語りべ管理者

竜の伝説〜飛翔〜
〜そして伝説へ〜

次は 管理者


過去の日記
2019年06月(4)
2019年05月(4)
2019年04月(8)
全て表示


メニュー
プロフィール


管理者用
パスワード



count

モバイル

交換日記レンタル - nikkijam

2019/08/07(水) 語りべ
タイトル 魔王3 今日の気分次回更新は21日(水)予定です




「私たちの大切な人たちを沢山苦しめてきた魔王…それを倒せば全部終わる。みんなが笑って暮らせるようになる。だから私たちは此処に来たの!」

 と、アルスの手が一瞬緩む。
 引っかかるような『何か』を、『違和感』を不意に感じたからだ。
 だが彼が考えようとするより先にストームの手が肩に触れたことで、アルスは我に返る。

「勇者としての資格、素質をずっと追い求めていたが…その前に目前の悪を倒せなければ意味がないだろ」

 彼もまた武器を構えながらそう告げる。
 しかしそれは魔王への言葉というよりも、アルスへの叱咤のようにも聞こえた。
 そう思ったアルスは力強く頷き、柄を握る手に再度力を込める。

「そうだよ…僕たちは魔王に屈したりはしない、魔王なんかに負けない!」

 鞘を抜き、彼はそう言った。
 魔王はアルスたちの言葉を聞くなり喉を鳴らし、不気味に笑ってから口を開く。

「ならば…此処に来た事を悔やむが良い。再び生き返らぬようそなたらのハラワタを喰らい尽くしてくれるわ!」

 そう言い放ち、魔王は玉座よりゆっくりと立ち上がる。
 刃より鋭い爪を広げ、アルスたちに立ち向かった。



2019/08/07(水) 語りべ
タイトル 魔王2




 アルスたちを見下すその双眸は冷たく、座する姿は威圧的だ。
 
「ついにここまで来たか勇者よ…」

 と、口を開き魔王がアルスたちへと言い放つ。

「この大魔王バラモス様に逆らおうなどと、身の程を弁えぬ者たちじゃな…」

 地面の底から轟くような、重たい魔物の声。
 しかしアルスは臆することなくその刃を魔王へと向ける。

「生憎、大魔王がどれだけ偉いかなんて俺らには理解も出来ないんでな!」

 拳を構え、吼えるレオ。
 続くようにリルムも叫ぶ。

「偉いからって何でもしていいわけでも許されるわけでもないんです! そして貴方の悪行は決して許されるものではありません!」

 魔物を放ち、数々の人々を不幸に陥れてきた王。
 諸悪の根源である彼を倒せば、討伐出来れば全てが救われる。
 全てが終わる。



2019/07/31(水) 語りべ
タイトル 魔王1 今日の気分次回更新は8月7日(水)予定です










 地下へと下っていく階段―――その石段は徐々に熱を帯びているようで、ブーツ越しだというのに熱さを感じる。
 それどころか、額や全身にもうっすらと汗が滲んで来ていた。
 アルスは頬を伝う汗を拭い、階段脇に飾られた松明の灯りを頼りに下りていく。
 彼に続くスイリたちもまた、じっとりとまとわりつく熱気に体力を奪われていくようで、深い吐息を何度も漏らしていた。
 しかし彼らの疲弊も無理はない。
 連戦に続く連戦。
 そしてムクロとの対決。
 一度休憩と回復を挟んだとしても蓄積されていく疲労までは完全に取りきれるわけでもなく。
 アルスたちは奮い立たせた気力でこの階段を下りていた。



「何か…いる」

 階段を下りきった先、そこはごうごうとマグマのうねるような、火の粉の迸る音が聞こえる。
 どうやらその地下は溶岩洞窟に造られた、城でいう謁見の間のような大きな部屋だった。
 階段を下りたその裏手に広がる場所を静かに覗き込むアルス。
 奥の方から感じる異様な気配に、息を呑み剣の柄を握り締める。

「慎重に行こう」

 ストームの言葉に一同は頷き、ゆっくりと奥へ進んだ。



 まさしく謁見の間と言うべき広間と、その奥に存在する巨大な玉座。
 そして―――。
 巨大な魔物の姿。
 これまで戦ったどの魔物たちとも違う雰囲気と出で立ちは紛れもない王と呼べる風貌だった。

「魔王バラモス…!」








2019/07/24(水) 語りべ
タイトル 迫る激戦の前3 今日の気分次回更新は31日(水)予定です



 




「大丈夫だよ。みんなが居るんだから」

 と、アルスの緊張に気付いたスイリが彼の力む手にそっと触れた。
 重なる彼女の手もまた、冷たく恐怖に震えているようだった。
 だが、それでも彼らへ見せる強く優しい微笑みにアルスは元気付けられる。

「ありがとう、スイリ。ありがとう、みんな…此処まで一緒に来てくれて」

 剣に加えていた力を抜き、アルスは皆へとそう言った。
 振り返った先に立つ、仲間たち。
 彼らは力強く、心強い眼差しでアルスを見ている。

「この戦いが終われば全て終わる。覚悟は良いかな…?」
「勿論だ」
「さっさと魔王倒してアリアハンに帰ろうぜ?」
「そうですよ! きっとお城総出で歓迎してくれますよ」

 皆の言葉がアルスの中へと―――心へと深く刻み込まれる。
 その明るい顔が、迷いのない笑顔が勇気付けてくれる。

「みんなで一緒に、魔王を倒して帰ろう!」

 アルスは力強く頷き、もう一度剣を握る手に力を込めた。

「行こう、みんな―――!」


 アルスの掛け声に合わせ、一行は地下へと続く階段を下りて行った。








2019/07/17(水) 語りべ
タイトル 迫る激戦の前2 今日の気分次回更新は24日(水)予定です




「階段の周囲には如何にもって感じに仕掛け床も張ってるみたいだしな。あそこの下に間違いなさそうだぜ」

 桟橋の近くまで足を運び階段を覗き込みながらレオがそう話す。

「それだけではない…この先からはこれまでにない異様な気配を感じる」

 いつになく見せるストームの緊張感が伝染してくるように、アルスもまた心臓が高鳴り、その気配に息を呑む。
 肌に突き刺さるような気配。
 アルスは静かに深呼吸を繰り返す。

「この先に…魔王がいる」

 独り言のような言葉を発し、人知れず剣を握る手に力が入る。
 ついに、此処まで来た。
 いよいよだ。
 高鳴る鼓動は更に強く、早くなっていく。






2019/07/17(水) 語りべ
タイトル 迫る激戦の前1











 ムクロセンスとの戦闘を終えたアルスたちはスイリの呪文によって傷を癒した後、先へと進んだ。
 しかし、最終的に辿り着いた先は庭園だった。
 長年手入れが施されず、すっかりと荒れ野原のようになってしまった花壇。
 所々に破損個所のある古びた煉瓦道。
 そして苔と水草によって変質してしまった池。

「何にもないぞ?」
「さっきの玉座に魔王がいるかと思いましたが違ったみたいですしね…」

 困惑するアルスたち一同。
 しかし襲い来る魔物の手が止む事はない。
 ムクロの姿もあった以上、必ずこの城の何処かに魔王はいるはず。
 そう思いアルスたちは周辺をとりあえず捜索しようという話になった。
 だが、しかし。

「みんな! あれ見て!」

 スイリが指さした先には生き物の気配を感じさせなくなっている池。
 その庭園の池には桟橋が架かっていた。
 対岸まで対岸まで架けられているわけでもない、古びた桟橋。
 
「階段だ…」

 スイリの隣へと並んだアルスはそのポッカリと口を開けて待つ階段らしきものを見つけた。
 それは地下へと向かって造られており、おどろおどろしい雰囲気を放っていた。


2019/07/10(水) 語りべ
タイトル 骸は骸を嘲笑う4 今日の気分次回更新は17日(水)予定です



 最期に、意識が遠のく前にセンスは思う。
 
(―――俺は、この城が城のままであるのならば…あの日の記憶が失われなければ…それで良かった…貴女の記憶があるこの城まで失いたくなかった……)

 ゆっくりと伸ばすその指先は、前方の壁に飾られた―――色褪せ廃れてしまった―――絵画へと向けられる。
 描かれていた王と妃はの顔は、まるで彼へ微笑んでいるかのようであった。








「ムクロだなんだって言いながら結局…皆さん感情に素直で本当―――扱いやすくて良かったですよ」

 誰に言うわけでもない独り言を語るハンド。
 彼はゆっくりとその場から立ち上がり、静かに吐息を洩らす。

「アイさんの力だけ取り戻せなかったのは痛手でしたが…まあ、それでも充分に力を発揮できると思いますけどね…バラモス様」

 歩き出したその先は勇者たちが進んだ方向とは逆で。
 軽く掌を揺らし、彼は独り語る。

「…それに、仮に貴方が敗れることがあったとしても、私とっては好都合なんでね」

 不気味な笑い声を響かせながら、ハンドは暗闇の奥へひっそりと消えて行った。







2019/07/10(水) 語りべ
タイトル 骸は骸を嘲笑う3




「ちょっとね、これまでの考えを改めようと思いましてねー。今はその準備に追われているところなんですよ」

 忙しいのは確かですが焦ってなどいません。
 むしろこの状況を楽しんでいるんですよ。
 そう言ってハンドはセンスを見下すように笑みを浮かべる。
 彼の表情から、センスは自身の命運を悟る。
 五感とは別の『何か』が、溢れるように『今すぐ此処から逃げろ』と訴えている。


「…そうか」

 それだけ吐き捨ててセンスは深く瞼を伏せた。
 最早守りたいものも守れなかった自分に、何の未練もなかった。
 呆気なく受け入れるようにも思えるが、元より彼らは魔王へ魂を売った身。
残されたただのカバネの存在であり、だからこそ『ムクロ』なのだ。
 執着するものはあれど、それは生や命ではない。

「ノウズやイアーもそうだった…ならば俺も受け入れるのが道理」
「そういうことです。敗北は死を以って全て魔王―――バラモスへと返さなければならない」

 酷く真面目な声と共に身体へ触れていくハンドの手。

「一つだけ…最期に聞いても良いですか。どうしてこんな城に執着してたんですかね…」

 ため息交じりに投げかけられた質問。
 先ほど聞いたばかりの言葉にセンスは鼻で笑い、口を開く。

「答えるつもりはない」

 直後、もう一度深いため息が聞こえた。

「本当、昔から融通が利かないですよね…ま、そういうところ嫌いじゃありませんでしたけどね」

 ハンドにそう言われたセンスは口角を吊り上げ、言い返した。
 
「褒め言葉として受け取っておこう」


2019/07/03(水) 語りべ
タイトル 骸は骸を嘲笑う2 今日の気分次回更新は10日(水)予定です









「次にそれを言ったら容赦しない」

 先ほどとは違い低く殺気立った声。
 鳩尾から響く鈍痛。
 その痛みは全身に冷や汗を生み出し、呼吸を止めてしまうほど。
 通常時のセンスならばこの程度の足蹴りなど容易く避ける事が出来たが、今の状態では避ける体力も残っておらず。
 久々に喰らった激痛は血反吐と共に呻き声を出させた。

「ったく、自分の立場が解ってないんですかねー」

 自身よりも幼い相手であることは明白であったのに、センスは彼の放った気迫に思わず言葉を詰まらせる。
 しかし気圧されたとまで思ってはいない。
 センスの第六感自体は、ハンドの放つ気迫に危機感を訴えている。
 だがいつものように飄々としてみせている彼に、いつもの余裕めいた素振りを感じられなかった。
 何処か焦りにも近い何かをセンスの第六感は訴えているのだ。

「随分と…平常ではないようだな。焦っているのか…?」

 皮肉のつもりで吐いた言葉。
 すると次の瞬間、ハンドは破顔し声を上げて笑い出す。

「はっはは…焦り? そんなわけがありませんよ」

 笑顔で見下ろす彼の双眸は、全く持って笑ってはいない。
 ハンドは再度センスの腹部を足蹴にして語る。





2019/06/26(水) 語りべ
タイトル 骸は骸を嘲笑う1 今日の気分次回更新は7月3日(水)予定です









 しかし、そんな彼の呟きを耳にしていた者がいた。

「あはは、今まで散々大口叩いてた貴方が随分なやられっぷりですね~」

 鼻につくような、人を小馬鹿にするような口振り。
 誰なのか直ぐに察しがついたセンスはその体勢のまま口を開く。

「ランシールで敗れたと聞くお前に言われたくはない」
「敗北はしましたがこうして元気ですよ、それに比べてその無様さはどうなんでしょうね」

 近付いてくる黒衣を纏う青年。
 瞼を伏せ、センスは言葉を返す。

「少し休んでいるだけだ」

 だが、実際のところは身体が思った以上に動かないというのが本音だった。
 ムクロとなって強化され、ここまでの力をつけた。
 試し斬りもしたし、この城へ魔王退治としてやって来た冒険者は悉く切り捨てた。
 しかし、こんなにも力を使い疲弊した気分はセンスには随分と久しい気がした。

「これだから見掛け倒しのご老人は…引きこもってたのが貴方の敗因なんですよ」
 
 そう言いながら顔を覗き込む若い青年―――少年とも取れるようなその人物にセンスは若干驚き目を見開く。
 ムクロ同士、互いに顔を伏せていたたためその素性どころか素顔を知ることはない。
 古株であるセンスでも、意外なその少年の顔に驚きを隠せなかったのだ。

「…思っていたよりも小僧だったのだな、ハンド」

 破願し、目の前のハンドへとそう吐き捨てるセンス。
 その直後、彼の鳩尾へハンドの足が下る。
 鈍い音が広間中に響いた。