互いは互いの顔を見合わせ、直後に声を上げて笑った。

「それを聞いて本当に嬉しかったよ。ありがとう」
「結局アルスの口に入ったのは一切れもなかったけどね…」
「それでも、凄く美味しかったよ」
「……ふふ、ありがと」

 できる事ならば、この先もずっと、彼女や仲間たちと共に隣を歩けられたら。
 そう強く、アルスは願った。





2018/06/12(火) 語りべ
タイトル そして朝が来る5



 そう考えてしまった瞬間、アルスはハンドという人を今まで出会った誰よりも憎しんだ。
 きっと彼には反省する心などないのかもしれない。
 ならばいっそ、この手で彼を勇者として成敗した方が良いのかもしれない。
 そんなことを思ってしまった。
 アルスはゆっくりと穏やかに微笑みを浮かべ、答えた。

「大丈夫かと聞かれると…正直わからない。けど、憎しむ以上に彼を可哀想と…哀しい人だと憐れんでしまったんだ」

 嘘ではない。
 あのとき、素顔を見る事がなかったらもしかするとそんな感情は抱かなかったかもしれない。
 端正なあの顔立ちに反省や後悔といったものは微塵も感じられなかったが、それでも…何処か哀しそうに、苦しそうに見えてしまったのだ。

「だから僕は父さんのことについて、許すよ。そう断言する」

 真っ直ぐにスイリを見つめるその眼差しに嘘偽りはない。
 朝日を浴びた双方はまるで一点の曇りもない輝く太陽の空の如く、眩く輝いている。

「そっか。強いな、アルスは…私だったら大切な人が目の前から居なくなったってだけで…もう苦しみに耐えられないと思う」

 再び、ゆっくりと歩き出すスイリ。

「そんなことはないよ。ハンドから偽善者で狂っていると言われた…強いんじゃなくて、歪んでいるだけなのかもしれない」
「違う」





2018/06/12(火) 語りべ
タイトル そして朝が来る4







「話している声が少しだけ聞こえたの」

 そう僅かに俯きながら彼女は答えた。
 あの時、ハンドがあの話しをした場所は街中であった。
 確かに会話内容までは聞こえなくとも、何か話していたことは知られていても仕方がなかった。

「ねえ、本当に…大丈夫なの?」

 俯いていたその顔がアルスへと向けられる。
 その心配そうにしている大きな瞳が少しばかり潤んでいるようにも見えて、アルスは僅かに眉を顰める。





 スイリが言いたい事は判っている。
 オルテガを死へと追い詰めた黒幕がハンドであったことに対し、怒りや憎しみはないのかと。
 彼女は問いたいのだ。
 実の父を手に掛けたと言っても過言ではない相手。
 そんな相手に憎しみがないのかと言えば、嘘になるのかもしれない。
 彼がその話を口にした瞬間。
 確かにアルスの中に憎悪にも似た燃え上がる感情はあった。
 黒くざわつく心が、ハンドを責めようとした。

『何故そんなことをした。そうして追いやったとき、お前は何も感情を抱かなかったのか』と。

 オルテガが行方不明になったと、死の報を聞いたときの母の悲しみにくれていた、しかしそれでも前を見ようと堅く口を噤んでいたあの横顔は、幼少ながら忘れられない顔となっている。
 今でもとてもよく覚えている顔だ。
 その顔をした人を見ても彼はそんな冷酷なことを平気で出来るのかと。


2018/06/05(火) 語りべ
タイトル そして朝が来る3 今日の気分次回更新は12日(火)予定です



 だから私は、町は賑やかで楽しい方が幸せを感じられるから好き。
 その横顔を見やり、アルスもまたつられるように笑みを零す。
「だから、だからね。私も頑張って戦うよ。辛くて苦しい思いもしてきたけれど、誰かが喜んでくれるなら…幸せになれるなら、その為に戦う」

 そう言って彼女はその決意を表すように拳を力強く握って見せる。
 真っ直ぐで揺らぎのない眼差しにアルスは優しく微笑み、「そうだね」と返す。
 と、スイリは突如何かを思い出した顔をし、アルスへと視線を移した。

「…って私の話しばっかだったね。ホントはアルスのこと、聞きたかったのに」
「僕のことを…?」

 改まって尋ねられることなんてあっただろうかと内心首を傾げていると、彼女は少しの間を置いた後、答えを返した。

「ムクロと戦ったとき…オルテガさんのこと言われたって…」

 重そうなその口で、静かにスイリはそう言った。
 直後、アルスの脳裏にレオの姿が浮かぶ。
 あの場であの会話を聞いていなかっただろう彼女がその話を知っているとなると、答えは一つ。
 彼の口から聞いた他ないのだ。

「あ、レオは言うつもりなかったの。私が無理やり聞いただけだから」
「けどどうして…?」

 と、スイリは静かに足を止めた。





2018/06/05(火) 語りべ
タイトル そして朝が来る2







 昨日の今日で危険がないというわけではない。
 またしても町の外に出ている間にムクロが襲ってくる可能性も捨てきれない。
 そんなことを考え、アルスは思案顔を浮かべる。
 彼の反応に気付いたスイリはクスリと笑みを見せながら言った。

「大丈夫だよ、外って言っても町の中を散歩するだけだから」

 町の外までは出ないよ。
 そう付け足して笑うスイリ。
 アルスの顔は僅かに紅くなり、「そうだよね」と答えつつ苦笑を洩らした。
 町の中の散歩ならばなんら問題もない。
 アルスはグラスに水を注ぎ、一杯だけそれを飲み干すと席から立ち上がった。

「わかった、行こう」






 気分転換に町へと繰り出したアルスとスイリ。
 朝霧に包まれた町は静寂としており、昨夜の騒動と祭の様な賑わいを忘れさせるような空気が漂っている。
 しかし、大神殿を構えているこの神聖なランシールではこれが元来あるべき姿なのかもしれない。と、考えてしまう。

「けど私はやっぱり町は賑やかな方が良いな」

 突然そう口を開いたスイリ。
 まるで心の中を読まれた返答に一瞬ドキリとしたが、どうやら偶々そう答えたようで、当の彼女は穏やかな笑みを浮かべている。
 彼女は歩きながら、そのまま話を続ける。

「この町を守れた直後って正直、あんまり実感がなかったんだ…でもね、町の人がああやって賑わってくれて、嬉しそうな顔を見られて…そっか、私この町を助けられたんだってようやく思えたの」


2018/05/29(火) 語りべ
タイトル そして朝が来る1 今日の気分次回更新は6月5日(火)予定です








 翌朝。
 起床したアルスは宿内にあった食堂へと足を運ぶ。
 と、そこには既にスイリの姿があった。

「おはよう」
「うん、おはよう。早く起きたの?」
「まあね」

 そう言って苦笑を浮かべるアルス。
 それから二人はおもむろに窓の外を見やる。
 朝日こそ出てはいるが、空の明かりは未だ淡く、人々の活気は聞こえてこない。

「何だか早くに目が覚めちゃったみたいで」
「私もそんな感じ。ホントは部屋にいようかなって思ってたんだけど。リルムがぐっすり寝てて…起こしちゃ悪いから」

 微笑みを見せるスイリに続き、アルスもまた「僕も同じだよ」と答える。

「みんな起きそうにないからここに来たんだ」

 アルスはそう言いながらスイリの座っている席の向かいの椅子へと座った。

「けど朝食出されるのもまだみたいで…おあずけ状態なんだよね」

 その代わりとして彼女は水でお腹を満たしているということだった。
 テーブルを見ると確かに水差しとグラスが置かれていた。

「あ、そうだ。暇つぶしに外でも行ってみない?」

 席に座り同じく水を頂こうとグラスに手を伸ばしかけていたアルス。
 しかし、スイリの突然の案に彼はその手を思わず止めた。

「え?」






2018/05/22(火) 語りべ
タイトル 宵は静かに終わる2 今日の気分次回更新は29日(火)予定です



 そしてそれはストームにも経験があった。
 彼の場合は結局、認めて貰いたかった相手(ギンガ)に自分を認めて貰う事は叶わず仕舞いであったが、それでも最終的に助け出す事が出来て気持ちに整理がついた。
 それ以上に、新たにこうした仲間と出会えて、こうして本当の自分も受け入れてもらって――彼の中では受け入れられてしまったという感覚だが――自分でも気付かなかったが、実は嬉しかったのだ。
 でなければあんなにも仲間を想う戦いなど、ハンド相手には出来なかった。
 今までの自分ならば猪突猛進に単独で戦っていた。
 彼女たちのサポートなど目ざわりと思っていたことだろう。
 そして、こうして彼女を認めることも、傍に寄りそうこともしなかっただろう。

「―――やっぱり酔っているみたいだ。こんなことを考えるなんてな」

 リルムにも聞こえないような独り言を呟き、静かにため息を吐き出す。
 それから二人は暫く、そのままに時を過ごした。





2018/05/22(火) 語りべ
タイトル 宵は静かに終わる1







 以前ギンガと共に旅をしていた頃、ふと彼が言っていた。
 幼少の頃のスバルは時たま、ぐずつき泣き止まない夜があったという。
 そういう夜は、彼はいつも彼女の頭を泣き止むまで優しく撫で続けていたのだと。
 懐かし気に、嬉しそうに語っていた横顔を、今不意にストームは思い出したのだ。
 だからといって気の利いた言葉を投げかけられるわけでもなく、ただただ彼は無言のまま。
 何処かぎこちなくリルムの頭部に掌を添えるだけ。
 しかし、それで充分だとも思っていた。
 何故ならリルムは決して哀しくて泣いているわけではないからだ。

「ありがとうございます」

 ぽつりと、小声で答えるリルム。
 此処までに苦難もあり、押し込んでいた感情の爆発もあったのだろうが、何よりも彼女はストームに認めて貰えたことが、仲間として受け入れて貰えたことが純粋に嬉しかったのだ。